始まりは、脅された。レイプすると、言われたのだ。まさかそんな相手をこんな風に想うことになるなんて、思ってもみなかった。
「レイ、プ? …………いやだっ! 放せっ! どけっ!」
最初は嫌悪と恐怖、ただそれだけだった。彼はとても恐ろしい怪物に見えた。
「っ! 一夏……一夏ぁ……たすけて」
そんな時に口をついて出たのはずっと想い続けた人の名前だった。助けて欲しかった。でも実際は誰も助けてくれなくて、私は
「……………………くちで、します。ふぇらちお、しますから……れいぷ、しないで…………」
みっともなく泣きながら哀願したのだ。だけど彼は私にキスをした。ずっと夢想していた一夏との甘いものではなく、ただただ嫌なものとして。
「いやあああああ!! やめてええええ!」
叫んだ。どうしても嫌だったから。でも、
「……れる……れろ……ぷはぁっ……んっ……ちゅう……ちゅちゅう」
脅されて、仕方なく、私は彼のモノを口で慰めていた。嫌だった、汚らわしかった。気持ち悪かった。そして、
「い、一週間に一度、ここへ来いだと!?」
それから、週に一度、彼に奉仕する日々が続いた。内心とても嫌だったけれど、態度に出したらレイプされるかも知れないのだ。怖かった。もの凄く怖かった。誰かに助けて欲しくて、でもできなくて。そして次は、自分の体に裏切られた。
「はぁぁん。ふぅっっ! あ、あ、あぁぁぁ!」
「ふふ、箒。イったな? 気持ち良くて絶頂したんだろう。あれだけイカないって言ってたのにな」
私は彼の手によってあっさりと絶頂に達した。その時だ、
「無理に自分を否定しなくていい」
そう言って、抱きしめられた。初めての経験だった。キスもされた。
「んっ……箒……好きだぞ」
「な、何を言う!」
「俺は女子なら誰でもいいって訳じゃないよ。箒のことが好きになったから手を出したんだ」
「す、好きなどと……戯言を……わ、私なんて……」
嘘だと思った、私を好きになるなんて、そんなことがあるはずがない。
「箒は魅力的な女の子だよ。男なら誰だって好きになるくらいに……ん」
「ん……うそだ……そんな……んちゅ」
「織斑が好きだってわかっている。横恋慕だって知っている。それでも箒が好きだ」
抱きしめて、キスされた。何度も。まるで恋人のよう。私は彼がわからなかった。こんなことをしているのに。レイプすると脅して、恐怖をちらつかせているというのに、私のことが好きだと言う。
「そ、そうだ。レイプされたくないから……して、やるんだ……」
私は脅されて仕方なく彼に奉仕した。
「それでもいいよ。箒にされると気持ちいい……箒……キス、させてくれ……」
それでも彼は私がいいと言う。
「キス、なんて……こんな、んっ、好きでも、ない男と……ちゅっ」
好きでもない男なのに、脅されているのに、私は彼と何度もキスをした。
「ちゅっ……ちゅ……ぢゅぅ。き、貴様。いきなりこんな……」
「この一週間、ずっと箒としたかった。抱きしめたかったし、キスしたかったんだ……悪い」
「ば、ばか者が!」
虚勢を張るように罵った。けれど彼は私を抱きしめて優しく、背中を撫でてきた。
「箒は嫌だろうけど、俺は箒が好きなんだ。少しだけ俺といてくれ……」
「~~!!」
そんな言葉、言われたことがなかった。本当なら一夏に言われたかった。でも私に好意を示してくれたのは彼で……。
「箒……見せてくれ。おまえの胸、見たい」
初めの脅しなどどこにいったのか、彼は優しく私に接してきた。
「……ぃ、嫌だ、と言ったら、レイプする、と言うのだろう? どうせ、私に選択権などないんだ」
私はあくまで脅されているから従っているのだと言い続けた。本当は彼の愛撫で感じていたくせに。
「箒は可愛いなぁ」
初めての言葉、私は彼からたくさんの初めてをもらったのだ。そして……。
「そう、約束を破って奉仕に来なかった箒をレイプしようと思って今日は来たんだ」
「ふ、ふざけるな! そんな勝手な話があるか!! こ、これを解け!!」
再び、彼は私をレイプしようとした。
「箒……好きだ」
「わ、私は、お前など好きではない!!」
彼は言った。
「俺は箒が好きなんだ。だから箒とセックスがしたいんだ」
私が好きだから私としたいと。今ならばわかることでも、当時の私にとっては不可解でならなかった。好きなのにどうしてこんなことができるのか。私が、嫌だと言っているのに。
「あ・あ・あ、あぁあぁぁぁぁっっ!!!」
レイプされようとしているのに、私の体は節操なく反応し、イってしまった。恥ずかしくて、みっともなくて、情けなくて、涙が後から後から涌き出てきた。
「いやぁあああああ!!! やめて、やめて、やめてぇえっっ!!」
「箒、痛むか? 今感じている痛みは女になった証拠だ。箒は、俺の女になったんだ」
そうして、私は、処女を失った。
§
その後のことは……今でも良く思い出せない。ただ淡々と日々をこなしていった。機械のように。心は何も感じなくなっていた。
「これで……箒は俺の女だ。俺だけの女だ。箒は、もう俺のモノだからな」
彼の言葉が頭をぐるぐると回っていたような気もする。思うことは、私はもう一夏と一緒にはなれないということだった。だから、
「箒、今日はセックスするぞ」
そんなことを言われても、
「…………そうか…………好きにしろ」
何も感じない私は平然と体を差し出した。そして、アレを見たのだ。
『清香……イクッ……きよかぁっ』
『ふあああぁぁ……』
アレを見た時の衝撃は、今も忘れられない。サァーッと頭から血が引いていく音が聞こえたぐらいだ。
「う……うそだ……いちか……こんな……嘘だぁぁぁっっっ!!」
私は、事実が認められなくて、ただ叫んだ。
「嘘じゃないんだな、これが。だって俺、織斑に直接言われたもん。相川さんと付き合うことになったって」
「うそだ……うそだ……そんな……いちかが……」
「でも、”仕方ない”んじゃない? だって箒は”告白してない”んだろ? じゃあ”告白した”彼女が織斑と付き合えるのは道理だよ。箒が告白していれば、織斑と付き合えている可能性があったのに、あんな風に幸せな初体験をしていた未来もあったかも知れないのに」
その彼の言葉は、
「…………うぁぁ、ああぁぁ、ぁああああああぁあああ!!」
どこまでも、どうしようもなく私の心を残酷に貫いた。私は、一夏が好きだった。でも、告白しなかった。彼に脅されて秘密の奉仕をしている関係があったことは事実だ。でも、それでも私は告白していなかった。だから、彼女に敗れたのだ。
「可哀相な箒。ホントは心のどこかで思っていたんだろ? ”いつか一夏が助けてくれるかもしれない”ってさ。ホントはまだ諦めてなかったんだろ? 織斑と付き合うことを。……でもさ、自分から行動しなきゃ、そんないつかは絶対にこないよ」
彼の言葉は私の心中を的確に刺激した。そうだ。私は自分にとってのヒーローである一夏がいつか助けてくれるかもしれないと思っていたのだ。でも、その期待はあっけなく砕かれた。彼は、私ではない別の女性を選んだのだ。
「ぁあぁぁあぁぁあぁぁぁ。うあぁぁぁぁあぁっぁあ」
泣いた。ずっと、泣いていた。そんな私の体を、彼は抱きしめ続けた。私は藁にもすがるようにその彼の体にしがみついて泣いた。
「どうせ、もう一夏と一緒になれることはないんだ。だったら、抵抗したって意味ないだろう」
その後は、やけになった。処女を奪われた虚脱感ではなく、初恋に破れた衝撃が私を襲っていた。そんな私に前を向く活力を与えたのも彼だった。……与えられた、と言っていいのかな?
「告白しちゃえば? 織斑に」
「俺、根鳥 音児は篠ノ之 箒のことが好きです。大好きです。だから俺と付き合ってくれませんか?」
「私は、ずっと、一夏のことが好きだったんだ!!!」
私をレイプした彼。最低な男。でも彼は私に告白してきた。しかし私の心はずっと前から一夏に向いていた。
「そこまでできれば、後は本人の目の前で言うだけだ。行って、ごらんよ。あいつの所にさ。そんで、今みたいに自分の気持ちを素直に言えばいい」
「私は……お前にレイプされたんだぞ! それも一夏がいるすぐ傍で! こんな、こんな汚れた私に、一夏に告白することなんて、でき、ない……っ!」
穢された。私は、穢されたんだ。だから一夏と一緒になるなんて、告白するなんてできないと思った。けど、
「俺の催眠術の威力は知っているだろ? それで、『IS学園に入学してから俺と行った全ての行為を忘れろ』って催眠をかければ、意識の上では綺麗な、誰にも汚されていない箒に戻れるよ。レイプされた記憶がない箒なら、告白できるんじゃない?」
「今日から一週間以内に織斑に告白できたら箒の勝ちだ。俺との記憶は未来永劫忘れたままになる。もし箒が一週間以内に告白できなかったら、俺は忘れさせた記憶を全部元に戻す。俺の女になってもらう。それが『条件』だ」
「一週間以内に告白できればオールオッケーだ。で? どうなんだよ。一週間以内に織斑に告白できる自信、あるのかないのか?」
彼は、甘い言葉で私を誘惑した。全てを、処女を奪われ汚された記憶を、忘れることができる? まっさらな私で一夏に接することができる? それなら……。
「……………………告白、すればいいんだな」
「ああ、告白すれば、その結果が振られたりしたとしても、失敗に終わったとしても、告白さえすれば俺はお前の記憶を元に戻さない。関係も強要しない」
「…………いい、だろう。やって、やろうじゃないか。一夏に、告白、する。してやる。だから記憶を……」
「……くっ、失敗などしない。必ず、一夏に告白してみせる! 万が一失敗した時には私の体なんて好きにしろ!」
私は、彼の提案に乗った。記憶を消してもらったのだ。そして、告白することに全てを賭けた。失敗したら彼にまた関係を強要される。それがわかっていても、私は告白できると思ったのだ。自分なら、言えると。
でも、
「……ふう。それじゃあ確認するよ。あれから一週間経った訳だけど、篠ノ之は織斑に告白してないんだな」
「当たり前だっ!」
私は、それでも、やはり、告白できなかった。それどころか記憶を失っている状態で、一夏と彼女の関係を確かめることすらできなかった。私は、賭けに、負けたのだ。
「思い出したか? 箒? さあ、お前は条件を満たせなかった、約束を果たせなかった。織斑に告白できなかった。だから……全ての記憶を思い出させた。そして……約束したよな? これで箒は俺のモノだ」
「…………あっ、あっ、あっ、ああああぁあぁぁぁあぁああ!!」
私は自分の意気地なさを認められず滂沱と涙を流した。
「箒、結局お前は告白できなかった。これ以上どれだけ時間をかけても無駄だよ。お前は一週間という期限で告白できなかった。なら、それが一ヶ月だろうが半年だろうが一年だろうが一緒だよ。お前は相川さんに、条件を突きつけて約束した俺に、負けたんだよ」
彼の言葉は……真実、なのだろう。私は結局一夏に、一夏の前で告白できなかった。私は、初恋に敗れたのだ。
「文句を言う権利なんて無いんだよ。それどころかお前は幼馴染として、恋人ができた織斑を祝福してあげなきゃいけない。良かったな、おめでとう――なんて言葉をかけてやらなきゃいけない」
私は、恋に敗れた女だった。彼女に、負けたのだ。そしてそれは同時に、彼との関係を続けるということでもあった。
「箒……大丈夫だ。俺、もうあんな乱暴には絶対しないから。痛くもしない。気持ち良くさせてみせる。そして、お前を幸せにさせてみせる」
「大丈夫、きっと、きっと気持ち良くて幸せな気分になる。させてみせる。だから俺を信じてくれ。身を、預けてくれ」
「箒……好きだ。大好きなんだ……んちゅ」
彼は、優しくキスをして、私を抱きしめ、私の中に入ってきた。
「箒が好きなんだ……箒でなきゃダメなんだ。箒に入れたいんだ。箒を、幸せにしてやりたい」
「わ、わた、しを……?」
「ああ、篠ノ之 箒をだ。いっぱい、いっぱい愛してやるからな」
「箒、好きだ……好きだぞ……」
少しだけ、疑問が湧いた。
「…………はぁ…………はぁ…………はぁ…………どう、して」
「ん?」
「どうして……そこまで、わたしがすきなんだ」
「箒が……織斑を好きだからさ。箒が、織斑に恋しているのは、最初に見た時すぐわかったよ。入学式の日、すぐにだ」
「………………だったら……どうして?」
どうして、自分以外の男に恋をしている私なんて好きになったのだろう?
「普通はそう思うよな。他に好きな奴がいる人を好きになんかなったりしないって。でも俺は違った。俺は、織斑に恋をしている女の子を好きになったんだ。理由は……可愛いから、かな」
私が、可愛いだって?
「そうだよ。箒は自分が思っている以上に凄く可愛い女の子なんだ。俺はそんな可愛い箒がすぐに大好きになったんだ。だから、織斑が好きでも構わないと思った。催眠術を使っても構わないと思った。こんな可愛い娘を手に入れられるなら。だから俺は箒が好きだ。箒が好きだから抱きたい。好きだから幸せにしてあげたいんだ」
その言葉は一夏を失った私に、甘く、侵入してきた。
「しあわせ…………でも、わたしは」
「箒は…………箒は失恋したんだ。織斑に、失恋したんだ。それは辛くて悲しくて悔しくて……嫌な気持ちだろうと思う。だけど、俺は幸せにするから。箒が想っている織斑と違って、俺は箒を幸せな気持ちにしてあげたいんだ。箒には俺がいるから。箒が好きな男じゃないけど、最低な男だけど、お前のことが大好きな俺がいるから。だから、悲しまないでくれ」
その時、私の目が、初めて、彼を捉えた。
「おまえが……?」
「そう、俺がいるから。俺は箒を幸せにするから。きっと、幸せにするから」
そうして彼は私を抱いた。深く。初めての時とは違って、優しく。その時、私は信じられないような自分の感覚に気づいたのだ。
「んん……ちゅ……は……ふぅ……あ、あ……!」
私は、幸せな気持ちになっていた。満たされて、いたのだ。小学校で一夏と別れてから、ずっと感じたことのない幸福感。それを、彼に抱かれて感じていた。私は自分が信じられなかった。好きでもない男に、望まず抱かれているのに、幸せな気持ちになるなんて。本当はずっとずっと寂しかった。姉さんが行方をくらませてから、家族がバラバラになったあの後から。誰かにすがりつきたかった。それは一夏になる、してもらいたいはずだった。けど、私を抱きしめてくれたのは彼だった。
「箒……俺、子供ができたらちゃんと責任をとるから。子供と一緒に愛してあげるから」
中に出しておいてそんなことを言うのだ。
「俺、箒と結婚したい。箒が好きだから、箒との子供も欲しいんだ」
「そ、そんな……け、け、結婚などと……」
結婚。私には考えられないことだった。考えたとしてもそれは相手が一夏の場合だけだ。だけ、だった。でも、彼は、言ったのだ。私と結婚したいと。私との子供が欲しいと。その言葉に、胸が、お腹が、弾むような音を立てたのを感じた。嘘だ。こんな男に愛を囁かれて、幸せだなんて、感じてしまったなんて、嘘だと思った。でも私の胸は相変わらず温かな幸福感でいっぱいだった。
「箒……今日、俺が言ったこと、全部本当だから。俺は本気で箒のことが好き。できれば結婚したいと思っているよ」
「本当に…………本気、なのか?」
嘘だと、言って欲しかった。こんな訳のわからない幸福感なんて嘘だと。
「本気だよ。本気で箒が好きだ。結婚したいと思ったからしたいようにした」
「……………………………………わ、わたしは………………私はきっとお前が思っているような女じゃないぞ。可愛くなんて……ない。可愛くなくて、自分勝手で……」
「箒」
抱きしめられた。
「あ……」
「そういうことは、これから知っていけばいいんだよ。これから、俺に箒の色んな所を教えてくれ。色んな部分を見せてくれ。俺は全部の箒を知って、箒の全部を愛してあげたいから」
「根鳥…………」
その時、初めて私は、彼をという男を意識したのだった。
§
それから……一週間経った。私は約束通り彼の元を訪れたが、まだわだかまりというか、どう接していいのかわからない気持ちを抱えていた。そんな私を彼は今までのように抱きしめた。
「会いたかった、箒」
私に、会いたかったという彼。
「もう一度、正面から言うよ。俺と、セックスする仲になって欲しい。今日も、できれば俺とセックスして欲しい」
あんな一方的で勝手な約束。それでも約束は約束だった。私は、渋々こう答えた。
「…………ゎ、かった。…………どの道、貴様には逆らえんのだからな」
「キスするぞ……ん」
彼は優しく私の体を撫でてきた。色んな場所を、キスをしながら優しく撫でられて、また私は幸せな気持ちが胸に立ち上ってくるのを感じた。
「箒……好きだ……好きだぞ……」
「あ、う…………」
私を好きだと言いつづける彼。どう返せば良いかわからなかった。
「箒……箒は何もしなくていいから、俺に身を預けてくれ。この間みたいに」
そうして体を触られた。その時には……もう嫌という気持ちが、嫌悪感がなくなっていることに気づいていた。でも認められなかった。脅されているのだから、強要されているのだから、嫌悪を感じて当然なのだ。私は自分の感覚を否定した。でも……。
「んちゅ」
「ちゅぅ……んはっ……やぁっ……キス、やあ……」
キスは特に嫌だった。幸せな気持ちが溢れるから。溢れて止まらなくなるから。彼に、温かい気持ちを抱いてしまうから。
「嫌……なのか。やっぱり、俺のこと嫌いだし、キスをするのも嫌なんだな」
「…………はぁ…………あ…………」
「俺は、こんなに箒が好きなのに……ちゅっ……すき、だぞ……」
私は……私はもうわからなくなっていた。私はずっと一夏が好きで、でも失恋して、だけど私を好きだという彼がいて……どうしたらいいのか、どうすればいいのか、わからなかったのだ。
「あ……う……んちゅぅ……ちゅ……んふっ……」
「俺、箒を抱きたい。箒の中に入りたい。……いいか? 箒のこと、好きだから、抱きたいんだ。……いいだろ?」
そう言って、抱きしめられた。まるで思いを伝えるように、ぎゅっと。
「うう……そ、そんなに……そんなに、私としたいのか……?」
自分の人生の中で、ここまで人に求められたことはなかった。一夏にも……当然、求められなかった。
「したい。箒としたい。箒を抱きたいんだ。もう我慢できない!」
「あああ、だめ、だめだ根鳥……やめて……やめてくれ……」
「箒……嫌がらないでくれ……俺、箒の中に入りたい……好きなんだ。俺、箒のこともっと気持ち良くさせたい……幸せな気持ちに……」
そんなことを言われても。本当は、部屋を訪れて抱きしめられた時から、「幸せな気持ち」が育っていたのだ。どうしろというのだ。もう充分幸せだ、なんて、言えない。
「なあ箒、この前みたいに俺に抱きついてくれ。もっともっと深く繋がりたいんだ」
私は仕方なく、彼に言われた通り抱きついた。そうしたら、もっと心地良くなった。
「やくそく……そうだ……やくそくだから……しかたなく、だかれるんだ……。ほんとうは、おまえなんて……」
認めたくなかった。彼を、彼になびいていく私の気持ちを。
「それでもいいよ。俺は大好きな箒を抱けて満足だ。ちゅうっ」
私達は抱きしめ合ってキスをした。それはまるで、甘い、恋人同士のようなセックス。
「んんっ! はあっく……やあ……どうして……わたし……んちゅぅ」
もう、幸せな気持ちになっていることは否定できなくなっていた。
「好きだぞ、箒」
「はあ……そんな……そんなの……うそだ……わたしなんて……」
それでも、彼の気持ちを認められなかった。だって、それを、認めてしまったら、私の中に芽吹いた気持ちも、認めなくちゃいけないじゃないか。
「嘘じゃないぞ。本当に俺は箒が好きだ。好きだから抱きたいんだ」
「ああ……はぁ…………………………ぃぃ……いい……これ、きもちいい……根鳥が、きもちいい……」
先に、体が悲鳴をあげた。快感を、抑えられなかった。
「箒、大丈夫だ。俺も凄く気持ちいいから。箒が、気持ちいいから。一緒だ」
彼が私と同じ気持ちだって知って、胸がキュンとなった。
「ああ、いっしょに気持ち良くなろうな」
「あっあっ、いいっ、これ、きもちいい……根鳥、根鳥ぃ……」
もう、認めざるをえなかった。私は、自分のことを好きになってくれた彼に、惹かれていたのだ。
「違うぅ……勘違い、するな……私は……約束だから、仕方なく抱かれたんだ……それだけ、なんだ……」
「それでもいいよ。箒、愛している」
「……!! そ、そんな……違う……違うんだ……私は」
私は急いで、両手で顔を覆った。顔を見られたくなかった。愛していると言われて緩んでしまった自分の顔を。彼はその両手をやさしくはがすと、キスをした。
「箒……愛している」
「あ……ん……根鳥……」
私はもう完全に、彼に参っていた。
§
「箒、誕生日おめでとう」
彼はそう言って、綺麗に包装された箱を差し伸べてきた。
「あ、開けても、いい……か?」
そこにあったのは、リボンととても綺麗な銀色のネックレスだった。こんな装飾品を着けた経験がないので、緊張してしまう。
「新しいリボンと、ネックレスだよ。箒が俺のモノだって意味を込めて、な」
「き、貴様は。そ、そういうことしか言えんのか!」
反発しながらも、心は嬉しさでいっぱいだった。
「ハハハ、今更気取っても仕方ないだろう? 俺は俺だ。そして俺達の関係も俺達だけのものだ。だから、それを送るよ。今度にでもつけて見せてくれ」
「貴様は……本当に大馬鹿者だ……」
彼が顔を近づける。意図がわかった私は目を閉じて、唇を上向きに突き出した。
――そして、私達はキスをした。
§
「今日は、どうするんだ?」
「できれば……口でして欲しい」
「口……か。…………わかった」
それから、私は彼との行為を嫌がらなくなっていた。それどころか、
「ん……咥えて、欲しいのか?」
「あ、ああ……して、欲しい」
「ぅん……わかった」
しずしずと、彼の言う通りに奉仕した。彼を、気持ち良くさせたかった。
「おあっ、イ、イクッ出るぅ!」
ビュクッ、ビュクッ、ビュルルルッ!!
熱い奔流が、私の口の中で流れた。彼の精液を、口の中で受け止めた。
ドクッドクッ、ドクン!
「んんんっ……んふぅ……ふぅ……ふ」
私は出されたものを口に溜めると、
「んく……こく……こく……こく」
飲んでいた。あれだけ嫌がっていた、彼のものを。飲んであげたかったのだ。
「こく……こく……んくぅ……はぁ……はぁ……はぁ」
「箒……どうして」
「…………ず、ずっと、して欲しかったのだろう? だから……う、嬉しく……ないのか?」
彼がこの行為を望んでいることは知っていた。だから。
「箒っ」
彼は、私を抱きしめてくれた。
「嬉しいに、決まっているじゃないか。箒、ありがとう」
彼の喜ぶ姿に、私もまた喜びを感じていた……。
「セックス、してもいいってことか?」
「ぅぅ~~~~っ。そ、うだ」
その頃の私はもう、彼との行為を受け入れていた。して、欲しかった。してもらいたかった。あの幸福感を、感じたかったのだ。
「でも、いいのか? 俺、最後までしちゃうぞ?」
「い、今まで気にせずにしていた男が何を言う。ど、どうせ、同じことだろう」
私は、もう覚悟を決めていた。彼と共に……と。一緒に、いたかった。一緒に、なりたかった。
「なら……うごいてくれ。わたしで、きもちよく、なって……」
私の体でも、彼を喜ばせることができる。それは私にとって大きな喜びだった。
「…………根鳥……、出るのか……?」
「ああ、出る。箒の膣に出るっ」
「いい……ぞ。そのまま、そのまま……で」
私の中で彼を受け止めたかった。体も、心も、全てを開きたかった。
「箒……俺、ちゃんとできてたか? えっと、だからつまり、ちゃんとお前を気持ち良く、幸せな気分にできてたかってこと」
彼は、自分の言った言葉、私を幸せにするということにこだわっているようだった。だから、
「…………何故だろう。お前と繋がっていると、満たされた気持ちになるんだ……気持ち、いいんだ」
自然と、私の素直な気持ちを伝えていた。本当はずっと前から感じていたこと。彼としていると気持ちいいのだ。満たされて、いるんだ。私が子供の頃に失った幸福が、確かにそこにはあったのだ。
「箒……ん」
「んちゅっ……はぁ、根鳥……」
キスをする。彼から一方的にされるのではなく、私からも唇と舌を寄せて。彼とのキスは心地いい。私は、もう、彼を好きになっていたから。
§
「箒……織斑、行っちゃったな」
「もう……いいんだ。もう、いいんだよ、根鳥」
やっぱり一夏は私を見てはくれなかった。逃げるように去って行った彼を見送り、私は少しだけの寂しさを感じていた。そんな私を慰めるように、彼がキスをしてくれる。
「箒……ン……俺は、どこにも行かないからな。ずっとお前の傍にいるから……」
温かい、言葉。少し、笑いそうになった。そんな風に言わなくても、彼が私を想っていてくれることは、もう充分わかっていたから。
「大丈夫だ……大丈夫だよ。根鳥……私は、もう大丈夫だ……」
「ホントにか? 辛かったり……しないか?」
彼が私を心配そうに見てくれている。それが嬉しかった。
「大丈夫、根鳥……その、動いて……して、くれ」
それよりもして欲しかった。さっきから微妙に刺激されて、もうたまらなくなっていたのだ。
「ん……じゃあ、いっぱい、愛してあげるからな」
彼が律動を開始する。私の中が、彼を迎えるようにうごめく。愛して、くれる。
「ほ、箒さんばかりずるいですわ。根鳥さん……」
セシリアが甘えるように彼にすりよる。駄目だ。今は私のモノなんだ。それを主張するように唇を重ねる。
「んちゅっ……駄目だ。今は、私がしてもらうんだ……根鳥ぃ……」
甘えるような、女の声、それが私から漏れる。私は、いつの間にかこんなにも女になっていた。彼が、私を女にしてくれたんだ。
「むぅ、終わったら、私達にもしてくれ」
ラウラもおねだりをする。
「やれやれ……これではお前の体がいくつあっても足りないな」
千冬さんがそう言う。本当は彼女だって期待しているんだ。でも彼女には負けたくない。一夏の姉で、大切な人で。根鳥にとっても大切な人。だから負けたくはなかった。
「んっ……ふっ……鈴は、して欲しくないのか?」
彼が注意を鈴に向ける。彼女は最後の一線を崩そうとはしない。彼が無理矢理するからされているのだという態度を崩さなかった。それでも、本当はされることを望んでいるのは丸わかりだった。
「あたしは別にしなくていいわよ! ただ、一夏が来るって言うから……」
「そっか。悪かったな。本当はお前も告白してみたかったんだろ?」
本当に悪いことをしてしまった。本来なら鈴とセシリアにも告白してもらう予定だったのだが。ラウラ? 彼女は一夏とキスしたじゃないか!
「どうせ……無理よ。あいつには清香がいるじゃない」
清香、その名前を聞くと今でも胸が痛む。私達には届かなかった場所に立つ彼女。ああ、嫌だ。また嫌な考えが頭をよぎる。
「根鳥……もっと激しくしてくれ。私は……忘れたい。忘れ……させてくれ……」
哀願する。私がすがれるのは彼しかいないのだ。もし彼に見放されたりしたら……私は狂ってしまうかも知れない。
「ああ……いっぱい、いっぱいしよう箒。俺が忘れさせてやるから」
ぎゅっと抱きしめられる。そして下から突き上げられた。安堵と快感がいっぺんにやってくる。彼は言った。私を幸せにしてやりたいと。彼に言いたかった。貴方がいてくれたから、私はもう幸せだよと。
「根鳥ぃ……愛してる」
私は、彼を、愛してる。
箒視点を描くためにコピペをしながら文章を書いていたのですが……これはひどい、と思いました。正直これで箒が主人公を好きになる理由が思い浮かばん。ご都合主義もここに極まれりだなぁと。まあそれもすべて懐柔のターンと催眠で説明がつくんですが、それにしても酷い。箒はもっと怒っていいと思う。騙されてるぞー!