とある佐天の百合洗礼《レズテスマ》 作:エステル
「み~こ~と~ちゃ~ん♪」
「きゃあぁぁ!」
両手が塞がれている御坂美琴に避ける術はない。涙子の手が差し込まれたかと思えば、美琴の下半身を守護していたプリーツ・ミニ・スカートは、あっさりとめくりあげられてしまった。
「め、めくられちゃった」
初心で、それでいてまんざらでもない美琴の反応。でもその時の涙子には美琴の反応を楽しむ余裕はなく、パンツを持ち上げたまま硬直してしまった。涙子はすごく驚いたのだーーごく控え目に表現して。
「短パンじゃ……ない。みさ……美琴さんがパンツはいてる……」
秘部を前にしての高揚や緊張よりも驚きが勝った。短パンは美琴を規定する外見的なアイデンティティーの一つ。涙子がこれまで美琴のスカートめくりを躊躇してきたのは、彼女が超能力者《レベル5》であると言う以上に、この短パンを穿いていると分かり切っていたからなのだ。
フラッシュバックしたのは縞パン。この締りの良い太ももには昨日縞パンがあったのだ。断片的な記憶は涙子の意志とは無関係に、あらゆるエピソードを瞬時に結びつけてしまう。通りの向こうに消えて行った9982号の姿。未来の記憶が逆流してくるかのような切なさ。高度に安定していたはずの涙子の精神に突風が吹きつける。
涙子は鼻の奥に感じた塩味を飲み込んで、パンツの中に顔を突っ込んだ。薄布に画かれたピンク色のカエル。ピョン子は自分が主人から重大な使命を与えられたことを承知していると言わんばかりに、固定された笑みを涙子に送っていた。涙子は無言でピョン子に頷く。
「絶景ですなああ!」と涙子はふざけた叫び声をあげる。
「……だ、だだだ、だってこれから……スるんでしょ!?」
涙子はスカートをめくり上げたまま顔をぴょこんと出した。人間の顔がここまで赤くなるのかと感心してしまうほどの赤面。涙子の声はほんの少しだけ震えていたが、美琴がこの状態なら気付かないだろうと取り繕うのをやめた。自分に対して発する一語一句に対し、美琴がこれからの人生でずっと赤面し続けるのだ――そう考えると、涙子の心に落ちた暗い影は初めから無かったみたいに消えてしまう。
「ほほぉ~美琴さんはヤル気まんまんだったって訳ですね」
「涙子……その……スカート降ろして欲しいんだけど?」
「ダメです。美琴さんのスカートをめくれる機会なんてめったにありませんからね。じーっくり観察させてもらいますよ」
再び美琴のスカートの下に潜る涙子。今度は純粋に美琴のパンツとして観察を開始する。いつもは短パンに守られて絶対に見る機会のなかった着用中の美琴パンツ。初春とは違うアンバランスな幼さ。この奥に秘密の花園が眠っていること自体が都市伝説に思えてくる。ほんの十センチ先にあるのに、永遠に到達できない観念的な存在。涙子は馬鹿な考えを頭から振り払う。自分が指先でクロッチをずらせば、幻想は真実へと変わるのだ。と言うより涙子は、銭湯に行ったときに美琴の性器を見ている。じっと見た訳ではないが。
「べ、別にこれからいくらでもめくればいいじゃない……」と美琴は不満気に言った。
「めくって良いんですか?」と佐天は潜ったまま言う。
「良くないけど……でも私がダメって言ったら、涙子は初春さんのスカート捲りに行くでしょ!」
「ダメって言われなくても、初春のスカートはめくりますけどね!」
「…………」
絶句。美琴のパンツの下がかすかにひくりとしゃくり上げた。
「どうしてなの涙子……私のより初春さんのが見たいの……」
折角勇気を出してスカートめくりの許可を出したのに、涙子の堂々とした不倫宣言。美琴は怒るというより泣きそうになりながら訊いた。
涙子は今度は顔を出して、美琴と目を合わせる。
「そうじゃありません。あれは親友として、初春がちゃんとパンツ穿いてるかどうかを確認してるだけですよ。性的な意図は一切ありません」
「……ホントに?」
「はい! 神に誓って!」
涙子は高らかに宣言する。実際に本心なのだ。涙子は自分がレズだと自覚する前から初春のスカートをめくり続けていたのだから。
「…………じゃあめくってもいいけど」
若干拗ねているが、もちろん涙子は酌量しない。なぜなら涙子にとって初春のスカートをめくることはライフワークであり、自らの
「ありがとうございます! じゃあ美琴さんは、パンツ降ろしちゃいましょうか!」
御坂さんは特別ですよ、とでも言いたげに、涙子はスカートの下に戻って、パンツの裾に指を左右2本ずつ突っ込む。
「ちょ……ちょっ! そんないきなり……まだダメよ!」
「えーなんでですか?」
「ちゃんとチューしてくれなきゃ……エッチなことはダメだもん」
まだちょっと妬いているのか頬を膨らます美琴。涙子は偶然を装って、鼻先で布のくぼみに触れてみた。
「ぁ、ゃぁ......」
集中しなければ気付かない速度であったが、美琴が自分から腰を前に押し出した。本当は欲望のままに陰核を涙子の太ももにでも擦りつけ、燻った下半身の熱を注ぎ込みたいのだろう。そんな自分本位なセックスをするには、美琴はあまりにも乙女すぎたし親切すぎた。もしも相手が上条であっても性欲に素直にはなれないであろう。
良い機会なので涙子はパンツを嗅いでみたが、かすかに残留した石鹸の匂いしかしないかった。多少の体臭はスパイスにもなるのだが、都合の悪い細菌を無意識で皆殺しにしてしまう美琴に悪臭が残ることはまずないのだ。
「だ、だからダメだって……」
涙子は指先に感じる柔肌の感覚を惜しみつつスカートから顔を出した。上目遣いで目を合わせたまま美琴の目線まで上がっていく。下を向け固く閉じている握りこぶしにそっと手を重ねる。熱に溶かされるようにじんわりと開く美琴の指の隙間に、涙子は自分の指を滑り込ませる。
両指をしっかり絡めると、必然的に2人の体は密着する格好となる。サマーセーターごしに互いの鼓動がはっきりと聞こえる。美琴の心停止5秒前みたいな心臓に対し、涙子は軽くジョギングしている程度。
美琴はこの事実にある種の嫉妬を覚えずにはいられなかった。彼女は元来の負けず嫌いなのだ。自分と同じ体に既にあんなことやこんなことを済ませた涙子の性的優越を凌駕するには、彼女の意表を突くしかない。自分から涙子の唇を奪うのだ。そうは言っても、顔は俯いたまま彫刻のように硬直し、上下の唇はネオジム磁石よりも強い力で閉じられている。そのくせ拡張された血管には怒涛のように血が注ぎ込まれているのだ。
「美琴さん、顔上げてくれなきゃキスできませんよ?」
葛藤している内に、またしても涙子に先手を打たれてしまう。屈辱と羞恥心に身悶えしながら、美琴は渾身の力で1度ずつ顔を上げていく。セーターの繊維が順番に降下し、V地に分かれた谷間から純白ブラウスに切り替わり、ボタンを通過すれば涙子の喉元が現れた。涙子の心音が美琴の角度と共鳴しながら徐々に強くはっきりと脈打ちだす。美琴の視界は唇を通り過ぎた時点で闇に染まった。決して唇の感触に集中したいからではない。一定の情報入力は制限しなければ神経回路が焼き切れてしまうからだ。
涙子の唇が音もなく開き、美琴の上唇を軽く啄んだ。吸い寄せられるように美琴も涙子の唇を啄む。行為は次の行為を連鎖的に導く。内部に遡った電流の渦が思考の表層を焼き切る。少女達を縛り付けていた常識や偏見、羞恥心、一切の鎖が断ち切られてしまった。あらゆる愛情表現への障害が破却され、真理への回路が直通し、美琴と涙子はお互いの唇を慈しみ始める。
「んっ、はぁ……ちゅ、ちゅうぅ!! 涙子、涙子……るいこっ!!」
美琴は無意識的に涙子の名前を零す。少女達の愛はダムの決壊に似ていた。唇を唇でなぞるたびに、留まることを知らない肯定的な感情が溢れ出し、激しい圧力でネガティブな感情と感情表現の手段を押し流してしまう。
「はむ……もっと、もっとです美琴さん……! あたしは先月からずっと……、ううん、もっと前から待ってたんですよ! こんなじゃ全然足りないですよっ!!」
涙子は美琴が自分の唇を噛んだタイミングを見計らって舌を伸ばす。美琴は必然的に涙子の唇を自分から迎えに行く。口内から全身に侵透する未知の感覚。粘膜と粘膜が直接触れ合い、自然の定めた法則に従って意識は天へと引き上がる。ある種の人間は一生体験することなく死んでいく具体的な愛の形。神が人間たちに用意した祝福。かつてユダヤ人とキリスト教徒はこの感覚を憎悪し、膣内射精以外のセックスを拒絶してきた。しかし少女達には、神が人間の苦痛を待ち望んでいるとは思えなかった。むしろ真逆ではないか。
なぜ愛が尊ばれるのか。それは形而下において人間を幸福に導く安全な手段の一つだからではないのだろうか。ヘロインやメタンフェタミンが危険視されるのは、効果が切れた後に壮絶な苦痛が待ち構えていると分っているからだ。もちろん性欲にだって同じだった。肉体は確実に老化し、性的な価値と欲求は喪失し、嫉妬や価値観の相違により憎しみ合う。ある主の人間は性依存症によって脳が破壊されるかもしれない。しかし、そもそも人間は人生の全体を祝福する必要などないのだ。一瞬の快楽に限定して祝福することを、誰が悪と言えようか。人間は一瞬を肯定するためだけに生きているのだし、その積み重ねを人は人生と呼んで来たのだ。引き伸ばされ無為な苦痛を賛美し再生産を強要するほど愚かな社会になったのは、苦痛を悦ぶマゾヒストが権力を握っているからではない。
かつて律法に縛られ教条主義的なレイシズムに陥ったユダヤ人の町にイエスは言った。
『裁きの日には、ソドム、ゴモラの地の方が、その町よりは耐えやすいであろう』
美琴は自分の肉体に接続された熱い舌を確かめるように舌先で舐め回す。そのたびに涙子が甘い吐息を漏らし、手をぎゅっと握りしめてくる。美琴はその反応を神経パルス信号として受信し、一瞬のうちに媚薬に変換する。脳が現実世界から切り離されて、意識が宇宙空間に直接接続されているような陶酔感。形而下で切り離された2人の意識が事象の地平を越えて宇宙の外で一体となり、1つの高次元意識となって肉体を操作しているのだ。
「はぁっ、ちゅ、ちゅっ……んはッ! 涙子、もう立ってられない」
美琴は絡めた手を離し、涙子にしな垂れかかりながら腰に手を回す。
涙子は美琴の体重を利用して重心を移動させベッドに向かって誘導する。足を縺れ合わせながら巨大なベッドへ倒れ込む2人。レモン・キャンディーの爽やかな酸味と甘味が、美琴の記憶を直接ハッキングして中枢神経に過電流を放出する。
涙子は美琴の体をベッドに沈ませると、自由になった右手を流れるようにブラウスの下に突っ込んだ。妹達とは違う、天然物の引き締まったきめ細やかな14歳の肌を手のひらに感じながら、腹から胸へと撫で上っていく。小ぶりで品の良い胸を覆う薄い布の上に手をかぶせ、馴染ませるようにじわりと揉み撫でた。
「あっ……そこは……ああ、んああっ!」
コリコリと硬く勃起している突起に触れるたび、美琴は舌先をピンと伸ばして固まる。初心な美琴にはキスと愛撫両方の刺激を楽しむ余裕がなく、個々の知覚は総合的な意味に包括され意識を混濁させてまう。まだ行為は始まったばかりだと言うのに、体全体が分厚い熱の皮膜に覆われ、体温と同じ温度のプールに浮かんでいるような酩酊に陥る。涙子の肉体がバターみたいに溶けて、自分の体に塗りたくられているようだ。普段は無意識に制御している知覚回路が全解放され、異様な鋭敏さで佐天が与える刺激を受け入れているのだ。まだ2人は服を脱いでいない。直に皮膚と皮膚を接触させたりしたら、快楽の海に溺れて窒息するかもしれない。
「んちゅ……ちょっ、美琴さん大丈夫ですか!?」
涙子は美琴がとんでもないことになっていることに気付いて唇を放した。自分が残していった唾液を夢見心地の顔でごくりと飲み下す美琴。キスをせがむように首筋に手を回してきたが、佐天はさりげなく唇を通り越して、真っ赤に染まった頬っぺたから耳へと舌を這わせる。
「やぁ……やめちゃらめなの。もっとるいこのつば飲みたいのぉ……んにゃぁ……」
完全にキャラを見失い、焦点の定まらないトロンとした目で甘える美琴。はっきり言って異常だ。こんな姿を黒子が見れば再起不能なレベルで発狂しかねない。
「美琴さん、キスもいいですけど、こんなのはどうです?」
「にゃくぅう!?」
涙子はせがむ美琴を無視し、耳の溝を舌先で丁寧になぞる。こんな体の先端まで発火寸前の熱を感じる。美琴の指先が涙子の背中をツンツンと叩き、言語化不可能な意思の伝達を試みる。そのまま涙子がブラジャーの上から乳首を抓ると、美琴は皮膚を突き破りそうなくらい指を押し掴んできた。美琴の自制心が消えかかっていることに身の危険を感じる涙子。だが涙子の旺盛な好奇心は、ここで引き返すことをよしとしない。
一旦美琴から顔を放し、太ももの上に跨って三角形のくぼみにおしりを入れる。その姿勢でサマーセーターを脱がし、ブラウスのボタンを全部剥がして上着をはだけさせる。上気して赤みの指す肌に乗っているのはゲコ太柄のブラジャー。犯罪的な、あまりにも犯罪的な少女の危うい下着姿。今だ冷静さを保つ涙子も、高度に自分を制御しているリミッターが吹っ飛びそうだ。ベッドの上でブラウスをはだけてて半裸を晒し、うっとりと自分を見上げる美琴。現実とは思えないくらいに完成され、気を抜けば魅入られて意識を乗っ取られてしまう危うさ。
この姿を写真に残せば、一生おかずには困らないかもしれないな、と涙子は下世話な考えを頭に浮かべた。初めての行為の最中に写真を撮る無粋さを持ち合わせていないことを涙子は少しだけ悔やんだ。あるいは、
「るいこのもみたい……」
酩酊した意識で呪文を唱える美琴。セーターの裾を掴んできたから、おそらくは見たいと言ったのだろう。涙子は自分でサマーセーターを脱いだ。脱いだそばから美琴はブラウスの一番下のボタンに指を掛けてきたが、不器用になった指先は爪をひっかけるだけでも精一杯で、とても外せそうにない。面白いのでしばらくそのままにしておいたら、美琴はごろごろと喉を鳴らし始め、ふと、指がブラウスをすり抜けて肌に触れた。左右の隙間から入れた訳ではない。繊維を破った訳でもない。文字通りブラウスを突き抜けてきたのだ。
進化している、と涙子は思った。美琴が昨日は実演できなかった能力。古典力学の壁を無視した量子力学的愛撫。いやむしろ……最初から美琴の指がブラウスをすり抜けると決められていたと考える方が適切かもしれない。熱に浮かされた脳に、天文学的確率を制御せねばならない宇宙規模の演算が可能だとは思えないからだ。
美琴は当たり前のようにブラウスをすり抜けながら指を上に移動させて、涙子の乳首の先端をコリりと突いた。敏感な突起に直に感じる体温。美琴の指は仄かに光り、直後、涙子の体内に電流を打ち込んだ。
「あっ……あああーーーーーーーーーーーーーーーーーっッ!!」
涙子の全身を打ち貫いた快楽パルス。乳首が性感帯とはいえ、極度の興奮状態とはいえ、普通の愛撫ではあり得ない圧倒的な刺激が、涙子の細胞ひとつひとつを叩き起こした。子宮が強く収縮し、体の奥深くに渦巻いてたマグマが破局噴火を起こした。陰核や陰唇に触れられた訳でもないのに、パンツにはじんわりと粘液が染みだしている。
常盤台のもう一人の
「はぁはぁ……るいこ……気持ち……良かったぁ?」
意識を半分ノックアウトされ胸の上に倒れ込んだ佐天に、美琴は息を切らせながら囁く。その声は羽のように鼓膜を撫で、ジンジンと下腹部を持続的に響いてくる。
「い……今のはダメですよ美琴さん! あんなのやられたら、気持ち良すぎてあたしの頭おかしくなっちゃうじゃないですか!」
「涙子も同じことやってるもん!」
「はい!? どういうことです?」
「涙子に触られた時に流れるのと同じ電流を流したんだもん!」
「あたし、あんなのを美琴さんにやってたんですか!?」
「うん」
言われてみれば、報酬系を刺激する信号など、学園都市のカリキュラムで習得できる訳がない。自分と涙子の生体電流を分析したうえで調整した快楽を送り込んだのだ。能力の悪用にも程がある……が、結果的に涙子も同じことをしているのだから文句を言える立場にはない。にしても感度が良すぎる、と涙子は戦慄する。きっと能力者は神経系が常人離れしているのだろう。どんな天才も、神経伝達が機能不全に陥る鬱状態では能力を発揮できないのだ。涙子は、羨望より恐怖が先行しそうだった。しかも自分の能力は、さらに強大過ぎる能力を与えてしまうのだ。妹達を救うためとは言え、美琴をそんな風にして良い物かと、涙子は手を止める。
「涙子、大丈夫よ。私も段々能力を調整できるようになってきてるから」
まるで心を読んだかのように美琴が言った。というより、読んでいるのではないか? と涙子は訝しむ。
あるいはもっと単純に末梢神経に入力された電気信号を読み取っているのかもしれない。体表面のニューロンに言語情報が流れ込むのかどうかは知る由もないが、ウメオ大学統合医学生物学部の研究チームによると、皮膚内の神経細胞には幾何学情報を処理する計算機能があるという。言語情報が流れる可能性だってあるかもしれない。
どんな手段にせよ、
「えへへ……あたしも愛してるよ」
「やっぱり! 美琴さん、勝手に人の心読んじゃダメですよ!」
「ごめんね。でも涙子が私のこと大好きなの分かっちゃった☆」
「そんなの、心を読まなくたって、いくらでも分からせてあげますよっ!」
折角の性的優位を、よりにもよって能力で覆されるのは涙子だって癪なのだ。涙子は左手でゲコ太ブラを上にずらし、右手の指でピョン子パンツをずらした。下腹部のサンクチュアリはスカートに隠されて見えなかったが、指先はくにゅりと粘膜の沼に沈み込んでいた。涙子は指を引き抜くと、薄い白濁液が付着した指をこれ見よがしに口に含む。
「だめっ! そんなの汚いよ!」
「汚いって何がです? 美琴さんは細菌どころかウィルスのDNAや有機化合物だってバラバラに分解できるんですから、汚い訳ないじゃないですか!」
「そ……そうかもしれないけど……でもそうじゃなくて……」
「なんです、何が汚いんです!? あたしは美琴さんのうんちだって食べられますよ!」
「引くから! いくら私の…………排泄物が清潔だからって、それはさすがに引くからやめて!!」
「美琴さんが汚くないものを汚いって、子供みたいに非合理的なことを言うからですよ! 私が口臭を防ぐためにどんだけ努力してきたか、美琴さん分からないでしょ!!」
「あう……」
早速生じる価値観の相違。
「ごめんね涙子、言い直すわ。その……恥ずかしいからダメなのよ」
「知ってます。だからもっと舐めます。だって私は美琴さんの恥ずかしがる顔が見たいですからね!」
「涙子の意地悪っ!」
「そんなこと言って、本当は飲んで欲しいんですよね。だってあたしが指舐めた時、美琴さん凄い嬉しそうな顔してましたもん」
「……はぅっ!」
美琴はうっすらと涙を浮かべて顔を背ける。ちょっと癇に障ったからといってこんな仕打ち。恥ずかしすぎて生きていけなくなるところだ。その間も涙子は左乳首を指先でこねくり回し、右を柔らかい舌で包み込んでいる。
「ずるいですよ美琴さん。あたしも
「私だって好きで
「もう分っちゃったんですよ。どんな能力だって根っこは同じなんだってこと。要するに、あたしだって美琴さんをイカせることくらいできるんです! 受けて見てください、これがあたしの全力全開です!」
涙子は両指を口に含んでたっぷりと唾液を纏わせると、美琴の両乳首とクリトリスを同時に摘み上げた。
「ひぃぅッ――――――――――ぅうあっッ!?」
美琴の呼吸が一瞬止まり、体がビクンと弓なりに反った。涙子は美琴の肉体の動きに追随し、三か所へ同時多発的な攻めを継続する。
「んっ、ぁんっ! んぁッ! あぁああッ! そんなに強く摘まれだら……んっ――やぁん、んっ――ふぁあああ! ああ! ン、ンンン―――!!」
シーツをしわくちゃになるまで握りしめ、短い髪を振り乱してよがり狂う美琴。
「イきそうなんですか? 美琴さん、あたしに乳首とクリトリスを攻められてイっちゃうんですか!?」
「うん、はぁ……あぅああああ! イクのぉおお! 涙子に乳首舐められてぇえええ、エッチなとこ触られてイっちゃうのぉおおお!」
「じゃーやめまーす!」
高まった美琴の感情をぶち壊しにする佐天涙子。3つの性的な器官は10年付き合った男に捨てられたアラサー女みたいにベタベタに肌を濡らして泣き喚く。あんまりな仕打ちだ。
涙子は愛撫を催促するために指を絡めて来た美琴を適当にあしらいながら、ほんのわずかに盛り上がった乳白色の丘の中心を眺めていた。それはかつて主がアブラハム、イサク、イスラエルに与えることを約束された乳と蜜が流れる地の都、神の花嫁たるエルサレムのように、黄金色に眩く光輝いていた。万軍の主は涙子の肉を用いて花嫁と初夜の契りを結ぼうとしておられるのだ。御坂美琴の肉体は、神なる子によりアダム以来の罪が贖われてなお、地上で苦しみ続ける人の象徴のように見えた。
その日、今日、主は涙子の肉を通してこの地上に永遠の調和を齎すべく降臨されるのだ
「やめちゃやなの。涙子、やめないで……なんでもするから……」
罪に生きる美琴は円らな子羊の目で涙子の慈悲を懇願していた。主は生きているのだ。慈悲深き天の父は御坂美琴を
今日、固く閉じていた御坂美琴の目は大きく開かれ、鼓膜は大気の震えに忠実に呼応し、心は原子炉で生まれた新しい元素よりも鋭敏に答えていた。すなわち、主と子の撒いた種とは、精子のことではなかったのだ。
涙子は美琴の右脚を持ち上げると、自分の太ももを彼女の股の間に深く置いた。パンツは脱がなかったし脱ぐ必要もないのだ。薄布の1枚がつまづきの石になるようでは、どうして天国の奥義を知っていると言えるだろうか。
涙子の固く燃え上がった聖なる御岩は、吸い込まれるように花嫁を抱擁する。美琴の甘く甲高い喘ぎ声の後に、再び創世の雷が天地を揺るがした。
主は再臨なされる。主は再臨なされる。この世の全ての罪を贖い裁くため、人の子が約束した終わりの日を実現するために。世界の全てが御坂美琴の敵となり、70億の生きる罪が裁きに掛けられる日、主は再臨なされる。主は再臨なされる。
そのようにして、主は再臨なされた。
父と子と聖霊の御名によりて、アーメン。