とある佐天の百合洗礼《レズテスマ》 作:エステル
エピローグ 百合洗礼《レズテスマ》
佐天涙子に敗れた上条当麻は、やっとの思いで自室に辿り着いた。外傷こそ追っていなかったが、完膚なきまでの敗北を前に、その心はぼろぼろに傷付いていた。しかも帰った部屋には、インデックスの姿はもうないのだ。インデックスは佐天の許へと去ってしまった。もう帰ってくることはない……上条は心の奥底からはっきりと確信していた。
隣の部屋の土御門元春が、上条家のドアにもたれかかっていた。帰還した上条の姿を認めると、何もかもを諦観したような遠い目で、全てを察したがごとく軽く頷いた。
「悪い、止められなかった」
上条は肺の最奥の空気と共に呟いた。
「止められなかった……か。気にすんな、カミやん。あのJCに勝負を挑んだ時点で、俺達は負けてたんだよ。カミやんは最善を尽くした。オレはそう思ってるぜい」
「やけに諦めが良いんだな。世界が終わっちまうっつーのによ」
上条は手すりの上で腕を組んで、盛大にため息を吐く。文字通り世界は終わるだろう。今日か、明日は分からない。それでも確実に終わるのだ。きっと次の太陽が昇るころには、街中に百合カップルとゲイが溢れ帰っているだろう。不幸だ……と上条は呟いた。いくらなんでも、今回ばかりは不幸を嘆く資格があるはずだ。
「
「急に何の話を始めるんだよ」
「まぁ懺悔とでも思って聞いてくれ。どれだけ圧倒的性能を誇るコンピュータだろうが、量子力学を基盤とする学園都市が、どうして未来を正確に予測できるだなんて思えたんだろうな? まるで、未来が確定していると言わんばかりじゃないかにゃー」
「それだけ馬鹿みたいな性能のコンピュータってことじゃねえのか。オレにはよく分かんねえけどさ」
「そう思うか? 本気でやるなら、能力者や魔術師の脳内までシミュレートしなきゃならないってことになるぜい。蝶の羽ばたきさえ計算しなきゃ、量子力学を元にした未来予測はできっこないからにゃー。なのにどれだけ能力行使されたって、樹形図の設計者の予測演算は狂わなかった。だったら
「要するに何が言いたいんだよ、土御門。というか、樹形図の設計者も一度だけ外したことあったろ。ほら、
「なぜ狂ったのか、カミやんは多分知ってるはずぜよ」
「……
「こっからは俺の妄想だぜい。多分アレイスターも分かってたのさ。不確定性原理なんてのは見せかけの嘘っぱちだってことを。学園都市が出来る前、最初の最初っからな。あいつがどれほど策を弄しても、結局太陽の中に投げ込まれる運命だったっつーわけだにゃー。要は、全ては
「そうかよ。なら
「やれやれ、まぁだ分かんないかにゃー。カミやんの右手だって、"
「お前は一体誰の味方なんだよ……」
「強いて言うなれば――"愛"の味方ってとこかにゃー。カミやん、これ以上無駄な争いを続けるのはやめちまおうぜい」
「土御門……意味分かって言ってんのか? 佐天涙子の
「ホモに、だろ?」
土御門の口角が不気味な速度で上がってゆく。
「おいおいカミやん、なーに勝手に人を値踏みしやがるんだ? 言ったことあったか? 俺が、カミやんを抱きたくないって」
「………………」
上条の全細胞が動きを停止していた。上条の全神経が音波の伝達を拒絶していた。それでも上条は理解する、してしまう。
「………………あ、あなたはナニをおっしゃってやがるのでせうか?」
「俺はずっと、お前を愛してたって言ってるんだにゃー」
「えーっと……んじゃ、そういうことで」
「おい、どこへいくぅー? 話はまだ終わってないぜよー、カミやん」
「こちとらお前とする話なんてねーし、お前に愛されるつもりもねーんだよ!」
「カミやんになくとも俺にはある。今まで秘めてきた思いを全部ぶちまけちまったんだ。今夜は……最後まで、付き合ってもらうぜい」
「じょ……冗談きついですよ、土御門さん。
「だろうな。なればこそ、オレは、今、伝えたんだぜい? 佐天涙子や百合洗礼とは関わりない、俺の本当の気持ちをな」
「ひっ……ち、近づくな土御門……!」
「なんやカミやん、ここにおったんかいな」
「青髪ピアス!? 助けてくれ、土御門がぶっ壊れちまった。こいつに犯されそうなんだッ!」
「ほぉ……つっちー、カミやんを独り占めにするつもりやったん?」
「なわけないにゃー。俺とお前は親友だぜい? 三人で楽しむに決まってるぜよ」
どちらにしたって不幸度マックスな二人の意見に、上条は思わず頭を抱えてみる。
「もしもし、野郎ども。キミタチは傷心のわたくしこと上条さんをからかってそんなに楽しいのかい? むしろ友情パワーで慰めてくれるくらいの事をしてくださいな!」
「分かっとるがなカミやん。慰めて欲しいなら今からボクら三人での兜合わせが待ってますよ? あー、早くボクあカミやん掘っちまったいたいなあ。もうガマン汁垂れてきてんねやけど、カミやんもボク見習ってギンギンにおっ立てなあかんなあ」
「というか、カミやんのチンポしゃぶったってガン掘りに繋がらないぜよ。土御門さんのテクに引き寄せられてカミやんがバリタチしてくれるんなら喜んでケツマンコ広げるけどにゃー」
意味不明なゲイ用語を連発する二人に上条は泣きながら引きつった笑みを浮かべる。
「なんというか、本当に友達を掘ろうとしてる人達なのでせうか。ってかケツマンコって何だ! お前達の好みのタイプはツンツン頭のクラスメイトなのか!? 空挺師団所属のガチホモにでも掘られて来い!」
一方、青髪ピアスは青髪ピアスで、
「はっ、何を言うてんカミやんは。ボクぁ空挺隊員のみならず、義兄義弟義父義息双子男やもめ先輩後輩同級生体育教師マブダチお坊ちゃま金髪黒髪茶髪金髪ロンゲウルフヘアショートヘアソフトモヒカンアシメコーンヘアテクノカット角刈り坊主スポーツ刈りツンツン頭エアリー天パくせっ毛アホ毛学ランブレザー体操服柔道着剣道着ライフセーバーさんお医者さんとび職さんK官さん坊さん神父さんJ官さんやスポーツ選手さん腐マンコショタノンケジョッグパイロットコックゴスギーグ漢服ガチムチジャニ系食われノンケ狼系バリリバ売り専髭坊主女装子趣味女男の娘待ち子ヤリ友ガテン系スジ筋サーファー系熊系イケメンイカホモありあり人外幽霊オス動物まであらゆる漢を迎え入れる包容力を持ってるんよ?」
「一個明らかに女が混じってんだろ!!」
上条は震えあがりながら何とか答えると、土御門がニヤニヤと笑いながらパンツに手を突っ込んで、ペニスを絶妙な加減で握りしめた。最高に気持ち悪いはずなのに、男の快感を知り尽くした的確な刺激に思わず局部に血を通わせてしまう上条当麻。硬く肥大化する海綿。もう一刻も早く死にたいとか、むしろいっそ殺してくれとか、二度と説教しないから挿入だけは許してくださいな気持ちを込めて、いつもの口癖を、心の底の底の一番底から言い放つ。
「なんていうか、不幸っつーか……ついてねーよな」
上条は人類最後のヘテロデー、8月16日の終わりをこう締めくくった。たった一言で、本当に世界の全てに嘆くように。
「オレ――本当についてねーよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおーっ!!」
とある佐天の
完
お読みいただきありがとうございました。
主イエス・キリストがあなたと共にありますように。アーメン。
2015年10月13日