とある佐天の百合洗礼《レズテスマ》 作:エステル
◆ 8月15日 夜明け前 ◆
草木も眠る丑三つ時、古めかしい洋館から、女のむせび泣く声が漏れ聞こえてくる。状況だけ取り上げればちょっとしたホラーだが、深夜徘徊中の初春飾利にとっては実に好都合。佐天涙子が目覚めているからだ。
初春は何食わぬ顔で常盤台外部寮の門を潜ると、電子錠の前に駆け寄った。この程度のセキュリティ、学園都市最高のハッカーたる初春にとっては赤子の手を捻るより容易い。が、あいにく寮の自動ドアはスタンドアローン。警備会社に繋がる監視カメラや警報器の制御には成功したものの、ここだけはリスクを犯さねばならない。端末はごく簡単な鍵で施錠されている。初春は咲き狂う花畑の中から、マグライト・ソリテールをとり出して、鍵穴にLEDの白い光を差し込む。
「情報通りレバータンブラー錠……お嬢様学校は鍵まで御洒落さんですね。これなら私でも時間はかかりません」
今度は先端がL字型に折れ曲がっている金属の棒を取り出した。そーっと鍵穴に突き刺すと、もう一つの穴を探すためにくねくねと動かし……小気味よい音と共にあっさり開いた。ここからは初春のターンだ。端末にPDAを接続すると、あっという間にネットワークを乗っ取って、オートロックのドアを開錠。10秒も掛かっていない。
靴をリュックにしまってから、薄暗い廊下と階段ををすり足で進む。目的地は当然、御坂美琴の部屋。ここはネットの力が及ばない物理錠のみ。2度目のリスクを覚悟せねばならなかったが、佐天が起きているなら話は別だ。
部屋の中からは相変わらず佐天の泣き声。初春はコンコンと小さな音でノックする。――返事がない。もう一度ノック……ダメだ。試しにドアノブを回してみると……あっさり開いた。鍵は掛かっていない。
突然佐天の泣き声が止む。鍵を閉めた音が聞こえてしまったのだろう。平静を取り繕うような意図的に平坦な息遣い。これです、と初春は憤る。これが御坂美琴が佐天に与えている物なのだと。
第2関門を突破し、逃げも隠れもする必要がなくなった初春。佐天のベッドにずんずんと歩み寄って、頭まで被せられた布団をはぎ取った。弱々しい月の光が、真っ赤に晴れているの目を鮮明に照らし出した。
「えっ…………ういっ、んぐんんっ!?」
喚き散らそうとする佐天の上に跨って、唇を両手で押さえつける。ここまで来たのに寮監に見つかっては全てが台無しだ。
「心配要りません……私ですよ?」
初春は耳元で妖艶に囁く。この状況で何を心配べきなのかすら分からないのだが、息が苦しいのでとりあえずうんうんと頷いた。
「う、初春……どうやって入ったの? 寮の玄関閉まってるはずだけど!?」
「佐天さんったら、私を誰だと思ってるんですか?」
見下ろしたまま撫でつけるように答える初春。答えになってないが、佐天は面倒だったのでとりあえず納得する。初春は佐天から立ち退くと、ベッドの端にちょこんと腰かけた。佐天も身を起して、深夜の侵入者と目線を合わせる。
「でさ初春……こんな時間にどうしたの? 不法侵入までして……。しかもその制服、白井さんのだよね?」
初春は何も言わず、ベッドに両手をついて顔を近づけると――佐天の涙に舌を這わせた。腫れて敏感になっている皮膚を癒すかのように、ツンツンと優しい刺激が送られる。
「だ、ダメだって、もうすぐ御坂さん帰ってくるし」
「御坂さんは帰って来ませんよ」
普段のお子様っぷりからは想像もできない艶めかしい声。女子には出せない女の声だ。初春のこんな声、今まで一度だって聞いたことがない。
「そ、そんなことなんで初春に分かるの!?」
「分かりますよ。私は佐天さんのことなら何でも知ってるんです」
初春はくすくす笑いながら顔を近づけ……舐めた。佐天は喉の奥から声にならない悲鳴を上げる。ありえない部分に迸る甘い電流。体の最も繊細な器官に未体験の刺激が加えられたのだ。深緑の瞳が映すのは、月の光を反射して淫らに輝く初春飾利の唇。初春は眼球を舐めている。左手で首を支え右手で瞼を開き、飴玉でも舐る様に、舌先でチロチロと目玉を転がす。土砂降りの雨に突っ込んだみたいに視界が霞む。
佐天はガチガチに固まって背筋をピンと伸ばす。下手に動いて傷でもついたら失明するかもしれない。そんな恐怖からか、止めて欲しいのに拒絶の言葉が封じられる。あるいは、この不思議な快感が一生味わえないかも知れないという好奇心なのか。
「佐天さん、眼は脳の一部が発達したものだって話聞いたことあります? 佐天さんの眼球をペロペロしちゃってる私は、佐天さんの心に直接触れちゃってるんですよ」
初春は最後に瞼にキスをすると、もう片方の目にパクリと喰いついた。佐天が自分から進んで瞼を開いたからだ。初春はくるくると円を描きながら眼球を舐る。佐天の吐息に混じるくぐもった嬌声。気が付けば初春の腰に手をまわして自分から引き寄せ初春の愛撫を求めている。ぴちゃぴちゃという咀嚼音が目から聞こえてくるという異常さ。佐天の脳はすっかり混乱し、初春になされるがままだ。初春が舌を離したその時には、佐天は瞳から唾液と涙の混じり合った粘液を流し、まるでおねだりするように上目遣いで舌に行方を注視していた。
「駄目ですよ、佐天さん。結膜炎になっちゃったら大変です。目を洗いに行きましょう」
まだ何も言っていないのに、初春は耳元でそう囁く。みるみる赤く染まる頬。目を舐められて悦んでいるなんて変態そのものだ。初春に手を引かれて、風呂場に連れ込まれる佐天。これから何が始まるのか、初春が何をしようとしているのか、薄々勘付いているのに、抵抗しようとする素振りはない。それどころか、身も心も委ねたみたいに素直に従っている。
佐天が洗面所の前に立って目を洗おうとすると、初春は背後から抱きしめる形でくっ付いた。パジャマの上からベストセーターのふわりとした質感、その奥で鼓動する初春の心音が直接響いてくる。全力疾走でもしてきたのか、今にも破裂しそうな鼓動。余裕綽々な態度のくせに内心は結構ビビっちゃってるんだ、と佐天はほくそ笑む。もちろん初春は緊張などしていない。興奮と呼ぶべきものだ。蛇口を捻ろうと佐天が手を伸ばすと、初春が肩の方から右手を撫でおろして絡めるように手を繋いだ。
「私が洗ってあげます」
耳元で囁くというより、口の中から聞こえてくる声。湿った吐息が鼓膜を愛撫する。鏡ごしに様子を伺うと、少し背伸びをして右耳を口に含んでいた。鏡面で目が合う。初春がうっとりと微笑み、胸を押し付けるように佐天を屈ませる。脇の下から差し込まれる初春の両手。
「ほら、ぱちぱちってしてください」
初春の両手に水をためて、体ごとぐいぐい押してくる。佐天の柔らかい臀部に自分の股をこすりつけ、無い胸を背中に押し付ける。もちろん耳は甘噛みされっぱなし。その体制のまま体を小刻みに動かしてくる。風の噂で聞いたことのある立ちバックではないか。
「初春……これじゃちゃんと洗えないって……」
「しょうがないですね。お風呂入りましょうか」
佐天を後ろから抱きしめたまま、ぴたりと張り付いて風呂場に上がり込む。そのまま佐天のパジャマに手をかけ、するすると脱がし始める。現れたのはうさぎのキャラクターが描かれた子供っぽいナイトブラ。下着が全部焼けてしまった佐天の為に、美琴が買ってやったものだろう。パンツも同じ類のキャラ物だ。初春はフロントホックを噛んで外し、胸の輪郭に唇を這わせながら余計な布をはぎ取っていく。一つ一つの動作が執拗な愛撫となり、佐天には性的な信号が着実に蓄積していく。
気が付けば佐天は全裸に髪留め姿。一緒に銭湯に入ったこともある友達。恥ずかしがる理由などないはずなのに、佐天は自分の胸と秘部を覆い隠し、俯いて頬を染めてしまう。初春はさっさと制服を脱ぎ捨て、蛇口を捻ろうとバスタブに身を乗り出す。股間をさらけ出して。
「あ、あのさ……寮の構造は分かんないけど、こんな時間に湯沸し器動かしたらうるさいんじゃないかな」
佐天はどうしてそんな言葉が思い浮かんだのか自分でも分からなかった。お湯を出すのに湯沸かし器のことを考える機会などそうそうない。深夜だとしてもだ。
「私に任せてください。水風呂をお湯にしちゃいますから」
初春は水の蛇口を捻り……こちらへ振り向いた。佐天の目に映る起伏の乏しい幼い肉体。小さな胸に一本も毛が生えていない陰部――佐天もまだ生えていないが――。初春の幼さは同い年にも関わらず、そこはかとなく犯罪的で、この肉体を友人以外の目線で見てしまうと……冷静でいられる自信がない。
佐天は自身の求めているものにはっと気が付く。ここまであからさまに性的接触を繰り返す癖に、初春がしようとしないたった1つの行為。本来は最初にしなければならないはずの営み。
「だ、駄目だよ初春。あたしとキスしたらまた」
「信じてください、佐天さん。私の
「あんたクリスチャンじゃないでしょうに……」
2人は互いの腰に手を添える。吐息が混じるほどの至近距離で見つめ合う。
佐天涙子は同性愛者ではない。少なくとも自分ではそう信じていた。けれども、振り返ってみれば求めていたものは何だったろう。御坂美琴とのキスであり、初春飾利の舌ではないか。一度だって男のペニスを求めたことがあったろうか。なぜ自分は初春のスカートをめくらざるを得なかったのか。なぜ初春にキスなんてしたのか。なぜ美琴に気持ち悪いと言われて落ち込んでいたのか。たった一つの理由しかない。結論、佐天涙子は――レズビアンなのだ。
初春は少しだけ首を上に傾け……瞼を閉じた。身も心も預けると言わんばかりに。スカートめくりの延長としか考えることを、佐天はやめる。ここから先はもう引き返せないし、引き返すつもりもない、一方通行だ。
「行くよ、初春」
佐天は初春の感触を腰に感じながら、わずかな震えと共に唇を触れる。
熱い……でもその熱は初春の体表面からでなく、佐天の内側から湧いてきたもの。じんわりと疼く熱が発生するのが分かる。これがキスなんだ、と佐天は今さら理解する。
足元に冷たい感触。湯船から水が溢れだして浴室の床に広がりつつある。時間の経過が嘘みたいに早い。佐天はアインシュタインの言葉を思い出していた。『ストーブの上に手を置けば一時間ぐらいに感じられるでしょう。ところが可愛い女の子と一緒に一時間座っていても、一分間ぐらいにしか感じられない』。この史上最も有名な科学者は、能力開発の基礎となる量子力学を真っ向から否定したことでも有名だ。曰く『神はサイコロを振らない』。彼は信じていた。量子力学を越え、世界の理を支配する『
そうして初春は唇を離すと、名残惜し気に唇に指を当て、指先を見せつけるようにねぶった。
「ほら、佐天さん。何ともないでしょ? それにほら……」
初春は水を止めると、浴槽に腕を突っ込んで一度だけぐるりとかき回す。瞬く間に立ち上る湯気。佐天はさっそく掛け湯をしてみる。何とも言えない丁度いい良い湯加減。初めての成功。
「おおっ、やるじゃん初春」
「私の能力は佐天さんと一緒に育んだものですよ? これは2人の力なんです!」
「初春は謙虚だねぇ」
初めて自分の能力がまともに役に立ったことに、佐天は内心かなり喜んでいた。とある都市伝説サイトでは
「お風呂入りましょっか、佐天さん」
初春は先に入ると、湯船にもたれて思い切り足を延ばす。小さい初春とはいえ、1人で使うことが想定されている寮のバスタブには余裕がない。佐天がどこから入ろうか戸惑っていると、初春がニコニコしながら自分の太ももを指さす。その上に座れと言いたいのだろうか。
「ふ、ふつう逆じゃない初春? ちっちゃい方が前に行こうよ」
「駄目です。これまで私のスカートをめくってきたお返しをするんですから」
佐天は諦めて初春の足の間に入ると、その上にちょこんと座った。背中を包み込むやわらかい女の子の感触。肩甲骨辺りには固くなった突起が2つ。
初春はすかさず佐天の発育した胸に手を当て、触れるか触れないかという繊細なさじ加減で撫で始める。男のように自分の欲望を満たす為ではない。実感として女の体を知り尽くした者にしかできない、感じさせるための愛撫。実質的には処女の初春でさえ、同性が相手なら娼婦にも引け劣らない。
「あっ……あああ!」
反響した自分の喘ぎ声から、ここが御坂美琴の部屋であることと、みんなが寝静まった深夜であることを思い出した。瞼と唇ををぎゅっと閉じて快感に耐えようとするが、初春が加え続ける巧みな刺激に抗うことが出来ず、自分の太ももをすり合わせながら身悶えする。
「佐天さん、こういう時の声大きいですね」
「言わないで!」
恥ずかしさに悶える佐天は、後ろ手を初春のうなじに添えて、限界まで横を向きその口を塞ぐ。佐天は自分から舌を突き出し、無心に初春を求める。混じり合った唾液が溢れ、頬に垂れて淫らに粘つく。
初春は舌を絡ませながら、左手を胸に残し右手を徐々に下腹部に降ろす。へそに指を入れたり、内腿の付け根を撫でたり、ひたすらに周辺ばかりに愛を注ぐ。佐天には分かる。初春はきっと待っているのだ。佐天が自分から言い出すのを。
「はぁ、んあっ、初春ぅ……んっ!」
「どうかしました、佐天さん?」
「あたし……イきたいんですッ!」
「ふふ……よく言えました。佐天さんの処女、私が頂いちゃいますね」
佐天の、やわらかくあまりにも敏感なその部分に初春の指が触れようとしたとき――
◆
――浴室の外から無粋な着信音が侵入する。初春飾利の携帯電話だ。
「こんな時間に……迷惑な人ですね」
初春が放置していると、次は佐天の携帯まで鳴り始める。それでも無視するとまた初春の携帯が鳴り響く。どうやら留守番電話に伝言を残すつもりなど一切ないらしい。すっかり気分を害した佐天は湯船から出ると、浴室から手だけだして脱ぎ散らかされた初春のスカートから携帯を引っ張り出した。発信者は白井黒子。佐天は一言文句を言ってやろうと勝手に応答をする。
「初春、あなたどこに居ますの!? 緊急事態ですわ、すぐに支部に出頭なさい!」
黒子の絶叫。電話越しでも激怒する様子が見える迫力。初春は佐天のほっぺをつんつんして先に出てしまった意地悪に抗議していたが、怒声が耳に達すると嘘みたいに真面目な顔に豹変する。佐天から奪い取り気味にスピーカーを耳に当てた。
「何事ですか、白井さん」
「テロ攻撃ですの! 品雨大学付属DNAマップ解析ラボとSプロセッサ社脳神経応用分析所が、何者かによる破壊工作で壊滅。アンチスキルが現場に急行中ですの。こんな早朝から家を抜け出してどこをうろついてるのかあえて問いません。だからあなたも早く捜査に加わりなさい!」
初春は張りのある声で「了解」とだけ短い返事を返す。体を拭きもしないで常盤台の制服に着替えると、スカートのポッケから腕章を引っ張り出しピン止めした。ベージュのニットベストがそうさせるのか、あるいは特別な感情を抱き始めているからか、佐天にはそんな初春が無性に頼もしく見える。
「すみません。聞いた通り緊急なので、行かなきゃなりません。本当に申し訳ありません佐天さん」
「ううん、いいの。あたしのことは気にしないで、行って来て」
佐天はバスタオルだけ羽織ってトテトテと初春を追う。初春は落ちている自分のリュックを走りながら引っ掴むと、右手を突いて飛び越えるように窓枠に腰かける。回転しながら両足を空に放りだして靴を履いた。そのまま飛び降りるのかとひやひやする佐天。初春が地面に向けて手を振るった瞬間、軌道の空気がピキリと凍り始め、その部分を起点として地面まで続く氷の滑り台が現れる。「これからはかき氷代が節約できるかも」、と佐天は思った。
「佐天さん、続きは今夜、ここで待っててくださいよ!」
初春は滑り台に腰かけて恐る恐る滑り始める。やっぱり初春は初春だ。せっかく格好を付けて能力を披露したのに、結局は絵にならない。
「気を付けてね、初春ぅー」
佐天は窓から手を振りながら叫んだ。初春は誇らしげな、それでいて不敵な笑みをもって返答とする。
「ご安心ください佐天さん。テロリストなんかに、絶対に
◆ 8月15日 昼 ◆
夏も真っ盛り。異常な気温が学園都市を襲っていた。その日の午後、佐天涙子は振り切れそうなテンションを抱えたまま暇を持て余していた。あまりにも暇なので初春の所に遊びに行ってみたが、冗談が通じるような雰囲気ではなく会う前に帰ってきた。御坂美琴は昨日からずっと帰ってこない。会ってもどうすればいいか分からなかったし、初春とあんなことをしたと知られたらもっと嫌われそうで、出来れば今日の内は会いたくなかった。
かといって一人でお嬢様だらけの寮に居るのも居心地が悪く、アケミ達はプールにでも行っているのか連絡が付かない。使えないマネーカードを集めるのも億劫だし、佐天は特に目的もなく、のんきに街を徘徊しているのだ。テロリストが跋扈しているというのに。
「あーあ、天気予報じゃ昼から雨降るって言ってたのに、
お金もないのにセブンスミストでも行こうかと大通りを闊歩する佐天。ドクンと少女漫画みたいに電流が走る。ある意味で事実として電流が流れたのだ。AIM拡散力場が感知できるようになったのかもしれない。
対面から、会いたくない人物がこっちへ向かって来ていた。歩く速度が同じくらい。このままだと、セブンスミストの入り口で鉢合わせることになる。一瞬引き返そうかとも思ったが、ここで引き返しては後で何て言い訳していいのか分からなくなる。事情が込み入るだけだ。
というか、気が付いた瞬間から目が合ってしまい、そのまま離せないでいるのだ。吸い込まれそうな無垢な瞳。御坂さんは自分をあんな風に見てくれたことがあったっけ?、と疑問を抱くほどに。きりりと整った顔に、この距離からでも分かるすべやかな肌。すらりと伸びるよく筋肉が付いた四肢と引き締まった胴体は、健康的を越えてアスリートのよう。胸が控えめなのも佐天的にはチャームポイントの一つだ。やっぱり御坂さんは美人さんだな、と佐天は軽くショックを受ける。レズであることを自覚してしまった以上、どうしても意識せざるを得ない。同時に蘇ってくる美琴の悲しい言葉。あれこれ考えているうちに、もうセブンスミストの正面入り口に達していた。
――そして、彼女と佐天涙子は、見つめ合ったまま静止する。
何か言わなきゃと脳を巡らせる佐天。「こんにちわ?」は不自然だ。なにせファミレスで別れてから1日ぶり。どこに行っていたのかを訊こうか、とも思ったが、まさか男の所へ行っていたなんて言うまいし、聞きたくもない。だから口を開いたのは、彼女の方だった。
「あなたが佐天さんですね、とミサカは佐天さんが佐天さんであることの確認を取ります」
第1声から恥ずかしい台詞。凛としたとえば聞こえはいいが、文章をそのまま読み上げるかのような不自然なトーン。抑揚もなく感情もなく、純粋に言葉が空気に記述される。コンピュータ制御のホログラムだろうか、などと佐天は錯覚に陥った。けれども、夏の暑さにほんのり上気した頬や確固たる息遣いは、彼女のものだと信ずるには十二分。
「御坂さん……言葉遣いが妙ですけど、何かありました?」
佐天は唐突に理解する。彼女だってあんなことを言った手前、自分と会うのは気まずいのだろう。どう対応していいか分からずに、こうして不思議キャラを装って距離感を図っているのだ。その割には、彼女は一切目を逸らさずに、佐天の瞳を真っ直ぐ凝視している。脳まで覗かれそうなくらいに。佐天は居たたまれずに、目を伏せ……でも我慢できずに上目遣いでチラチラと様子を伺ってしまう。初春には申し訳ないけれど、美琴への憧れが消える訳ではない、と佐天は自分に言い訳をする。
「ミサカ・ネットワークに保存されたパーソナル・データとの完全一致を確認しました。これよりミサカは、佐天さんとの10分間の路上接吻行為を求めます」
佐天は直立不動のまま凍り付く。佐天の耳には日本語のように聞こえたが、もしかすると北ンデベレ語かもしれない。もちろん佐天には北ンデベレ語など話せないが、それくらい意味が理解できなかったという話だ。それでもあえて日本語として解釈すると……彼女はキスしたいと言ったのだろう。
「せ……接吻ん!? ちょっ……ちょっと待ってくださいよ!」
彼女は一歩前に踏み出す。接近する唇。意味不明、理解不能。なぜ彼女がキスを求めるのだ!? 気持ち悪いと切れたはずなのに。こんな事はあり得ない、白昼夢だ。でも白昼夢だとすれば、迷惑そうに自分達を避けて店内に入る人々や、少し離れたとこでドギマギしながら覗き見ている前髪の長い女の子も、夢の登場人物なのだろうか。佐天には実感を伴ったものに見えた。
「申し訳ありませんが、スケジュールの都合上待つことは不可能です。とミサカは謝罪と共に断固として催促します。ミサカは速やかに佐天さんの口内にベロを挿入し、お互いのベロを絡め合って体液の交換を促進します。よろしいですね?」
彼女の手が佐天の後頭部に回される。どうやら本気だ。フレンチ・キスでは済みそうにない。逆だ、フレンチ・キスしかありえない。フレンチ・キスは深い方を意味するはずだ。
「で、ですからいきなり言われても困りますって! 人目もありますし……」
自分でも非常識だと分かっているのに一歩も動けない。動いたとたん、この幻想が終わってしまいそうだから? そうじゃない、求めているのだ。初春の時と同じだ。ずっと欲しかったものが目の前にある。動けない訳じゃない、動きたくないのだ。無表情の彼女が、ほんの少し口角を上げたように見えた。間違っていない、ただし笑ったわけでなく、発音するたびの予備動作。
「その返事は一般常識から判断して許諾であると解釈します。ミサカは佐天さんへの高濃度身体的接触を開始します。ちゅー」
「なっ……んあっ、待ってくだ、うむぅう!?」
猶予も躊躇もない。触れた途端、唇を割って挿入される温かい舌が、佐天の鋭敏な舌先とつつきあう。侵入を拒もうとすればするほど、複雑に絡み合い刺激が高まっていく。
現実感が喪失。あの御坂美琴と真昼間にセブンスミストの前でディープキスをしている? スカートをめくっても怒らない初春と違って、人前で短パンを脱がされただけで電撃を食らわせるような恥ずかしがり屋。夜景の綺麗な海辺のレストランでプロポーズされ、OKすると同時に海から花火が上がって欲しいと空想している度を超えたロマンチスト。強がっているように見えても、実は恋に恋する乙女チックな純情ツンデレ少女、それが御坂美琴のはず。こんな大胆なこと、普段の美琴にできるはずがない。
「はむはむ。ミサカは佐天さんの後頭部をがっちりと抱きしめ、自らの唾液を佐天さんの舌の上に垂らします」
「み……みらかしゃん……んちゅぅ、んんっ!」
宣言通り、彼女の舌先から垂れて来る透明な粘液。佐天は待ち望んでいたとばかりに口を開いて舌を突き出し、彼女の蜜を受け止める。ごくりと佐天の喉が鳴り、ほのかにダージリンの甘い香りが鼻孔を駆け巡った。風味も喉ごしも、自分用に調整されたシロップのよう。紅茶にティースプーン3倍分たっぷり入れて、パスティッチェリア・マニカーニのチーズ・ケーキと一緒に飲んでもいい。
「さらにミサカは、佐天さんのピンク色の歯茎に新たな刺激を加えます。ミサカの舌は前から奥へと小刻みに動きながら侵入していきます」
「やだ……んっ、こんなのっ……! よすぎますってぇ……はむぅ!?」
縦横無尽に動き回る舌。ともすれば佐天自身よりも、佐天の口内を知り尽くしているかもしれない。自身の肉体に隠されていた未知の快感が次々と引き出され、頭の中までふわふわしたやわらかい触手で愛撫される。下腹部もジンジンと脈打うつように痺れ始め、立っているのもやっと。
佐天の右手は独立した生き物のように彼女の左手を求め、彼女も答えて指を絡め繋ぎ合う。片方の手もいつの間にか背中に回して、互いに抱きしめていた。佐天と彼女の身長はほとんど変わらない。必然的に彼女の控えめな盛り上がりが、佐天の発育中の丘とこすれ合う。制服とブラを介してなお、性的な突起物が固くなっているのが分かる。
「ミサカは佐天さんのベロを咥え、吸引しながら頭部を前後に動かします」
「らめれすって、外なのに……みんな見てるのに、これ以上はっ! んああっ!」
佐天は彼女にしがみ付いたまま、ビクビクと大きく痙攣した。彼女の口からぬるりと舌が抜け、絡めた指を切なげに放して、佐天はその場に崩れ落ちる。
「はぁ……んっ、もう……立てませんよぉ……」
地面にぺたんとお尻を付け、うわごとのように呟く。歩道のタイル舗装に、佐天を中心に黒いシミがじんわりとしみ出した。彼女はそんな姿を見下ろして、満足げにドヤ顔で頷く。
「
「い、言わないでください」
首からおでこまでがみるみるうちに赤く染まる。佐天はうずくまるように俯いて常盤台のミニ・スカートを押えたが、地面のシミは拡大する一方。通行人が無関心を装って横目でチラチラ様子を伺うが、佐天は彼らのことまで頭が及ばない。今にも溢れそうにな洪水を押しとどめる精一杯。彼女は何かを考えているのかじっと沈黙して……2人の唾液でベトベトの口を開いた。
「まだ所定の時間が経過していませんので、ミサカは高濃度接触の継続を希望します。ただし、これ以上の接触は公然わいせつの罪に問われる可能性がありますので、セブンスミストの女子トイレへ移動しましょう、とミサカは佐天さんに提案します」
彼女は無表情のまま告げる。佐天がピクリと小刻みに震える。その意味は――期待だ。これから彼女に何をされるのか、何を求めてくれるのか、知りたくて仕方がない。しかし……今にも限界を突破しそうな羞恥心が本心を妨げる。
「公然わいせつ!? しかもトイレでって……ナニするつもりですか!」
「申し訳ありません、ただ今ミサカは現金もカードも所有しておりませんので、ラブホテルをとることは出来かねます。ただし、どうしてもと言うことでしたら、上に掛け合って前払いで予約してもらいましょう」
「ラブホてる!? そ、そんなの行きませんから! トイレで良いですトイレで! って、それもよくなーい!」
彼女は佐天の肩に左手を入れおしりに右手を添える。突如重力を振り切って宙を舞う肉体。次の瞬間、間近で自分を見つめる御坂美琴の顔。抱かれている。佐天は彼女に抱き上げられたのだ。
「ミサカは腰が抜けた佐天さんをお姫様抱っこで運びます」
「ふぇーっ!? ミ、ミサカさん……こんなの恥ずかしすぎますって!」
そのままセブンスミストの店内に運ばれていく佐天。「いらっしゃいませ」の言葉はない。店員たちは、彼女たちがこれから何をするか分かっているくせに、一様に目を背けて相手にしようとしない。客も彼女らを避けて通路の脇にさっと広がる。まるでモーセの
「多目的トイレを使いたいところですが、こういった目的で使用するのは非常識です、とミサカはスルーします」
「普通のトイレでも十分非常識だと思いますけど……」
「ミサカは歩けなくなった佐天さんをウォータークローゼットに運んでいるだけです、とミサカは見え透いた建前を使います」
「クッ、クローゼットぉ!?」
佐天は問答無用で女子トイレに連れ込まれる。ファッション・ビルだけあって木目調のお洒落な個室。幸い使用客は1人もいないし、掃除も行き届いている。佐天は一番奥の個室に運ばれる。便器に座らされてくれるのかと思えば、なぜか彼女はそのまま腰を下ろし、佐天を向かいあわせた。
「ミサカは佐天さんを自分の膝の上に跨らせて、カラダを密着します」
「えっ……む、無理です、無理無理! これ以上我慢できませんって!」
「はい? このまま出せばよろしいのでは? とミサカは佐天さんに排尿を促します」
「い、いや……何言ってるんですか御坂さん……御坂さんにかかっちゃうじゃないですか!」
「失念していました。ただちにパンツを降ろしますので、少しだけ腰を浮かせてくれませんか? とミサカは佐天さんにお願いします」
佐天は言われるがまま腰を浮かし、ついでに自分のパンツも降ろした。例のうさぎのパンツだ。彼女は晴白の縞パン……縞パン? 何かが引っかかった。柄ではない。見たわけじゃないが、美琴も縞パンくらい持ってるだろう。問題は……
「ミサカは佐天さんの意外なお子様センスに驚愕します」
思考は中断される。直前の記憶は雲散し、彼女の言葉に置換される。
「こ、これミサカさんが買って来てくれた奴じゃないですかぁ!」
濡れたうさぎが透明な糸を引いていた。その糸の先に……彼女の秘部が見える。佐天はごくりと息を呑む。毛が一本も生えていない割れ目から覗く、女の子の一番大切な部分。不自然なほどに、綺麗すぎる。中学生とはいえ、日本人の小陰唇は多少黒ずんでいるのが普通。しかし彼女の下の唇は、たった今生まれたばかりのように、白い肌が連続していた。触りたい……佐天は声にこそ出さなかったが本心を吐露してしまう。
「佐天さん、どうぞ」
「ど、どうぞって?」
「かけてください」
彼女は感情の薄い表情で、とんでもない言葉を発した。佐天の頭上にクエスチョンマークが咲く。発言の意図が不明瞭。問題を整理する。「かけてください」とは、どういうことだろう? 問、何を? 答、ナニを。
「うええっ!? み、みみみ……みしゃかさんにあたしのおしっこをかけちゃうですにょ!?」
なんという魅力的……じゃない! 失礼な行為だろう! 憧れの御坂美琴に自分のおしっこをかける、しかも彼女のあそこに向けて!? ありえない、と佐天はぶんぶんと首を振る。そんなの異常すぎる。あの
「先ほどからずっとそう言っているのですが、とミサカは佐天さんの理解力の乏しさに閉口します。やれやれ」
彼女は表情に乏しいまま、わざとらしくため息をついて佐天を挑発する。だが――良識という枷でギリギリ抑え込んでいた佐天のダムを決壊させるには、十分すぎる一撃!
「あの……キスしながらでも良いですか?」と佐天は震え声で訊いた。
「はい、そのために運んで来たのですから、とミサカは佐天さんの提案を全力で受け入れます」
もう理性を保っているのは不可能。佐天は彼女のうなじに両手を回すと、貪るように彼女の唇に噛みつく。無我夢中で舌を突き入れ、迎えに来た彼女の舌とぶつかり合う。羞恥心が欠片も残らず吹っ飛ぶ快感。同時に下半身が震え、温かい黄金の液体が迸る。
「はぁ、はぁ……んんっ! んわぁ……ふわぁああーッ!」
佐天の体全体がビクリと激しく脈打つ。急速に体温を奪われたことによる震え――だけじゃない。尿に続いて透明な液体が勢いよく放出され、彼女の白い秘部に降り注ぐ。頭がどうにかなりそうだ。彼女は愛液で湿った佐天の秘部に手を伸ばすと、人差し指で蜜を掬って陰核に塗り付ける。そして、宝石でも磨くかのように指先を細かく震わせた。指が触れた部分からどんどんバターになって溶けてしまうよう。こんなの気持ち良すぎる!
「みしゃかさん、好き! 好きですっ!」
佐天も右手の人差指を舌の結合点に浸すと、お返しとばかりに彼女のクリトリスを軽く抓った。
「んっ……はぅう!?」
ミサカの手が止まる。初めて顔を歪め、湧き上がる何かに耐えるみたいにぎゅっと目を瞑る。
「ミサカさん……かわいい……」
初めて見せた表情らしい表情。なぜだか続けていたポーカーフェイスが崩れたのが嬉しくて、佐天は指先をリズミカルにこね始める。ミサカの舌の動きが緩慢になる。両手を佐天の太ももの上に滑らせ、自分の中で芽生えた強烈な反応を分析しようと試みる。
「どうですか、ミサカさん? 気持ちいいですか?」
「ミサカは……んっ、気持ちっ、いい……と、返答しま、すっ!」
声を詰まらせながら、ミサカは荒い呼吸と共に正直に告白する。自分の指先でミサカがよがっていると言う事実が、無限の喜びをこみ上げる。佐天はさらに中指を秘部に這わせ、筋に沿って前後しながらミサカの穴を探り当てる。
「ミサカさん。指、入れちゃってもいいですか?」
佐天はミサカと額をこつんと合わせ、その言葉を口の中に注ぎ込む。
「はっ……いっ、とミサカは、んんっ……あんっ! 即答しますっ!」
「ミサカさんの処女、私が貰っちゃいますね」
再び口づけをするとともに、ぐちゃぐちゃに濡れたミサカの膣口に……中指を滑り込ませた。そうして佐天涙子は、ミサカの一番大切な物を、誰よりも先に奪い取ったのだった。
◆
何時間経っただろう。少なくとも10分でないことは確実だ。あの後どこまでやったのか、正確には思い出せない。2人はすっかり乾いてしまったパンツを履いて個室から出た。ミサカは股の間に違和感があるのか、内股気味に歩いている。洗面所で手を洗っい乱れた髪を整えた後、ミサカは改めて佐天に向き直った。
「全行程終了致しました。AIM拡散力場の測定値、
「は、はひぃ?」
御坂美琴は最初会った時のように、意味不明な言葉を羅列する。きっと恥ずかしさを誤魔化すために、不思議キャラを貫くスタンスなんだろう、と佐天は判断した。
「ところで佐天さん。先ほど佐天さんはミサカに対し『好き』と発言致しましたが、『好き』とはどのようななの感情なのでしょうか」
佐天の頬が再び染まる。ほとんど無意識に口走った言葉を、ミサカは忘れてはいなかった。そもそも……なぜ自分達はキスしたのか、その理由さえはっきりしないのだが。ただ一つ言えるのは……
「なんというか……た、大切な人って意味じゃないでしょうか。例えば……失いたくない人とか!」
ミサカは最初のようにじっと佐天の瞳を見つめる。わずかながら、その瞳に重みのようなものが宿っている気がした。
「なるほど。ならば佐天さん代替不可能な最重要人物と認識しているミサカは、佐天さんのことが『好き』なのですね、とミサカは断定します」
佐天の視界がぐらついた。頭の血が上り、輪郭がぼやけて全てが白く染まる。たった今、ミサカが自分のこと『好き』と明言したのだ。これ以上の明白な真実があるだろうか。場所はセブンスミストのトイレで、しかもキスとは名ばかりの性行為の後と、ロマンの欠片もないけれど。それでも、それでも!
「ミサカさん、私もミサカさんのことをッ!」
佐天は飛びそうになる意識を意志の力だけで引き戻す。おそらくは恋する少女の直感――今伝えなければ、一生伝えられない……そんな切迫した感情に襲われたのだ――!
「愛していますッ!」
目を開くと――
――ミサカは忽然と消えていた。
「うそ……これも幻想なんて……やだよ……!」
佐天は女子トイレを飛び出して、表玄関に全力で疾走する。見える――消えてなどいない、幻想でも夢でもない、通りの向こうに、車線を挟んだ向こう側に――確かにミサカの姿がある! 佐天は体全体で、学園都市の空気を吸い込んで――
「ミサカさーん! 私も、ミサカさんのこと、大好きですからーっ!」
時間が静止する。大型トラックが、2人の別れを邪魔するために横切ろうとする。そのわずかな刻に……ミサカは佐天を見据えると……静かに、確かに、口元を緩ませた。
――トラックが通り過ぎた後には、ミサカの姿は路地裏に消えてしまった。
10分間のキスと言ったはずが――学園都市の空は、にわかに赤く染まり始めている。時間が過ぎるのは、何て早いんだろう。どこか胸が痛むような、切ない気持ちが溢れだす。わだかまりは、これ以上ない形で溶けたはず。寮に帰れば、きっとすぐに会えるはずなのに。気が付けば、涙が流れている。嬉しいのに、嬉し涙とは思えない、悲しい涙が。一体、何がそんなに悲しいのか、佐天にはその理由が、今はまだ理解できなかった。
?「あの、佐天さん」
佐天「……は、はい!? あっ……あなた重福さん!?」
重福「見るつもりはなかったんです……見ても悲しくなるだけだから。でも体が勝手に……」
佐天「……ぎく」
重福「佐天さんと彼女さんの激しく愛し合うお姿、拝見してしまいました……」
佐天「い、いやー……御坂さんは彼女と言うかなんというか……あはは……」
重福「御坂美琴さん、私に電撃を浴びせた常盤台の超電磁砲さんですよね。分ってはいるんです、私があの人に勝てないことくらい」
佐天「えーっと……」
重福「お願いです、佐天さん。一度だけでいいんです。私もその……私とベーゼを交わしていただけませんか!」
佐天「あ、あの……言いにくいんだけど、私とキスするとね」
重福「駄目なんですか……そうですよね。私なんて何のとりえもない眉毛女なんですから。佐天さんが私みたいな眉毛人間とお話してくれることだけでも感謝しなきゃなりませんのに……私って図々しい女です!」
佐天「あーもう! 分かったって。でも1回だけだよ?」
重福「佐天さん……ありがとうございます! ちゅっ!」
佐天「……ありゃ、消えちゃった? しかも声まで聞こえない……」
重福「次回、