タグとしては「(主人公に対して)残酷な描写」で一つ。
念のため、必須タグも追加しました。
ライザー関連の対応でしか出ない表現ですので、
多用するつもりはありません。
「なるほど、大翔も色々首を突っ込んでいるようね。まあそれも結局は貴女達のため。あの子らしいこと」
「ドゥーエさん……」
「友人となったという貴女達と同じ仲間の男の子達のことも頭にはあるでしょうけど、愛する家族のため、愛するパートナーのため。あの子の行動基準というのは単純で明快だわ」
管理局へ潜入任務中のドゥーエさんの元へ、ウーノさんからの依頼で届け物を持ってきた私達。メインは翠屋の甘味です。彼女は勤務先の近くに部屋を借りていて、そちらに今回はやってきたのでした。自室にいらっしゃる今も管理局のトップクラスの秘書・メンテナンス担当のため、いつ呼び出しや通信があるか分からず、変装後の青髪の管理局職員の体を保っていらっしゃいます。
ともあれ、この自室には防音や正規手段以外の通信傍受阻害の魔導具が常時稼動しているなど、内向きの話にするのに適した環境となっていました。
「あー、癒されるわ。まさか、黒猫や白猫そのものになれるだなんて。妖怪ってすごいのね」
「おねーさんも相当疲れる仕事してるみたいだしにゃ。大翔から癒してあげて欲しいとお願いされたからには、しっかり依頼を果たすのがいい女にゃ」
ドゥーエさんの膝の上には寛いでいる黒猫、もとい黒歌がいます。そして耳と尻尾を出した状態の小猫ちゃんがドゥーエさんの肩回りを解しているところでした。
「それにとっても気持ちいいわ。魔力や気で体内を整えてもらって、かつ実際にマッサージ自体も上手だもの」
「機械部分は流石にどうしようもないですが、それほど期間をあけずに兄さまも来るように予定を組んでいますので」
「助かるわ。それに、朱乃さんの淹れてくれる紅茶の美味しいこと。大翔から私の好みを聞いてくれていたのね。さて、そんな私から貴女達にアドバイスを一つしましょうか」
大翔さんの取引の兼ね合いでどうしても、とんでもない女好きの男嫌い……正しくは人間嫌いですが、そんな相手と友好的な話し合いをしなければいけないことや、私や小猫ちゃんが同席する必要があることを聞いてもらったドゥーエさんから、私達は一つの解決策を提案してもらったのです。
「正直に言いにくいのは分かるけれど、クアットロ等から私にも情報は入ってきているのよ? まぁ、貴女達もしがらみが色々ややこしいみたいだけど、いざとなれば容赦はしないこと。迷わないこと。一番大事なのは何なのか、それを取り違えなければいいわ」
そして色々言えない部分があることもお見通しで、年長者の余裕で見ない振りをしていてくれているということも知ることとなるのでした。
◇◇◇◇
「そして、ドゥーエ姉さんの提案結果が
「お願いだから撮らないでくれっ!?」
「こらこらひーちゃん。今はその姿なんだから、言葉使いをちゃんとする。クアットロちゃん、ウーノさんやドゥーエさん、ドクター達にも転送した?」
「もちろんですよ、アリシアさん~。そちらもそれぞれ思い思いにカメラに収められたようで」
「保護してパソコンにも保存用を送ったからバッチリだよ!」
朱乃さん達が持ち帰ったドゥーエさんの提案は、ひろくん『だけ』が彼女から使用許可を受けている、彼女の先天固有技能『ライアーズ・マスク』を使用すること。だから、ひろくんもこの技能は私も含めて誰にも渡していないし、普段は封印してしまっている能力だ。
この技能は自身の体を変化させる変身偽装能力なんだけど、魔力や仙術、妖術に引っかからないのがポイントで、ほぼ全ての身体検査や感知を欺ける。なので、ドゥーエさんみたいに長期潜入とかをしてると元の自分を忘れそうになるという事態になりかねなかったりするんだけども。
「大翔、アンタこれからその姿で学校通いなさいな。たっぷり可愛がってあげるから」
「うん、お兄ちゃんが昼間はお姉ちゃんでも何の問題もないよ!」
「ありまくりだからねっ!?」
ふふっ、みんないい感じに混乱してる。混乱の中でも紗月さんの指示通り、言葉遣いを直してるひろくんは可愛い。私? 一周回って既に賢者モードだから。ひろくんのひろちゃんは尊いって悟っただけなの。だから、椿姫さんは鼻血を止めようね。
「……確かにライザーは美女美少女に弱いわ。それが人間であろうと関係ない。だけど……本気で『わたしたちがかんがえたさいきょーの美少女』に変身させてどうするの!? ライザーが絶対にちょっかいかけてくるわよ!?」
「大丈夫よ、リアス。私達みんなの恋人だって断言するから」
「百合百合しい花を咲かせてどうするのっ、ソーナっ! ハッ! イッセー、しっかりなさい! その子の正体は大翔よ!?」
「離してください部長! そこに至高のおっぱいがあるんですっ!」
「……不潔です、一誠君」
「ごぱぁっ!?」
言葉遣いをちゃんと女の子にしたひろくんのひろちゃんの破壊力は凄まじい。たった一言で煩悩君が崩れ落ちるぐらいに。あっ、セラフォルーさんの転移魔法陣だ。仕事を全力で切り上げて戻ってきたんだね。
「流石兄さま、威力は抜群ですよ」
「もう戻っていいよね?」
「駄目です」
「許可できないにゃ。むしろ寝室以外はその格好を推奨するにゃ……」
「美少女ひーくん爆☆誕☆っ! いやーん、私と一緒にレヴィアたん出演しよう! 一緒にコスプレ会場行くのもいいよねっ☆」
さて、鼻息荒い私達。セラフォルーさんに抱き締められている、その変身後のひろくんの姿なんだけど……。
基本ベースは私と朱乃さんの要素を足してから割った感じかな。そこから、皆で話しながら細かい調整を入れていったの。格好はクラシカルメイドの姿。ファリン達やソーナさん達の実家の侍女の制服に、脱げにくいストラップつきのローヒールパンプス。スカート姿への拒否反応が強かったので、足首近くまで隠れる格好に歩きやすい靴をという希望を取り入れてこうなったよ。
背の高さは私と朱乃さんの間。ひろくんと並んで歩く時に顔を上げて話す格好だったのが、ほとんど同じ高さで話せるのがなんだか面白い感じがするよ。髪は私よりも少し薄めの紫がかった色。長さは腰の辺りまで届いていて、それをシニヨンにまとめて、白地のメイドキャップをつけて完成。バレエをする子がよくするお団子の髪型だね。髪のセットはもちろん私達が担当だよ。
私達が目指す体型の到達点を形にして各々のモチベーションに繋げる意図もあって、バストやウエストなどのスリーサイズは黄金比を重視。ひろくんは『……重たい』ってポツリとこぼしていたね。ふふ、だからある程度の筋力は必要だし、ストレッチやひろくんに血行の促進等のマッサージもよくしてもらうんだよ。
顔の造形も私や朱乃さんのパーツを平均化した感じなんだけど、目元はタレ目寄りに整えてもらった。ひろくんの性格を考えるとこっちだよね、とこれはみんな満場一致。
「やべえ、涙目ながらに軽蔑の感情交じりに蔑まれても、ありがとうございますっ! と感謝の気持ちしか湧かねぇ……!」
「あうー、イッセーさんしっかりしてくださいっ!」
テンパったアーシアさんが煩悩君を思い切り胸の中に抱き締めたり、普段じゃ出来ない行動を取っているのもみんな混乱しているのが悪い。つまり誰も悪くないんだ。
「ヴァーリ、お前まで見惚れてどうするんだよ」
「そういう元士郎、お前も顔が赤いぞ」
「女子力がもともと高いからな、大翔さんは……って、桃、憐耶、耳を引っ張るなって! いつつ……!」
「これ以上見ちゃ駄目だからね、元ちゃんは! 部屋の外に出る! はやく!」
「そうだよ、元士郎くん。留流子、行こう」
「はいっ、おしおきタイムですっ」
匙くんは完全に巻き込まれ型の犠牲になってしまったみたい。なお、カリムさんだけはなぜか同じメイド服の姿になってはいたけれど、ひろくんへの態度は終始変わらなかった。
『男性であろうと女性であろうと、我が君であることに何も変わりもありませんもの』
後で理由を聞いて、カリムさんの信仰のぶれなさに戦慄した一日でもあったんだ……。あと、ドゥーエさんからも一通のメールが届いていた。
『グッジョブ、いい仕事よ』
◇◇◇◇
「残念だわ、ぜひお披露目の場に同席したかったけど」
『今は写真で我慢してちょうだい、シーグヴァイラ。どの道、すぐに顔合わせの日でしょう?』
「それもそうね。楽しみということにしましょうか」
仕事休みの間にソーナから届いたメール。貴重なお宝映像にロックをしっかり掛けた上で、すぐに連絡をしているのだけど、アリヴィアンの顔がえらく引き攣っていたのが面白いわね。
「ヒロよ、そこは怒るべきところだぞ……なんと痛ましい」
「愛らしいの間違いでしょ、アリヴィアン」
『ところで、今日は夕食間に合いそう? 今から買い出しなのだけど』
ソーナも随分と一般主婦業に染まってきたものだ。とはいえ買い物デートを兼ねているから、それも楽しくて仕方ないんでしょうね。
「間に合わせるわ。確か、今日はしまあじが安いんだったわね?」
そんな私も一緒にスーパーの広告に目を通すあたり、俗世に染まっているのは否定出来ない。でも、ヒロの手料理に喜んでるばかりではなく、自分の手料理に舌鼓を打って欲しいと思うのも正直なところで。
『ええ、そのつもり。大翔くんがしっかり教えてくれているから、魚の捌き方も上達してる自覚はあるのよ?』
柔らかな笑顔を浮かべるようになっちゃって、全く。ふふ、とうとうリンカーコアを知覚できるようになって、余計にヒロを常に感じていられるようになったからかしら。発情を恐れる必要が無くなっただけでも、ソーナは私から見てもさらに魅力的な女の子に映っていたのに……本当に、負けていられない。そう思うわ。
「ねえ、ソーナ。ライザーの一件が終わったら、手伝ってほしいことがあるのよ。出来ればすずかさんや朱乃さん達にも協力して欲しいの」
だから、私も一歩踏み出すとしましょうか。焦るつもりはないけれど、まずは彼女達と同じ場所へと並び立たなければ、競い合うことすら出来はしないのだから。
◇◇◇◇
「……リアス。これはどういうことだ。ソーナ嬢に、シーグヴァイラ嬢まで同席するなど聞いていないぞ」
「……私こそグレイフィアが一緒に来るなんて聞いていなかったわ」
当初の目論見どおり、話し合いは駒王学園のオカルト研究部室で行えることになり、この場にはソーナやシーラさんも同席しているが、話し合いの当人同士も想定していなかった参加者が増えてしまっている。
「……不可抗力というやつだ。出発しようとしたら、気配を完全に殺した状態で『スッ』と転移魔法陣の側に彼女が出て来たんだぞ……!? だから、俺の眷属もユーベルーナとレイヴェルしか連れてきていないだろう?」
「この話し合いが漏れたということ?」
「平常時の人間界への転移には許可が必要だからな。その辺りの手続きからだとは思うが……」
「リアスお嬢様? ライザー様? 二人だけでの内緒話もその辺りになさってくださいませ」
現ルシファーの女王であり妻であり、グレモリーさんの義姉にあたるグレイフィア・ルキフグスさん。その彼女の一言で当事者の二人が固まる。彼女が二人にとって大変恐ろしい存在なのがこれだけでも見て取れた。家を挟まずに本人同士で話をしようという方向性もこれでは吹き飛んでしまっている。
「……どうぞ皆様、お茶が入りました」
「好みに合わせて和洋のお菓子も用意しております。ご自由にお選び下さいね。部長は羊羹でよろしいのですね?」
俺が動くのに合わせて、朱乃も歩を合わせて動き出してくれる。ルキフグスさんの探るような視線が俺に向けられる中、俺は朱乃と共に各人の前に飲み物やお菓子の小皿を並べていく。
「む……これはなんともいい香りだ」
「心を落ち着ける効果があると言われるハーブティーになります。話し合いになるとグレモリー部長から聞いておりましたので、まずはこちらをご用意させていただきました」
「君のような眷属候補を持てるとは、リアスが羨ましいな。僧侶の駒で転生出来ないとなれば、相当の実力、あるいはその可能性を秘めていることになる。さらにそちらの『雷の巫女』と並んで、ヤマトナデシコを体現するかのような可憐さや所作だ。惜しくらくはその丈の長いメイド服のせいで、白磁の肌が殆ど見えないことかな」
「腕や足にお見苦しい古傷があるのです。どうぞご容赦くださいませ」
という設定になっている。事前の調整により、ドゥーエさんから複写させてもらった固有技能・変身偽装能力で姿を変えているのだが、声質も可愛らしさの中に艶っぽさを感じさせる声になっていた……どこの天才柔道家少女だよ、ほんと。この辺もアニメに詳しいすずかやセラが数ある声優さんからチョイスしていた。
『あー、少しは見慣れたはずなのに、ひろくんの可憐さに心がきゅぅってなっちゃうよ……』
『すずかちゃんが細かな設定盛り込んでるなーと思ったけど、それを難なく演じてしまえるひーくんだからこそ映えるわけだよ☆ なんだかとってもゾクゾクするぞっ☆』
『本当の大翔さんは男だ、男だ……見蕩れるな俺ぇええええええ! 見なければ大丈……み、耳が蕩けるボイスやべえぇぇぇぁ!』
『相棒ェ……しかし、魅力ある女が普段から周りに集まっているからか、演技も堂に入っているな』
『あ、イッセー先輩。煩悩が高まってとうとう念話使えるようになりましたね。おめでとうございます。これも兄さまの女子力が高いお陰ですね』
『お料理得意だし、お菓子作りも不得手じゃにゃいし……振る舞いも綺麗だし、元々。おおう、女としてこれはマズいにゃあ……寝る時以外はあの格好でとか言ったけど、やっぱりこれが終わったらさっさと戻って貰わないと』
『大翔さん、とっても綺麗です……ジッサイオクユカシイ……』
固有技能の一つ、ディープダイバーを使って壁の中で状況を監視しているすずかやセラ、隣室の監視カメラで話し合いの状況を見守る一誠君や白音、黒歌、ギャスパー君達から飛び込んでくる念話。しれっと念話にドライグさんまで混じっている。一誠君にはおめでとうと言いたいけど、それはそれで後の話として……ギャスパー君はなぜうっとりとした声色なのか。
『朱乃先輩が本当にニコニコしてるもんね、ほんと上機嫌だなぁ』
そうなんだよ、祐斗君。自慢の妹みたいな扱いになってるんだ。実際に世の男性の十中八、九割は目を引かれるはずですって断言までされてるし。
「……ふふっ、大夢さんは私達のアイドルみたいなものですもの」
朱乃の言葉にソーナやシーラさんまで頷いているので、俺は恥ずかしくて仕方ないです。頰に熱が篭るのが分かったので急いでグレモリーさんの後ろで控え直したのだが……。
「んんっ……!」
「可憐だ……ぬぎぃっ!?」
なんでグレモリーさんまで鼻を押さえるんですかね! 念話では一誠君が鼻血を吹いたとか中継が入ってくるし、ライザーさんはユーベルーナさんに脇腹の辺りをぎゅっと抓られているしなぁ。
「まぁ、ヒロ……ムのお陰でいい意味で緊張感が解けたのではなくて?」
偽名を何とか呼んでくれたシーラさんの一言で、皆やっと意見交換の場へと入っていくのだった。