※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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書きあげられたのでホイホイと更新。


第102話 急く炎鳥

 リアスにはリアスの考えがあるようだけど、グレモリー家の者としてはこちらの与り知らぬ所で会って揉められても困るわけです。ヴェネラナ様の意向もありますし、リアスには幸せになって欲しいと思う反面、次期当主としての責務に向き合って欲しいと思いますし。……ただ、それも勝手よね。私はサーゼクスを愛してその相手と結ばれ、愛するミリキャスを授かったというのに。

 

「……羊羹は初めて頂きましたが、優しい甘さですのね。美味しいですわ」

 

「ありがとうございます、レイヴェル様」

 

「緑茶は紅茶とは違う苦味を感じますが、この煎餅とはとても合うのですね。ふふ、新しい発見です」

 

「喜んで頂けたのなら嬉しいです、ユーベルーナ様」

 

 リアスの女王である朱乃さんに婚約者が出来たのはリアスから聞いていたものの、その若者がシトリー家の次期当主とも懇意と聞けば話は変わります。どうもここ最近、セラフォルーも毎日のように学園へ来ているようですし。愛妾にハマっていると周りは揶揄していますし、それでいて仕事はきっちりこなしている辺りがかえって怪しいといいますか。

 アガレス家の周辺やシーグヴァイラ様の発言を聞いていても、ソーナ様や朱乃さんの婚約者と同じ若者を選ぼうとしているとの情報もあります。変に隠すつもりも無いのでしょうね。シトリーとアガレスが後ろ盾につくと決めるぐらいの若者。今回の強引な同行はその若者に接触する段取りをつけるためでもありますが……。

 

 ヒロムと呼ばれた少女。リアスがつい最近眷属にしようとして出来なかったという逸材だといいます。ただ、妙なのは何処と無く違和感があるというか、整い過ぎていると感じられること。

 

「リアス、彼女のような奥ゆかしさを少しでも真似たらどうだ?」

 

「ライザー、貴方ね……!」

 

「ふふ。ライザー様、私はリアス様の快活さや明るさに惹かれております。そんな主の良さを打ち消せと仰るのは、少し寂しく思いますわ」

 

「ハハハ、今の良さを消すほどに変われというわけではないさ。ただ、君は主やパートナーを盛り立てていくのを良しとするんじゃないかと思ってね。その辺りを少しでも取り入れてくれればという思いがあったのさ。こうして、やんわりとした言い方だが俺に直言する度胸もあるわけだしな」

 

「ライザー様であれば、私程度の言葉でご立腹なさらないと思っておりますから」

 

「くくっ、そしてご機嫌取りの一種と分かっていても、君は本気で今の言葉を言っている。だから、こちらとしてもその通りと応えるしかないな」

 

 ライザー様の返答にスッと一礼し、再びリアスの後ろで姿勢を正す彼女。リアスも朱乃さんもソーナ様もシーグヴァイラ様も、そんな彼女に向ける視線は信頼に満ちている。一体、本当に彼女は何者?

 

「──!」

 

 ……私としたことが。観察していることに気づかれるとは。しかし、彼女は気づいても柔らかく微笑みを一つ浮かべただけ。私の正体を知りながらのこの落ち着きようだ。

 

「今日は大変気分がいい。どうだ、ヒロムさん。リアスが嫁ぐ前に先に俺の眷属にならないか? レイヴェルは俺の妹なのだが、仮に僧侶に据えているだけでね。母に言えばすぐに駒は空く。考えてほしいな」

 

「あら、とても素敵な提案ですわ、ライザー様っ」

 

 この軽さ……やはりリアスの伴侶になるには余りにも……! それにミリキャスとの後継問題で揉めるのが安易に想像できてしまう。ヴェネラナ様は婚姻後に徹底した教育を施しますと仰いますが、彼とて間もなく成人悪魔になる年齢。黙って言うことを聞くとは思えないっ……!

 それに王の行き過ぎた行いを止めるべき女王も、むしろそれを後押しするような発言をしている。

 

「そこまで初対面の私を評価して頂けるとはありがたいお話だと思います。ただ、ライザー様。私は先程も申し上げたように、主リアスに付き従うと決めた者です。その先に主とライザー様とのご成婚があり、私は主の旦那様になられる方に対しても、誠心誠意お仕えしていくつもりですわ」

 

「ああ、その忠義心も素晴らしいな。だが、俺は『今すぐ』『君』が欲しいんだ。俺は……フェニックス家の生まれとはいえ所詮、三男坊だ。ユーベルーナや他の眷属達は俺を信じてついてきてくれているが、俺の眷属は下級悪魔や転生悪魔が殆どでね。俺が確固たる自分自身の地位を得るためには、レーティングゲームで成り上がるのが一番の近道ではある。……ただ、確実に出来るだけ早く、俺は成り上がらなくてはならない」

 

 ライザー様はユーベルーナ様の頭を一撫でして立ち上がり、ヒロムさんの前へと立つ。普段の軽い調子などどこにもなく、真剣な目で彼女を見つめている。そして、自分の心臓の辺りを親指で指し示しられました。

 

「柄でもないが、ココが叫んでるんだよ。君を手にすれば、俺は確実に大きくなれると。リアスの眷属候補ということは、悪魔の世界の階級制度は知ってるのだろう?」

 

「……存じております。転生した悪魔は特に差別の対象になりやすいことも」

 

「ああ、その通りだ。……レイヴェルはいずれ自分の眷属を持つ。アイツは俺よりもよっぽど頭がキレる女だが、ずっと俺の眷属というわけにはいかない。そして、君はその枠を埋めるどころか、俺を大きく羽ばたかせてくれるとね」

 

 ライザー様があえて着崩すようにしている赤いスーツに熱を加えたかのように、フェニックスの炎が翼のように彼の背中に浮かび上がる。その炎の熱を受けても、彼女は揺らがない──。

 

「買いかぶり過ぎです、ライザー様。今の私は転生すら果たしていない、ただの人間です」

 

「俺の炎を間近で見て動揺すらしない女が、ただの女に収まるわけがないだろう。そんな君が俺に溺れる姿はさぞ見ものだろうな」

 

 ライザー様の動きに剣幕を変えたのは彼女の回りだった。朱乃さん、ソーナ様、そして隣室か伝わるらいくつかの気配。それらの魔力が一気に高まるのを……っ、そんな、魔力だけで言うならば、中級悪魔どころか上級悪魔といって差し支えないレベルにこれだけの数が達しているっ!?

 

「ライザー! いい加減にし──」

 

 周辺が一気に魔力を高めたことにより、レイヴェル様までもが警戒心を高めてしまう。そんな状況にリアスが慌てて止めに入るが、皆の動きを制したのは……やはり彼女だった。

 

「リアス様っ、立ち上がる必要はございませんっ。朱乃達も動かないでっ!」

 

 ライザー様から瞳を逸らさず、一言で全員の動きを止めてみせる彼女。怖さを感じないとでも言うの……?

 

「……ますます気に入ったよ。主や仲間に助けを求めないのか」

 

「ここで助けを求め、ライザー様とリアス様、あるいはリアス様の眷属、最悪はソーナ様やシーグヴァイラ様が貴方様と衝突したとなれば、一番喜ぶのはどのような方達でしょうか?」

 

 そこで一旦言葉を切り、彼女は一瞬だけ俯き顔を上げた。それだけの仕草なのに、この場の皆が意識をひきつけられていた。

 

「……っ」

 

 微笑んでいる。微笑んでいるが、その表情が伝えてくるのは他を圧するような静かな怒り。ライザー様までもが完全に勢いを止められ、周囲の高まった魔力も薄れていく。

 

「及第点の反応はリアス様。それ以外は赤点、追試確定といったところでしょうか。私のことを思っての動きであることは十分に……これほど嬉しいと思うことは無いほどに、伝わってきました」

 

 ふと、場違いなことを思う。彼女の怒り方は、どこか私に似ていると。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 ひろくん、お怒りの図。我を失うほどじゃないけど、大変にお怒りです。

 

『隣室の魔力や妖気の高まりも一気に萎んじゃったね☆』

 

『今回の目的を叩き折る動きでしたからね。そりゃひろくんも怒ります。第一、いざとなれば私が飛び出すに決まってるのに』

 

 場を潰してもいいとなれば、ひろくんは変身を解除して元来の姿に戻って暴れればいいだけ。ひろくんに言い寄るいけ好かない焼き鳥さんは去勢してあげたい思いに駆られるけれど、それもひろくんのゴーサインがあってからの話だから。

 第一、あんな生ぬるい炎でひろくんがどうにかなるとでも? 使い慣れた身体でないとはいえ、完全に魔力を秘匿できるひろくんを倒せるはずもない。

 

『炎を食らったら、多分そのまま能力の取り込みにかかってたかな?』

 

『おそらくは。取り込みに時間はかかっても、再生能力を促進できる力となれば逃す手もありませんし』

 

「さて朱乃、ここで一つ問いを出しましょう。……どうして貴方やソーナ様達の行動に対して私は赤点と言ったのでしょう?」

 

「っ……グレモリー家とフェニックス家の評判が落ちること、引いては魔王ルシファー様の評判が落ちることを喜ぶのは、現執行体制への不満や不信を抱く方達です。ですから、私達と部長の婚約者であられるライザー様とのトラブルは格好の攻撃材料になるから、ですわ」

 

「その通りです。ルシファー様の政治的敵方を喜ばせるだけのこと。ライザー様もリアス様の性格はご存知かと存じますし、このような諍いを生みかねないことぐらいはご承知のことと思います」

 

 あ、これは分かってなかった奴だね。顔に出てるもん……え、そうなのかって。妹さんの顔が引きつったし、あのメイドさんが顔を逸らしちゃったよ。

 

「ふふ、多少のことなど問題ありませんわ。ライザー様の女になってしまえば、離れることなど考えられなくなるのですから」

 

「……おい、ユーベルーナ」

 

「ライザー様、何を気にしておられるのですか。強引にその彼女を連れて帰り、ライザー様の女にしてしまえば……私同様、貴方への永遠の忠誠を喜んで誓うのですから」

 

 彼女の瞳は彼を絶対者として見ていた。それは私がひろくんに向ける感情と同じ臭いがする。そして、それに対して焼き鳥さんの顔は苦く歪んでいる。

 

『あの焼き鳥の女王、ある意味私達と一緒かもにゃ。魔力の流れが妙に下腹部の辺りで活発になってる』

 

 ペリスコープ・アイを通してだから、今の私は細かいところまで体内の魔力までは見れないけど……あの女王さんから焼き鳥さんの魔力を強く感じるのは確かだ。

 

「ヒロムさん、貴女も女の幸せを知るべきです。まして、類稀な胆力に知性……その才を私と同じくライザー様に捧げて頂けるのなら、ひいてはライザー様の正妻になられるリアス様の栄達にも直結致しま……」

 

「……レイヴェル、すまん」

 

 最後まで恍惚とした表情で彼女が言い終える前に、妹さんが組んだ魔法陣の効果により、彼女は眠りへと誘われていた。膝の上に彼女の頭を預かる姿勢になった妹さんも悲しげに瞳を閉じてしまう。

 

「……これが、ライザー様がリアス様との婚姻を急がれた理由なのですね」

 

「ユーベルーナだけじゃない、レイヴェル以外の他の眷属も似たようなものだ。普通を装っても、すぐに今のような顔が表に出てくる……自分が招いた種なんだがな。だが、今のユーベルーナ達はあまりに見ていられなくてな……」

 

「だから、後ろ盾を強めることを急いだのですか。ライザー」

 

「ああ、ソーナ嬢。流石に十四人を一気に冥界の名だたる名医に治療を託すとなれば、力が足りなさ過ぎてな。金銭の話じゃない、転生悪魔や下級悪魔にそこまで手を回せないと言われた」

 

 ソーナさんが、グレモリーさんが、朱乃さんが思わずひろくんを見てしまっていた。釣られる形でシーグヴァイラさん達までもが。

 

『ソーナちゃんたちは思わず自分に置き変えちゃったかな。女として満たされつつも溺れ切らずにいられるのはひーくんのお陰だって分かってるから』

 

 そんなセラフォルーさんの呟きの中、ひろくんは思考に入り瞳を閉じていた。その姿すら絵になるような気がして、間も無くこの姿を見納めになるのを惜しいと思う私は自分を心の中で叱りつけるのだった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「だから私との婚姻を急ぎ、グレモリー家や魔王の後ろ盾を得て、眷属達の症状を見てもらえるように手を打とうと?」

 

「それだけでうまく行くとは思っていないさ。だが、愛しいこいつ等をこのままにしてもおけない。こいつ等は俺との毎日の交わりで何とか今の現状を保っているような状態だ。俺を慕うのを通り越して俺のことを全肯定するレベルまでに陥ってしまっている。父や母、兄達には最悪、駒を抜き去ることも覚悟しろと言われた……」

 

「それで私がハイと言うとでも思って?」

 

「式が終わればまた大学卒業まで人間界に戻ってもらっても構わん。だが、どうしても納得してもらえなければ、実力行使も止むを得んさ……!」

 

 ライザーが眷属のことを本気で思っているのは伝わる。けれど、だからといってじゃあ貴方とすぐに結婚するだなんて、私が納得できるわけがないじゃない!

 

「……似ている。ひょっとしたら、これなら」

 

「ヒロム様……どういうことですの?」

 

「レイヴェル様。まだハッキリしたことは申し上げられませんが、今の状態を緩和することならもしかすると私のつてを当たれば可能かもしれません」

 

 そんな一触即発の空気の中、ヒロムを演じている空知はなんというかいつも通りで……え? 原因が分かったの?

 

「なっ、本当なのかっ!」

 

 当然、ライザーも慌てる。それはそうよね。私だってビックリしてる。でも、空知ならあるいはって思ったのも事実。

 

「失礼ながら、何の根拠がおありなのでしょうか」

 

「ちょっと、グレイフィア」

 

「リアス様、彼女は聡明であっても一介の人間に過ぎません。まして、悪魔の世界に関わるとなれば貴女様の評判にも繋がります」

 

「私の評判が多少落ちたところで──あ、お兄様の評判にも繋がってしまうということ、そうよね」

 

「……得難い眷属候補でしょう、彼女は。だからこそ、私は問いかけさせて頂きます」

 

「グレイフィア様の仰る通りでしょう。ただ、私は可能性を示したのみ。成功率が高くなるかはライザー様からどこまで症状の詳細をお伺い出来るか、それに私の知己を頼ることを素直に受け入れ協力して頂けるかにもよります」

 

 グレイフィアに真っ向から問いかけられたら、私はしどろもどろになっちゃうんだけど。この辺りが場数経験の差なのだろうなと、ちょっと悔しく感じてしまうわ。でも、今はこの変わらなさが頼もしい。

 

「その知己の方は、いったいどのような方なのですか?」

 

「朱乃やソーナ様の婚約者ですわ。私も親しくさせて頂いておりますから。お名前については既にご存知ではありませんか?」

 

 なんというマッチポンプ! 自分で自分を紹介するなんて、なかなかに酷いやり方をするものだわ。でも、正体を知る私からすれば痛快な話。

 

「なに、人間の男だというのか……っ!」

 

「無理に紹介させて頂くつもりもありませんので。それに彼を紹介するのを認めて頂けるとしても、まずはレイヴェル様から出来るだけ細かい症状などをお伺いしませんと」

 

 ですので揉め事ではなく、グレイフィア様やソーナ様に結界を張ってもらって、外で手合わせでもしてきて下さいね。正直、邪魔ですので──。

 

 そう笑顔で言われた次の瞬間、私達は旧校舎から強制転移する魔法陣を足元に発動させられて、唖然とするライザーやグレイフィアと共に校庭で顔を見合わせることになっていた。

 

「なっ……彼女は本当に人間か!?」

 

「害意が無かったとはいえ、私にまで阻害させない速度で転移魔法陣を組み上げるとは……」

 

「正体はともかく、私は一度として勝てたことはないわ。悔しいけど」

 

「シーグヴァイラがいないということは……ああ、もう時間操作込みの結界が発動しているわ。下手に入れないわよ、これは」

 

 実際は空知が発動させたであろう『封時結界』内に転移許可を受けているのは、こちらに飛ばされた中で言うと、私や朱乃、ソーナ達といった駒王学園陣営のみ。といっても細かい演算とかが必要だから、ソーナや朱乃、小猫ぐらいしかまだ実用に至っていないわけで。失敗すれば不許可の場合と同じく、次元の狭間へサヨナラだから本当に洒落にならないのよ。

 

「あら、小猫ちゃんやイッセー君、祐斗君もこちらに?」

 

「飛ばされちゃいました。ギャー君は流石に封印の兼ね合いがあるので、残ったみたいですけど」

 

「はい、イッセー君はまず鼻血を止めようね」

 

「ふがねえ、ひば」

 

 イッセー。貴方は正体が空知と分かっていながら、また血が上ってしまったのね。仕方のない子。

 

『こっちは任せるにゃー。私だけじゃにゃく、すずかもセラフォルーもいるからどうにでもなっちゃうにゃ』

 

 念話をご丁寧にありがとう、黒歌。過剰戦力も甚だしい限りね。さて慌てた様子のライザーだけど、私も鬱憤が溜まってるのよ。少し、こちらに付き合ってもらうわよ!

 

「ふんっ! レーティングゲームで実質負け知らずの俺に敵うとでも!?」

 

 フラグ立てご苦労様っ! あ、ソーナは学校が壊れないように結界を宜しくね?

 

「はいはい。任せておきなさい」

 

 ソーナの展開した結界の強度にライザーやグレイフィアが驚いているけれど、私達の成長に驚き戦くといいわ!




ライザーが婚姻を急いでいる理由に、
反魔王派連中の入れ知恵とか、そういうのも考えてたんですが。

性表現ありのR18として掲載してるので、その方向で行くことに。

ライザーはゲスかったりエロかったりしますが、
眷属への思いは本気なんだと解釈しています。
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