※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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書き上げられた時はさくっと投稿していくスタイル。

※読者さんのご指摘で私が真っ青になった箇所をこっそり修正。



第107話 弱さを見せられる相手

「……受け取る側も変わり者、か。そうでなくてはとっくに崩壊していそうなものだ」

 

 一日の最後にすずかの中で果て、そのまま抱き締められて眠りに落ちていく時間は数年同じルーチンを繰り返そうとも……色褪せることなどなく、穏やかな幸福感の中で一日を終える、俺にとって欠かせない大切な時間だ。

 朱乃やセラが私達にも甘えてもいいんだと思えるようにしてみせますからと宣言はされてるんだけど、愛し方の違いというか、俺にとって朱乃やセラは護るべき相手なんだよな。実際に出来ているかは別として、そういうものだという前提みたいなものが俺の中にはあった。

 

「……気を張り続けるのは勝手だが、弱音を吐ける相手はあの中にいるのか?」

 

「ちゃんといますよ。ライザーさんはユーベルーナさんですよね?」

 

「まあな。あいつが女達の中心みたいなものだ。……なるほど、そうか。見たままだったということか、お前は」

 

「そういうことです」

 

「手綱をしっかり持っておいてもらわねば、洒落にならない実力の連中が揃っているようだからな。お前自身が崩れそうであれば危ういと、聞いておかねば思ったまでだが……ふん。ソーナ嬢やセラフォルー様達にまで手を出しておきながら、何とも変わった奴だ」

 

「セラやソーナ、朱乃も椿姫も、黒歌や白音だって……俺にとって大切な人達であることに何の代わりもありません。絶対に守り抜くだけですよ、どんな手を使おうとも。他の犠牲をどれだけ払おうとも……俺は彼女達の安全を取りますから」

 

 揶揄うような口ぶりのライザーさんに、釘を刺しておく。俺の婚約者達とその関係者以外、どうなろうと知ったことではない。

 

「ふん……俺とて栄達を望むのはアイツらと長くうまくやっていくためのものだ。分かりやすくていい。そこを踏み越えない限り、オレ達は住み分けできるということだ」

 

 その俺の言葉にあっさり同意を返すライザーさん。口元は少し愉快そうに笑っていた。

 

「冥界の未来と口にはするがな、立場上気にしている振りはせねばならん。だが、俺自身兄が二人いる立場で本格的に領地経営に関わるかといえばほぼありえ無い話だ。次期当主の長兄と補佐の次兄で事足りる。優秀な兄上達だからな。実際は自分と女達の稼ぎさえ考えていればいい」

 

「だから、グレモリーさんとの婚約を自分でも積極的に進めようとしたと?」

 

「リアスとの結婚となればグレモリー領の経営に関わることになる。が、ここ数年の付き合いで分かった。ハッキリ言ってリアスは当主には向いてるとは言えん。感情が素直過ぎるし直情型でもある。恋人にするには楽しく可愛いのだろうが、施政者の資質ではないさ。つまりは貧乏くじになりかねんとは考えている」

 

「えっと、それは……婚約関係そのものを考えるということですか?」

 

「そうとは言わないが、経営の主体を任せてもらって、早めにリアスの甥っ子であるミリキャス様に当主を引き継ぐように持って行きたいとは思っている。彼はまだ幼いがそうは言ってもリアスと十年も年は離れていないからな。元々グレモリー家の後継者筆頭だった魔王ルシファー様のご子息でもある。当主としては申し分ない血筋だ」

 

「なるほど。リアスさん以外にも後継者第二位の優秀な方がいらっしゃると」

 

「だから、お家騒動を招く前に、早めに俺達は繋ぎだと言い放ってしまうべきだとな。それこそ俺との子、純血の悪魔さえ産んでくれれば、あの赤龍帝とうまくやってもらっても構わん。正妻という立場と、グレモリー当主という役割を、俺のビジネスパートナーを努めてくれればそれでいい」

 

 グレモリーさんが納得するかは別の話で、恐らくは首を縦に振ることは無いだろうともライザーさんは付け加えた。

 

「リアスはグレモリー家の次期当主だ、それは変わらぬ事実。仮に逃げ出すのなら、二度と冥界の土は踏まない覚悟で、さらにはぐれ悪魔に近い扱いになることも承知の上でなければならん」

 

「無理でしょうね。彼女は実家の力を十二分に活用した生活に浸りきってしまっている。人間界への通学、通学先の街の管理者への任命……街での拠点である豪邸であったり、普通の学生が叶うわけもない環境が当たり前なのだから」

 

「グレモリー家の令嬢としての生き方しか知らないわけだしな。自分で独立のための勉学等を積んでいる様子も無い。ようは周りから見ればただのわがままの範疇なわけだ、俺との婚約を反対しているのもな。本気で突っ撥ねたいのなら覚悟が足りないのさ。……俺には力が足りん。だから、ユーベルーナとは何度も話しているし、側妻としての扱いしか出来ないことも含めて、悔しさを飲み込んでそれでもついてくる覚悟を決めてもらっている」

 

 ままならないものだと思う。ただ、圧倒的な力で制することが出来ないのならば自分に出来る最善を考えて積み重ねていくしか、こういう問題は対処のしようがないのもまた事実だった。

 一先ずはライザーさんの眷属達への魅了効果が重度の状態に陥った際の対策をもう一つ提案するとしよう。目の前の問題に対してしっかり対処することが、ライザーさんの心の余裕にも繋がるだろうから。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「身体に不可視の細工をした魔法陣等を刻んで、異物が侵入しようとすれば焼き尽くすなり腐り落ちるようにする手もありますけど……術者よりも強大な者が相手となると無効化される可能性もあるので絶対的な方法とは言えませんから」

 

「身体に直接刻むので、制御を誤ると逆に身体にダメージを与えることもありますから、強力な効果をどこまで求めるのか難しいところもありますもの……」

 

「実用化が可能なところまでは来ていますが、効果をどこまで引き上げるかが課題にはなります」

 

 実証に対する検討を重ねるのは必要なこと。トライアンドエラーを繰り返す事が出来るのも黒歌や小猫さんといった仙術に長けた回復のエキスパートがいてくれるからこそですね。

 

「……月村さん達は既に試されたのですね?」

 

「ひろくんの目が離れた時にこっそりと。効果を求め過ぎて痛みに意識が飛びかけて、黒歌ちゃん達に何とかしてもらったこともありましたから」

 

 朱乃や私もその痛みは経験済みで、その時の絶叫は相当なものだったらしく、刻む紋様の効果を全員一定レベル以上で習得している転移魔術に変えたという経緯もありました。

 その晩は大翔さんを抱き締めたまま、なかなか離れ難くなってしまって……女性陣は事情を分かっていますし朱乃共々大変良くしてもらったので、怪我の功名(?)みたいなことになってしまったのですが。

 

「……あえて見えるように紋様を刻んでしまえば、それだけで手を出そうとする輩も減りそうですし検討をするべきでしょうか」

 

「待て、ユーベルーナ。なんという話をしているのか……そこまでしなくても、空知から当面の対策を提示してくれている」

 

「あ、ライザー様に空知様。お話は終わられたのですね?」

 

 ライザーと大翔くんが揃って立ち話から戻ってきたようで、当面の追加対策としてユーベルーナさんの使用している魔法の杖をデバイス化して、そのデバイスの保存領域に『鎮静』の術式を書き込んでおこうというお話です。加えて、ライザーの魔力の波長を登録して鎮静の魔術を発動する時にその魔力を優先して使うように設定することで、溜まり過ぎた魔力を程よく解放する意図も兼ねているようです。

 

「なので、ライザーさん本人か眷属さん達しか使えない利用制限がかかっているようなものです。後はちょっと様子が変わってきたと思える方達に使わせたり、使えばローテーションみたいに出来るかなと」

 

「私は構いませんし、お願いしたいと思いますわ。状態異常を治せる魔力を新たに身につけられるようなものですもの」

 

「あとは中長期的な話として、二ィさんとリィさんが仙術を身につけることですね。ああ、そうだ。ぬらりひょん様との定期会合が近いうちにありますから、その際に参曲(まがり)様に話をしてみましょうか? いいお師匠さんを紹介してもらえるかもしれない」

 

「え゛っ……! ど、どうじで、ぞらじざんがまがりざまのごどを!?」

 

 ものすごい動揺っぷりですね。私は直接お会いしたことは無いのですが、大翔くんやすずかさん達はお会いしたことがあるそうで。黒歌経由で連絡を取りお供え物を持って訪問されて、そこから東日本の妖怪陣営と定期的に会合を持たれています。今や、翠屋のシュークリームやケーキは次元を越えて愛されていますね、

 日本神話側は聖書勢力の動きに対して敵対行動と認識しています……こちらの勢力のやり方を思えば当然とは思いますが。なので、顔つなぎで同行したお姉様曰く、あくまで悪魔の駒の摘出方法も確立した大翔くんとそのパートナー達だけとの友好関係ということなのだとか。勢力同士というよりは、個人的友好関係が少し幅広く行われているようなもの。

 

「ひーくん、参曲お婆ちゃまのお気に入りだもんねー☆ あ、ぬらりひょんのお爺ちゃまもそうだけど」

 

「ええええええええええええ!?」

 

 予想はつきます。大翔くん、年輩の方の話を聞くのは何よりの勉強だって思っている方ですから。あと、おつまみとか作って持っていったり、その場で作らせて貰ったりしているのでしょう。

 

「側近の妖怪さん達にも力を示して、お爺ちゃまやお婆ちゃまの精神干渉も撥ね除けたもん。その上で年長者をちゃんと立てるからって人気者だもんね~」

 

「いや、翠屋のシュークリーム様々だと思うんだけどな」

 

「み、三毛ばあさんの干渉を撥ね除けるなんて……」

 

「完全抵抗は難しかったから、自分に逆暗示をかけておいて何とか防いだって感じだったけどね。普段から対策は打っておくものだと改めて思った出来事だったな」

 

「あ、次回はソーナちゃんや朱乃ちゃんや椿姫ちゃんも含めて、みんなでご挨拶だからね? 向こうも都合がつきそうな神クラスを呼ぶって言ってたし☆」

 

 普通に話が大きくなっている気しかしませんが、大翔くんの婚約者としてのご挨拶ならばしっかりと務めるだけですね。日程調整はそれこそ一、二時間確保出来れば日単位に置き換えられるわけですし……。

 

「小規模ながら一つの勢力だな、これは……守秘の誓約を今回の解決と共に求められる理由が分かったよ。酔いとかでうっかりというのも許されないからな、このレベルになると」

 

「多種族が入り混じってるわけだし、それぐらいで行かないと飲み込まれちゃうからね~☆」

 

 この後、結界を解除してリアス達とも合流して、デバイスの改良を実演で見たライザー達は感謝の意を伝えながら帰っていきました。なお、ライザー眷属の猫又姉妹は参曲さまに話を通すのではなく、黒歌や小猫ちゃんに手ほどきを受けたいと懇願していましたね。

 

 ただ、大翔くんも私も勘違いをしていたのですが、ライザー眷属の彼女達が仙術を身につけることは実質不可能だったのです。

 黒歌によれば、仙術を身につけるための素養自体が黒歌や小猫さんのような猫又の上位種族である猫魈であるか、あるいはそれこそ何百、何千年もの修行の果てに辿り着くという仙人になれなければ、そもそも身につけられないとのこと。

 結局のところ、妖怪であれば素養を持てる妖術でも精神異常を防ぐことは出来るとのことで、そちらを身につける方向性に落ち着いたのでした。

 

「……どうするかな。黒歌や白音は俺の身内という認識をしてくれているけど、俺達から転生悪魔になってしまっている彼女達に教えること自体、結構グレーゾーンだって感じがするんだけど」

 

「それはおいおい考えましょう、大翔くん。私達が立ち会うのが前提だけど、あえて鉢合わせするようにしてもいいと思うわ」

 

「そうだね。家族の外の話だし、頑張り過ぎる必要はないか」

 

「ええ」

 

 それより帰るつもりが無い様子のグレイフィア様を何とかしないといけませんが……以前より誓約に縛られていることですし、リアスに任せていっそ帰るのもありでしょうか。

 

「ソーナ、待って! 私明日の朝日を拝めなくなるから!」

 

「悪魔にとっては日光は毒でしょう、気にしなくていいのよ」

 

「お月様すら見れなくなるって言ってるのよっ!」

 

「お嬢様? 一体それはどういう意味でしょうか……!」

 

 地雷を的確に踏み抜いていくスタイル。流石リアスね、全く憧れないけど。ってあら? 小猫さんと帰ったはずのレイヴェル様が部屋に戻ってきましたね。

 

「お手洗いに案内してたんですけど、お帰りになられたんですか?」

 

「信じられませんわっ、お兄様ったら解決したからって私を忘れて帰るだなんてっ!」

 

「早速教えてもらった連絡先が役に立つとはね」

 

「え? 冥界とどうして、普通の携帯型通信機で連絡が──」

 

「通信用の魔法陣を電子化して、回路に組み込んであるんですよ。──あ、先程はお疲れ様でした、空知です。ええ、ええ、そうなんです。レイヴェルさんが──え? ああ、はい、分かりました。グレモリーさんにそのようにお伝えしておきます。はい、それではまた」

 

 しれっと高度な技術を披露する大翔くんに置いていかれた格好のレイヴェルさんや聞き耳を立てていたグレイフィア様が愕然とする中、大翔くんはライザーとの通話を終えてしまうのでした。

 

「ひろくん、どうしたの?」

 

「明日迎えに行くから、今日はそのままグレモリーさんの家に泊めてもらうように言ってくれと。その、お楽しみの時間に突入してるから、邪魔するなって……」

 

「おにいさまぁああああああ!!!!」

 

「即効で盛ってるわけですね、あの人達は。流石に同情します」

 

 すずかさんの問いかけへの大翔くんの答えにレイヴェルさんが本気で怒り、小猫さんが彼女の肩をぽんぽんと叩く中、グレイフィア様が大翔くんへ詰め寄ろうとしますが──お姉様がさせるわけもありません。

 

「申し訳ありませんが、この後お時間を頂けますか?」

 

「お断りだよ☆ ひーくんがグレイフィアちゃんに時間を割く意味合いがないもん☆」

 

 間に割って入る形でお姉様は静かに魔力を高めていきます。本気で潰すという意思表示を顕わにしながら。

 

「貴女には聞いていません、セラフォルー。彼は放置するにはあまりに危険です。いかに貴女が庇護し、シトリー家とアガレス家が後ろ盾になろうとも、ルシファー様の女王として捨て置けません」

 

「自分達の都合のいい手駒に出来るかどうかってことじゃない☆ 捨て置けないとか良く言えるよね?」

 

「……セラフォルーさん。逆にここで潰しちゃ駄目なんですか? ひろくんの害にしかならないことは良く分かりましたので」

 

 すずかさんもそろそろ我慢できないと前に出てきます。お姉様を含めた今の私達ならばグレイフィア様一人であれば、恐らくは勝てはするでしょう。ただ、その後はルシファー様を筆頭とした悪魔全体を敵に回すことになる……!

 思わず、縋るように大翔くんを見てしまう私にそっと彼は頭を撫でてくれて──。

 

「銀髪の殲滅女王と殺り合えるなら、俺も混ぜてほしいな」

 

「ど阿呆」

 

 ただ、大翔くんが口を開ける前に、乱入してきた顔馴染みの方達がいたのです。白龍皇ヴァーリ、そして堕天使の長、アザゼル総督が。

 

「……いきなり頭を殴るな、アザゼル」

 

「お前がいきなり喧嘩を吹っ掛けるからだろうが。──久し振りだな、グレイフィア」

 

「アザゼル、なぜ貴方がここに──!」

 

「そりゃ簡単なこった。こいつらの妹分が迎えに行くと言って聞かないもんでな、代わりにすぐ連れて帰るといって何とか待機させて、俺がすっ飛んできたのさ」

 

「そういうことではありません。堕天使のトップがなぜこの場にいるのかを聞いています」

 

「ああ、大々的にゃ喧伝してないから無理も無いか。空知大翔とその家族は堕天使勢力の保護対象なんだわ。あと、駒王町の出入りについては朱乃の関連でそっちにも認可をもらってるだろ? なんで今回は大人しく帰るこった。しかるべきやり方でそっちにも改めて通知するからよ」

 

 視界の隅で朱乃とふと目が合うと、一つウインクを返してきていました。総督への緊急通信手段を持っていたのでしょう。あとは総督もいつものように海鳴にいたんでしょうね。渋々ながらグレイフィア様が冥界へ戻っていくのを確認して、総督は悪戯を成功させたかのごとくニヤリと笑います。

 

「よし、お前ら帰るぞ。シトリー夫妻もアガレス夫妻も連絡取ったら、打ち合わせのために準備するって言ってたしな。帰ったら転移魔法陣でお出迎えして封時結界で時間確保だ──ん? そいつはフェニックスの娘か? 魔力が独特だしな、血でも抜いて研究した──いでっ!」

 

「駄総督、馬鹿なことを言ってないで戻るぞ」

 

「てめぇ、すぐに反撃しやがってからに……」

 

 このやり取りにぽかんとしてしまうレイヴェルさんには後で説明しますと断った上で、私達は海鳴へと帰っていくのでした。




感想で気づいたのですが、
レイヴェルさん絡みの小ネタを飛ばしていたので、海鳴へ連行です。
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