※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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第111話 癒しの時間の後は

「ねえ、レイヴェル。貴女は空知が怖いって言ったけれど、見ての通り素直に助けを求めれば無碍にする男じゃ決して無いわ。怠惰については叱られるけど、変に考え過ぎずに懐に飛び込んでしまえば、至れり尽くせりよ、ほんと。友人でこれだから、朱乃や小猫は骨抜きにされるはずだわ……ってこれは余計ね」

 

 治療をひとまず終えたカテレア様を寝室へと運んだ後、晩酌を続ける組と、そろそろ就寝準備に入る組に分かれようとし始める中、怖いのは怖いままでいい。オーフィスが常に近くにいる時点で恐ろしいに決まってるとリアス様は笑いながら、私に話しかけてきました。

 

「なんで笑ってられるのかって? ふふ、この滞在中にしっかり話してみることよ。なにせ一週間弱もあるのだから。私やイッセー達が同席してもいいし、そういう場所に混じってくれてもいいわ」

 

「同席頂けるのは非常に助かりますが……」

 

「どの道、私も貴女も空知とは長い付き合いになる可能性が高いのよ? 空知はソーナやセラフォルー様、シーグヴァイラのフィアンセなんだから。シトリー家兼アガレス家の一員として、公の場にもいずれ出てくるわ。そして、多少の軋轢なんてあっさり跳ね除けてしまうでしょうし」

 

 それは分かります。彼や彼の周辺だけでなく、大公を務めるアガレス家や現魔王を輩出したシトリー家のバックアップに加えて、堕天使の庇護下でもあり日本神話とも友好関係である……普通に敵に回したくない相手ですから。

 

「個人的な誼をしっかり作っておくことを、私としてはお勧めしておくわ。なにせ、身内には牙を剥かない『忠犬属性』なんだから。生えるのは猫耳なんだけど……結構、愛らしいのよ?」

 

 明るい調子のリアス様のアドバイスを受けながら、私は不意に理解に苦しむ言葉を聞いた気がしたのです。

 

「え……? 耳、ですか?」

 

「尻尾も生えるわよ」

 

 私は理解不能といった顔を浮かべたのでしょう。リアス様は笑顔のまま、すぐに種明かしをして下さいます。

 

「なんでも小猫達の力を写し取った副産物らしいんだけどね。んー、何より見た方が早いわ!」

 

「え、ちょ、ちょっとリアス様!?」

 

「──空知っ、短時間でいいから、もふもふ見せて欲しいんだけど! 治療を頑張った女性陣の慰労を込めて!」

 

「え、もふも……」

 

「ひろくん! グレモリーさんの提案は素敵だと思う! お猫様だよ!」

 

「まぁ、それは素敵なご褒美ですわ。大翔様、叶えて頂けるなら大変嬉しく思います」

 

「大翔、私も耳と尻尾出すから大丈夫にゃ!」

 

「何が大丈夫か分かりませんが、私も兄さまだけに出せとは言いませんので、お願いしたい……にゃ?」

 

「わぁ、空知さんが猫魈モードになると、家中の猫さん達も集まってきますもんね! 見てるだけで幸せになれちゃいます!」

 

 リアス様の言葉に月村さんが空知さんに喋らせない勢いで食いつき、グラシアさんや黒歌さん達も大賛成してしまいました。嬉しそうにアルジェントさんも瞳を輝かせていますし。

 

「いやあ、まさかこんな力まであるとはね。うん、やはり君は面白い。それに、これは女性陣に好評なのも分かる。ほんと、もふもふだね。この家の飼い猫達も集まってきてるし、なんとも微笑ましいな」

 

「いつ見てもこの光景は圧巻。猫まっしぐら。……我も混じる」

 

 空知さんや黒歌さん達から生えてきた猫の耳と尻尾。すると、どこからともなく、この家のたくさんいる飼い猫達も甘えるような鳴き声をあげながら、どんどん集まってくるではありませんか。

 

「オーフィスまで猫みたいに丸くなってるし……ふ、ふふ、済まない。想像出来ない状況に笑いが出てしまったよ」

 

「これも俺の日常だよ、ゲオルク……うん、徐々に慣れてくれ」

 

「りょ、了解した、だ、駄目だ、すまん、笑いのツボに、あはははは……」

 

 結論から申しますと、アルジェントさんの後に私もご許可を頂いた上で触らせて頂きました。綺麗なグレーの毛並みでとーっても、もふもふでした。そして、終始恥ずかしそうな空知さんの表情が愛らしさを増してしまうのですね。

 順番が回ってきた姫島さんとテスタロッサの妹さんの頰がものすごく緩んでいるのを横に見ながら、順番が終わっても月村さんの家の猫さん達が膝の上で寝転んでくれているので、癒し効果は継続されていて──。

 

「あら、あなた。膝の上と頭の上にも猫ちゃんが」

 

「……うむ、懐かれてしまった。これは動けんな」

 

 姫島さんのお父様であるバラキエル様にも数匹が集っていて、食べることも飲むことも出来なくなった状況に、奥様が『アーン』をして食べさせているのが、なんとも印象に残るひとときでした。姫島さんも後でその手伝いに加わって、バラキエルさんも嬉しさの中にもどうにも照れ臭そうにしておられましたね。

 

 大公様達も詳細な打ち合わせは明日以降ということで、朝の鍛錬に向けてということもあり、カテレア様の治療が終わってまもなく晩餐を切り上げられました。私のトレーニングウェアもいつの間にか用意され、私も明朝の鍛錬というか、朝の走りこみに参加するのが確定していたようです……。

 

「走り込みと柔軟の後は、私は模擬戦をする皆さんの治療に回るんです。それ自体が神器を使いこなす鍛錬になるからって。あとは空知さん達の回復魔術も併用して、相乗効果を高める訓練もやってます!」

 

 アルジェントさんだけでなく、もう一方の線の細い女顔の男性も、その姉的立場のデイウォーカーの彼女も可能な限り鍛錬に参加しているそうですし、まあ、積極的に学ばせて頂くいい機会と捉えるべきでしょうね。

 

「アーシアのお陰で思いっきりやれるのは大きいよな! 実戦だとこうは行かないだろうし」

 

「レイヴェルも模擬戦の見学をしてみるといいわ。空知とヴァーリだけじゃなくて、どこの頂上決戦だって組み合わせが結構見られるから。まあ、お兄様には劣ると思うけど……ええ、そうよ。そうだといいわ……きっと……」

 

 なんだかリアス様の語尾の尻すぼみ方が怖いような、逆にちょっと興味を惹かれるような……そんな気持ちを抱きながら、私の封時結界内の一日目は更けていきました。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「……思った以上に酷かったね、これは」

 

「クルゼレイ・アスモデウス。どうも女の愛し方を勘違いしてるのかにゃ? カテレアもなまじ力のある女悪魔だからこそ、ここまで耐えられてしまった。でも、とうとう身体が悲鳴を上げてしまったのね」

 

「身体の内部も傷ついてますけど、魔力や気を巡らす経絡も激しく乱れていて、場所によっては千切れかけてしまっていましたから。何とか繋げばしましたが、感情が激しく揺れ動いたり身体に無理がかかればまた悪化しかねないです」

 

「でも、クルゼレイちゃんがカテレアちゃんを本気で思っていたのは同世代では有名な話なんだよね。あえて、こんなに痛めつけるやり方をするかなあ……?」

 

「黒歌や小猫さんの診たてや、お姉様の話を聞いた限りにはなりますが、仮説を立てることは出来ますね」

 

 アスモデウス家は『色欲』を司る家系。強制的に相手を発情させたり、全ての刺激を快楽に変換するような力を持っていると推測はつきます。恋愛感情を植えつけたり、別の人に恋愛の熱をそのまま向けさせたり出来る、私のシトリーとしての力から考えるなら、アスモデウスもそれ以上のことが出来そうです。

 

 もちろん大翔くんを慕う女性陣で試したわけではありません。普通に効かなかったり、一定時間で解けた後に私が袋叩きになるでしょうし。ストーカー被害に遭っている生徒の相談を受けて、相手の心の向く先をちょっと二次元のイケメンや美少女に差し替えてあげたりしたぐらいで。あとは『裸にさせたり、相手の秘密を暴く事ができる』能力について模索したことにより、心を丸裸にすることで、相手の本心を色々曝け出してもらうことが出来たりとか。シトリーの力も方向性を調整したりすることで、様々な心への干渉が可能と分かってきていました。

 

 なお、私の検証には女性眷属達の協力がありました。皆には感謝しかありませんね。特に桃や憐耶、留流子の匙への熱い想いは心の中にずっと仕舞っておきますから。というか、王として他言は絶対に出来ません。女同士、墓まで持って行くレベルの話でした。

 なお、深層意識のレベルまで語ってしまった記憶は、本人達の同意というか懇願もあって封じる処置を取りました。記憶というものは忘れさせるように暗示や魔術をかけようとも、そう都合よく削除が出来るわけではありませんので、自分の無意識下に深く封じるように誘導したといったところです。

 

 ……ええ、すぐにでも匙と結ばれたいとか、その結果、赤ちゃんが出来ても必ず産むだとか、今の眷属の収入で十分既にやっていけるから何とかなるとか、私に負けず劣らずといった感じの『女の情念』を見せ付けられましたから。三人が競い合うように匙への想いを深化させる中で、最近の私に影響を強く受け過ぎたのかもしれません。匙と三人には早めに領地の分配やら、将来への方向性を形にした方が良さそうです。……男の甲斐性がすぐにでも求められそうですよ、匙。

 なお、椿姫は何というか、最近の椿姫の行動を言語化したといった感じでしたね。なので、特に記憶を封じる必要もなく、本人も言葉として再確認できたと平然としたものです。ただ、大翔くんとの交わりについてより自重しなくなったというところはあるのですが。

 ただ、私達はあくまで学生の身分なのであって、私も含めてその辺りを忘れがちだと思うのです。この辺りは眷属間で一度、互いに再認識する場を持つようにしましょう。

 

「ソーナちゃん、どういうことかな。考え込んでちゃこちらは分からないよ?」

 

 いけませんね、自分の思考に意識を割き過ぎていたようです。お姉様に一言詫びてから、あくまで私個人の推察と前置きをしてから話します。

 

「アスモデウス家は七つの大罪と呼ばれる『色欲』を司る家系です。シトリー家も色欲に関する力を持つ血筋ですが、より強力な力を持っていると思って差し支えないでしょう。身も蓋もない言い方をしますが、強制的に発情させられて好悪の感情など関係なく抱かれないと気が狂うレベルまで追い込まれたり、全ての刺激を快楽に変換するような力を持っていると予想はつきますね。それこそ、殴られても刺されても頭が麻痺するほどの快楽に変換させられるぐらいは出来ると思いますよ」

 

 はい、みんなドン引きしない。大翔くんの今の力なら同じことは出来ますから。それをやらない相手だからこそ、私達は彼についていくのでしょうに。

 

「なので、本人の愛撫や挿入にしても、技術を一切磨かなくても相手は勝手に連続絶頂し続けることが出来ます。なので相手によって責め方を変える必要もないですし、自分が気持ちいいように動けば相手もイクわけです。努力する余地がないですよね」

 

「カテレアちゃんもクルゼレイちゃんと随分と付き合いは長いし、それが当たり前になっちゃってたのかな……。でも、頭は気持ちいいと感じても、実はずっと思い切り乱暴なやり方をされ続けていたとしたら……」

 

「カテレア様やそれこそクルゼレイ様に聞かなければ本当のことは分かりませんが。ただ、内部の傷つきようや、経絡もボロボロだったとなると、異常な交わり方が彼らにとっては普通で、それを変だと指摘する者もいなかったこともあり得るかなと思いまして」

 

 男女間のプライベートの話でもありますしね、そんな話を赤裸々に出来る相手などそういるものでもありませんから。

 

「学生時代とか、カテレアちゃんがクルゼレイちゃんを悪く言うことって、まず無かったしね。あはは、これはあり得るのかも……」

 

「えぇ……あまりにクルゼレイって男が残念過ぎないかにゃ? 魔王直系の血筋よ?」

 

「ですから勝手な仮説ですよ。身体は悲鳴を上げているのに、本人が虐待と思っていないのなら、残念な男に染められた相手かもしれない。与太話の延長ですよ」

 

「まぁ、目の前で倒れられたから兄さんやすずか達が措置をしたわけで、本人がこの後どうするかはその人が選ぶ話だもんね。私達に関係ないと言えばそれまでだよ」

 

 フェイトさんの言う通り、彼女は大翔くんのパートナーでもないわけですし、体調と内部の傷がしっかり回復するのを確認してお帰り願えばいいのですから。

 

「ならば、貴女達の言う『普通』というものを教えて頂きたいものですね」

 

「カテレアちゃん! ……大丈夫!? 痛みは出てない?」

 

「貴女達の話し声にあっさり目が覚めるぐらいには、身体は軽くなりましたよ。助かりましたよ、礼を言います」

 

 隣の寝室から姿を見せた彼女は随分と顔色が良くなったようです。すずかさんや黒歌達といった熟練の回復役が総出で直したのですから、効果は覿面ですからね。

 

「私も随分と魔力の操作が重たい感覚があったのですが、こうも軽くなるとは……この状態が久し振り過ぎて逆に戸惑ってしまいますよ」

 

「……まだ、無理は禁物です。回復途上なのは間違いないですから」

 

「ええ、強めに力を使おうとすると鈍い痛みが出ますからね。今は軽い体内の魔力操作だけに留めていますよ。今回をいい機会と思って、しっかりとこの封時結界内の数日で回復に努めさせてもらいます」

 

「毎日、診せてはもらうからにゃ。白音の言う通り、油断は出来ないんだし」

 

「敵対行動を封じられている身ですし、ご随意にどうぞ。さて、ところで貴女達の普通というのは、一体どういうものなのですか?」

 

 飄々とした感じの受け答えの彼女は、軽い調子で話を強引に戻しにかかりました。面白がっている節すら見えますが、言葉にするとなればこれはなかなか難しいかもしれません。個人個人の感覚的なところもありますし、果たしてそれがそのまま伝わるものかどうか……。

 

「ひろくん、どこに行くの?」

 

「いや、生々しい話になりそうだから、別の部屋で待ってようかなと……」

 

「我、大翔を確保」

 

 とりあえずそーっと立ち去ろうとしていた大翔くんは捕まえた上で、シーグヴァイラや飲み物の替えを持ってきてくれていたミッテルトやカラワーナもその場に加わり、私達はそれぞれの感覚を口にし出すのでした。




というわけで、次話から女性陣の赤裸々話からエロスへ走っていきたい所存。
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