※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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第114話 憑き物が取れて(※)

「大惨事だね……私もかなり身体が重たいし」

 

「私やすずかさんもしばらく戻ってこれなかったぐらいですから、他の皆が失神するのも無理はないかと……」

 

「共有をカットしたのにそれでも二人は繋げるのか、また……」

 

「私とソーナさんが互いに繋げ合うだけなら普段とそこまで変わるわけじゃないし、大丈夫だよ?」

 

 発情の疼きが完全に収まった上に身体が深い満足感を得ていることから、意識が一時薄れながらも深く激しいオーガズムを身体が堪能したのだと分かります。大翔くん曰く、私の中も痛みを感じるほどの締め付けだったらしく、さらに周りで失神している皆も細かい痙攣を繰り返している辺り、まだ軽い絶頂感に身体が捕らわれているようです。

 しばらく意識が薄れたものの、私は疲労感の中にも身体の満足感や充足感を強く感じたのでしょうか、適度な運動の後にも似たスッキリした心持ちになっていました。すずかさんの表情を見る限り、彼女も似たような体感なのだと判断して間違いはないようです。

 

「凄すぎてなんだろうね、覚えていられないというか。あの乱入者さん思い知れって感覚でみんなで悪ノリしたけど、これはダメだね。みんなイク感覚に慣れてるからか、わりと簡単に登りつめやすくなってるから……これだけ繋げ合うと、本当に意識飛ばすしかなくなっちゃう」

 

 話しながらも、私達は皆の身体状態をサーチして心音の異常など無いかどうか、確認を進めていきます。過剰な快楽信号を脳が負担になると流石にカットしたようで、命に関わることもなさそうで大丈夫そうですね。

 

「今後は共有の全体化は禁止。全員をわざわざ繋げなくても、しっかり一人ひとり相手をするんだからさ」

 

「り、りょーかいにゃあ……」

 

「意識があるだけで、正直動けないですからね。発情期があってこういう感覚にある程度耐性がついている、黒歌姉さまですらこの体たらくですから……私も少しの間、意識を失っていましたし……」

 

 私やすずかさんと同じく発情期があって気の扱いに慣れている黒歌や小猫さんですら、意識はあっても身体がままならない様子。……いったい、私やすずかさんの特性はどうなんだという話にもなりますが、それはそれ。

 

「あ、動けないから助かるにゃあ……えへへ、背中がまた広くなった感じがするにゃ、ふふふ」

 

「そっと抱き締められて移動してる感じですもんね。あ、兄さまの匂いです……♪」

 

 大翔さんの空いていた背中と片腕に二人とも風の魔術でそれぞれ運ばれて、黒歌と小猫ちゃんも私の感覚のみですが共有化を済ませます。すずかさんと私の二人分は即座に意識が飛ぶ未来しか見えないからという話でした。

 

「それでは大翔くん。繋がりあったまま、愛を語り合うとしましょう?」

 

 私のお腹の内側が彼の分身に向かって、休むことなく分泌液を塗りつけ続けながら、たわいもないお喋りに興じる時間が時計の針が半周と少し経った頃、私達は軽いオーガズムに包まれ続ける、なんだか不思議で暖かくて幸せな時間を共有することが出来ました。

 大翔くんの吐精もこれだけ長く続いたのは初めてではないかというほどの長さと量でした。勢い良く一気ではなく、一定の強さで繰り返し繰り返し、気持ち良かったのだと身体が訴え続けるように。

 

 そんな私達の様子をいち早く失神したことで途中からこっそり意識を戻していた者がいましたが、息を潜めてこちらの様子を熱心に観察していることに、私達はわざわざ触れることはなかったのです。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「羽を出さずに長い距離を走るなどという体験でしたが、これはこれで面白いものですね。敷地内に小山の一帯を含んでいるから、木々の香りを感じながらトレーニングが出来る。悪くないと思いましたよ」

 

「もともとカテレアちゃんは、海も好きだったよね。冥界には海が無いからって、こっそり一緒に人間界に遊びに行ったりもしたっけ……」

 

「私の悪魔としての起源も海を司るところがあるからか、昔からそれは変わりませんからね。その辺りの意識があるからか、山も含めて自然に触れるのが性に合っているのでしょう」

 

 結界内での生活が三日目……現実世界では約三時間が経ち、折り返しに掛かろうとした朝。鍛錬にカテレアちゃんが参加したいと申し出てきて、一緒に走り込みが終わったあと、私はカテレアちゃんと組んで体の柔軟をこなしていた。

 あの過度に痛みつけられてしまっている状態を脱してしまえば、元々身体は強いカテレアちゃん。私と戦場を駆け回った時のような力を取り戻すべく、早速動き出している。

 

「しかし、私に掛けられた強制暗示は相当なもののようですね。多少なりとも力は戻ってきているはずですが、打ち破れる気配がありませんし」

 

「すずかちゃんだけでなく、黒歌ちゃんの仙術や妖術の合わせ技だからねえ……」

 

 私もやられたとしたらそう簡単には行かないだろう。解析だけでどれだけ時間がかかるやら、想像はしたくないなぁ。力技で行くとしてもどれだけの魔力を消費することになるか分からないし、あげく解けませんでしたなんてこともあり得るもん。

 

「まぁ、自力でこの暗示が破れるくらいにならなければ、セラフォルーに勝てるわけもありませんからね。貴女への妬みを力に変えて、せいぜい励むとしますよ」

 

「ん……私も力を高めてるからね。そう簡単には負けてあげないよ?」

 

「そう来なくては超える楽しみもありませんよ、ふふふ」

 

 あの感覚共有の夜を経て、もう一晩私達の交わりを見ることを望んだカテレアちゃんは色々思うところがあるみたいだった。私への対抗心は変わらないけど、それだけに固執するわけじゃなく、学生時代の私が目標だったカテレアちゃんに戻っていっている──そんな感覚を覚えるんだ。

 

「魔道具など必要なものも色々置いていますから、一度あちらに戻りはしますが……静養などと理由をつけて、彼らとはひとまず距離を空けるとしますよ。クルゼレイの考え方を修正できるのが一番いいのですが、それを実行するにも私がまず力を完全に取り戻さなければなりませんし」

 

「うん。ひーくんに話は通しておくから、マズい状況になりそうだったら姫島神社に飛んできてね。誰かの使い魔がその辺りに常にいるから、不在でもすぐにこちら側に伝わるし」

 

「そんなものは不要と言い切りたいところですが、今の私ではそうはいかないですしね。いざとなれば使わせてもらいますよ」

 

 余分な肩の力が抜けたカテレアちゃんはそう遠からず、本来の力を取り戻す。そう私は確信できた。

 

「……おじ様、どうかなさったのですか。シェムハザ様から何か?」

 

 そうしてストレッチが終わる頃、シェムハザちゃんからの連絡が入ったからと朝練に参加していなかったアザゼルちゃんが顔を歪めながら、こちらに近づいてきていた。私達が封時結界内にいても時間の流れを合わせて連絡できる専用の通信室──入室時に生体認証が必要になっていて、シェムハザちゃんとか一部の幹部しか利用できないけど──それを使う必要がある知らせだということだった。

 

「正直、悪い知らせだ。おまけにお前達にも関係あることときた。ただ……これだけ大人数となると、聞いて欲しくない奴も混じってるしな」

 

 そこで目を向けたのは私やお父様やお母様、そして大公様たち。そして、カテレアちゃんやあの『絶霧』の使い手の男の子。

 

「堕天使側の不祥事だから、悪魔勢力の重鎮方には聞かせたくない話ってとこかな? まぁ、俺やカテレア女史は暗示でそもそも彼らへの敵対行動を封じられているから、害は無いと思うけどね」

 

「……何を考えている、ゲオルク」

 

「堕天使のトップに名前を覚えられているとは光栄だね。なに、やっと彼の傘下に入ることが出来て、これから互いの理論や技術を盗み盗まれるという楽しい日々が待っているのにさ。……茶々を入れられるのは、興が冷めるんだよ。まして、元所属の連中が恐らく手を回したとなればさ」

 

「なに……っ!」

 

「この辺りは彼女のほうが詳しいさ。ね?」

 

 ここで彼に話を向けられたカテレアちゃんが皆の視線が集まる中、一つ息を吐く。

 

「この件は高くつきますよ。覚えておくことですね、ゲオルク。ともあれ、そうですね。いいきっかけなのかもしれません。こちらが提示する条件を飲んで頂けるのなら、話しても構いませんよ」

 

「へえ、話してくれるってのか?」

 

「私はあくまで魔王の座を取り戻すのが第一の目的。禍の団に所属しているのも元はその目的があるからですし……それに形式上、魔王の座を取り戻したとしても、セラフォルーを名実ともに超えられなければ意味はない」

 

 落ち着いた様子で薄らと笑みすら浮かべたカテレアちゃんは条件をあげていく。一つは身の隠し場所。そして、私達が行っている鍛錬への継続的な参加の承認。最後に、敵対的な行動が一切取れないという今の暗示を調整して、私との模擬戦が可能にすること。

 

「それって殆ど、大翔相手の交渉内容じゃねえか……」

 

「当たり前ですよ。どうして堕天使の貴方や現政権に近しい大公殿やシトリー卿に交渉を持ちかけるのですか」

 

「しかし、大翔が受けるとは限らな……」

 

「分かりました。ただ、条件の詳細を詰めるのは後でも大丈夫ですか? セラも含めて同席の上で」

 

「ええ、話が早くて助かりますよ」

 

「大翔ー!?」

 

 アザゼルちゃんがあっさり肩透かしを食らったり、まあそんなこともありつつ……。

 

「私も男を知らなさ過ぎた。セラフォルーのパートナーである貴方を見て、そう痛感したのですよ」

 

 身体が弱ると心も弱るのを痛感したとカテレアちゃんは言う。悪魔は人間を地獄に誘い、天使や堕天使を滅ぼすものだと信じて疑わないクルゼレイちゃんに、現魔王に対し復讐の鬼と化しているというシャルバ。その二人に同意する振りをしながら、実際は従属していたのに等しいのだと。

 

「そもそも私の思想とはズレがあった。それが心が弱っていたことや、クルゼレイへの情で自分自身がズレてしまっていた。私は『嫉妬』を司るレヴィアタン。嫉妬や羨望の感情を自らの力に変える悪魔。自らの悲嘆を嘆く暇があれば、貴女や現政権への嫉妬や羨望を力に、我が身を高めるべきだったのです」

 

「でも、カテレアちゃん。仮に手を出してくるとしたらどうするの?」

 

「潰すだけでしょう。クルゼレイの目を覚まさせてやるにもちょうどいい。付き合いも長いのです、一度ぐらいは更生の機会を与えてやってもいいでしょう」

 

 更生と書いて洗脳ってやつだね、すごく分かるよ。レヴィアタンの血筋を引いてるだけあって嫉妬深いところはあるけど、すっごく情が深いところもある。ただ、その対象になる相手が少ないだけで。

 

「ふむ……そちらの彼女の話も含めて、大翔くん。先に君達が話を聞けばいい。その上で私達に開示できる内容や必要な手立てを話してくれ。ソーナやセラフォルー達の身の安全を重んじてくれる君だ。私やアルジールはレイヴェルさんと共に、月村さん夫妻と朝食を頂いておくよ」

 

「シトリー卿に同じくだよ、ヒロ。ただ、シーグヴァイラが自分から関わろうというのは避けてもらいたいのだがな……」

 

「ヒロだけ矢面に立たせて、後ろの安全な場所で帰りを待つのが誇りあるアガレス家の振る舞いとは思えませんわ」

 

 聞く気はありませんと公言しているようなシーグヴァイラちゃんに、大公様は諦めたみたいに息を吐き、シーマリア様は変装のススメを説いていた。私もシーグヴァイラちゃんもそうだけど、姿を見せるだけで他神話勢力への影響を与えてしまう面倒な立場にいたりするからね……☆ 変身魔法だけじゃなくて、幻覚や幻視の魔術でも使えるものはどんどん使うようにと、熱の入ったアドバイスの入れ様だった。

 

「……ミッテルトさん、カラワーナさん、ドーナシークさん、レイナーレさん。ファリンに相談の上、朝食の用意を分けるように手配をして下さい。あなた達の朝食の用意も俺と同じ部屋に。それでいいですよね、アザゼルさん」

 

「おう。できればセラフォルーも聞いて欲しくは無いんだが、だが、ソーナに話す時点で結局は筒抜けだよなぁ」

 

「今の私は魔王レヴィアタンじゃなく、セラフォルーという名のひーくんのパートナーでしかないよ。まー、私もひーくんの力を取り込ませてもらってるから、純粋な悪魔ともう呼べる存在じゃないしね☆」

 

 私も同じ存在になりたいと望んだことで、まずひーくんのパートナーの基本能力になりつつある仙術を使うための素養とも言える猫魈の力を始めとして、堕天使や龍の力も私の中にしっかり息づいている。実はみんな猫耳とか尻尾を出そうと思えば出せるんじゃないかな? もっぱら仙術を使いこなすことに懸命になってるけどね。

 それと、堕天使の羽は出せるぐらいには力が馴染んできていた。龍の翼はもうちょっとかかりそうだけど、いずれ行ける感触はある。

 

「多重特殊能力者のバーゲンセールかっての……今更だけどよ」

 

「私にも関係があるということは、駒王町にも関わってくるのね?」

 

「……ああ」

 

 アザゼルちゃんが頷き、リアスちゃんやソーナちゃんも自分達の眷属にトレーニングウェアから着替えてすぐに再集合するように指示を出していく。ひーくんからも集合場所が口頭で伝えられ、皆口々に返事をしつつ、手早く汗を流すためにシャワー室へと走り去っていった。

 

「若旦那さま、うちら……いえ、私達もすぐに準備に掛かります!」

 

「頼みます、ミッテルトさん」

 

「バイキングに近い形で途中で人数が変わっても大丈夫なようにしますが、宜しいですか?」

 

「任せます、カラワーナさん」

 

 ひーくんの言葉に軽く身を震わせたカラワーナちゃんだったけど、すぐに居住まいを正し、まずは給仕服に着替えるため、ミッテルトちゃんと共に足早に家の中へと戻っていく。

 新しい自分の雇い主に差配を預けられたことに感じ入るところがあったみたいだ。ひーくんは狙ってやったわけじゃないだろうけど、彼女の意気に感じる性質を考えると彼女の心を掴んだ感がある。……むぅ、無性にムカムカするぞ☆

 

「ほら、レイナーレ。行くぞ」

 

「え、ちょっとぐらい休ませて……ちょっと痛いってば! 離しなさいドーナシークっ!」

 

 続けてひーくんに目配せして、頷きを返されたのを確認したドーナシークちゃんが強引にレイナーレちゃんを引きずっていった。彼は強者には敬意を持って従うタイプで、あと、ひーくんが紳士的な行動をよしとしてる考え方にも共感しているから、若い主人に堅実な執事としての振る舞いが既に馴染んでいたんだ。




書きたいものと読んでくれている人が求めているものが乖離してるんだなと強く感じている。
それでも「まぁこれぐらいで仕方ないか」ぐらいのつもりで書いていかないと、完全に更新が止まるわけで。

折り合いつけるのは難しい。
でも、好きなようにだけ書きたいのなら、公開しないってやり方もあるわけですしね。

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