一度禍の団に戻るカテレアさんに、魔力を通せば擬似的な秘匿念話が出来るブレスレットや、装着者が特定座標──姫島神社の境内──に即時転移できるアンクレットを渡して、まずはその辺りのレクチャーを行う。
『次元関係なく、転移可能な魔導具って本当に貴方は……おまけにこうして次元越しに普通に思念を送り合えるとは、こうして実際に体験しないととても信じられない優れた技術と言えるのに……』
テストで神社側には登校準備を終えた朱乃やグレモリーさん達に待機してもらっておいて、転移が問題ないことを確認。そして今は念話のテストなんだけど、会話中のカテレアさんが呆れているような。
『機能をブレスレットなりアンクレット一つに集約できれば良かったんですけどね。転移関係は安全第一なので、どうしてもこうなってしまうというか』
『そうではなくてですね……ああもう、セラフォルー。第二のアザゼルにしてはなりませんよ?』
『もちろんだよ~☆ うん、グループでの秘匿念話もうまくいってるね』
『大翔さんをおじ様のようになんて、絶対にさせませんわ、うふふ、うふふ……』
『朱乃とやら、その光力を引っ込めなさい。貴方の主が後退りしていますよ?』
ブレスレットの切替ツマミで個人向けとこうしたグループ通話も可能にしてある。個人通話の登録は俺、すずか、セラといった一部の人だけ。グループ通話は基本的に俺とすずか達──俺の彼女達に指定してあった。
『ミッドチルダの私とも接続良好です、大翔様』
『誰とでも秘匿念話となるとちょっと面倒だけど、今回は俺達だけだからね。俺と皆はナハトを通して直接パスが繋がっているし、通信用魔導具の核に俺の魔力をよく馴染ませれば擬似的なパスが出来る。後は次元を越える場合の自動演算高速処理を始めとして、通信の安定性を重視するようにしたんだ』
『私達だけの間なら通信機器いらないんだよね~。転送魔法使えばモノのやり取りも問題ないし』
あ。紗月の言葉で伝え忘れてたことを言っておかないと。思い出せて良かった。
『カテレアさん。伝え忘れていたのですが、転移の時に手荷物とかは一緒に飛べますので。両手にキャリーバッグ、背中にリュックサックぐらいは問題ありません』
『……流石にそこまでの荷物にはならないと思いますが。しかし、それならば……手土産がわりにあちらの書庫や倉庫に埋もれた魔術書や媒体も適当に持ってくるとしましょうか。魔導具の核には最低限なるでしょうし』
その言葉に内心で小躍りしてしまって感謝の言葉を伝えたのはいいんだけど、カテレアさんの声は呆れの感情が確かに混じっていた。
『普通、悪魔が所蔵する蔵書や媒体となれば、呪いの類など疑って掛かるべきですよ。恐らくはレジストや完全に無力化できると踏んでいるからでしょうが。ただ、発言の内容はより慎重になるべきだと助言しておきます。理解が及ばないモノに対して、知的生命体は恐れを覚え排除するように出来ていますから』
ああ、そうか。俺も随分と調子に乗っていたんだ。俺を理解してくれる人達が増えて、発言の内容が軽くなり過ぎていたのか……。
『そもそも、こんなことはセラフォルーが教えるべき仕事なのですがね。ま、私を保護するという酔狂な男へのこれっきりの気まぐれです』
『……ありがとうございます。助言、胸に刻みます』
『ふふ、あの者にも貴方の素直さの十分の一でもあればいいのですがね。ああ、そうそう。第二のアザゼルになるなと言うのは、小物の恐怖心を理解した上であえてぶっ飛んだ発言をしているから、より性質が悪いという話です』
セラからも激しく同意するとの声が飛んできて、アザゼルさんは動けば場を引っ掻き回すのが行動に染み付いているんだなと、その業の深さとシェムハザさんやバラキエルさん達のフォローの大変さを思うのだった。
胃薬もさらに改良するべきかな。もしくは気脈を整えに行く方が薬への耐性もつかないし、そっちの方がいいかもしれない。朱乃や朱璃さんに聞いておくとしよう。
◇◇◇◇
「副総督もお喜びになると思い、ますわ、んっ……♪」
「時間帯の、調整とか、何日おき……とかっ、お願い、する、よっ」
「はい、はいっ、私にぃ、お任せくだぁ、ぁぁ、さいな、はぁぁ」
昼休みに朱乃と二人で相談を持ちかけて結界を張って話をする中で、どちらからともなく俺達は唇を奪い合って、俺は手でとても収まりきらない朱乃の両胸を、朱乃は俺の肉棒を、それぞれの服の上から手で弄り始めていた。まだ直接繋がっていないのに、弱い部分を的確に責める刺激に、俺の声が途切れ途切れになったり、劣情をより高めるような愛しい嬌声が漏れ出てきたりしている。
「……ふふふっ」
「朱乃?」
濡れ羽色の髪と同じ色合いの潤んだ瞳が、俺を見つめてくれている。俺の両頬に手を添えて、啄ばむようにもう一度唇を重ねてから、朱乃は耳元で囁いた。
「大翔さんが遠慮なく私を求めてくれるようになって、嬉しいの。貴方にまた一歩寄り添えたのかなって」
ベンチに腰掛けた俺に跨る姿勢になった朱乃はストッキングを片足だけ外し、スカートを捲り上げて、ショーツをずらして出来た隙間から、俺のペニスをゆっくりと膣内へと迎え入れてくれた。朱乃の中は既に蕩けるような熱と潤いを持って、俺を包み込んでいく。
「あっ……!」
一番奥にコツンと当たる感触と同時に、腰ががくがくと震えて崩れ落ちそうになった朱乃を支えて、彼女の息が整うのを待つ。内側のうねりが途端に激しく、また強く締め付けられる動きになっているのに抗うのには、朱乃を支えるのに集中するぐらいで丁度良かった。
「大丈夫、朱乃?」
「はい……私の身体、大翔さんをお迎えするだけでこうして飛んでしまうから。貴方だけの朱乃になりたいって願い続けているから、身体も従ってくれてるの。だから、大翔さんの心の内にあるモノ、全部私にぶつけて?」
表向きは隠しているけど、緊張しているように見える。自分を抱くことで少しでも不安や無駄な力が取れるのなら、喜んで受け止めて受け入れたいからと。
「今回のコカビエルの迎撃と聖剣関連の問題について、やるべきことはしっかりやるつもりだけど……ただ、セラやサザトガさん達が俺への干渉を必死で食い止めてくれていることや、ぬらりひょんさんや参曲さん達の協力体制とかを思うと、きっちり分かりやすい結果は必要なのかなって。それは圧倒的であればあるほど、悪魔の上層部への牽制になるから、より望ましいと」
祐斗の本懐を遂げさせて、かつ、聖剣を奪われた勢力の本格的介入をされる前にこちらで奪われた聖剣を処理すること。そして、街や住人への被害を出すことなく、コカビエルを無力化する。全てをクリアーするのは難しいけれど、不可能ではないレベルだからこそ、どこかで気負っている自分がいた。
「……えいっ」
「あ、ううっ……」
きゅぅっ。うねうねうね。ちゅぅぅぅ。
朱乃の掛け声と共にヴァギナ全体が一気に蠕動と収縮の動きを活発化させたため、俺は思わずうめき声を漏らす。精を搾り取るための動きに腰が一気に浮きかける。
「うふふっ、大翔さんに激しく口づけしてる私の子宮の入口に濃厚なおちんぽミルクたっぷり注いでしまいましょう? 我慢のきかないハシタナイ雌穴をしっかり躾けてくださいな……」
耳元で再び囁く朱乃の声が淫魔の誘惑に聞こえてくる。下半身にさらに熱が集まっていく自分を自覚しながら、朱乃のお尻にハート型の尻尾が生えてないか思わず確認をしてしまった。
「そんなに力を入れなくとも、問題なくやれますわ。大翔さんと私達皆がいるのです。圧勝する必要があるなら、完膚なきまでにやってしまうだけのこと。ヴァーリくん一人で制圧出来る相手を私達全員ならばオーバーキルもいいところです」
膨張した俺のペニスを包み込んで離さない膣内の動きはそのままに、俺の頭をぎゅっと抱え込むように抱き締めて、声色だけが普段の朱乃のもの──いや、艶は隠しきれていないけれど──になって、聞き分けの無い子供を諭すように言い聞かせようとしている。
「それに万が一ですけど、失敗したとしたら、とりあえず全力で逃げて……みんなで海鳴に移住してもいいのでしょう? そうなれば、私はお父様とお母様も強引に連れて行きますし、ソーナ達もどちらかを選ぶでしょう」
「選ぶ……ああ、それはそう、だよね」
シトリー領の次期当主や現魔王でもある、ソーナやセラは……。
「ええ、領地ごと転移させるか、親族だけを連れてくるかを選択するでしょう」
「……あれ?」
「私はもとより、ソーナ達も大翔さんと離れられるわけがないじゃないですか……もうっ」
「ううっ!?」
痛いまでの締め付けがおしおきとばかりに、朱乃は攻勢を一時強めてきた。シーラさんだって離れる選択肢など始めから頭に無いのだと、朱乃は懇々とお説教モードに入ってしまう。
「私達は大翔さんから引き剥がされたら、遠からずこの世のモノではなくなりますからね? いい加減、強くご自覚してくださいな。元々、海鳴側のすずかさん達だけではなく、私や黒歌、小猫ちゃん、ソーナ、椿姫、セラフォルー様、シーグヴァイラ様もっ」
名前を呼ぶ度に絶妙な強弱で搾り上げるような動きがどんどん強まっていって、俺は声を出す余裕も無くなり頷くことしか出来なくなっていく。
「大翔さんのぉ、女に対してはっ、強引に連れ去るぐらいでっ、いいんですっ! 俺についてこいと、言えばっ、皆喜んで連れ添いますっ、今際の際までっ、ずっとぉ、あぁ、あぁぁ、だからぁ! 命じて! 力を貸せって! 大翔さんの、望む結末をつかむためにぃ、ああ、私も、もう、もう──!」
迸りが朱乃の中へと注ぎ込まれていくのを自覚しながら、俺は朱乃をきつく抱き寄せていた。朱乃も俺の頭をかき抱く両腕の力が増し、彼女の興奮が高まったのも相まって、はだけてしまっている制服の俺の頭を受け止めてもなお押し潰されることのない二つの大きな母性の塊やその合間から、彼女の甘い匂いが強く薫ってきていた。
その香りに導かれるように俺の吐精は繰り返し長く続き、朱乃の腕に込められた強さと内部の蠢きが収まっていき、波が引いていくのにつられるように俺と朱乃は気を巡り合わせて息を整えていく。
「分かって頂けましたか? 私と大翔さんはこんなにも身体の相性も噛み合っているの。こうなった女が離れられるわけがないんですからね? それはもう揺るがないものなんですから、変なところで不安になる必要はありません。いいですか?」
「……うん」
「よろしいです、うふふっ」
微笑んだ朱乃と額をくっつけ合って、そして、また口づけを交わす。昂ぶってしまっていた身体を落ち着けるために、静かに唇を重ね合う。
「朱乃、愛してる」
「はい、私も……大翔さんを愛していますわ。それこそ、大翔さんが想像するよりも何倍も、何十倍も、強い想いでお慕いしていますから……ね?」
変に力んでいた気持ちや気負いは、朱乃の中へと吸い込まれてた感覚がある。そして、俺のそんな想いを取り込んでしまった朱乃は、しなやかに自分の新たな力へと変えてしまっているように思えたんだ。
◇◇◇◇
夕暮れ時にレイヴェルさんを迎えに来たひろくんとあの焼鳥さんが談笑しているのを見ながら、私は朱乃さんと並び立った位置になり、顔はひろくん達へと向けたまま声を掛ける。
「ありがとう、朱乃さん。今回は朱乃さんが適役だと思ったけど、ここまで影を取り払ってくれるとは思わなかったよ」
「あらあら、私はただ自分の想いをぶつけて、ちょっぴり怒って、そして……大翔さんの熱を受け止めただけですわ」
朱乃さんも私の方を向くことなく、ひろくん達へと顔を向けたまま。ただ、私も朱乃さんも穏やかな顔をしていることは見なくても分かっていた。
「……嬉しかった。やっと弱音をこぼしてもらえたの。すずかさんがいる場所へ、ようやく一歩近づけた。そう実感できたから。だから、今回の一件──必ず、最上の結果を出しますわ」
「うん。ひろくんに手出しすることを躊躇うぐらいの、圧倒的な勝利を。あれほどの霊刀だよ、戦闘狂の堕天使さんがどこまで我慢できるかな?」
「出てきさえすれば、封時結界へ隔離してその場でケリをつけます。結界内なら、セラフォルー様もおじさまだって動けるのですから」
魔力を通しさえすれば、即座にひろくんの側へ飛べる使い捨ての魔導具も女性陣全員に渡している。駒王町へ展開する協力者の妖怪さん達やアザゼルさん子飼いの諜報部隊用に妖力や光力を通せば擬似的な念話が出来る魔導具も譲渡済だ。なお、有効期間は一週間でそれ以降はただのアクセサリーになる術式の自壊機能付きだけど。
あの霊刀の持ち運びについてはナハトちゃんの協力がある。彼女の領域に格納してもらっているため、聖なる力が表に漏れ出ないようになっていた。
「……私や大翔さん達の幸せを崩そうとする者は、必ず排除しますわ。大翔さんの傍で咲き誇る私達は大翔さん以外の手で散ることなど、あってはならないのですから」
「そう、私達を壊していいのは、ひろくんだけ」
朱乃さんは同類だ。ううん、同類になりたいと願って想いを深化させ続けて、とうとう“私と同じ”領域まで来てくれた。昏い喜びが私の口角を吊り上げていくのが分かる。ひろくんに狂った女。そんな存在が私以外に現れてくれるなんて。
「まーた、禍々しい笑みになってるわよ、二人とも」
「アリサちゃん……」
「アリサ」
私達のストッパー役、最後の良心たるアリサちゃん。うん、アリサちゃんがいてくれるから、私はある意味安心して狂っていられる部分がある。
「朱乃。男が全部能面に見えたりまではしてないわね? 視覚まで歪めるのは勘弁してちょうだい。心の内でどう思うかは貴女の自由だけども」
「まだそこまでは。やろうと思えばそう時間はかからない確信はありますが」
「やめて。主も秘書も顔の判別できないとか、本当シャレにならないし、私を胃潰瘍で潰すつもり?」
せめて、冥界かどこかでの半隠居生活に入ってからにしてくれ──それはアリサちゃんの魂の叫びに等しいモノだった。アリサちゃんが潰れるのが本意ではない私達は顔を見合わせてクスリと笑ってから、承知しましたと返事を返した。
「返事の言葉や口調、タイミングまで揃ってるとか、あぁぁ……あー、朱乃もとうとう完全に突き抜けちゃったわねぇ……」
ごめん、アリサちゃん。ご迷惑おかけしてます。頼りにしてるし、アリサちゃんのことも大好きだからね?
「ちょ、ちょっとどうしたのよ、二人とも。なんでアタシを抱き締めて頭を撫でてるわけ~!?」
「アリサが可愛くて、つい」
迷惑料の先払いと、これからもよろしくの気持ちを込めて。アリサちゃん、本当にいつもありがとうね。
◇◇◇◇
「……厄介事か? どこか全員ピリピリしているじゃないか」
「色んな種族の、かつ地位のある女性を家族にすると決めた時点で覚悟はしていたので。まあ、避けて通れないってやつです」
レイヴェルさんを迎えに来たライザーさんと歓談している中での問いかけに、俺はそんな答え方をする。朱乃のお陰でやってのけるだけだと、変な気負いも消えた。朱乃達の力も目一杯借りて、一番いい結果をこの手に掴み取る、必ず。少し離れたところで此方を見守っているすずか達の瞳が澱みかけたのが気になるけど、アリサがうまく取り成してくれたみたいだ。
「ふん。どんな問題かは知らんが容易く潰れてくれるなよ。お前はこのライザーとその眷属達に大きな恩を売ったんだ。それを返すまでは決してくたばるんじゃない」
「その恩って、眷属さんと一緒に冥界を捨てて俺の協力者になってもらったりすれば、充分報いてもらったことになりますか? 衣食住と新しい立場は用意しますよ。もちろん収入源も。ただし、危険手当込みですけど」
「ぷっ、くくく……確かに、それは俺達が報いたことになるだろうな。結果的に俺は婚約を破棄出来るし、ユーベルーナ達と離れることもない、か」
あれ、冗談八割の提案だったのに、えらく乗り気で逆に驚いてしまう。ライザーさん、本気でユーベルーナさん達と一緒に居られる環境があればそれでいいって考えてるぞ、これは。
「おっ、お兄様っ!? な、なりませんよ!」
「何を動揺している、レイヴェル。今すぐどうこうというわけではないさ、なあ?」
そして慌てるレイヴェルさんを揶揄うぐらいの余裕も戻ったと。あ、イザベラさんがレイヴェルさんを宥める間に、ユーベルーナさんは『私も本気でも構いませんよ』と無音のまま唇を動かしていた。
「ま、同じハーレムの主同士、うまくやろうじゃないか。……手持ちのフェニックスの涙だが、くれてやる。魔力の消耗を抑えたい時にうまく使え」
最後の辺りは俺だけに聞こえる小声になりながら、学校帰りだった制服の内ポケットに捻じ込まれた小さな二本のガラス瓶。頷きだけを返せば、目の前のホスト系イケメンはニカッと笑ってみせた。様になるのがすごい。
「また近々会う羽目になる気がするぜ。グレイフィア様もあのまま引き下がるような女傑じゃないしな。ヒロム嬢にもよろしく伝えてくれ」
「大変お世話になりました。私も失礼させて頂きますわ」
そう言って転移魔法陣に入っていくライザーと、丁寧なお辞儀をしてから後を追っていくレイヴェルさんに、俺は自分の変化した姿があの娘とはとても伝えられなかった。
「大翔さん、どうかしたんですか」
考え込んだ顔をしていたのだろう、入れ違いにやってきた祐斗に問いかけられたのでその旨を伝えたのだが……。
「ええと、放置でいいんじゃないですか? 正直、もっと思い悩むべきことがあると思います」
すごく冷たい口調で言われてしまった。仰るとおり。さて、炙り出しにまずは全力を挙げるとしますか。