ただ、更新が滞るよりは、UPしてから修正すればいいという暴論に達しました(錯乱)
「ヒロが持っていると分かっていても、どうしても身体が強張るわね。破邪の霊刀……あまりの禍々しさに魅入られてしまいそうよ」
うっとりした口調で言う言葉じゃないと思うわ、シーグヴァイラ。ほんと大翔くんの前では自重するのを辞めてるわね、貴女も。
「悪魔の力が有効な時だと、手に持つにしても鞘に納めて何とかってところだね。駒を抜かないとまともに振るうのもしんどいぐらいのモノにはなったかな」
「大翔くんに悪魔の力を駒に封じて取り出せるようにしてもらって正解だったわね。今は波動の強さだけを感じるだけで済んでいるけど……ただ、コカビエルと戦う時は悪魔の力を封じているわけにはいかないし」
シトリー家の次期当主であるソーナ・シトリーとして動く以上、悪魔の力を取り出しておくのは本末転倒という話。シーグヴァイラもこの場にいるのだし、私だけが避けて通るというわけにはいかない。
「小猫ちゃんはその辺りは臨機応変にお願いしますわ。接近戦主体ですし、余分なダメージを負うこともありませんから。決着がついたら、駒を元に戻しておいてもらえば」
「それは朱乃先輩にも言えますよ。戦闘中は抜いておいた方が思い切って動けるでしょう?」
「あ、会長。私は駒を抜いて動きますね」
朱乃や小猫さんは戦闘部隊の一員なのでその判断で構わないだろう。リアスが苦々しい顔をしているのは見なかったことにした。ごめんなさいね、リアス。ただ、貴女の眷属が大きく傷つく確率を少しでも減らすためでもありますから。
あとは椿姫に好きになさいと返し、私は一つ息をつく。朱乃や小猫さん、椿姫は確かに全力で動くための最善を取ればいいのだから。大翔くんには手間をかけさせたけれど、私もここに来る前にしっかり鎮めてもらったから、憂いなく戦いに臨める。
「会長、学園全体及び校舎以外への二重結界展開完了しました」
「人避け及び認識阻害の効果も既に発動済です。お師匠さんからお借りした魔力増幅器の起動も確認してますので、いつでも強化可能です」
「ありがとう、桃、憐耶。あとは内側の結界を封時結界に書き換えるタイミングだけね」
先の大戦を生き残った古き強き者、コカビエル。この程度の結界効果、気にもかけずにやってくるはず。だからこそ、広い場所が確保できる学園に主要メンバーが集まり、大翔くんは霊刀を鞘から抜き去り、あえてその聖なる力を晒している。
「なぜシーグヴァイラ様はあそこまで近づけるのでしょうね。お師匠さんを信頼していても、これ以上近づくのを身体が拒否しますもん」
「大翔くんへの信用が突き抜けちゃってるんでしょう。あるいは彼になら斬り捨てられても構わないと考えているか」
「えぇぇ……」
問題しかないわね。シーグヴァイラも大翔くんのことになると、タガが容易に外れるのはよく分かったから。ただ、それがアガレス家の次期当主と考えると、私にも言えることだけど、問題行動の最たるものというわけで。
──まあ、どう外野に思われようと構わないのだけど。既に領民の皆への根回しは始まっていて、技術的に開示して大丈夫なところから、大翔くん印の生活に便利な魔導具の流通を活性化させている。開発元は私の婚約者という情報の流布も一緒に。この辺りはすずかさんの会社の技術部門が絡んでおり、また、原材料の鉱石等の確保はアリサの会社が動いていて、必要数の生産をサポートしてくれていた。
……こうして、月村・バニングス企業連合体とシトリー領との取引は既に始まっているのよね。時期は少し遅れるものの、アガレス領でも同じ動きになっている。
大翔くんの存在がシトリー領とアガレス領では不可欠になってしまえば、やりようは何とでもあるのだから。そのための実績を今は着実に積み上げる時期だもの。
「来たわよ、正面から」
リアスの言葉に私は駒を再び体内へと迎え入れる。途端に背中に感じる強烈な悪寒。ああ、私の愛しい男性はなんて業物を打ってみせたのかしら。
「結界の妙に薄い箇所が開け放たれた門とはな。私はどうにも熱烈な歓迎をされているようだな、んん?」
黒いローブを着た癖っ毛の長い黒髪に、極端に細長いエルフのような耳。そして、四対もの堕天使の羽。総督から示されていた特徴とも完全に一致する。その堕天使に付き従うのは眼鏡をかけた老人と、白髪の少年剣士──コカビエルが連れ去ったというフリードのはず──、そして、歩くのがやっとの様子の若者が二人。その若者達は両腕を拘束されたレオタード姿の教会の女性戦士と思しき姿だった。
「そして、すぐに穴を塞ぐと。誘い込んだつもりか、小童ども」
「貴方と思い切り戦うには、広く、かつ結界が強固に張れるところでなければなりませんから。この地の管理者たるグレモリーさんの許可の元で、わざとらしく誘いを掛けさせて頂きました」
私達を代表して大翔くんがコカビエルへ言葉を返す。リアスが自分をしっかり立てたことに満足気に頷いているものの、突出した行動を防ぐための持ち上げということに後で気づくかしらね?
「ああ、禍々しいまでの聖なる力だ。七つに分かたれたエクスカリバーが一つであった時や、デュランダルとも比べられる一振りではないかな。これほど分かりやすく招かれては、応えないのは無粋というものだ」
一方、コカビエルも誘いに乗った主な理由は大翔くんの存在なのでしょう。だからこそ、リアスにはほぼ目をくれていない。そして、あの霊刀が大翔くんが打った一振りだと聞かされて、さらに瞳を輝かせ始める。
「既に承知の上とは思うが、名乗らせてもらおう。我が名はコカビエル。三勢力の停戦状態を解除し戦争の決着をつけるため、この地にやってきた。聖剣を盗み出したのも天使共への挑発行為の一環だが……小僧。お前の名は空知大翔といったか。アザゼルのお気に入りであり、バラキエルの娘や悪魔どもの旧七十二柱の次期当主を婚約者とする男。日本神話とも繋がりがあるというお前の命を狩れば、戦争の種火が一気に業火になる最高の燃料だ」
お姉様とオーちゃん、ヴァーリくんは学園の屋上にて小型の封時結界内で待機している。余程のことがない限り、大翔くんに対応は一任することを飲んだ上で。……三名が出てきたら即時制圧可能でしょうけど、後始末が面倒くさいことこの上ないわけだから。お姉様は今回ばかりは人間界への転移許可を事前に申請済だけれど、決裁は取れていないとも言っていたし。申請済及び緊急対応案件だから、決裁を待たずに転移したで押し切ると言い切っていたけれど。
コカビエルの駒王町侵入については、リアスや私から侵入者へ対応する旨を伝達している。また、アザゼル総督からも魔王様達へこの一件は内々に伝わっていて、サーゼクス様自ら増援に向かう手筈を整えるはずだった。
ですが、ここで魔王であるお姉様が先に動きますとすぐに書面を提出してしまった。その書面の提出と同時にお姉様が既に冥界から出立していたために、逆に動きにくくなってしまっているようだ。普段はこっそりやってきているお姉様が堂々と移動したことで、これ以上は過剰戦力過ぎると古きご老人方が強い抗議をしているらしい。人間界の街一つのために、そこまで戦力を割くことはないと。
「この女達は教会からの刺客だったらしいが、部下でも充分に対応出来たし、かつ、私が加われば無力化も容易だった。聖剣を託されていたようだが、教会もなかなか人が不足しているらしい」
「その部下とはその男ですか。確か、その男は敵性行動が取れないように精神を縛り付けたんですがね」
「解除するにはそこそこ骨が折れたぞ? 私は堕天したとはいえ、星の運行を支配する力を持ち続けている。精神干渉の解除が通常のやり方では儘ならないと分かった時点で、フリードがお前達の精神干渉を受けていない星の巡りに変えたのだよ。ただ、巡りを変えるのには相当の日数と力を必要としたぞ。お陰で、余計にお前への興味が増したがな」
「……運命に干渉したと?」
「生死を覆すのは不可能だがな。奴の生命に関わる部分では無かったために、私の力で干渉が可能だっただけだ。さて、バルパー。せっかく、その刺客どもから取り上げたものも含めて五本の聖剣が揃ったわけだ。元来のエクスカリバーに何処まで迫れるか、束ねてみせてくれ」
皆殺しの大司教という異名を持つ、バルパー・ガリレイ。教会側でも異端の扱いを受けている聖剣に執着している男だと、コカビエルは語る。人工的に聖剣を扱える適合者を作るための聖剣計画の責任者でもあったと。
「貴様が、僕達をぉおおっ!」
「させんよ」
「ぐぁっ!」
その言葉に反応した木場くんが魔剣を創造すると同時にバルパーへと斬りかかろうと飛び出すが、コカビエルの手に生まれた光槍に振り払われて、吹き飛ばされてしまった。
「祐斗さん! すぐに治しますからね!」
すぐにアルジェントさんが動き治療を施すとともに、リアスや兵藤くん達が守るように前へと進み出る。彼の手には既に赤龍帝の籠手が呼び出されていた。
「……今代の赤龍帝か。白龍皇には及ばずとも、お前も少しは楽しませてくれそうだ。バルパーが聖剣の融合を終わらせるまでの間、力を示してもらうとしようか」
その言葉と同時に現れたのは三つの魔法陣。そして、そこから姿を現したのは──!
「三つ頭の猛犬……ケルベロスだというのか……?」
「その通りだ、小僧。協力者の力もあって、冥府から連れ出し一時的な支配下に置くことが出来た。余興だと思って楽しんでくれたまえ」
コカビエルと私達の間を遮るように、こちらの三倍ほどに開きがある体躯をしたケルベロス達が立ち塞がろうとしていた。けれど、私達は慌てることもなく、警戒を途切れないようにするだけ。その理由はハッキリしている。すずかさんと共に、大翔くんの伴侶候補達をまとめる彼女の存在だ。
◇◇◇◇
あったま来た。明らかに不法に冥府から連れ出して、自分の身勝手な戦争に加担させる? アタシだってたいがい身勝手なところはあるし、大翔が絡めば相当無茶も押し通すんだけど……操ってどうのこうのってのは違うでしょうにっ。
「小娘。お前一人でこのケルベロス達を相手取るつもりか?」
「ふん、余興なんでしょうが。黙って見てなさいっての。あと、祐斗。アンタはその怒りを魔剣の鋭さに変えることに集中してちょうだい。向こうが聖剣を束ねるんだったら、一度破壊すれば目的達成。分かりやすくていいでしょ?」
きょとんとした顔してんじゃないわよ。相手の武器が多少強力になったところで、アンタは総督を始めとして地獄のしごきに耐え抜いてきたんだから、勝つ以外の結果はあり得ないのよ。
「怒りのままに動くんじゃなくて、その感情を自分の力にしっかり変えなさい。それがアンタの復讐を果たす一番の近道よ」
さて、この子達は狂化の魔術を掛けられてるっていったところね。実のところ、ギャスパーにはヴァレリーの護衛を兼ねて一緒にナハトが生み出した魔術的な影の中に潜んでもらっているので、停止結界を発動してもらうことが出来るんだけど……。影の中にいると何故か神器の力が高まると言っているし、力の制御もよりやり易いというから、謎が多い神器のようだし、その辺りは大翔とじっくり解析を進めてるみたいね。
『ギャスパー。この子達を同時に鎮めるのは難しいと思うから、怪我もさせたくないしフォローはお願いね』
『はい、アリサさん。僕も鍛えてもらった成果を、ちゃんとお見せしたいと思います』
『ええ、ヴァレリーにいいとこ見せてやりなさいな』
『ええっ、ヴァ、ヴァレリーは、そのっ』
念話でのやり取りも終了っと。頑張れ男の子、だ。ま、ヴァレリーがついているし、ギャスパーは問題なくやってくれる。大翔も頷いてくれた。私に任せてくれている。なら、さっさとやるとしますか。
「汝の心に平穏を齎せ!
大翔が使える魔術は私もすずかも当然使えるようにしてるのよ。それに私の前でワンちゃん達を操ろうなんて、させるわけがないでしょうに。
「ガ、ウ?」
私の目の前にいた子の瞳の色に意思が戻る。まだ操られているこの子の兄弟が異変を感じて動こうとしたものの、ギャスパーがすぐに止めてくれる。
「私はアリサ・バニングス。私はあらゆる手を使って、貴方達を元の居場所に戻すことを確約する。もし、約束をたがえるようなら、その牙で私を噛み砕きなさい。ただ、それまでの間は私が仮の主人よ。……理解したのならば、『おすわり』してちょうだい」
聡明な子。三つの顔、六つの瞳がちゃんと私の目を見て、信に値するかを考えている。私はその間、静かにこの子の判断を待ち、この子を見つめ返し続けた。
「いい子ね。必ず、貴方の主人の下へ帰してみせるから」
やがて、腰を下ろし、鼻先を私の顔近くまで近づけてきたこの子の顔を順番に撫でていく。唖然とした様子のコカビエルが残るこの子の兄弟の狂化を進める前に、私は手早く鎮静の術式を施し、同じように問いかけてしっかりおすわり出来たこの子達をたっぷり褒めた。
「なんだ、なんだこれは、ハハハハハっ! 小僧の連れ添いは神獣クラスをも飼い慣らすビーストテイマーとでもいうのかっ!」
「しっつれいね、アンタ。アタシはこの子達にお願いをしただけよ。そして、理性を取り戻したこの子達が受け入れると決めてくれただけ」
「「「ガウっ!」」」
アンタは何も分かってないわ、コカビエル。アタシにとってこの子達は家族同様。すずかが猫達を家族と言い切るのと同じ。この子達の主人もたっぷりと愛情を注ぎ、しかるべき行動をしっかり教えている。アタシはその彼らの利発さを認め、寄り添い、仮の主人となることを認めてもらっただけのこと。
「仮とはいえ、ケルベロスに自分が主人だと認めさせるアリサは自分がとんでもない規格外って認識してるのかにゃ」
「このメンバーでいうなら、私は不得手が少ないだけの突出したものを持たない女よ。だから自分を磨き続けるんじゃない?」
大翔の元に集っている優秀な女性達をまとめられる女になろうっていうんだから、アタシは歩みを止めない大翔やすずかと共に高みへと登り続けるだけ。だから、黒歌。その怪訝そうな顔でアタシを見るのは止めなさいっての。
「ふ、ふははははっ。なんということだ、本当に久し振りに腹の底から笑ったぞ。余興が本当に文字通りのものになるとはなっ」
目つきの悪い奴がニタぁってしながら笑うのってほんと悪党そのものよね。コイツの場合は合致してるからいいんだろうけど。
「さて、そちらにも随分とエクスカリバーに執着を持つ者がいるようだ。もう一つ余興として……どうだ、この教会の手先どもをこのまま解放する代わりに、その少年とこちらのフリードを一対一で戦わせるというのは。私は手を出さんよ。弱者を嬲っても仕方の無い話だからな」
この世界の教会に属する戦士は天界陣営の末端と聞かされている。こちらとしては他陣営に属する者でしかないから、関係の無い話と一蹴したっていい話。
「……グレモリーさん、構いませんか」
だけど、アタシの大好きなアイツは、愛する私達や数少ない同性の友人といった、身内と見做した者にどこまでも甘い。
「祐斗が自分の過去と直接折り合いをつけられる二度とない機会よ。それに教会側に恩を売るという意味でもちょうどいいわ。この申し出を受けましょう」
「悪魔や堕天使の情け、など……!」
「敗者は黙ってましょうか。貴女達の意見など聞いてないのだから」
そして、その枠から外れる無礼者への容赦の無さも。あーあ、あんなフラフラになっている所にアイツも大人げないから、本気で怒気をぶつけてるし。うん、そりゃ膝を着くわよね。
「くくっ、相手との実力差を推し量ることも出来ないのも愚かだな。さて、フリード。もう一働きしてもらうぞ。あの魔剣使いを越えなければ、お前はあの紫髪の女への反撃もままならん」
コカビエルが懐から取り出したのは見覚えのある小さなガラス瓶。その中身を飲み干したフリードは狂気に染まった瞳をそのままにすずかを見据えた。厄介よね、悪魔陣営以外の者がフェニックスの涙を所持している。つまり流出の規模はともかく、対立陣営に即効性の万能薬が出回ってるってことじゃない。
「……オレッちはこれでも負け知らずだったんですよねぇ、今まで。それが同世代の女に為すすべもなく圧倒された。終わらねぇんですよ、このままじゃあ! 斬り結んで分かったぜぃ……。聖剣使いのこの二人も、あんたにゃ遥か及ばねえ! アンタを斬り刻まなきゃあ、オレは進めねえんですよぉぉおおっ!」
「あなたの相手は私じゃない。興味もない」
「随分と僕も侮られたものだね。聖剣計画の生き残りである僕は、この日のために剣を磨いてきたんだ……っ!」
すずかが心からどうでもいいという気持ちを前面に出して、祐斗が臨戦態勢に入る。時を同じくして向こうの作業も完了し、大翔の霊刀には及ばずとも……悪魔には充分な致死力を持った一本の聖剣が出来上がっていた。
「小僧の霊刀には届かんか。まぁ、七本を束ねてこそのエクスカリバーということだ」
「そんな馬鹿な……エクスカリバーがあんな小僧が打ったものに届かないという、のか……!」
「バルパー。七本が揃わぬ限り、エクスカリバーは多機能な並の聖剣と変わらん。元の一振りを知っている俺が断言する」
「『
向こうの技術者が落ち込む間にも、フリードは聖剣を手に取り私達の前へと進み出てくる。戦意と殺意を前面に漲らせながら。
「バルパーのじいさん。剣は相手をぶった斬れるかどうか、それだけだゼ。んで、こいつはその役割を充分に果たす代物だ。あのいけ好かない悲劇面のイケメンをさっさと斬り捨てて、紫髪の女ぁ! その顔を恐怖に染めながら殺してやるよォ!」
「させるわけがないだろ? それに僕がもし君に負けたら、大翔さんがもっと惨たらしい最期を君に与えるだろうさ。それじゃ君が浮かばれないからね。せめて、僕がもう少しマシな最期を与えてあげるよっ!」
祐斗の奴、大翔の性格分かってきてるわね。そんなことを思った先で、二人の剣士は斬り結び始めていた──。
以前と違って、平日はほぼ書く時間が無くなってます。
なので、どうしても週末にガッと書くので、無理やりひり出してる感が。