※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

14 / 121
第14話 観察

 いやぁ、面白い子達に運良く拾ってもらえたもんだにゃ。特にもう、すずかの膝の上で、撫でられるのはヤバいにゃ。ささくれていた心が浄化されて、悪魔から天使に転生出来そうな感じ……嗚呼、駄目になるぅ……。あのテロリスト集団にしつこくスカウトされてたけど、断り続けていて良かったにゃあ。

 ああ、この煮つけも美味しいにゃあ、すずかのフィアンセという大翔は料理が上手にゃのねぇ……。空腹のところに、テロリスト集団と堕天使と連続で相手をして、思わぬ痛い目に遭ったけど、これで全部帳消しなのにゃ……。

 白音、ごめんね。お姉ちゃん、もう飼い慣らされてしまったかもしれないにゃ……。あっ、すずか、そこはダメにゃっ、あぅ、はふぅ、堕ちてしまうにゃぁぁぁ……。

 

「ふふふ、黒猫ちゃん。お腹を見せちゃって。すごくリラックスしてるね~」

 

 すずかの魔性の手がそうさせるのにゃ……。多分、治癒とか癒しの力を無意識に使ってるんじゃないかとは思うんだけど、気持ち良くてうまく考えられないにゃ……。

 

「やはり、おじ様は指示を出していないのですね」

 

「おう、駒王町はそもそも魔王の妹二人が赴任してる地域だろう。まして、朱乃も住んでいる土地なのによ。火薬庫に爆弾放り込むような指示を出すわけがねえ」

 

 呆けた脳にも情報は入ってくるのか、ぐびぐびとビールで喉を潤しながら、堕天使と悪魔の気配が混ざり合うこの家の家主の女の質問に、堕天使の総督アザゼルが呆れた口調で答えて、横でその女の父親というバラキエルも頷いているにゃ。

 

「アザゼルが見逃したとしても、その辺りはしっかりシェムハザが押さえている。下の連中の暴走と見て間違いないだろう」

 

「中堅どころが軒並み手薄になってるのが仇になってるな。この外界と隔離してくれる『封時結界』があるから、俺だってこうしてここで舌鼓を打っていられるわけだしよ……かぁっ、日本酒にも合うな、これはよ!」

 

 ……こうしてると、ただの飲んだくれちょい悪親父にしか見えないけどにゃ。この女は白音のところの女王だけど、さっきの調理中もブレスレットと大翔を交互に見ては悦に浸っていたりした時間が長かったから、殆どこのちゃぶ台の上に並んでいる料理は大翔が作ったようなものにゃ。

 それにこうして直に触れているとちゃんと力を隠していて、すずかも人の枠を外れるぐらいには強い人であることが良く分かるのにゃ。普段はしっかりと表に出ないように制御してるみたいだし、念話とかいう思念を直接送り合う魔術──妖術にも似たようなものがあるしね──で、すずかとはたくさんお話をして大翔がすずか以上の術者なのも聞かせてもらったにゃ。

 あんまりパッとしない風貌……というと、すずかがすんごく怒るので、ごくふつーの顔してる大翔としておくけど、すずかやあの金髪の短長髪美女美少女コンビからは彼の力を強く感じるし、こうしてくっついてるすずかに触れて分かったことだけど、陰の気をよく蓄えられる場所……子宮に陽の気も程良く調和してるのが見えちゃって……。

 無意識に房中術に似たようなことをやっていれば、この四人、そりゃ仲睦まじいのも納得できるのにゃ。四人とも納得させられる精力も体力もあるってのは、無害そうな顔をして、大翔もそういう好きモノ……アッハイ、身も心も満たせるように頑張ってるだけにゃのよね、うん、すずか、この短時間でそれは良く伝わったから、その怒気を沈めてにゃ?

 

 ……大翔のことに関しては、すずかは異常に勘がいいのにゃ。大翔に対しての悪意はそれこそ世界線を越えて察知できそうな感じ。今もちょっと、大翔のことを悪く思っただけで、即座に念話で警告してくるぐらいにゃ。

 すずかの反対側で大翔の隣を確保している、この女王は大翔に恋慕してるんだろうけど、ここまで深く繋がってる人達に入り込むのは大変だと思うし、既にすずかに私も釘を刺されたぐらい……ちょっかいのつもりで、人型で誘惑しようとしたら塵一つ残さずに消すからと、辺りに漂う呪詛を全て集めて、言霊に乗せようとするもんだから、必死に否定しながら、悪い気を散らしたにゃ……。

 あ、疲労した心身はすずかのゴッドハンドですぐに回復したので、問題はにゃいけどね。白音への想いは私も相当拗らせてるほうだと思うけど、すずかの情念は遥かに上を行ってるにゃ。

 

『あの飲んだくれが堕天使のトップと信じたくなかったけど、明らかにそうとしか思えない発言をしてるし、プライベートとはいえ威厳の欠片もないにゃ……』

 

『あはは……親しみやすいから、助かるところもあるけど』

 

『私のこと、はぐれ悪魔と気づいていても、態度を変える様子もにゃいし』

 

『だって、黒歌ちゃんは約束を破って、妹さんに乱暴しようとして、無理やり眷属にしようとした悪魔を倒しただけでしょ。上位階級の悪魔達が自分達に都合の良いように情報を書き換えただけ。悪いのは向こうだよ』

 

 すずかにはポロリと私の事情も話してしまったんだけど、あっさり信じると言われてしまって、すごく驚いたのと、迷わず信じてくれた嬉しさで、この膝の上からどんどん離れがたくなっている自分がいるにゃ。

 そのすずかも、美味しいご飯を作ってくれた大翔も、あのコンビからも、悪魔と堕天使の力を感じたものの、力に囚われ過ぎず、それでいて、しっかり使いこなそうとしているのが分かるから、正直、大当たりを引いたんじゃないかと思っているにゃ。

 この黒歌さんが傍まで近寄らないと分からないぐらいに、しっかり力の気配を隠せるというのは、才能だけじゃなくてしっかり鍛錬も積んでいる証拠。

 

『嬉しいこと言ってくれるにゃ、すずかは』

 

『ふふ、可愛い猫さんに悪い子はいないの』

 

『もし、爪で引っかいたりしても?』

 

『可愛い我がままだよ、それも』

 

 私を撫でるのともう一方の手で、すずかは用事が無い限り、どことなく大翔に触れていることが多いにゃ。それで触れている部分から、大翔もすずかに魔力を流して、また自分に戻す感じで二人の間で循環させているにゃ。手同士で触れ合わなくても、経路みたいなものが出来上がっているのか、身体の一部が触れ合うだけで、互いの魔力を通して、常に魔力の流れを整え合っているからビックリにゃ。

 魔力と仙術で使う『気』という種類が異なるだけで、多分、この二人は仙術をあっという間に使いこなせる……確信に近いものがあって。私はお礼も兼ねて、また、才ある存在を見つけた喜びも合わさって、私は自分の魔力や気が完全に復調するまで、ちょっと稽古をつけてやろうと決めたのにゃ。

 

 ……決して、すずかのゴッドハンドと大翔の料理に餌付けされたわけではないにゃ。餌付けされたわけではないにゃ。大事なことだから二回言ったし、絶対チョロ猫なんかじゃないにゃ。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 「おお、恐ろしく覚えが早いにゃ。これも師匠たる私の教え方が素晴らしいからにゃ!」

 

「ありがとうございます、黒歌さん。ですから、その破廉恥な格好で俺に近づかないで下さい」

 

「うん、それ以上ひろくんに近づいたら、黒歌ちゃんは一日氷柱の中だよ?」

 

「ふふふ、そんなの、私の幻術にかかれば……」

 

「そっかぁ、今日の膝枕はいらないのかな?」

 

「お許し下さいにゃ、すずか様ぁ」

 

 翌日からこんな漫才交じりのやり取りをしながら、私を除く大翔さん達の鍛錬には仙術の習得が加わりました。あのはぐれ悪魔の黒歌は人型に戻れるまでに力が回復したようですが、あっという間にすずかさんに飼い慣らされており、彼女の言に逆らうことがありません。

 リアスへすぐに報告することも考えましたが、小猫ちゃんの姉でもあります。おじ様から様子を見る期間を設けるように助言され、少なくとも結界内にいる間は静観することにしたのです。

 

「なんなのよ、この茶番。アリシアも一体、指先に力を集中させて、何してるの?」

 

「『気』だよ、『気』! チャクラだよ、アリサちゃん! 魔貫光殺砲とかリアルで撃てるんだよ!」

 

「魔力でも似たようなものは撃てるじゃない……」

 

「違うんだよアリサちゃん、それだけじゃなくて、波紋とかスタンドへの可能性すら広がってるんだよッ!」

 

『オラオラオラオラがリアルに出来るかもしれないんだよッ!』

 

「ごめん、アリシア、紗月。何言ってるのか、アタシにはさっぱり……」

 

 アリシアさんがアリサを困らせてしまっているようですが、大翔さんとすずかさんは何やら思い当たる節があるらしく、顔を見合わせて苦笑いされています。

 イッセーくんが『ドラグソボール』とかいう漫画の技を真似て、神器を発動させていましたが、ひょっとして同じようなことなのでしょうか。

 なお、私については、まずは自分自身の力を使いこなせるようになってから言いなさいとか、大翔さんとそういう仲になってから出直して来いなど、色んな理由をつけて教えるつもりは無いようで。ええ、あの目線は明らかに此方を見下していましたからね……見ているといいですわ、黒歌。

 

「雷光よっ、我の敵を砕き、そのまま焼き尽くしなさいっ、アハハハハハハッ!」

 

「あっ、朱乃っ、素晴らしい、光力を使いこな、あがががっ」

 

「おー、バラキエル、骨は拾ってやるからなー」

 

 ちょうどいい練習台……いえ、練習相手になるお父様もいることですし、結界を解除するまでには、実戦で使える程度には仕上げてみせますっ!

 

「煽りにうまく乗ったみたいだにゃ。変な拘りがあったみたいだけど、大翔との関係性の停滞を突いたら、こうもあっさり克服したにゃんてね」

 

「ひろくんとそういう仲になってから、なんて言うのは、ちょっと煽り過ぎだよ、黒歌ちゃん。あと、着物はそんな風に崩して着ないの。サイズが合わないなら、ちゃんと直してあげるから」

 

「えー、胸が苦しいのは嫌にゃ……」

 

「だから、ちゃんとお直しするんだよ」

 

 黒歌がすずかさんと何やらぶつぶつ言っているようですが、すぐに私を侮っていたことを後悔させてあげますわ。さぁ、お父様、今しばらく的になって頂きますわよっ!

 

「大翔っ、すずかっ、すまんが回復の用意をしてくれっ。炭化したら流石にどうにもならねえぞ!」

 

「大丈夫だアザゼル、これも娘の愛情表現の一か、ががががががっ!?」

 

『流石は私の娘、なんだけど。あの人もまともに受け止め過ぎなのよね……』

 

 そんなこんなで、私の力は確実についてきていて、おじ様曰く中級悪魔や堕天使に遅れは取ることもないだろうと言われるほどになりつつありました。

 

 お母様の鞭をお借りして、接近されても最低限戦えるように、相手の身体に巻き付けて、そのまま雷を注いで差し上げるような対処法も身に着けつつありますし、何より毎日の鍛錬の終わりに大翔さんにゆっくり魔力を流してもらいつつ、治癒魔法をかけて頂く至福の時が楽しみで仕方なくて。

 頑張れば頑張るほど、魔力や体力の回復に時間がかかりますから、大翔さんに触れてもらえる時間が増えるのです。私だけではなく、すずかさん達もそれは一緒みたいですけどね。

 

「ちゃんと朱乃には、仙術の力は切り分けて流してるみたいで感心感心……ふにゃあ」

 

「黒歌、なぜ貴女まで蕩けているのですか……あ、ん……気持ちいいですわ……」

 

「そりゃ、治癒と魔力・気の循環をしてもらってるすずかの膝の上だから、間接的に影響は受けるにゃ……あー、大翔に教えたのは正解にゃね……これ、一日の疲れ取れるのが分かるにゃ……」

 

「黒歌さんのお陰で、魔力と組み合わせることで、自己回復力も上がってるよ。ありがとう。……すずかはうつらうつらしてるから、静かにね?」

 

「はいにゃ……」

 

 大翔さんの手は私とすずかさんに当てられていますが、アリサやアリシアさんも大翔さんの背中に寄り掛かっています。黒歌の言うように循環の輪にある誰かに触れているだけでも効果があるようで、心地良さそうに目を細めていますから。

 大翔さんは個人個人に合わせて、魔力の流す量、強さ、時間等を決めているそうですが、黒歌さんから仙術や気の扱いを学んだことで、心身へ与えるリラックス効果が一気に向上しています。能力付与の有無は関係なく、黒歌の言葉を借りるなら、大翔さんのゴッドハンドに磨きがかかっているのです。……触れられているだけで、思わず艶かしい声が漏れてしまうぐらいに。

 

「いやぁ、気を流してもらうってのはいいもんなんだな、二日酔いとかもスッキリするしよ。同時に肩とか解してもらったが、随分と血行が良くなった感じだ」

 

「ああ、彼の治癒魔法や気を使った整体はある意味危険だ。同性の私でも多幸感に包まれてしまうのだから、迂闊に女性を近づけるべきではないぞ。これ以上、朱乃の好敵手を増やすわけにもいかん」

 

「バラキエルの言う通りにゃ……このメンバーと白音以外、特にグレモリーとかシトリーの娘とか絶対ダメにゃ……」

 

「分かってますわ、黒歌……」

 

 ある意味、大翔さんの危険性が上がってしまう結果となりましたが、既に恩恵を受けている私達にとっては、彼がますます魅力的になられたということでもあります。




次回更新予定:日曜日の21時
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。