※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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これぐらいの表現ならまだセーフなのか。
ひょっとしてセウトなのか。

ヤバかったらご指摘ください。

※12日の更新、21時になるかもです……全然書けない。


第21話 妹からその先へ

「な、なんにゃ、そいつの魔力は一体……」

 

「……絶対的な力、ですね。震えが止まらない……」

 

 そんなナハトヴァールは周りの反応なんてどこ吹く風、心配そうにお兄ちゃんの頭を包み込むように抱き締めていた。お兄ちゃんや周りの負の感情を集めて蓄積しまう性質があるため最初は暴走に近い状態になることはあったけど、そんな状態にならない限りこの子はお兄ちゃんに従順。

 負の感情を溜め込みすぎる前にお兄ちゃんが模擬戦の相手になったり、無人世界で適度に暴れさせることで毒抜きはしてるから、最近はそこまで行くこともない。模擬戦の時は毎回私も呼ばれて戦闘用の結界張りを手伝うけど、すずか・アリサ・お姉ちゃん・母さんの全力で結界維持が必要なぐらいには毎回大惨事にはなる。お兄ちゃんは死線を垣間見られる、またとない修行だと言うけど、この辺りは恭也さんの影響の受け過ぎだと思う。見ているこちらは本当に飛び込んで止めたくなる衝動に毎回駆られるというのに。

 

「大丈夫だ、ナハト。ありがとう、俺の感情が昂ぶったから心配して出てきてくれたんだな」

 

「ナハトが出てくるぐらい、ひろくんは怒りを覚えたんだよ。私やアリサちゃんともナハトはリンクが繋がっているから、そちらの感情も取り込んじゃってるだろうけど……」

 

「……すずか姉さま、この魔物は兄さまの使い魔なんですか?」

 

 不安そうにしていた黒歌・白音姉妹も、すずかが優しく撫で始めることで徐々に落ち着きを取り戻していく。お兄ちゃんがアリサ・お姉ちゃん・ナハトヴァールに三方を固められているから、朱乃については私がそっと肩を叩いて気つけ代わりに回復魔法をかけるものの、どこか物足りない顔をしないで欲しい。私だって回復魔法ならお兄ちゃんにかけてもらうのが一番癒し効果が高いと思っているんだし。

 

「そうだよ。ナハトヴァール、私達はナハトって呼んでるけど、あまりに強力な魔法生命体のために、使い魔にした当時は、ひろくんだけじゃなくて、私やアリサちゃんも含めて、三人でやっと契約が結べたの。私達の世界では、使い魔に自分の魔力を供給する仕組みになっているから、ひろくんだけじゃ魔力が枯渇する可能性があったの……」

 

「そうだったんですか……にゃあ、すずか姉さまの手、蕩けそうです」

 

 いち早く調子を戻した白音の問いかけに、すずかも優しく応じている。黒歌も先程までの緊張した顔つきが、どこかだらけたものに変わっているから、なるほど、猫マイスターすずかの面目躍如という感じだね。

 

「すずかの魔力も気も落ち着いたままだから、大丈夫なのにゃ? ただ、こんな膨大な魔力ってドラゴンクラスにゃ。大翔もすずかも何というか、あっちの世界に長居しないほうが本当にいいと思うにゃ。勧誘が煩くなるのは遠くない話だし、禍の団の連中も絶対にちょっかいかけてくるにゃ……」

 

「移住を前提に考えているのは、そういう意味でも望ましいということですわね。私もお母様達との連絡手段が残されていれば、駒王町に拘る必要もありませんし……」

 

「私も、部長へ助けてもらった感謝の気持ちはありますけど……駒王町にどうしてもいたいかと言われると、違います。黒歌姉さま共々、すずか姉さまや大翔兄さまに可愛がってもらえる場所が大事ですし、海鳴は翠屋もありますから」

 

 朱乃や黒歌たちがいる世界も随分とややこしいようだね。すぐに移住となると問題はあっても、結論としては移住しても構わないと考えていると。

 

「次元封鎖は、大陸間にある広い海が干上がって、幅広く深い深い海溝を意図的に作るようなイメージを持ってもらえばいい。空はもちろん飛べない。実際には次元の狭間なわけだからね……。何らかの方法で橋を架けない限り渡れなくなるし、時限付の橋を架けられるのはこちらが許可した者だけにする。さらに、その橋はせいぜい十人程度までが通れるのがやっとという細い橋。個人が移動するにはいいけど、組織立った行動は相当に制限させてもらうし、転移履歴は全部こちらで把握させてもらう」

 

 次元封鎖に必要な超大型装置や、時限付の転移ルートを確保できるマジックアイテムは、母さんやドクターと共同開発し、クアットロ等の手によりテスト運用も済んでいるのだという。

 お兄ちゃんが既に次元魔法の第一人者であり、そんなお兄ちゃんの独自術式を機械等でプログラム化していく作業は、子供のように瞳を輝かせたドクターが積極的に手伝ったんだそうだ。新技術についての貪欲さは出会った頃から変わらないとお兄ちゃんは苦笑いするけれど、あの狂科学者に下手な知識を与えて、お兄ちゃんに害を為すことになったら、私は……。

 

『フェイトちゃん。こんなひろくんだから、『常に誰かがついている』ようにするんだよ』

 

 不意に念話が聞こえ、猫姉妹を宥めながらも、私へと頷くすずかの姿を見る。

 

『ナハトがいる限り、ひろくんと私、アリサちゃんの魔力リンクも切れることはないから、たとえ次元を隔てても諦めない限り、時間はかかっても必ず合流も出来る。手は多く打つに限るし、ひろくんが動きやすいように回りの環境を整えるのは、私達の大切な役割と思わない?』

 

 危険なことはさせたくなくても、お兄ちゃんが自分らしくいられなくなるぐらいなら、すずかは障害を手の及ぶ限り排除するだけだと言う。嗚呼、すずかは本当にとことんお兄ちゃんが大好きで、大切で仕方がなくて、その生き方を全肯定して、どこまでも支え続けるつもりなんだね。

 

 ……すずか。私はね、お兄ちゃんの全てを包み込んでくれる笑顔が大好きなんだ。こうして、人のために強く怒れるお兄ちゃんも素敵だけど、柔和に微笑んで私を撫でてくれる、そんな穏やかな時間が大切だから。ごめん、お兄ちゃん。なのは達の強制送還には賛成だけど、まずはその怒りを散らさせてもらうね──。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 まだ剣呑な雰囲気をまとう大翔さんへ、急にフェイトさんが立ち上がり、近づいていこうとします。すると、効果は覿面。分かりやすい動揺を見せ始めた大翔さんは途端にしどろもどろになって、逃げようとするのですが、残念、背中をあの強大な使い魔に、左右をアリサとアリシアさんに押さえられている為、動くことが出来ません。力づくなら可能なのでしょうけど、大翔さんの性格上、それは難しいのですから。

 

「フェイトっ、ちゃんと隠せと言っただろ!? というか、なんで立ち上がったんだ!?」

 

 せめてもの抵抗で必死に目を閉じる大翔さん。怒りは強制的に掃われてしまい、わたわた慌てる姿に私まで調子が戻ってくる感じですね。……あら? フェイトさんが手招きしていますね、こちらに来いということでしょうか。

 

「せっかく久し振りにお兄ちゃんに会えたんだから、難しい話よりもお兄ちゃんにもっと甘えたいなと思って」

 

「なっ!?」

 

 浴槽を歩く際の水音が、瞳を閉じていても、フェイトさんともう一人誰かが接近してくることを、大翔さんに知らせます。ええ、私のことですけれど。

 

「さっきは言わなかったけど、管理局を辞めようと思った、もう一つ大切な理由があってね……」

 

「理由……?」

 

 瞳は開けなくても、大翔さんの顔はフェイトさんの声がする方向を向いて、言葉の続きを待つ姿勢になっていきます。

 

「ずっとお兄ちゃんの傍にいるってその気持ちは前から伝えていたことだし、変わらないんだけどそれだけじゃなくて。私も妹としてじゃなくて、すずかやアリサ、お姉ちゃんみたいに、一人の女の子として愛してもらいたい。その気持ちに蓋をするのを辞めようって思ったんだ」

 

 驚愕からか瞳を開けてしまった大翔さんの手を取り、フェイトさんは自分の胸へと押し当てて、いえ、押し付けるようにしていきます。形のいい膨らみが大翔さんの手によりひしゃげた形に変わっていって、フェイトさんは艶めかしい声を漏らしました。

 

「はぁ、ん……妹として、撫でてもらうだけじゃもう満足できないの……この身体もお兄ちゃんに触れられたくて、こんなにも心臓が激しく音を立ててる」

 

「だ、ダメだ、フェイト!」

 

「いやっ、離さないで!」

 

 攻め時だと分かっているフェイトさんは、大翔さんの動きを声で封じます。激しい動揺はあっても、大翔さんの身体に拒否反応は見られないのは、今までの大翔さんとフェイトさんの関係性がしっかりと積み重ねられていたからなのでしょう。

 

「妹ならずっと傍にいられる。家族として愛してもらえる。だから幸せでいられる。……そう思ってたよ。だけど、朱乃が女の子として愛されたい、絶対に諦められないって言っているのを聞いて、もう無理だと思った。私は妹じゃ納得なんて出来ないんだって。本当の自分はものすごくエッチで、こうやってお兄ちゃんに触れられたくて仕方なかったんだよ?」

 

 横目から見えるフェイトさんの顔は、瞳を潤ませ、頬を赤く染め、漏れる吐息は熱を増すばかり。長年の想いを一気に爆発させたフェイトさんは、肉付きのいい身体が秘めていた色香も一気に放ち始めています。

 

「大好き……愛してます、お兄ちゃん……」

 

 フェイトさんは止まりません。愛の言葉を囁きながら、大翔さんの頬に空いた一方の手を添えて、その唇を彼の唇へと重ねました。固まったままの大翔さんを尻目に、短く、何度も唇を重ねて、名残惜しそうに離れた後、自分の唇に指をそっと当てたフェイトさんのうっとりした表情は、同性の私から見ても、強く引きつけられる魅力に溢れていました。

 

「これが、管理局を辞めようと思った、本当の理由なの……。朱乃のお陰で、私は怖くてもこの気持ちをお兄ちゃんに伝えて一歩も引かない覚悟が出来たんだ。お兄ちゃん、覚悟していてね? 私も朱乃も、お兄ちゃんが私達を受け入れられるようになるまでずっと諦めないからね」

 

「……付け足させて頂くならば、受け入れて頂いたとしても傍から離れるなんて考えられませんので、ずっとお傍におりますから宜しくお願い致しますね」

 

 念のためです。受け入れてもらったらそれでおしまいだなんて、互いに不幸でしかありませんもの。そもそもその先の幸せを、私やフェイトさんは大翔さんと共につかんでいきたいのですから。

 

「朱乃さんに続いて、まさかフェイトまで……なんで俺なんかに……もっといい男がいるだろう」

 

 大翔さんからやっと出た言葉は、予測の範囲内でした。私達が本気で自分を愛するわけがないという、一種の強迫観念に近いもの。彼自身の女性への強い恐れと諦めが、自分への好意を正しく認識出来なくさせていますから、こういう言葉が出るのでしょうが、彼の特性が分かっている私達はこれぐらいで怯んでいられません。

 

「私にとって最初から、男の人はお兄ちゃんか、お兄ちゃん以外しか無いんだよ? お兄ちゃんの言う、一般的ないい男の条件がどういうものか良く分からないけど、私の価値観とはズレているんだから、比較対象にするのが違うと思うんだ」

 

 がっくり。可愛そうなぐらいに項垂れてしまった大翔さんを、すぐに思い切り抱き締めて、おでこやほっぺにキスの雨を降らせたい衝動に駆られますが、同じことを考えたのか、使い魔の彼女に先に実践され、私は踏み込こうとした足を止めるしかありませんでした。

 

「むぅ、先を越されましたわ」

 

「先を越されたってどういう、って、朱乃さん、見えてます! 見えてますから!」

 

「あらあら、うふふ、見せてるのよ、というやつですわ」

 

 大翔さんの指摘通り、立ち上がった私は自分の身体を大翔さんの視界へと晒しています。フェイトさんみたいに触れてもらって、強く拒否反応が出てもいけませんし、まずは視覚から慣れて頂きませんと。うふふ、でも、大翔さんに見られていると思うと、身体の奥から火照ってくる感じ……悪くありませんわね。

 

「大翔さん以外の男性には決してこんなことはしませんから、ご安心くださいな」

 

「いや、そういうことを聞いたわけではっ」

 

 必死で目を逸らそうとする大翔さんですが、顔を固定されてしまって、それもままなりません。アリサ、アリシアさん、えっとナハトさん?……でいいのかしら、感謝致しますわ、うふふっ。

 

「おー、朱乃が攻めてるにゃ~」

 

「破廉恥、です、朱乃先輩」

 

「お兄ちゃん、落ち着いて。私のおっぱいを自由にしてくれていいから」

 

 そこの猫姉妹はまだ外野のつもりなんでしょうし、言わせるだけ言わせておきます。しかし、フェイトさんもぐいぐい行きますね。ともあれ、剣呑な雰囲気は湯煙と共に消えて、夕食や大翔さん達の手で一晩を七日間に引き延ばす封時結界を張る合間に、私達はもう一度、フェイトさんが勤務していたという、管理局、ひいてはミッドチルダという別世界との決別方法をまとめ直すことにしたのです。

 

「基本は報復措置のあと、次元封鎖という方向性は変えないよ。ただ、あちらの世界の、魔導師じゃない市民の人達に被害が及ぶようなやり方は避けるようにするって話だよ。私だって、あちらのフェイトちゃんの扱いにはカチンと来てるしね。管理局の幹部さん達には痛い目にちゃんと遭ってもらわないと……ね?」

 

 すずかさんの言葉が、基本路線。そのことには特に変わりがなかったのです。また、時を同じくして、協力関係にあるドクターと言われる科学者の関係者が月村家へ来訪されたことも重なり、細部も一気につめられることになっていくのでした。

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