詰め込んでる感満載ですが、舞台は寝室へと持ち込んだので
きっと何とかなるはず(何が
「きょーせーそーかんおめでとー!」
「おめでとう、なのは?」
「これで無職よ! やったわね、なのは!」
「バイトの紹介するからね、なのはちゃん」
「魔砲少女、無職になる──これは映画化やね!」
「これはどういうことなのっ、めでたくないよアリシアちゃんって、なんで疑問形なのフェイトちゃんに無職は嫌だよアリサちゃ、あっありがとうなのすずかちゃんというか、はやてちゃんまで何を言い出してるのーっ!」
夕食の後、封時結界を張り終えた大翔さん達が行ったのは、強制転移の魔法発動でした。対象相手の四方に触れたら強引に転移させる魔法陣を出現させて、それが自動的に狭まっていって『*おおっと*』となるそうです。『いしのなかにいる』にならない分、優しいですね。
何の表現だという話ですが、アザゼルおじ様が昔遊んでいたダンジョンRPGです。膝の上に私を乗せて、子守りをしてくれながら遊んでいたゲームの一つでした。育てたキャラクターがワンミスでロストする喪失感を楽しむゲームと説明された記憶がありますが、それのどこが楽しいのかは未だによく分かりません。
ところで、高町なのはさんはツッコミ担当だったんでしょうか。息継ぎなしに一息で言い切ってます。久し振りの再会だったのか、すずかさん達に抱き着かれる形で動けなくなっていますけれど。そんな様子を見て、大翔さんは苦笑いしながら同じく強制転移させた男性二人と話をしています。
「えらく強引だったな、大翔。お前の魔法陣だったから、あえてレジストしなかったけどよ」
「僕は大翔が定期的に発動させる強制休暇だと思って、部下の人達に休んでくると伝えて転移してきたよ。一晩が七日間の例のやつだよね?」
「そうだよ、ユーノ。しかし、無限書庫の人達も慣れた対応だなぁ……そういえば、レジストしたら霧散する魔力を暴走させてAMF満載の無人世界に飛ばすように設定してたから、皇貴の対応は大正解」
「あっぶねぇ!」
気安い関係の友人さんなのか、銀髪の男性──確か、視覚と接触による強制魅了能力を持っていたけれど、あっさりレジストしたすずかさんに粛清され調教された結果、忠実なしもべになったという方ですね。今では一緒に転移してきた小柄な女性とよろしくやりながら、管理局勤めをしていると聞かされています。
「しっかし、見知らぬ女性が増えてるじゃないか。すずか『様』達の承認ありなんだろ、みんな」
「いや、俺はそういう対象で見れてないんだ。そう伝えたんだけど、じゃあ気が変わるまでずっと傍で待ちますって……」
「あー。察した。まーた自覚なしにやらかしたのか」
「大翔……君もいい加減に自覚するべきだよ。大問題になる前に月村さんやバニングスさんが手を打ってるんだろうけどさ」
「やらかしたって、どういう」
「そりゃ大翔が……っておいはやてっ!」
彼の警告よりも早く、背後に忍び寄る影。基礎身体能力の底上げが進んでいる今、私は慌てず肘鉄を一つ落としました。
「ぐふぅ……! こんなたわわに実ったおっぱいを揉めずにやられるわけには……いかんのやぁ!」
「くたばりやがってください。えい」
「ぐはぁ!」
追撃は小猫ちゃん。地面に大の字に突っ伏す襲撃者。無事に悪は滅びました。というか、この方はつい先程まで高町さんを煽りながら、さも当然のようにおっぱいを揉んでいました。すずかさん達に手を出そうとしたところ、腕ごと氷づけにされたため渋々引き下がっていましたし、この妙な情熱はイッセーくんと印象が重なります。
「はやて、なにしてるんだお前……」
「そこにすずかちゃん以上のおっぱいがあるんやで! 止まるわけがないやろ! 大翔くんの隣にいるってことは、大翔くんと懇ろな関係やから、問題はない、きりっ!」
復活も早いですね。本気ではありませんでしたが、やすやすと私の身体に触れさせるわけにはいきませんし、それなりの強さでぶつけたつもりだったんですけど。
「自分で『きりっ』とか言うな。はぁ、ごめんな黒髪のおねーさん。はやては男以上におっぱいに執着するから……これが管理局の誇る魔導騎士って実態を知られたくないぞ、俺は」
「主はやて……マイスター大翔の前でなんという醜態を……」
「全くです。恥を知りなさいな、はやて?」
ナハトさんのモデル元と思われる女性や、大翔さんも初対面らしい『カリム』と呼ばれる女性が暴走する魔導騎士さんを諌めますが、復活の早い彼女は留まることを知りません。
「しかしやなカリム! あっちの着物のお姉さんといい、おっぱいパラダイスに来た私が止まると思うか! いやありえへん! おっぱいマイスターとして引くわけにはいかんよ!」
「カリムさんの紹介がそもそもまだだろうが! というか、なんで一緒に転移に巻き込まれてるんですか、貴女まで」
「面白そうだったから? はやても皇貴さんもまったく慌てる様子がありませんでしたし」
「今頃、ヌエラさんが頭を抱えてますよ。俺達が同時に転移してるから、護衛の心配はなくとも貴女の不在をどうカバーするのか……って、大翔。ここ封時結界の中か? 通信が阻害されてるし」
「そうですよ~、『盾の魔導騎士』~。ここは時間の流れからも切り離された結界の中なんですから~」
「げげげ、クアットロ!」
「分かりやすい反応ありがとーございますー。あ、大翔さん。すずかさんからの通信があったので、結界が張られる前に馳せ参じてました~」
そろそろ収拾がつかない状況となって、すずかさんの声掛けで本日はひとまず各々に割り振られた客室へ戻ることになりました。即座に対応できる月村家のメイドさん達のスキルの高さは、ぜひとも学ばなくてはいけませんね。
大翔さん達の旧友や招く予定の無かった人も含めて、この場は大変賑やかです。大翔さんの今までが見えてくるようで、私個人としてはとても有意義な時間になりました。そんな中、大翔さん達は解散の直前に関係者を強制転移させた理由を話し、結界内時間の一週間で結論を出して欲しい旨を伝えていました。
「……休息を兼ねながら、答えを最終日にでも聞かせてくれ。今回は訓練場所の確保も含めて、月村邸の敷地内は全て結界内にしてあるから、外の空気も吸いながら考えてくれたらと思うよ」
「一つだけ聞かせてや。仮に私らがミッドに残ると決めたとして、次元閉鎖を行ったら互いに二度と関与しないし、させるつもりもないということでええんやね?」
「ああ。次元封鎖なんて、管理局に真っ向から敵対する行為だろうしね。ちょっかいを掛けてこない限りは何もしないけれど、勝手な正義や法を振りかざすつもりなら容赦しない。それがはやて達が相手になるとしても」
大翔さんの言葉はハッキリとした物言いで、転移してきた皆さんは一切の迷いはないことを悟ってか、表情が重たいものへと変わっていきます。
「マイスター……」
「これが俺の結論だよ、リインフォース。俺は俺の守るべき人達を必死に守ることで精一杯だ」
◇◇◇◇
ミッドチルダの魔導師さん達とひとまず話を終えて、私達は月村邸の大翔さんとすずかさんの私室へ移動しました。ベッドルームには見たことも無い巨大なベッドが据え置かれていて、大翔さんやすずかさん達だけではなく、私達が横になっても問題なく休める広さがあります。
お二人の私室ということですが、アリサやアリシアさんが共に過ごすことも大変多いため、リビングスペースは別に確保されており、ベッドも特注の超巨大サイズを作成された結果、こんな形に収まったのだそうです。
「四人がひとまとめで一つのプライベートって感じよ。フェイトも帰ってきた時は一緒に寝てたし、修学旅行みたいにいつでも大部屋で皆で寝る感覚ね」
「お兄ちゃんの傍って熟睡できるからね。寝る前の丁寧なマッサージや魔力の流れも整えてもらって、お兄ちゃんの匂いを感じながらそのまま眠りに入るのって、ものすごく満たされる感じだから」
私室への立ち入りを許されているのは、元々のこの部屋の住人の他には、私とフェイトさん、黒歌に小猫ちゃん、リビングルームへ何やら検査機器を持ち込んで準備を進めているクアットロと名乗った方に、転移に自分から巻き込まれたカリム・グラシアさんです。
必死に検査に立ち会わせて欲しいと懇願した様子は、本当に大翔さんと初対面なのかと疑わせるものでしたが、すずかさんやアリサが間違いないと断言していたため、別の何かしらの事情があるものとは思いますが。
「大翔さんはお楽しみの前に検査を先に済ませますよ~。拒絶反応どころか、融合が進んで『器』としての侵食が進み過ぎてもいけませんしね~。それが終わったら、さっさと退室させてもらいますし~。モニタリング開始~」
機械から伸びたいくつかの電極のようなものを大翔さんに取り付けたクアットロさんに、大翔さんが声を掛けます。
「退室した後はどうするんだ、クアットロさんは」
「大翔さんから頂いた魔導具の補助もあるので、私達側の拠点にもこの結界内と同じ時間が流れるエリアがあるんです~。大翔さんみたいに広範囲とはいきませんが、一部屋ぐらいならなんとでも……。ですから、別部屋でこの後ドクターと通信して、準備し始めますよぉ。報復案もいくつか、すずかさんやアリサさんから頂きましたからねぇ、うっふっふ、わくわくしますよ~」
ものすごく悪巧みしています、という顔です。大翔さんとのやり取りを見る限り、付き合いも短いものではないでしょうし、どう見ても表社会の方では無いだろうというのも伝わります。
ただ、私自身が覚悟を決めたこともあるのか、嫌悪感を強くは感じてはいません。大翔さんやすずかさんが定義する家族を守るためなら、手段は選ばない。正義の味方をやるつもりはないのですから、私達は。
「ふ~ん……」
「……なにか?」
「いえ、新入りさんだからもっとごちゃごちゃ言うのかなって思ってました~」
「私も自分で驚いている部分はありますけれど、最優先するのが何なのか……そのことを考えれば、安っぽい正義感はとっくに捨てていたみたいですね、私は」
私の言葉に黒歌も頷いています。守るべきものは家族。その価値観は彼女の生い立ちからすれば不思議もありません。クアットロさんは少し感心した様子で、なるほどと呟いていました。
「力を振りかざし、こちらへの圧力をかけてきた連中よ。泣き寝入りなんて、奴らを増長させるだけ。朱乃は大翔の秘書をやると宣言した女だもの。清いやり方も濁ったやり方も両方飲み込んで、使い分けてくれなきゃ務まらないわ。家の顔にならざるを得ないアタシやすずかが出来ない部分を、大翔の影としてやってもらうんだから」
「私は必要だからやるだけなんだけど……みんな、私が手を下しちゃダメっていうからね。困っちゃうよ」
「すずかさん、『ほんと』お姫様役なんだから駄目ですよぉ~。穢れのない象徴がいるからこそ、大組織は回るんですからぁ……」
「だから、分からないようにやるんだよ? 立場は分かってるつもりだし、そんな足のつくようなやり方はしないから。それにひろくんは、私が自ら手を下しても穢れたなんて思う人じゃないから」
「悲しませたり心配はさせてるでしょーがぁっ!」
「私だって、ひろくんに対して同じ気持ちになるもの。だから、ひろくんと一緒に動くようにしてるよ。一人だけ危険な場所へ行かせるなんて以ての外だから、ちょうどいいもんね」
「安定のすずかさんですよぉ、アリサさぁん」
大翔さんの為に自分で何でもしてあげたい主義のすずかさんは、注意は聞き飽きたとばかり、やり方を変えるつもりもないようで。自重の意味を正しく知るアリサと、外部の方に見えていたクアットロさんは似たような苦い顔をしていますから、同じ苦悩を抱えてこられた仲のようです。
「……朱乃、相当急いで強くならないとダメにゃ」
「ええ、すずかさんだけでなく、大翔さんが出るまでもないという状態まで持っていく必要がありますね」
「すずか姉さまはこういう部分、部長に似てます。率先して最前線へ飛び込む人が、こちらの最重要人物だなんて洒落になりません」
私達駒王町組が改めて、一定の強さを早く身につける必要があると確認し合ったところで、電子音が大翔さんの検査完了を告げていました。
「焦りは禁物だよ、朱乃さん。さっきすずかが言ったように、現場に出る時は俺とセット行動を徹底してくれているから、互いに守り合うことも出来ているから」
「大翔さん……」
安心させるように私に微笑んでくれた大翔さんが、クアットロさんと一緒に検査結果のモニターを覗き込みます。様々なグラフで形成される画面は正直どういう結果が出たのか、お二人でないと分からないものでした。
「クアットロさん、かなり馴染んだだろ?」
「ええ、数値はものすごく安定してるように見えますけどぉ。記憶のフラッシュバック、大丈夫ですかぁ……?」
「夢で見るぐらいかな。それに物語を見るような感じだから、取り込まれるようなこともないよ。俺が男であちらが女性なのも大きいのかもね。この力だけは誰にも渡してないし、普段はナハトと俺が一緒に封じる形にしてあるから、今後もそうするさ」
「えっと、大翔さん。差し支えなければ、何の話か教えて頂いても……?」
「ああ、すずか達は知ってるんだけど……ただ、俺達だけになっ、えっ?」
大翔さんがクアットロさん達が退室してからと口に仕掛けた時、唯一の部外者とも言えたカリムさんがソファーから立ち上がり、二つの瞳を大きく潤ませながら、大翔さんの胸元へとその身を倒れ掛かるような格好で預けてしまったのです。
敵意を全く感じなかったために反応が遅れた私達。とっさに受け止めてしまった大翔さん。すると──。
「あの預言は、貴方様だったのですね……ああ、お会い出来るのをずっと待ち侘びて、え? 陛下!? 陛下!」
倒れ込む大翔さんを最速で動いたすずかさんとフェイトさんが支える中、アリサ達によるカリムさんへの突然の行動への問いかけが始まって、またもや収集がつかないような事態へと陥りかけたのでした。
「いつフラグ立てたんですかぁ、全くもう……」
クアットロさんの呟きは私たち全員が叫びたい思いそのものだったのです……。