※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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朱乃さん視点と、小猫ちゃん視点です。


第38話 従姉弟やお節介な近所のおばちゃん

 「初めてお目にかかりますわ。姫島朱乃と申します」

 

「貴女が大翔の新しく増えた家族? 私はエゥード。偽名よ」

 

 青色の長い髪につり目で秘書風の制服に身を包んでいる、私の目の前にいる女性。大翔さんの友人らしいのですが、いきなり偽名と言い切られてとっさに言葉が出なくなってしまう私です。

 

「しかし、大翔。ほんとに猫の耳に尻尾なのね……貴方のキャラの方向性、少しブレているのではなくて?」

 

「キャラの方向性って。そもそも俺はキャラ作りなんてしてませんよ、ドゥ……違った、エゥードさん」

 

「別にドゥーエと呼んでも問題は無いのよ。この部屋のセキュリティは私が完全に管理しているから、中にいる限り外に会話が漏れる可能性は無いもの。ただ、一応、廊下とかに出た時に、エゥードって呼んでもらえないと色々困ることになるから、名乗らせてもらったわけ」

 

 この方がクアットロさんの言っていた管理局に潜入中のお姉さん、ドゥーエさんで間違いはないようです。差し入れであるとか、通信を介さずに直接彼女に情報を伝えないといけないものなど、大翔さんがここ何年かメッセンジャーの役割を彼女達から仕事として受けているらしいのですが……。なお、翠屋の甘味は必ず毎回持参するのだとか。

 

「こう潜入が何年間も続くと、不意に元の自分を知っている人と無性に話したくなることがあるのよ。自分はドゥーエって認識してるのに、エゥードをやってるのが長くなり過ぎてぐちゃぐちゃになりそうになるのよね」

 

 大翔さんの尻尾を指で遊びながら、そんな愚痴を漏らすドゥーエさん。今の姿も彼女の先天固有技能で、偽装した姿なのだそうです。髪色を変え、目元はやや元よりきつ目にして、体型も現在の上司の好みを反映して若干グラマラスにしているとのことでした。

 彼女の場合、技能が働いている間は変装の枠を超えて骨格すら変えてしまうので、毎回身体の重心が変化したり、色々不自由なこともあるそうです。

 

「お陰で今の身体は肩が凝るのが早いこと。貴女も分かるんじゃない?」

 

 サイズからすると、殆ど私と変わらないでしょう。確かに凝りやすい部分はありますが、ここ最近の鍛錬のお陰で身体が強くなってきたお陰か、随分とマシになってきていたりします。人に比べて身体が強い悪魔や堕天使が鍛錬に身を入れるのだから、不思議でもなんでもないとは黒歌の弁でしたね。

 

「はい、普段の手入れは欠かせないですね」

 

「その辺りは大翔がいるもの、ストレッチや疲労回復については心配ないでしょう。必要になれば裏技で鍛錬の時間も確保出来るものね。あー、大翔。そこそこ。しっかり解してちょうだい」

 

 話している間に大翔さんは彼女の首周りや肩の按摩を始めています。疲労回復を促進するように仙術の気も併用しているようで、ドゥーエさんは本当に気持ち良さそうに頬が緩んできていました。

 

「技能はもらわないにしたって、大翔の魔力を通してもらうと、半人半機のこの私でも体内のエネルギーの流れが整うのよね。デバイス作りとかそっちにも精通してる影響なのかしらねぇ、こっちは助かるからいいのだけど……」

 

「気も覚えたので、生体部分にはより効き易くなってるはずですから」

 

「リラクゼーションサロンでも開業したらどこでも食べていけるわね。うん、もう肩が軽くなってきたもの……ほんとにあの三賢者もとい、三患者を相手してると余計に肩が凝るのよね。まぁ、あと半年以内の辛抱だわ」

 

「海鳴駅近くのあのマンションの最上階は未だにずっと押さえてありますから。クアットロさんが月村邸と交互に使ってますし、ドクターやウーノさん達も翠屋や温泉滞在の拠点にしてるのは変わりないですよ」

 

「ええ、この潜入任務が終わったら半年は絶対に休んでやるんだから。拒否なんてさせないわ。大翔もそろそろお酒解禁でしょ、付き合いなさいな」

 

 クアットロさんやドゥーエさん達とは長い付き合いらしく、知り合ってからもう10年弱になるのだとか。

 最初は家族と家族以外への態度を明確に分けていたドゥーエさんとは合わない部分も多かったものの、大翔さんの家族への考え方が自分と非常に似ていたことや、彼女の姉に当たるウーノさん──私はお会いしたことはありませんが──そのお姉さんが大翔さんに自分の先天固有技能を複写させたことを知り、自分の姉が見込んだ人間ということで、腹を割って話をしたり戦ってみたりした結果、今のような関係に発展したのだそうです。

 

「可愛い従姉弟みたいなものなの、大翔は。敵に関してはとことん容赦のないこの子が、あれだけ綺麗な女の子達……すずかさんやアリサさん達、貴女もそこに加わったわけだけど。その子達に本気で言い寄られているのに、彼女達の気持ちを信じきれずにいつでも一人で生きられるような準備をしていたりするような、女に対してものすごく臆病なところがあったり……。ものすごくしっかりしている部分ととても危うい部分が一緒になっていて、ウーノも私もどうにも気にかかる、そんな男の子なのよ」

 

「勘弁してくださいよ、ドゥーエさん。そもそも以前の話じゃないですか……」

 

「その子にとったら余計に気になると思うわよ。貴方の過去話だもの。貴方をより深く理解したいと思うからこそ、こういう話は貴重なものなの」

 

 はい、私にとっては非常に有難い話です。また、大翔さんが恥ずかしさに悶えそうになっているのも可愛い姿に映りますから、二重のお得感がありますよね。大翔さんはこの後、ドゥーエさんの機械部分の整備も済ませたのですが、その間もさらに色んな話を聞くことが出来ました。

 すずかさんに勧められ、なのはさん達を送る大翔さんのサポート役として同行させて頂きましたが、戻ったらすずかさんにも改めて御礼を伝えるとしましょうか、うふふ。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 厄介なことになりました。部長からのメールで、夕方に支取生徒会長と一緒に温めればそのまま食べられる夕食を持っていく旨と、もし寝てたら冷蔵庫に入れて帰るからと文面が送られてきたのです。

 

 寝ている私を起こさないように、というのは部長というより会長のアイデアと思えました。どうしても心配だから様子を見に行くという部長への助言に加えて、部長の先走りを抑えるために同行するところまで、安易に予想出来ます。

 部長は多分、私の一人で休ませろメールを、人恋しいけどわがままは言えないから遠慮している……と解釈したんでしょう。斜め上の勘違いなんですけどね。部長が寂しがりやなところがありますから、自分に当てはめて考えてるんでしょうね。いい人……違った、悪魔なんですけど、お節介な近所のおばちゃんみたいな感じです。

 

 ……絶対に言いませんけど。滅びの魔力をぶつけられてもたまりませんから。いつまでも部長に保護された頃の甘えたがりな私はもういないんです、残念ながら。

 

「じゃあ、あと一時間もしたら一旦戻らないとにゃ」

 

「ええ、黒歌姉さま。あと、魔力か変身魔法で細工も必要ですよね……」

 

 数日前まで140センチも無かった私の身長は、猫ショウの力を受け入れ始めたことにより、すぐに伸び始めていました。今の所、一日1センチ前後のペースで伸びてきていますから、145センチ弱になっています。

 あとはけしからん双子山を持つ姉さまの予想も当たり、バストやヒップラインも丸みを帯び始めていて……一気に成長期に入っているような状態でした。ファリンさんには本当にお世話になってしまってますし、アリシアさんにもたくさん服をお借りしてしまってます。……可愛い系のデザインが多くて動き難さというのはありますが、そこまで言うのはわがままでしかないですから。

 

「念のため、毎日の成長比較記録を取っておいて良かったにゃ……自分がどれくらい大きくなってるか確認出来るし、変身して数日前の姿に戻る時も微調整できるにゃ」

 

「こっ恥ずかしいので止めて欲しかったですけど、まさかこんな形で生かされるとは……」

 

「おーい、早めの食事が出来たぞー」

 

 調理場に入っていた兄さまやすずか姉さま達が大皿をいくつもカートに乗せて戻って来ます。私の話を聞いて、早めの夕食にしてしまおうと動いてくれたのです。

 

「エリオやキャロのこともあるし、カリムの一件がどう動くか分からないから、アタシやアリシアはこっちに残るわ。クアットロから相談事があってもすぐに対応できるしね」

 

「白音ちゃんのマンションの屋上で待機するのは、黒歌ちゃんとひろくんと私と朱乃さんかな」

 

「お、お兄ちゃん、私も……!」

 

「フェイト……学校の予習、復習は?」

 

「ううっ……」

 

「まぁまぁフェイト。お姉ちゃんがしっかり教えてあげるから、早く追いついてひーちゃんのスクランブル出動に同行出来るように、ここは踏ん張りどころだよ」

 

 フェイトさんは仕事の兼ね合いで明日が久し振りの登校。学習面が遅れてしまっているので、今日はお残り確定です。

 私にとってもありがたいのが、兄さまやすずか姉さま、朱乃先輩を始めとして成績優秀な先輩にあたる人が複数いるというこの環境。兄さまが忙しくても、アリサさんであるとかアリシアさんに聞くことが出来る。しかも苦手教科は作らないのが兄さまの方向性らしく、その辺りはすずか姉さまを始めとして互いに競い合うことで徹底しているからか、優秀な家庭教師さんの中から自分で合うタイプを選べる……なんて感じだったりします。

 

「聞きやすいのはありがたいです、本当に」

 

「これまでは私か祐斗くんのどちらか、という感じでしたものね。リアスも成績はトップクラスなのだけど、いかんせん教えるのには向いてないというか……」

 

 部長は天才型なので仕方ないところもありますよね。あ、この燻製ベーコン、すごくいい香りがします。え? 兄さまの趣味の一環? 食に対しての拘りが強いのは素晴らしいことだと思います。美味です。

 

「今度一緒にやってみるかい? 手間はかかるけど、出来上がったものを食べる楽しみも格別なんだ。あ、そうだ。アザゼルさんにも持っていってみようか」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい、兄さま。アザゼルってあの堕天使勢力の総督のアザゼルですか!?」

 

「あ、言うの忘れてたにゃ。そうそう、大翔はあの総督とも懇意の間柄にゃ。朱乃の家族仲を修復する過程の中で、大翔が色々動き回った結果だったはずにゃ」

 

 朱乃先輩も頷いているということは間違いないのでしょう。確かに朱乃先輩も堕天使の力を躊躇いなく使うようになっているので、絶対に兄さまが絡んだとは思っていましたが……。

 

「さ、き、に、な、ん、で、い、わ、な、い、ん、で、す、か!」

 

「にゃー!? いだい! いだいにゃ! 悪かったにゃ!」

 

 ど忘れしてた姉さまには灸を据えてっと。ぐりぐり拳ですからね、痛いに決まってます。

 

「うう、いつの間にか暴力系妹にクラスチェンジしてしまったにゃ……すずかぁ」

 

「よしよし、でも、大事なことだもの。伝わってなかったら、白音ちゃんも怒っちゃうよ?」

 

 すずか姉さま、撫でながら諭してもその黒猫は聞きませんよ。もう顔がふやけてますし、全くもう。

 

「正直、私もお父様との関係が修復できたのも急なことだったしね。大翔さんやアリシアさんがいなかったら、こうやってお父様のことを口に出すことさえ嫌がっていたままだったはずだもの」

 

 話を聞いて正直言葉が出ませんでした。まさか霊体とのやり取りまで出来るなんて、本当に何でも屋ですね兄さま。再度実体化する計画まで進行中ですか。そりゃ朱乃先輩が大翔兄さまにここまでべったりになるはずですよ。

 恩人で、恋人とか自分の身内にはとても優しく穏和な性格で懐も深く、とっても床上手で……。

 

「兄さまがこれでハンサム系だったら、もっとマズいことになってましたね……」

 

 ここにいる女性陣は、外見に極端に拘らず相手の全体を見ようとする人達ですし、まぁ、あれだけ癒し効果の高い魔力や気を持っていると分かれば、異形の力を持つ女は引きつけられる者も多いでしょう。

 部長はあのままイッセー先輩に執心しておいてもらわないといけません。朱乃先輩同様、私だけを見てという傾向が強いです。朱乃先輩は同じタイプでありながら兄さまの身と心の安全を重視して、複数の女性が兄さまと共にあることを受容したすずか姉さまを見ているから、自分を律しながら夜ははっちゃけて思い切り甘えることでバランスを取っているようですけど。

 ……ただ、オカルト研究部の他のメンバーや、生徒会の皆さんには絶対に見せられない姿です。一度、翌朝に弄ったところ、本気の雷光が襲い掛かって来たので二度とやりません。本気で炭にされかけました。

 でも、あの蕩けきった表情で、もっと子宮を躾けて欲しいと懇願したり、自分からおねだりしてお尻をぶたれて悦んだりとか、本当に兄さまに堕ちきった雌の顔になっているのを見ると、『……堕ちたな』と机で両手を口の前で組みながら呟きたくなる衝動に駆られてしまいます。そうでした、すずか姉さまが映画版を見せてくれると言っていたので、楽しみにしていましょう。

 

 ……私も、いつかああなっちゃうのかな。恐ろしいのは、それでも兄さまは私達を捨てることはないと確信が持てるから安心して堕ちてしまえることと、朱乃先輩は毎回とってもとっても気持ち良さそうで、こっちまでお腹の奥がじんじんしてくるんです。

 本当に恐ろしい人ですよね、兄さま。何が怖いって、本人は陥落させるつもりはないところです。でも、来る人は拒まない人ですから、周りで制限しなきゃいけないってのが良く分かってきました。

 

 そういえば、カリムさんも次の週末ぐらいにシェイプアップが完了しそうと言ってましたね。すごい熱意で身体を絞り、磨き上げていますから。カリムさんだけじゃなく、朱乃先輩もさらに色香も増しましたし、とても綺麗になっています。

 兄さまの周りにいる人はたいてい綺麗になるんですよね。心身がいつも整えられていると、自然と魅力的な女になっているというか。手入れに気を使うのが当たり前という雰囲気も含めて、月村邸はほんと魔境です。その環境にたっぷり浸かってる私も大概手遅れだってことも、自覚してるんです。




次回、部長と会長vs小猫ちゃん(+待機してる他四人)
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