「疲れました、兄さまぁ……」
喉を鳴らして兄さまに甘える私。膝の上は私の特等席。……実際は私だけじゃなくて、他にもこの膝の上を特等席と思ってる人もいますけど、それはそれ。今も膝上はアリシアさんと半分ずつ分け合いっこです。そのアリシアさんは兄さまの胸板に頭を預けて半ば微睡んでいるような感じでした。
部長は本当にお節介焼きな近所のおばちゃんみたいです。朱乃先輩が出張の名目で不在ということで、イッセー先輩はもちろん祐斗先輩や私への構いっぷりが留まるところを知りません。自分が寂しいからとくっつきたがる癖はどうなんでしょうか。イッセー先輩は大喜びで鼻の下を思い切り伸ばしてましたけど。
あ、兄さまやすずか姉さまが作ってくれた洋菓子、とても紅茶に合って部長も喜んでましたね。紅茶の淹れ方は朱乃先輩に手ほどきしてもらって、まぁ飲めるぐらいのモノは出せたはずです。あの時間帯だけが唯一、学園の中で無心になれた時間でした。
「よしよし、今日も頑張ったね、白音」
セラフォルー様の『ひーくん』事件があり、私も兄さまにお願いして名前を呼び捨てにしてもらうようにしました。朱乃先輩が言っていたように自分が兄さまのものって強く実感できて、実に悪くないです。
変わりましたね、私。兄さまのモノだって実感できるのが、こんなにも嬉しく思うだなんて。朱乃先輩は私の変化を見越していたのか、余裕を残した微笑みを見せているのに少し腹が立ちます。それに朱乃先輩、実際には海鳴にいるわけで私よりずっと兄様と一緒にいる時間が長いわけです。それが余計に苛立ちの元になると言いますか。
「黒歌さんもお疲れ様。問題はなかった?」
「ぐむむ……私も黒歌と呼び捨てでいいと言ってるのに……」
「ごめん、なんだか『さん』づけじゃないとしっくり来なくて」
「……まぁ、いいにゃ。急いては事を何とやらにゃ……でも、持久戦は苦手にゃ……」
黒歌姉さまは最初のアプローチを失敗してますからね。というか、色仕掛け全振りの姉さまは他の距離の詰め方が苦手というか、やったことが無い感じです。ただ、兄さまは色香や身体で距離を縮めようとすると……という方なので、なんだか姉さまは絶賛空回り中です。
もうちょっとして、私も兄さまとの関係性を確固たるものに出来れば、姉さまのフォローにも回るとしましょう。ただ、今はまず私が兄さまのパートナーとしてハッキリ認識してもらわないと。
「昨日の襲撃もあったことだし必要な時以外は気配を消しているし、それにシトリー達がフォローしてくれるし大丈夫にゃ。あ、セラフォルーが徹夜で起こしたデザイン修正案を持ってくるから、後で時間ちょうだいって言ってたにゃ。細かい時間の調整は後でメールするってにゃ」
会長曰く、寝ずにセラフォルー様は図案を起こしたのだとか。それで力尽きた後、今は溜めていた仕事の始末に追われているため、代行で会長が持参するとのことです。その図面はものすごく細かく書き込まれていて魔法少女への強い憧れがそのままこの一枚に詰まっているかのようだと、会長は苦笑いしていました。
「副会長も一緒にもう一度ゆっくり話をしたいと言ってました。だから、出来れば結界を張ってもらえると助かるみたいです」
「朱乃や黒歌さんに練習してもらう意味でちょうどいいかな。俺も傍に見ていれば、対応は出来るしね」
あの時間の流れも変えてしまう結界は、兄さま以外にすずか姉さまが単独で、アリサさんとアリシアさんが二人で組めるのだとか。術式が緻密な構成のため、分担しても相当きついとアリサさんは言います。
「大翔もそうだけど、すずかもたいがい規格外だから。同じようにやろうとすると、潰れちゃうわよ。自分に自己暗示かけてまで、大翔と同じ術式を身につける子だもの」
なんでも心理操作能力を鏡や音声再生器を利用して、自分にかけるのだとか。大翔さんが悲しむのを知り乱用はしなくなったらしいのですが……。
「すずか姉さま、無茶は止めて下さいね。まだまだ及ばなくても、私も頑張って代われる部分は出来るように努力を続けますから」
「ありがとう、白音ちゃん」
私が安心してこの場所にいられるのは、兄さまだけじゃなく私達を保護すると断言してくれたすずか姉さまの力が大きい。普段はお嬢様で上品な振る舞いなのに、兄さまが絡むと一気に『一人の女の子』になるすずか姉さまはとても綺麗だし、また可愛い人だと思うんです。
『えっと、白音ちゃん。あのね……』
そんなすずか姉さまと念話も使って内緒話です。一日ごとに体型が変わる私のために、姉さまはその度にちゃんと合うインナーを用意してくれていました。この件はアリサさん達も噛んでくれていて、皆が協力してくれています。
『だから、今日用意した分を後で試着してみてね? 2.5cm刻みで用意してあるから、大丈夫だと思うんだけど……』
さすがに兄さまの前で堂々と話すことでもないためこういう形を取りますが、夜はベッドにインナー姿で集まることもあって、兄さまも日替わりで変わっていく私のブラジャーに気づいています。そして、その理由についても……。
イッセー先輩が聞けば『なんと羨まけしからんそこ代われムッハー!』ということ請け合いですが、ベッドの上に集まる私達は兄さまとそういう関係性になっている、あるいはなりたいと思っているわけです。で、兄さまは例の恐怖症を抱えていますから、ある意味慣れてもらう意味合いも強いんですよね。
最初は恥ずかしかったんですが、男性は兄さま一人で他全員女性という環境。寝室は姉さま達の魔道具により常に適切な気温や湿度に保たれていますから、下着一枚で動いていても体調を崩す心配はありません。男の子といえばエリオくんが加わっているものの、寝る部屋は別なのでその辺りは問題も無いですし。
羞恥心とは別に、兄さまに見られるのが当たり前という状況で数日過ごすと、その状況に慣れてしまう自分がいて……慣れって本当に怖いです。すずか姉さまやアリサさん、朱乃先輩達はむしろ脱がす方になってますから、兄さまが逆に襲われる立場。私は肝が据わった女性の強さや恐ろしさを目の当たりにする毎日です。
もちろん、見られるということはだらしない身体つきになるわけにはいかないので、皆さん体型の維持管理に気をつけてます。恥ずかしいということで言えば、皆がいる場所で兄さまに抱かれる姉さま達の方がよっぽど恥ずかしいと思います。恥ずかしい……ですよね? すずか姉さまや朱乃先輩はむしろ私が一番兄さまを気持ち良くさせられると見せ付けているようにも思える時があるのですが、きっと私の気のせいです、ええ。
「ひろくん。シトリーさん達が来ても話をした通り、気や魔力の循環をしてあげちゃダメだからね?」
会長達との別れ際にはとにもかくにも私達以外への施術禁止令が出た兄さまでしたが、海鳴に戻り話を聞いたアリサさんが兄さまの魔力と気の循環が相手の身体にどのような影響を及ぼすか、具体例をあげて説明していました。
具体例の被験者になったのがフェイトさんや朱乃先輩。自分の身体がどのような状態になっているかを積極的に兄さまに説明するのですが、いかに自分が兄さまの施術を受けると発情するのかをそれは丁寧に説明していました。卑猥なことを隠すことなく暴露することを求められ、口にすること自体に悦を覚える性癖……マゾヒズムって怖いと痛感しましたが、男女関係になって長いすずか姉さま達以外でもこれだけ兄さまとの営みに夢中にさせる副効果があると知り、兄さまは頭を抱えていました。
「ふふふ、でも、まだお兄ちゃんの女にしてもらっていないその人達はマシだよ? すごくリラックスできて、気持ちいい感覚に浸って、またこの感覚に浸りたいなーという感じで済むから」
「そうですわね。大翔さんに一度抱かれてしまうと、魔力や気の循環をしてもらうだけで、正直、身体の奥が疼いてしまって仕方なくなりますもの。先程、ご説明した通りですわ」
「あの二人も既に手遅れかも……あれは牝の顔だったにゃ」
親切心が仇になるというやつですが、兄さまに癒しを求めようとする要素が多いお二人です。多忙で生真面目で何でも手を抜くことをよしとしない……だから、逆に解き放たれてしまうと一気にのめり込む感じがします。
「特定のお相手がいる方なら大丈夫とは思いますわ。情欲を刺激されるだけで、それは自分のパートナーに向かうだけですから」
「カリムさん……」
なぜか肌襦袢といった出で立ちのカリムさん。シェイプアップ完了の目処が立ったことで、積極的に兄さまに自分の身体に慣れてもらうプロセスに入っています。兄さまの隣に椅子を引き、腰を下ろしたカリムさんは責務を抱える者としての視点から話を始められました。
「すずかさんもアリサさんもそうですが、家であったり組織であったりと将来的に責務を担うと小さな頃から教育されている者にとって、大翔様は安心して身を委ねられる方なのです」
共に自分が抱える責任に対して、一緒に抱えてくれる人。いざとなれば自分を連れて逃げてくれるという安心感。そして、多忙の中で心身ともにリラックスできて、次の困難へと立ち向かう元気をくれる技術を持っている稀有な人だと、カリムさんは言います。
元々、魔力で房中術めいたことをするようになったのは、すずか姉さまやアリサさんの疲れを少しでも取り除き、明日への活力を取り戻させる目的で兄さまが模索した結果だと言います。心を預ける相手に抱き締められて穏やかな時間を持ち、身体の調子も整えてもらえる……。
その模索の結果が、相手の調子に合わせて細かい状態を整えられる技術へと変わり、かつ『気』を身につけたことで、女性の身も心も蕩けさせるようになった兄さま。
「もちろん、今の大翔様ならタイプ問わず、自分のパートナーにできる可能性が高いと思います」
「……いえ、そんな状況は謹んでご遠慮申し上げます」
「くすくす……はい、承知しております」
「気を付けます……まさか、相手の身体にそんな変化が起こってるなんて予想してなかったですし」
「一度抱かれてしまえば、発情を促進する追加効果も発動するから、ますます離れなくなるし。大翔のセックスは相手に合わせて細かくやり方を変えるし、相乗効果で女は絶対に離れていかないにゃ。というわけで、私もいつでも完全に堕としてくれていいのにゃ」
「謹んでご遠慮申し上げます」
「即答!?」
すぐに持久戦をかなぐり捨てる姉さまの春はとっても遠そうです。カリムさんも腕を絡める程度なら平気な所まで達しつつあるのに、姉さまは手が触れるだけで拒否反応が出る時がありますから。肉食系の本性を出し過ぎなんです、まったく。
「兄さま……」
身長が伸びるにつれて、私のおっぱいにも谷間が出来るようになってきました。こうやって兄さまに甘える振りをして身体を擦り寄せながら胸を強めに押し付けると、兄さまは途端に慌て出します。でも、拒否反応が出るわけでもなく突き放すこともないため、姉さまと私の差はとても大きいと言えますよね。
「し、白音!」
「ちょっと甘えさせて下さい……」
既に膝の上という時点で甘えてるというツッコミは無視です。無自覚系女子を演出する私のBからCに向かう絶賛成長中の膨らみを感じるといいです。えいえい。
「まぁ、白音さんったら。私も失礼しますね?」
「カ、カリムさんまで……ええ、お好きになさって下さい」
兄さまの身体は一つしかないので、こういう所は譲り合いも必要です。兄さまの腕に寄り掛かり、自分の身体を預けるカリムさんもとても心地良さそう。また、スキンシップの延長線に兄さまとの夜の営みがあるわけで、こういう意識づけって大切だと思うのです。
「あらあら、諦めも肝心と申しますが。大翔さん、嫌な時は嫌と仰らないと駄目ですよ?」
「嫌だったらそう言いますよ。ちょっと戸惑ってしまってますけど、自分の行動が原因でもあるって分かったので大人しくしてます」
はい、ぜひそのまま大人しくしていて下さい。あ、でも、理性を吹き飛ばして、雄の本性を見せる兄さまは大歓迎かも。朱乃先輩は兄さまを普段はこうして弄ってますけど、夜は完全に関係性が逆転しますから。それも含めて朱乃先輩は毎日を楽しんでいるので、本人としては充実してるんでしょうね。
ムラムラと思ったらイチャコラだったよ!