※家族インフルエンザ罹患などの対応にも追われ、更新が遅れております。
申し訳ありません。
⇒本人も罹患しました。B型です。更新遅れてごめんなさい。
節々の痛みや寒気しながら、子供の看病とか無理ゲー過ぎる!
「ありがとう、小猫。朱乃がいないから自分で淹れないと駄目かと思っていたんだけど、淹れ方を習ってくれていたのね。朱乃と比べても遜色ない美味しさだもの、よっぽど練習したのね?」
「おやつのお供に美味しい飲み物は欠かせないじゃないですか。だからです」
自分でも現金だと思いますが、急な上達が実現できたのも淹れてあげたいと思える人が出来たからというのがあります。朱乃先輩は朱乃先輩で、本来淹れてもらう側のすずか姉さまやアリサさんが上手に淹れるのを知ってからさらに奮起してますしね。温度管理とか時間とか葉に合わせてより細かく変えるようになりましたし。
「その朱乃ももうすぐ戻ってくるしね。メールで状況は知らせてくれるし、お父様との和解も順調みたいだから本当に良かったわ。堕天使の総督をおじ様と呼ぶのにはかなり驚いたけど、それはそれで貴重な繋がりになるだろうしね」
「堕天使の総督は朱乃先輩の味方にはなるでしょうけど、私や部長の味方になってくれるわけじゃないですよね?」
実際、こちらが敵意を見せない限りは敵対するわけじゃないのは分かっています。結界内に遊びに来ては大翔兄さまとの共同実験や開発を熱心に行って、酒と兄さまや朱乃先輩達が作ったつまみを堪能して、朱乃先輩のご両親に連れ帰られることを繰り返すのをよく見ます。また、私や黒歌姉さまにも最悪、こっちの陣営で保護も出来るから、兄さまの世界だけでなく駒王町もこれまで通り動けるようにすると言ってくれていますし。
兄さまはアザゼル総督にとって、趣味と実益を存分に語り合える友人であり、朱乃先輩を通じて疑似的な親子に似た関係でもあります。また、シェムハザ副総督や、バラキエルのおじ様など、総督を仕事に呼び戻すための協力も含めて兄さまは堕天使の幹部クラスと友好な関係を作り上げつつありますから……実質、堕天使勢力の庇護下にあると言って差し支えないでしょう。
「まあね。堕天使の総督は朱乃の味方なのであって、私の味方ではないわ。ただ、朱乃に強力な支援者がつくこと自体、結果的にその王である私にもメリットがあるのよ」
「そりゃ最初から襲いかかられはしないでしょうし、話も聞いてくれるとは思いますけど……」
丁重に接するのが当たり前って態度が隠れているのをアザゼル総督が見抜けないわけもなく、正直気分を良くすることもないでしょう。部長はもともと貴族階級にあり、自分が尊重されるのは当然という環境で過ごしてきた方です。また容姿も優れていますから、学校でも二大お姉様と呼ばれ敬われる存在。つまり、相手に対して下手に出た経験が非常に少ない立場。
『朱乃の王である私も敬うべきって本気で思ってる辺りが、悪魔というよりも貴族社会で育った弊害かにゃ。同じような生まれのソーナは魔王少女を反面教師として早くに自制を覚えたから、この辺りの二人の差はハッキリしてるしにゃ……』
性格の問題ではなく、尊重されるのが部長にとっての当たり前でそれを悪いことだと指摘する者もいない。それはある意味とても不幸なことだと思います。眷族に対しての慈愛の深さや、私達へ害を為そうとする者へ強い怒りを覚えてくれるなど──部長個人の性質は私もずっと好きなんです。兄さま達と知り合った今でも、それは今も変わっていません。
ただ、すずか姉さま達を知り、恵まれた環境や立場に付随する責務を果たす姿を見て、今の部長はもっと素敵な王になれる資質があるのにとても勿体ない……そう感じるようになっていました。
「ええ、だから当面は朱乃の王が私、リアス・グレモリーであるとアザゼル率いる堕天使陣営に認識させられればそれでいいのよ」
いずれは利用させてもらうこともあるかもね……と嘯く部長でしたが、ご両親やもう一人の親のような方を部長が利用しようとすれば朱乃先輩は迷わずはぐれ悪魔になるという気がして、何らかの手を打たなければならないと私は心に強く留め置くのでした。
朱乃先輩はご両親との和解が成り、もう一人の父のように慕うアザゼル総督とも友好的な関係を取り戻した結果、部長との密な関係に縋る必要がなくなっています。さらに大翔兄さまさえいれば、今までの交友関係を失っても仕方のないことだと、腹を括っている節すらありますから。
おそらく、男性そのものが苦手だった反動なのだと思います。すずか姉さまも同じようなところがありますけど、大翔兄さまさえいれば朱乃先輩は十分に満たされてしまう。今の自分を幸せとしか感じない。まして、肉親との関係性も磐石となれば……。
『部長に向かって微笑んで雷を放ちながらサヨナラしそうな朱乃先輩が幻視できました……』
『アナタは悪くない王だったが、私の家族や恋人を巻き込もうとした思慮の浅さを呪うがいい!……みたいにゃ?』
『ダンガムの三倍早い人じゃないですかそれ……』
メタな念話のやり取りをしても不安が拭えるわけもなく、部長と朱乃先輩の対立を危惧する私はソーナ先輩へと相談することにしたのです。よく効く胃薬を持参したうえで。
「そう、リアスが……。あ、胃薬はありがたくもらっておくわね」
「はい、予想通りというか。さすがに兄さまみたいな存在がいるとは想像できないでしょうから、朱乃先輩は堕天使の幹部クラスとの繋がりを自分のためにも生かしてくれると信じきっているみたいで」
その日の夕方。契約履行のためにもう一度部室なり、ソーナ先輩達なら生徒会室か共同で暮らす邸宅へ集合をかける深夜までの間、私はソーナ先輩へ報告がてら相談を持ちかけていました。なお、今私達がいるのはすずか姉さまの家の広大な外庭です。外庭があるってことは中庭があり、外庭には裏山も含まれていてどれだけ広いんだって話ですが、大丈夫。部長やソーナ先輩だって、冥界に広大な土地を所有してますからへーきへーき、です。深く考えちゃいけません。
『冥界とこっちの人間界の土地価格はとんでもない差があると思うけどにゃ~。アッハイ、白音ごめんね黙ってますにゃ』
思考を覗き見するのは止めましょうね、黒歌姉さま。実際は私の魔力や気の反応で思考を予測したんでしょうけど。ソーナ先輩は冥界との土地の価値の差を学んで知ってる方なので、このすずか姉さまの庭を初めて見たときは絶句されていましたし。
そこを考え出したら、どれだけすずか姉さまが富豪の娘でアリサさんも同じレベルの家のお嬢様って話に……その伴侶に選ばれた兄さまの玉の輿レベルが恐ろしいことになりま──白音は考えるのを止めました。
「いきなり5km走なんてしたらこの後まともに動けないだろ……ったく……え? 姫島先輩とか他のお姉さま方もぴんぴんしてる?」
夜の悪魔稼業までの間の合同訓練。ハーレム状態の兄さまに敵意を隠せない匙先輩でしたが、まず体を温めるための5km走を終えて言葉を失ってしまったようです。なお、5kmは慣れていないソーナ先輩達が走る距離であって、兄さまや私達は10km走です。悪魔や堕天使の力が交じる私達はこの程度で息が切れないようにということですが、まぁ初めて見れば驚きもしますよね。
「匙、休んでいないでストレッチですよ。休まず動き続けるのもこの訓練の一部です」
相談事というのも、走りながらとかこうして柔軟をしながら合間合間で話をしています。そのやり取りでも、私やソーナ先輩が息をあまり乱していないことに、匙先輩だけでなく副会長以外のソーナ先輩の眷属さん達が唖然としてしまっていました。
「椿姫やソーナも距離を10kmに伸ばしてもいいかもしれないですね。5kmでの疲労が私達と似たような状態になってきましたから」
「訓練に頻繁に参加させてもらってから、否応なしに鍛えられてるもの。そうね、朱乃の言うように次回から伸ばしてみようかしら」
「すずかさんやアリサ達みたいに短距離走と同じ走り方をする必要もありませんしね。私もあの域にはまだまだ届きそうにありませんわ」
ペアを組んで身体を伸ばしている朱乃先輩や椿姫先輩の会話を聞いて、夢でも見ているのかという表情の皆さんですが、ストレッチが終わったらすぐに基礎訓練の開始なんですけど……大丈夫かな?
「くそぉ、確かにあの男も走る前と変わらない面してるしな……。それに、あれじゃれ合ってるだけだよな、多分。殆ど見えないけど」
ストレッチを終えた兄さまに対して、同じく解し終えたすずか姉さまやアリサさんが木刀や拳で殴りかかり、兄さまはひたすら回避に専念している様子に匙先輩は状況をしっかり把握しているようでした。
「強く頼りにならなきゃハーレムの主なんざやってられないんだろうけど……とびきりの美人ばっかり侍らせてからに……」
イッセー先輩じゃないにせよ、匙先輩も色々思う所がある様子。そんな匙先輩に由良先輩や仁村さんが声をかけます。
「元士郎~? アンタだって傍から見ればハーレムにしか見えないんだよ。何を贅沢言ってるのかなぁ?」
「そうですよ、匙先輩。どこに不満があるって言うんですか」
二人に続いて追い打ちをかけるように巡先輩や花戒先輩、草下先輩も匙先輩を弄り出したのを見て、兄さまが声をかけました。
「うん、まだ元気は残っているようだね。では、軽く組手といこうか。匙くんは俺、すずかは由良さん、アリサは巡さん。仁村さんと花戒さん、草下さんはトリオを組んでもらって……そうだね、朱乃。成長した姿を見せて欲しいな」
「あらあらあら、うふふふふっ! ええ、大翔さんお任せ下さいな! 成長した私の姿、存分にご覧下さいねっ」
わっかりやすいですねー。深紅の魔力が漏れ出てますし、悪魔と堕天使の翼も両方隠す気がありません。二対四枚って増えてますよ、いつの間にか。浮かべる笑みは恍惚としたサディストそのもの。
「椿姫。加わりなさいな。宜しいですね、朱乃?」
「ええ、構いませんわ……殲滅して差し上げるだけですから、くすくす……」
言葉にすると同時にいくつもの雷球が朱乃先輩の周辺を漂い、いつでも攻撃できる態勢に移行しています。あれは悪の組織の女幹部ですね、間違いないです。今はバリアジャケットとしての巫女服を装着されましたが、ボンテージの格好が絶対に似合いますよね。
「え、ええ!? あっという間に姫島先輩、戦闘準備万全だよ!?」
「いつ運動着から巫女服に着替えたのか分からないぐらい早かったもん! 本気も本気だよぉ……」
花戒さん、草下さんが悲鳴を上げる中、声を出さずに耐えている仁村さんは──あ、立ったまま気絶してますね。椿姫先輩が参加したくないと抗議の声をあげるも王の命令だと封殺したソーナ先輩に対し、仁村さんが気絶したのを理由にソーナ先輩を容赦なく巻き込む椿姫先輩の姿がありました。
「なっ、椿姫!? はっ、離しなさい!」
「拒否します! やられるなら一緒です! 小猫さん、留流子をお願い!」
お安いご用です。さくっと回収して、朱乃先輩にウインク一つ飛ばして開戦の合図を出しました。その途端、朱乃先輩の身体から噴き出す魔力の奔流と共に、雷球が一気に肥大化していきます。あれは仙術で身体能力を上げていてももらいたくないですね、ほんとに。
「フェイトさんからヒントを得た、私と複数の雷球から放たれる一点集中高速連射! 初お目見えですわ!」
フェイトさんは50基ほどの魔力発射体を制御できますが、朱乃先輩はまだ二桁に届きません。ただ、一つ一つの雷球に制御可能ギリギリまで魔力を込めているので、散弾のように放ってよし、あるいは一点に集中して放てば相手の魔力弾を飲み込みながら逆に痛撃を与えることも可能です。
……ええ、兄さまの助言を見えない尻尾を全力で振りながら聞き入れて、愚直に鍛錬した成果ですね。『大翔さんの言うことなのだから、私に出来ないわけが無い!』……恋に盲目なのもいいところですけど、なにせそれで朱乃先輩は一段高みに上がってしまったのですから。
「椿姫っ!!!!」
「死にたくなければ私に魔力を注いでっ! 『追憶の鏡』で跳ね返します!」
「あら、あらあらあら? 跳ね返した衝撃もまとめて飲み込んで差し上げますわ!」
金色の惨劇が繰り広げられる中、朱乃先輩を止めたのは兄さまでしたし、眷属の皆さんの一命を難なく取り留めたのはすずか姉さま達の力でした。あ、もちろん治療には私や黒歌姉さまも手伝ってますよ。全身の火傷範囲が洒落にならなかったので、傷口を塞ぐ担当と体力を回復させる担当に分かれたので。
「やり過ぎだ、朱乃」
「も、申し訳ありません……」
「強くなったのを俺に見せたかったのは分かるよ。だけど、それで友人や知人の人達に三途の川を見せようとしてどうするのさ」
兄さまが直接治癒魔法を施すとまた花が増えかねない状況でしたので、あくまで治療はすずか姉さまや私達経由です。兄さまは魔力供給係となって魔法や仙術を施す私達に力を注ぎ続けてくれたのですが、同時に朱乃先輩にお説教の時間を割くぐらいには十分余力がありました。
「うっそだろ。なんで魔力の供給、それも同時に複数の相手に渡しながらしゃべる余裕があるんだ……」
「兄さまは私達の指揮官的存在ですから。こういう同時処理に最も長けているんです」
「認めるよ、悔しいけどさ。それに、あの恍惚状態の姫島先輩をあっさり止められる辺りで、なんつーかすげー奴だって思った」
近づきたくないですよね、あの朱乃先輩には。近づけば雷球の自動迎撃に巻き込まれますし、それをいなして声をかけて魔力に干渉して動きを止めるわけですから、匙先輩の評価も変わるというものです。
感想のみならず、評価及び評価コメントありがとうございます。
指摘は苦い薬として、励ましの言葉も本当にうれしく思います。