夜中のテンションで書いたので
おかしなところは明日の晩にでも修正します。
ただ、帰りが遅い日が続いているので、なかなかきついところもあるんですが。
「えっ!? まっ、待って下さい、セラフォルー様! それはあんまりですっ、俺の、俺のパラダイスがっ!」
「君の変態的行動がリアスちゃんの評価にも直結するんだよ? いい矯正の機会と思わないとねっ☆」
再び倒れる兵藤さんにリアスさんが駆け寄り抗議の声を上げようとしますが、セラフォルーさんが耳元で一、二言何かを囁いた途端、なぜか真剣な顔つきに変わった彼女が受諾の返事をされます。
「……いい機会よ、イッセー。そうね。貴方のそういう視線も対象を限定するべきだわ、そうするべきなのよ」
「ぶ、部長!?」
「イッセーは私の眷属よ。私のものが他の女に見境無く目を向けるのは容認できないわ。見たいのなら私がいるじゃない。それでも他の女を見るのならば、自分のハーレムに入れると決めた女だけになさい。……それでは不満?」
ああ、セラフォルーさんはグレモリーさんの眷属に対する独占欲を刺激されたのですね。所有物扱いされていることに気づかないのは、同性から見てもかなり大きいと感じる膨らみに埋もれて頬が緩み切った兵藤さんぐらいのもの。あの煩悩に塗れた表情である彼を頭痛程度で止められるのかちょっと不安になりますが、そんな彼を胸の内に抱き寄せたグレモリーさんは、部下の方の煩悩が自分に向けられる分には随分寛大なようでした。
「ぶ、部長! それなら朱乃さんや副会長はいいんですかっ! 俺はあのお二人をハーレムに入れたいんですっ!」
「基準が分かりやすいわね、イッセー。ただ、ハーレムに入れるにも相手の合意が必要よ?」
「あらあら、うふふっ……! お断り致しますわ、イッセーくん?」
「色欲魔人に身を任せる趣味はありませんので」
もちろん朱乃さんや椿姫さんの答えは分かりきったものでした。すずかさんや私達を対象としなかったのはやはり煩悩も命あってこそだからでしょうか。ただ、朱乃さんの顔は笑っているものの、内心怒りを覚えているのでしょうか、身体の輪郭に合わせて雷光が発露してしまっています。
『……自分の眷属が他に目を向けるぐらいなら私を見なさいっていうのは部長の自由ですけど、エロスを堂々と求めるイッセー先輩の煩悩を受け止めきれるんでしょうか。兄さまの女となっている朱乃先輩を堂々とハーレムに入れたいと叫ぶ感覚も理解できません……』
『リアスは祐斗くんにもスキンシップ過剰な傾向はありますからね。リアスの感情は所有欲に似たものでしょうけど……だからといっても食い入るように見られたり、触れたりするのを許せる感覚は正直、私は理解し難いわ。うっかり光力がたっぷり篭った雷を落としてあげたくなりますわね……うふふ』
『ただ、煩悩さんはグレモリーさんに夢中になっておいてもらわないと、黒歌ちゃんじゃないけど……いつかうっかりもいでしまいそうだから、強くつよぉく念入りに暗示を入れてあげないといけないね? あ、頭痛だけじゃなくて、彼女に対するそういう指向性を持たせても……』
『すずか、それやったらお兄ちゃんは悲しむよ? それにお兄ちゃん、怒った』
迸る魔力や気のうねり。大翔様の背中に広がる二対四枚の黒い羽、加えて同じく二対四枚の漆黒の翼──。さらに両目は紅と翠の瞳へと変わり、大翔様の体を纏う深紅の魔力を覆うように虹色の魔力が二層となって折り重なって……。
「兵藤君、朱乃は俺のパートナーだ。それを承知の上で今の発言をしたのかな? それに椿姫さんも俺の良く知る友人だ。あまりに今の発言はいただけないな。ああ、よく考えて答えてくれよ。答えによっては俺は即座に君をこの世から存在自体を抹消しかねない。……俺は女性に対して恐怖症を患っているにも関わらず、どうにも独占欲が強くてね。自分でも矛盾していることは分かっているんだが。自分の大切な女性と認識できて触れても震えや吐き気を覚えず、触れ合うことに安らぎや安堵感を覚えることが出来るようになったパートナーには、他の男に触れさせるどころか情欲や性欲の類を向けられるだけでも酷く苛立ってしまうんだ……」
その静かな言葉と共に、大翔様は自分の力を隠すことなく、最後にバリアジャケットを装着されました。そのジャケットの形態は私や教会の皆が伝え聞いてきた、あの鎧の形そのもので──。
「なかなかこの力は馴染ますことが出来なかったんだけど……『聖王の鎧』、まさか君への怒りで一気に発現させられるとは思わなかったよ」
「大翔様……ああ、陛下……」
私は自然に祈りを捧げる態勢を取っていました。聖王教会の中で生まれ育った私が信仰を捧げるべき存在と教えられてきた、目の前のベルカ聖王家の証を身に纏ったお方が私の愛しい人。一生を捧げ、お仕えする唯一無二の私の大切な王──。
この身は陛下のために。陛下の意思を陛下の手足となり叶えるのが私の役目、それこそが我が喜び。陛下の怒りは私の怒りなのですから……!
「ああ、愛しき陛下。陛下の怒りはごもっともございます。ですが、御身の手を汚すぐらいならば、私にその者を討てとお命じ下さい。陛下に比べ非才の身ではございますが、必ず討ち晴らしてご覧に入れます」
朱乃さんへの怒り。我らを后としてお認め頂いているからこその怒り。ですが、王自ら彼ごときに手を下す必要などございませんもの──!
「ああ、陛下……! 貴方様はお命じ頂くだけでよいのです、どうぞご命令を──!」
ああ、私をそのように気遣う目で見る必要など無いのです陛下。私とて貴方さまの鍛錬に耐えてきた身。自分の才を目覚めさせてもいない不埒な者など……え? どうして陛下は私を抱き締めていらっしゃるのですか?
「すまない。俺の怒りに完全に同調してしまったんだな、カリム。ナハトを通して魔力のパスが通っているんだし、俺とカリムの気も交じりやすくなっているんだし……。貴女にとって虹色の魔力、この鎧は特別なんだから。感情が昂ぶるのも当然だ。ごめん、貴女にそんな言葉を言わせちゃいけなかった……」
ああ、温かい陛下の気が私に……もったいないことです……。とても温かな、私を蕩けさせていく、ふかふかのベッドに身を任せるような気分、に──。
◇◇◇◇
冷や汗をかいたのは、久し振りだった。それほどまでに一気に膨れ上がったひーくんの魔力や気は危険なもので、止めるとなれば一切の手加減は出来なかっただろう。アザゼルちゃんも強張った表情になって、ほろ酔い気分なんて吹き飛んだはずだ。
怒りの発露で、彼の中にある様々な力が一気に表に出たわけだけど──ああ、彼は私やアザゼルちゃんのところまで届き得る力を内に秘めているんだね……。平然としているのは、すずかちゃんやアリサちゃんといった、元々彼に長年付き添ってきた女の子達。僅かに驚きの表情が出ていた子もいるけれど、彼の力が上級悪魔の範囲に収まらないぐらいのものだと理解しているんだ。
そして、彼は怒りに身を染めながらも、パートナーの異変にすぐに我を取り戻した。彼にとって彼女達は力を沸き起こすための鍵であり、同時に弱点でもあるんだ。
「……すずか、カリムを眠らせた。頼んでいいか」
「うん、カリムさんは私が見ているよ。大丈夫、誰にも触れさせない」
「待って、その姿は何なの……? 悪魔だけじゃない、堕天使の翼に加えて……二色の魔力を同時に纏っているだなんて……!」
ひーくんは平静を取り戻したのか、私やアザゼルちゃんを見る。問いかけるような瞳に、私はリアスちゃんの問いに可能な範囲で答えていく。ここまでのものとは私だって知らなかった。それでも彼は初対面だった私の希望を丁寧に汲み取り、私にとって夢の魔法の杖をくれた人。
「彼は私やアザゼルちゃんの友人だよ。だから、リアスちゃん。下手な詮索は許可できない」
「しかしっ! 駒王町は私の領地です! 領地の中に強力な堕天使が入り込んでいるのを見過ごすわけにはいきませんっ!」
「……だったら、すぐに出て行ってもらう? 願えばそうしてくれるよ、彼は。その代わり、朱乃ちゃんや小猫ちゃんと二度と会うことは叶わなくなる。彼が本来いるべき世界へ、一緒に帰っちゃうから」
駒王町は確かに悪魔が人間界の領地としている。だけど、それは表の世界に迷惑をかけないようにするのが前提。この街で行方不明者や謎の死体が散見されている現状、日本神話など元々の土地勢力からの苦情が上がってきているのを悪魔と日本神話の勢力差で封殺しているのが現状だ。
悪魔は若手の将来の幹部候補に領地の運営を練習させる目的でこの土地を使っている。らしい傲慢さといえばそれまでだ。だけど……ひーくんを見ていると、思い知らさせるんだ。ひーくんを見て、日々変わっていくソーナちゃんを見ることで、自分が支配階級としての役割を果たせているのかと常に問いかけられている、そんな気持ちにさせられる。
自由時間が殆ど無いのは当たり前。だから、封時結界に時間操作の概念を関連づけて、ひーくんは自分やすずかちゃん達の余暇を捻出している。羨ましいと最初は思ったけれど、必要に迫られる中ひーくんは自分の僅かな余暇をその実現に費やして、今の公私のバランスをうまく取れるようになったんだ。
リアスちゃんの発言自体は本人としては当然のものだろう。だけど、その責務を果たしきれていないことについて、学生という身分は何の免罪符にもならないんだ。
「彼は自分が部外者だってちゃんと認識してる。だから、普段は力を抑えて悪魔や堕天使としての力を封じている。彼が怒りを顕わにしたのはリアスちゃんの眷属が女の子の尊厳とかを考えない発言をしたからでしょ。まして、朱乃ちゃんは彼にとって大切な人。朱乃ちゃんも彼を大切にしてる。それを知っての彼の発言を無視は出来ないよね」
「し、しかし、朱乃は私の眷属です……」
「眷属なら、恋愛も王の指示通りにしなきゃいけないのかな。それって、奴隷と何が違うの?」
私の声はいつもの陽気な調子のものじゃなくて、冷たく低い魔王としての声だ。ああ。私、ひーくんをけなされたことに結構頭に来てるみたいだ。私にとっての大切な友人。ソーナちゃんを導き、強く鍛えてくれている、頼りになる男の子。
「改めて伝えておくね。彼はソーナちゃんの眷属候補です。候補なのはソーナちゃんが彼を手持ちの駒で転生させる力が足りないからであって、ソーナちゃんは彼を自分の大切な仲間と思っているから」
「……ええ、彼は私や私達のお師匠さんみたいな方。眷属などと私が指示を出すなんておこがましいと思っているわ」
「リアス・グレモリー。堕天使の総督として伝えておく。こいつに危害を加えるということは堕天使に喧嘩を売るのと同義だ。これはシェムハザを始めとした幹部連中にも合意を取っている」
追認するようにバラキエル、朱乃ちゃんのお父さんが頷いている。ああ、朱璃さんだっけ……彼女も頭に来てるんだね。姫島家は炎を司る一族……ああ、炎の魔力が揺らめいているもん。
「……私は」
「ま、待ってくれ! いや待って下さい! そもそも俺が身勝手な発言をしたからなんです、部長は悪くないんだ! 責められるのは俺です!」
俯き震える──悔し涙だろうか、懸命に堪えるリアスちゃんの前に、ひーくんの力に金縛り状態だった兵藤君が庇うように立つ。その横には木場君、リアスちゃんの騎士も。
「大翔さん……」
「兄さま……」
そして、強大な力を纏ったままのひーくんの腕に鎧の上から触れた朱乃ちゃんと小猫ちゃんが言葉じゃなく懇願する目線だけで、事態の収拾を訴えていた。
「誰も罰するとかそういうことじゃないさ。……俺も子供だな。朱乃や椿姫さんをそういう対象にされたからってキレてちゃ、元士郎たちに平常心で戦うように指導する資格もない」
「大翔さん、違うぜ。自分の女をモノみたいに言われて黙ってられるのは、それはただの臆病者だ。それに安心したんだ、大翔さんもここまで感情を顕わにして怒るんだって」
「女として、大変嬉しく思いました。ありがとうございます、大翔さん」
元士郎くんや椿姫ちゃんの返答に照れたのか、頬をかくひーくん。鎧を解除し羽や翼を仕舞ってから、ひーくんと兵藤君は改めて間近で向かい合う形になって……そして、兵藤君は真っ先に深く深く頭を下げていた。
「本当にすまねえ! 空知さんが本気で朱乃さんに惚れているのを知っていながら、嫉妬に駆られて朱乃さんを侮辱するようなことを言っちまった! 空知さんの力が一気に膨れ上がるのを見て、朱乃さんを心から大事に思って心から愛しているんだって……情けないけど、やっと思い知ったんだ。空知さん、すごく熱いものを普段は内に秘めているんだけなんだって」
「……ああ、俺は朱乃を本気で愛している。誰にも渡さない。渡すつもりなんて欠片もないんだ」
「空知さんの熱さ、確かに分かった。朱乃さんは本当にものすごく熱く想われてるんだな……」
「顔を上げてくれ、兵藤君。気取って心から朱乃に惚れていないように見えたのなら、俺が悪かったんだ。交渉の場ってこともあったから、余計に取り繕っていた部分もあったし」
「……わかった。それに、空知さんは朱乃さんだけじゃなくて、小猫ちゃんやあの月村さん達も、そうなんだろ?」
「ああ、惚れ抜いてる。俺には本当に勿体無いって心から思う、とびっきりの女性ばかりだ。誰一人とっても一生を捧げて惚れて守り抜くのに相応しい女性なのに、俺に一生寄り添うと言ってくれる女性が何人もいる。だから、俺は絶対に立ち止まれないんだ。すずか、アリサ、アリシア、フェイト、カリム、朱乃、白音、黒歌……八人分の、男として強く頼りになる存在であり続けなきゃならない。最低でも普通の男の八倍の努力はして当然なんだよ、俺は」
それは宣言に等しいもの。八人のパートナーを最後まで愛し抜くと、大勢の前で改めて誓ったのだから。すずかちゃんは心からの笑みを浮かべているし、照れ臭そうにするアリサちゃんだったり、個人で反応は違うけれど、皆大切に受け止めていたみたい。
そして周りで聞いた私達──主に女性陣は、羨望の瞳でひーくんとすずかちゃん達を見てしまっていた。ハーレムという形ではあるものの、ひーくんは驕ることなく男としてどんどん成長していき、すずかちゃん達は確かに幸せなのだと見せ付けられるようで……。
「う、うぉぉぉぉぉ! ハーレム王のあり方ってのはこういうもんなのかぁ! 八人なら八人分、女の子が増える分だけ、人数分の価値がある男に成長しなきゃいけないのか!」
「体力も夜の精力も、人数分だよ。意味は分かるだろ?」
耳元で囁いたひーくんの言葉。ごめんね、悪魔である私達はしっかり聞き耳を立ててしまっていて、頬がどうにも熱くなるのを感じてしまう子が私も含めてたくさんいたんだよね……リアスちゃんも、ちゃっかりそうでした。