21時までにもう一話投稿すれば追いつくが……むりぽ。
いつも誤字報告ありがとうございます。
どこか必ずやらかしてるな……すいません。
老成している部分もあると思えば、今みたいに若者らしく感情を迸らせることも出来ると知って、どこか安堵している俺がいる。いや、神器やデバイスの話をする時の目の輝き度合いを知っているから、熱い部分を持っているとは分かっていたが……年相応の顔を見られたのは初めてだったからな。
ただ、露わにした力は洒落にならないものだった。さすがに俺やセラフォルーには届かないが、手加減が出来るようなレベルでも無かった。このまま鍛え続ければいずれは届き得る──ゾクリとしたのは久し振りだな。大翔が魔力等を通じて相手の力を複製して自分のモノに出来るのは知っているが、RPGでいう所のスキルを初期レベルで引き継ぐ技能だ。一見便利ではあるが熟練度が引き継がれるわけじゃないし、堕天使としての力も悪魔としての力も一から鍛えるしか無かったはずだ。
ゆえに、得た力は慢心することなく確実に自分のモノにするまで磨き上げる。それはモノ作りに妥協を許さない姿勢と同じものだ。……縁もあったとはいえ、朱乃がよく大翔を捕まえてくれたもんだぜ。此方の世界に迷い込んだのは偶然としても、その縁を確実につかんだのは朱乃の熱意と努力の賜物だ。
「バラキエルさん、朱璃さん、申し訳ありませんでした。未熟ゆえに力を抑えきれず、驚かせることになってしまって……」
「うふふ、構わないのよ? 私としては朱乃のためにあそこまで熱くなってくれるフィアンセくんで嬉しく思うわ」
「義父としてはあそこで守ろうともしない男ならば、逆に朱乃から強引にでも引き離すところだ。だから、あの対応で良かったよ」
「お父様、何を言われようと私は大翔さんから離れたりなどしませんよ? 何を言ってらっしゃるのですか?」
「……物の例えだ、朱乃。実際、大翔くんはしっかり朱乃を守ろうとした。私はそう判断しているからな。だから、そんな剣呑な目をしないでくれ」
義理の父母と息子、そして実娘のやり取りは見ている側としては気が抜けそうになるところもあるが、大翔の条件指定の話は終わったわけじゃない。
「すずかちゃん、ちょっとだけ耳を拝借☆ 暗示の内容なんだけど……私はこんな感じもいいと思うんだ☆」
「なっ、ミ……た……これは強……」
内緒話の内容は本当に声を最小限に抑えていたからか、俺達にも聞こえないものだった。ただ、すずかの奴がセラフォルーの奴が渡した一枚の紙を懐に隠すように仕舞い込んだ様子を見れば、アイツの煩悩を抑えるのに非常に有効な手段があるんだろう。後で確認させてもらわないといけねえが、どうもすずかの顔色がよろしくない。……かなりヤバいやり方なのかもしれねえな。
「痛みよりももっと効果は高いと思うんだ、彼みたいな性格にはね☆」
「……ええ、間違いないと思います。うん、ひろくんや皆にはちょっと別室で時間をもらって、後で教えるね。大丈夫、ちょっとショックを受けただけだから。体調とかは平気だよ、ふぅ」
おい、セラフォルーの奴は一体何を提案したんだ!? 正気を奪うような魔導書の一節とかじゃねえだろうな……すずかは大翔の正妻を自称するだけあって精神的にはかなりタフな奴だと思ってたんだが、そいつが顔に出るぐらいに強烈な何かってことだぞ。
「さて、ひーくん。そっちの兵士くんへの暗示は後でやるとして、もう一つの条件を教えて欲しいな☆」
「はい、セラフォルーさん。兵藤君単独ではなく、グレモリーさん本人を含めた眷属全体での俺達の鍛錬に参加してもらいたいのです。レーティングゲームでしたか……集団戦への参加もまもなく求められると聞き及んでいますし、個人の鍛錬だけでなく連携手段もよりしっかりとしたものを構築するべきでしょう。朱乃や白……えっと、こちらでは小猫でしたか。二人がどれだけ強くなったのか分かった上で、連携手法も考えるべきでしょうし。ただ、これはグレモリーさんの承諾が必要となりますが」
「……イッセーも祐斗も前向きな以上、眷属の希望を叶えるのが王の仕事でもあるわ。さっきの力、悔しいけど私よりも『現時点』では上なようだしね……」
渋々ながら認めるといった体を取るサーゼクスの妹君だが、マジで実力差が見えてないのか? 甘やかし過ぎにも程があるぞ、おい……。
「リアス……本気で言っているの? はぁ。そうよね、本気よね。本気で言ってるのよね、はぁ」
そのグレモリーの嬢ちゃんの発言に落胆を隠さないのがセラフォルーの妹、ソーナだ。コイツは大翔の指導を受けているし、セラフォルーを反面教師にしているのか……純血の悪魔であることに胡坐をかく様子が無い。冷静であろうと務めているようだが、友人には辛らつな一面を隠さないみてぇだな。
「ため息を二回もついた!? ねえソーナ、私への扱いがここ最近ひどいわよ! さっきの容赦ない説教といい……」
「……これまでの私と貴女との模擬戦の戦績は六対四で確かに貴女が勝ち越してるわね」
「た、確かにそうだけど。急にどうしたのよ」
「リアスにこれまでは分があったのは事実。ただ、一方的に貴女が勝ち越せるわけでもない。それが元々のリアスと私の実力差だった。……ちなみに、今の私は彼に師事して相当に実力がついた自負があるの。以前の私が複数でかかってきたとしても、難なくあしらえるぐらいには」
相手の魔力総量をうまく察知できないグレモリーに対して、ソーナは自分の手に触れさせて自分の魔力量を確認させている。結果、グレモリーはまたもや言葉を失うことになったわけだな。
「そんな。私の魔力量が子供みたいな差が……」
「今の私でも、一分立ってられないのよ。彼との模擬戦は。現時点どころか、日毎に差をつけられるばかりだわ」
「補足するとな、リアス・グレモリー。ソーナの話は別にしても、お前の自慢の騎士が剣もまともに振るえないあげくコイツ相手に十秒持たなかったんだぞ。大翔はそもそもウィザードやサポートタイプに属する奴だ、見りゃ分かるだろうが。そいつが前衛のスピードタイプを圧倒した事実を受けて、なんで近い将来お前がコイツに勝てるような言い方をしてるんだ? 慢心も極まれりって奴か」
「ぐっ、堕天使の総督たる貴方が私を挑発してまた戦争でも起こしたいのかしら……!?」
「おいおい……事実を言っただけでなんで戦争になるんだ。ならんならん。家族思いのサーゼクスですら、お前さんをお尻ぺんぺんするレベルだ。そもそも今のお前じゃ、朱乃にも成長著しい猫ショウの嬢ちゃんにも勝てる要素が無いぞ?」
「なっ、なっ、なっ、お尻ぺんぺんだなんてお兄様がそんなことをするわけがっ! いい加減に……!」
「チェックメイト、です。部長」
「落ち着いてちょうだい、リアス。こうして接近戦が不得手な私にも簡単に急所を押さえられてしまっているわ」
激高しかけたグレモリーの首元に添えられる二人の制止の手刀。グレモリーは気づけば首へと刃物を押し付けられたような感覚を味わったことだろう。うん、二人ともいい動きだ。余計な挙動も極力無くしているから、実際の速度以上に相手は感じるしな。
「……二人ともとんでもない早さだ。小猫ちゃんだけじゃなくて、朱乃さんの動きも見えなかったぞ」
「僕も鍛え直さないとね……僕も小猫ちゃんの動きが全く見えなかったし、朱乃先輩の動きもぶれたような状態でしか捉えられなかったから……!」
「彼にみっちり鍛えてもらって一か月も経てばこの程度は出来るようになりますわ」
「そのかわり地面がお友達になりますし、池のお魚さんの餌を口元から吐き出すことも日常と化しますけどね」
すずかやアリサに聞いてみれば、二人の表現は誇張表現でも何でもなく、何度となく嘔吐をするほどに追い込まれる鍛錬を全員経験していると言いやがった。大翔の奴、訓練とかに対しては大事な奴になればなるほど、とことん行くみてぇだな。
徹底的な基礎体力の向上、それがあってこそ少しでも長く自分が意図する動きが出来るように。長距離の走り込みは必須メニュー。走り込みの後ストレッチを挟みはするが、休憩なく組手であったり魔法の制御訓練であったり……体力、精神力共に使い切るまで徹底して自分を限界近くまで追い込むのを最初の間は繰り返すらしい。
疲れ切った時にどれだけ動けるか、それぞれの限界点をまさしく身体で覚えろってとこだな。一人も脱落しないのは、大翔への思いゆえか。女ってやつはこれがあるから怖ぇんだよ。
「……ドラグ・ソボールの超回復理論とおんなじじゃねーか!」
「ええ、鍛錬の後はゆっくりと入浴し身体を休め、大翔さんのマッサージで調子を整えて、良質な食事を取り、よく眠る。それを愚直に繰り返せばいいのですから」
「空孫悟を地で行く生活です、イッセー先輩。神豆はないので、入浴と食事と睡眠で補うんです」
それだけキツい鍛錬をやれば傷が残りそうなもんだが、その辺りは回復魔法──これ自体が反則レベルなんだがな。こっちの世界じゃ回復系の神器でないと同じことが出来ねえ。得意不得意はあっても大翔たちの世界じゃ魔法使いの素養があれば身につけることが出来るってのが反則過ぎるぜ。……いい加減バラキエルや朱璃辺りに覚えてもらって、幹部連中に展開する計画も本格化させねえとな。
なお、大翔の女連中はマッサージに魔力や気の流れを整える調整効果付きと来てるし、黒歌の奴がいう房中術も受けてるから、朱乃を始めとして肌艶が非常によろしい。色香もある。眼福って奴だな、うむ。まー、あの小僧みたいに煩悩丸出しじゃねえが、酌の一つをしてもらうだけでもいい気分になれるって奴だ。
「大翔さんのマッサージは上手いんだぜ。魔力を循環させて、相手の流れが澱んでる場所を見つけながら、凝り固まった身体を上手に解してくれるからなぁ」
「マッサージの時は会長や副会長も気持ち良さそうに頬を緩ませてますもんねー! 普段の厳しさが嘘みたいですから!」
「留流子、確かに否定はしないけれど……『今』『この場で』口にする必要はあったのかしら……」
「え? あ、あはは……会長、副会長、すっごく目、怖いです……」
哀れなうっかり仔羊が悪魔の手にかかり、その惨劇に声を荒げていたはずのグレモリーがあの小僧に抱き着いて震えてやがる。あいつらもソーナ達の折檻を受けたことがあるんだな、おそらく。
「じゃあ、リアスちゃんのOKも出たことだし、リアスちゃん達も皆でひーくん主宰のブートキャンプの仲間入りさせるのは確定だね☆」
セラフォルーが大翔の条件を飲む決定を下すと、グレモリーの騎士がすぐに大翔に挨拶にやってくる。おー、こいつも目をキラキラさせてら。
「宜しくお願いします、空知さん。僕のことは祐斗と呼んでください。あの、貴方は朱乃さんと同じ一つ上ですよね。必要以上に敬意を払ってもらうと逆に委縮してしまいますから……」
「わかったよ、祐斗。……これでいいだろうか?」
「ええ、大翔さん。頼りになる先輩と知り合えて、嬉しく思います。ただ、イッセーくんだけじゃなくて、まとめて面倒見るのが条件だなんて……ちょっとお人好しが過ぎる気がしますけど」
「そうなんです、祐斗先輩。兄さまの悪い癖なんです」
「なまじっか色々抱えておける懐の深さがあるんだろうね。僕も甘えてしまいそうだ」
「先達として相談に乗れることは言ってくれたらいいさ。例えば、ソーナさんやすずかの二人はそれぞれ種族が違うものの、古くから続く家を背負って立つことを義務付けられている。グレモリーさんの家も同じ冥界で悪魔の貴族なんだろう? しきたりはそれぞれの家で違うだろうけど、部下としての振舞い方とか助言できることもあると思う」
「兄さまはすずか姉さまやアリサさんの家業を継ぐのを前提でここ何年かずっとそういう世界に身を置いておられますからね」
爽やかに微笑んだ騎士は大翔と握手を交わし、交わす手に少し力を込めた。表情も引き締まり、大翔から学べるものは何でも学んでやる──そんな意思が見える。
「部長の眷属でいることは強さだけじゃなくて、経営や政治の力も必要になる──。学生だからって、未来の話だと思っていた自分が甘かったと思い知るようです。どうか色んな点で厳しくご指導頂けたらと思います」
「うん、それでも焦りは禁物だ。俺だって失敗談はかなりあるんだよ、たいていそういう時は冷静な判断力を失って視野が狭くなった時さ。俺と同じ轍を踏まないように、おいおい教えるよ」
「空知さんっ、俺もイッセーって呼んでくれ。俺、難しいことは全然分かってねえけど、部長を守っていくには強さだけじゃなくて、色んなことを覚えなきゃなんねえんだろ!? その先に俺が目指すハーレム王があるはずなんだ、バシバシ鍛えてくれっ」
どこまでも煩悩だな、コイツは。ただ、口にした以上大翔は容赦しないだろう。うーむ、シェムハザに真面目に相談して、俺も大翔の鍛錬に加わるかな。身体が鈍ってるのも自覚してるし、大翔との繋がりはさらに太いものにしたいところだ。
「じゃあ、早速だけど、明日は朝五時にこの朱乃の住まいである神社の境内に集合だ。もちろんすぐに動ける格好で来ること。そうしたら、後は俺が訓練場所までまとめて転移するから」
「ごっ、五時!?」
「悪魔は朝が苦手と聞くけど、朱乃達もしっかり起きてるぞ。ソーナさんや元士郎達も同じだ」
「イッセーくん、覚悟を決めよう。強くなればそれだけ朝の倦怠感も薄れてくるから──」
しっかし、大翔のやつ。同性の友人に結構飢えてたんだな。楽しそうに笑ってやがる。ま、元の世界じゃ名家の娘と世界的大企業の娘二人の婚約者だ。なかなか男友達も出来にくいところがあったんだろう。
……すずかの奴が寂しそうにしながらそれでも嬉しそうにしてるのも、自分が同性の友人が作りにくくなってる一因だと自覚してるからか。ただ、こういう時の大翔のフォローは早い。イッセーに目隠しを巻いた上で、全員呼んできて改めて自己紹介の時間を作りつつ、すずかをすぐ隣に招き寄せてやがった。
あー、俺も嫁さん、探すかな。どうするかな……。
リアス眷属との面通しも終わったので、プロローグまで走らなきゃ……!
朱璃さんの憑依用デバイス、冥界刑事スーツの完成、
あとはカリムさんの一件を片付けつつ、でしょうか。
※年度末進行で31日の更新無理っす、ごめんなさい。
マジ引継異動とか魔境。