体調を崩しておりましたが日曜には更新できそうです。
◇◇◇◇
14日分です。
異動先の仕事に慣れず、更新も遅れ気味ですが、
なんとか頑張って生きたいです。
※オーフィスって割と助詞を抜いて話す印象があるんですが、皆さんどんなもんですか?
元がイレギュラーな集団。多少、色んな種族や出自の仲間が増えたところで、俺達の根っこの部分は変わりはしない。
「じゃあ、私もお姉ちゃん役で参加するよ。私はひーくんみたいに割り切りきれない。万が一を考えるもん。知らない所で、離れた場所でひーくんの訃報なんて聞きたくもない」
「待って下さいセラフォルーさん。貴方は悪魔を導く四大魔王の一柱なんでしょう……!?」
「だから何? ありきたりな正論で止められると思うの? 私の魔女っ子の格好も含めて、最初からありのままに認めてくれた男の子って、ひーくんが初めてなんだよ。どれだけ私が嬉しかったか。このデバイス──ステッキのデザインや機能も、変身後の姿に込められてる防御術式の細やかさも……大切にしてくれている、守られているってすごく感じたんだよ?」
セラフォルーさんのいつもの軽い口調は完全に身を潜めていた。他の仲間達が近くまできていることにも気づいただろうに、セラフォルーさんは止まらない。
「ソーナちゃんのことにしたって、ソーナちゃんの眷属のことにしても、本当にひーくんは真剣に接してくれて。鍛錬の指導だけじゃなく年上のお兄ちゃん的な存在として、私のお願いした約束以上のことをしてくれてる。みんなの顔を見れば一目瞭然だよね。貴方があの子達の信頼を完全に得ているんだから」
「……ええ、お姉様。私も椿姫や匙達みんな大翔さんの言動を通して、彼を信じるに値する男性として、日々鍛錬に励んでいますわ。申し訳ないことに、学習面でもお世話になっている者もいますし」
近づいてきた者の一人、ソーナさんがセラフォルーさんの言葉を追認する。俺としては依頼を履行しているだけの話で、それに人に何かを教えるということは自分の至らなさを振り返るということでもある。基本動作一つ一つを自分自身、見直すいい機会でもあったのだ。
「それも嬉しかったんだ。私が大切で仕方ないソーナちゃんやその眷属くん達を、私と同じぐらいの思いで鍛えて導いてくれるように感じて。メールとかのやり取り一つに、喜んじゃう私がいて。ソーナちゃん以外だと初めてだったんだ、そういう相手」
「セラフォルー、魔王やめる?」
「そうだね……ひーくんやソーナちゃん達を守るためだもん。そうしよっか」
オーフィスの問いかけにセラフォルーさんは笑顔で言い切ってみせた。その言葉にソーナさんは驚くことなく、やはりと頷いてみせる。
「じゃあ、セラフォルーも鍛える?」
「あはは、そうだね。世界最強クラスに指導を受けられる機会ってそうそう無いもの。ひーくん、君を絶対に失いたくないっていうのは──私の本心なんだ。それが異性に対しての気持ちなのか、家族愛みたいな感情なのかはまだ分からないけど」
魔王の座を返上してもいいと本気で思えるぐらいには、思ってるから。そう、セラフォルーさんは改めて微笑むのだった。
「お姉様、各方面への調整や根回しが大変ですよ」
「手伝ってくれるでしょ、ソーナちゃん」
ぱんっ、ぱんっ!
話が進もうとしたところで、先程混沌を収めた母親二人の拍手により制止が入る。
「細かい話は明日にしなさい。皆、魔力もほぼ底をついているでしょう」
「封時結界の中ですから、改めて身体を休めてからゆっくり話し合えばいいわ。大翔君や儀式を助けてくれた皆さんはまず休息を取るべきよ。……本当にありがとう、皆さん」
プレシアさんに続き、制止に入った上でそう言って頭を深く下げる朱璃さんに俺達も顔を見合わせて、明朝に改めて話をするということにするのだった。
◇◇◇
本日だけはと家族三人で休ませてもらうことになり、私達は和室をお借りしています。お父様も久し振りの浴衣姿ということで、どことなく和やかな表情になっています。
「本当に大翔君には一生足を向けて寝れないな。魔法生命体と言いながら、こうして朱璃の手から温かさを感じられる。嗚呼、本当に朱璃にもう一度触れられるとは……」
「もう、あなたはいつの間にそんなに泣き虫になったのかしら?」
「仕方ないじゃないか。二度と取り戻せないものを思っていたものを、禁忌に近い形を取ってでもこうして彼が引き戻してくれて……朱乃も心から笑えている。こんな嬉しい事があるか」
ちゃぶ台を囲んでゆっくりお茶を啜りながら、三人でこうして話が出来る。それは本来許されぬ外法だったとしても、私達にとってみれば大翔さんが起こしてくれた奇跡に他なりません。
「彼に寿命の一部すら払わせてしまったのに、それでも彼は自分の力不足だと言い切った。朱乃。お前はもちろんこれからも彼を支える道を歩むのだろうが、私も出来ることは何でもあろうと力を惜しまん。私の手助けが必要であれば大きなことや小さいことを問わぬ、いつでも呼び出してくれ」
「私もお父さんと同じよ、朱乃。私はお父さんと貴女、二人の融合騎になれるように大翔君が丁寧な調整をしてくれているけれど……何より、この身体に組み込まれた核には何日もかけて注いでくれた、溢れそうなぐらいの魔力が宿っているわ。それも核にリンカーコアと同じく空気中の魔力素を取り込める機能を持たせてくれているから、私自身が魔導師としても力を奮える状況にあるもの」
「はい……大翔さんが本当に細やかな調整をギリギリまでしてくれていましたから。お母様が新しい身体で動くのに少しでも違和感が出ないようにと」
触れた時に温かさを感じるのもそうです。魔力の経路を血液のように巡らせて、お母様と私達が触れ合う時にも互いに自然に温もりを感じられるように──。
「ねえ、朱乃。彼自身がとても家族に飢えているのは、貴女も気づいていることよね。だから、彼は貴女が夫婦になるのを前提にする付き合いをしたいと伝えた時、逆に喜んでいたと聞いたわ。普通はあの年頃の男の子だったら重たいって言って逃げ腰になりそうなものなのに」
儀式魔法の異常を強引に押さえ込んだ大翔さんは、それこそ命を落としていてもおかしくなかったのだとお母様は教えてくれました。生命力を魔力に転換する時点で儀式の魔法陣に吸い上げられ、いかに悪魔や堕天使の寿命であれど全てを失っていた可能性もあったのだと。
「姫島家にも秘術としてああいう大掛かりな儀式魔法に似たものはあるの。けれど、失敗は術者の死を意味するものだと教えられてきたわ。彼は家族である朱乃の幸せを守るために、本当に命を賭けたのよ。少々の寿命で済むと思ったなんて彼は言ったけれど、結果論に過ぎないわ。そう言って貴女達を安心させただけ」
「そんな……」
あの儀式への乱入により、お母様を取り戻すのと引き換えに大翔さんを失っていた可能性も十分にあった。その現実を私は改めて教えられたのです。
「ただ、大翔君はあのオーフィスや曹操たちと事を構えることを望まなかった。出来なかったとも言うべきね。寿命の一部を失ったぐらいで済んだのならば、もういいじゃないか──そう発言することであの場を収めたのよ。ただ、朱乃。貴女は知っておいて頂戴。彼はきっとこれからもいざとなれば率先して身を投げ出しかねない」
「朱璃……彼程の術者なら計算とも思ってしまうのだが、違うと?」
「大人数で行う儀式魔術を短時間であっても一人で支えるとなれば、仮にアザゼルさんでも文字通り命がけになりかねないわ。全く本当に無茶苦茶で、それでいて危なっかしい手のかかる息子が出来たものだわ、うふふ」
お母様は私とお父様の顔を見て、ハッキリと大翔さんを息子として接すると言い切ります。そして、私にはもっと彼を愛情の鎖でがんじがらめにしなさいと助言をしてくれたのです。
「既に彼の危うさに気づいているすずかさんが実践しているように、もっと『愛情』で彼をしっかり縛りなさい。命を投げ出そうとする際に、貴女やすずかさん達の顔がよぎり躊躇ってしまうぐらいに。プレシアさんが彼を常に今の限界を超えるように鍛えるのは、彼が自分の身体に無茶を押し通す気質に気づいているからよ。私もこれから強く言い聞かせないといけないわ。母親を残して先に逝くなど許さない、必ず帰ってきなさいと」
私達三人の幸せの形をもう一度与えてくれた大翔さんを、私達が家族としてしっかりと拠り所になるのだと。それが大翔さんの危うさのブレーキにも繋がる……。
「子供が出来るのがいっそ早いほうがいいのかもしれないわね。孫娘、早く見たいもの」
「ちょ、ちょっと待て朱璃! 朱乃はまだ学生でだな、学生は勉学が本分で……」
「ええ、高校の間は駄目ね。冬が来るまでは待つのよ、卒業の時にお腹が目立たなければいいのだし」
お父様の絶叫に隣部屋のおじ様やヴァーリくん、見張られる側の曹操やゲオルクが様子を見に来る中、私は最初の子供はすずかさんとアリサさん、子供は皆で育てる──それが私達大翔さんの女達の約束事という約束だから、私は大学に入ってからになるかしらとそんな想像をしてみたりするのでした。
◇◇◇◇
「ったく、バラキエルの野郎。朱乃に子供が出来るなら喜ぶところだろうに、大騒ぎしやがって。大翔の奴はすぐに子供が出来たからって、朱乃を捨てるどころか大喜びしそうなもんだ」
「俺は人間界の風習にそれほど詳しくないが、仮に朱乃ぐらいで子供が出来たとするならば相当に早いんじゃないか?」
「女性の社会進出が進んでいることを思えば、出来ちゃった婚などと揶揄されそうな早さではあるかな」
「魔力を精力に転換する性魔術もある。そうでなければあれだけ多くの女を満足はさせられないさ。おっと、淑女の前でこんな話はご法度だったな」
「別に外見はともかく、中身はとっくに婆よ。そうね、アリシアやフェイトの子ならすぐにでも見てみたいと思うわ」
この畳というのはなかなか、仄かな香りもして悪くないものだ。いつでも寝転がれるというのもいい。アザゼルは作務衣というゆったりとした部屋着に着替え、既に横に寝そべる格好で寛いでいる。ただ、俺やあちらのプレシアと一緒に見張り役ということを忘れてはいないか?
「しかし、ゲオルク。考え直してくれないか。今、君に俺達の派閥から抜けられるのはダメージが大き過ぎる」
「いや、俺は魔術の深遠に繋がると思って、曹操の元にいたわけだからな。彼のような魔術を極めんとする者にこうして出会ってしまうと、すまないが俺は抜けさせてもらうしかない」
「そうだー抜けちまえー。テロリストの弱体化は大歓迎だー」
煽るなアザゼル。しかし、曹操とやらはあの聖槍を十全に使いこなす強敵だった。模擬戦ということで、互いに本当の全力は見せなかったものの、聖槍をもらうわけにはいかなかったからだが、こちらも有効打を一度も当てられなかったという始末。互いに当たれば重傷、あるいは死。だからこそ強者との戦いは心が躍るんだけどな。
「見張り役の筆頭が一番寛いで、かつ茶々入れに一生懸命。なるほど、朱璃から言われていた通りね」
「……おいおい、いつそんな呼び方になるまでになったんだよ」
「同じ母親よ。そして、娘を預けている手間のかかる義息子がいる。短時間であれど仲良くならない理由がないわね。そろそろしゃきっとしないと全て報告の対象よ?」
人間の言葉だけで顔色を変える堕天使の総督に、曹操とやらも多少は溜飲が下がったのか。ただ、その曹操が同じ人間の言葉にまた顔色を変えることになるのだ。
「さて、曹操と言ったわね。古代中国の英雄の血を引き、聖槍の担い手として選ばれた貴方は英雄たらんとするようだけど、英雄は望んでなれるものなのかしら。悪魔を、堕天使を、龍を、神を打ち倒す。確かにそれは強者の証。だけど、強者はイコール英雄たり得るのか」
「何が、言いたい」
「いえ、大翔は一度、この世界の危機を救っているわ。だけど、その事実を彼は自分の功績にすることを望まなかった。知り得るのは当事者たち。そして、その実績を他の当事者に押し付け、英雄に祭り上げた支配層のみ」
「人の身のまま圧倒的な実力を身につけ、その下らぬ支配者達を退け人々を導く──それが俺の、曹操の名を引き継ぐ俺の責務だ。彼とは、違う」
「騎士でいいのだと、あの子は言うわ。大切な人達を必ず守り抜くそんな守護者であればいい。全てを守ろうとすれば取りこぼす。その時に取りこぼしたものが、自分が本当に守りたい相手になってしまえば意味がない──」
守る相手が増えた分、死に物狂いで強くなろうとするのは絶対に守り抜くという意思の表れ。守護者としての強さ。守られる者からすれば、彼は立派なヒーローということか。
俺は強さこそが全てと思うが、信念という奴に縛られるのはなかなか面倒なものだな。年輩の女性の一言一言が曹操を揺らすのを、俺はそんな心持ちで見ていた。
「お、チャーシューなくなったな。つまみもらってくるか」
「なに……? 何を一人で勝手に喰らっているんだ、アザゼル……」
──話をまともに聞かずに、晩酌のつまみを一人で胃に入れた男をまずは制裁するか。なあ、曹操。答えはすぐに出さずともいいだろう。明日、空知と話をしてからでいいじゃないか。少し付き合え、この馬鹿提督に痛い目を覚えさせるのが先だ……。
「付き合うわよ。この駄目大人に教えてやらないとね」
「流石に擁護できないな。俺も力を見せるとしようか、取られた力も随分戻ってきた」
この魔導師達の力があれば助かるな。さあ、曹操。やるとしよう。行くぞ、アルビオン──。