※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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筆が乗る間に更新を集中するスタイル。なおそろそろエネルギーが切れる模様。


第72話 レヴィアタンではなく、セラフォルーとして

 また悪巧みをしていた眼鏡の戦闘機人の悲鳴を遠くに聞きながら、私やお兄ちゃん達は朱乃の世界の四大魔王であるセラフォルーさんとティータイムの時間だ。黒歌と白音は必殺仕事人みたいな役割をこなすようになってきてるね、お疲れ様。後で作ったパウンドケーキを分けてあげようっと。

 

「セラさんのご両親ってどんな方か、セラさんから見た印象を教えて頂けませんか」

 

 お兄ちゃんはまた一皮むけて凛々しくなったと私は思っている。強欲になっただけだとお兄ちゃんは言うけど、私やすずか達のわがままをずっと聞き続けてきてくれたお兄ちゃんが多少我欲を出したところで、私はホッとするだけ。

 

 女の子が増えることには、何も思わないわけじゃないけど。ただ、お兄ちゃんがそれで私への時間を減らすことはないと分かっているし、増える人の分、お兄ちゃんの負担が増えるのをどう支えていくのかはすずかや私達の負うべきことだから。優秀な人ばかりだし、私は自分に出来ること──お兄ちゃんの身と心を守り、お兄ちゃんの矛であり盾であることをしっかり務めていこうと決めている。

 朱乃も黒歌も白音も結界内で数えれば三か月ぐらいを一緒に過ごしているけど、もともと『家族』に飢えていたからか、お兄ちゃんだけでなくて皆をとても大切に思っているのが分かる。三人とも力や知識を身につけるのにも本当に貪欲だし、もともと美人さんだったのに、さらに磨きがかかってる。

 成長期がきた白音がこの辺りが一番顕著かもしれない。肩の下ぐらいまで伸びた白銀の髪に私より少し小さい程度まで伸びた背丈、胸も膨らんでお尻回りも丸みを帯びて、一気に大人の女性に近づいた印象を受けるね。私達の中で一番の健啖家には変わりないけど、鍛練時の運動量も一番かな。朝夕の鍛錬とは別に、高町道場で私やお兄ちゃん、すずかやアリサ達と一緒にヘトヘトになるまで身体を苛め抜いているしね。恭也さんが帰国した時なんか、うん、ちょっと思い出したくないかな……流石は高町家、としか。なのははあの戦闘の才を全部魔導師の才能に振り分けたんだね、だから管理局史上最強のエースとか呼ばれてるんだよ。

 

「え? 私のお父様とお母様?」

 

「ええ。いずれお会いしなければなりませんし、どんな考え方や性格をしておられるのか、セラさんから見るシトリー公爵と公爵夫人を知りたいんです」

 

「それは構わないけど、ただ、ひーくん。本当にシトリーの家のことまで抱える必要は無いんだよ? ソーナちゃんは優秀だし、私だって魔王を辞めたらサポートに回れるし……」

 

「ソーナには……というより俺の女はみんな、近い将来俺の子を産んでもらいます。ですから、シトリー家の次代を継承する子の父親になるわけですし、避けて通れるわけが無いですよね」

 

 セラフォルーさんは絶句していた。お兄ちゃんの言葉には気負いも無く、自分が希望する未来に付随する役割として『当たり前』のように告げている。

 

「ちょ、ちょっと待って! だって、ひーくんはすずかちゃんやアリサちゃんの婚約者でしょ!? こっちの世界の世界規模の企業を支える役割があるじゃない!」

 

「ええ。すずかやアリサを俺の女にしている以上、当然二人の家業を支えるのは当然でしょう。当主はすずかやアリサになるかもしれないけど、だからといって俺が何もしなくていいわけじゃない。ソーナにしたって同じ事です。そうじゃありませんか」

 

 お兄ちゃんのぶれない言葉に深い息を一つ吐いて、セラフォルーさんは首を左右に振りながら悲しげに呟く。

 

「ひーくん。世界規模の企業をもう一つ抱えるようなものだよ? それを分かって言っているんだよね……」

 

「ええ。だから、必死で学ぶ必要がありますね。ですから、ソーナや椿姫には早急に資料を集めるように伝えています。叩き込める情報からすぐに頭に入れていかないと」

 

「潰れてしまうよ、ひーくん。魔王の仕事も相当だけどそれが比にならないほど、ひーくんは多忙になる。眠る時間もままならないほどに」

 

「潰れませんよ。時空に関わる魔術は俺の一番の得意分野です。それにすずかやソーナ達が俺が潰れるまで放っておくわけがない。遠慮なく頼ります。俺では及ばないような、才知に溢れた女の子ばかりですから」

 

 そんなお兄ちゃんは努力の人だ。初めて取り組むことを最初から器用にこなすタイプじゃなくて、飛び抜けた集中力で為すべきことを覚えて、身体や頭に叩き込むのが得意。だから、反復は絶対に必要な人。ただ、身につけてしまえば、その技術や技能に対してすごい安心感がある。徹底的に使いこなそうとするからね。

 

「それにセラさんも俺を守ってくれるんでしょう? 護衛的なことだけじゃなくて、家同士の付き合い方とかそういうシトリー家としてのノウハウや知識も教えてもらいますよ」

 

「……ずるいなぁ。うん、言ったよ☆ 私はソーナちゃんやひーくん達を守るって☆ だけど、ソーナちゃんや椿姫ちゃんを受け入れると決めた途端、一気に規模の大きい話を当たり前のようにするんだもん☆ 流石のお姉ちゃんも戸惑っちゃうぞ☆」

 

「戸惑いついでにもう一つ、聞いていいですか」

 

「何かな? ふふ、ちょっと怖いけど☆」

 

「俺を守ってくれるというのは、ずっと姉としてのままですか?」

 

 再度、セラフォルーさんの時が止まる。瞳は大きく見開かれて、その奥に戸惑いや隠せない期待感が浮かんでいた。

 

「ソーナや椿姫、セラさんと結界内で過ごす時間も随分長くなってきましたよね。俺はセラさんの明るさに気持ちが軽くなることも多かったんです。デバイスのステッキやバリアジャケットの改良でもずっと目を輝かせていて、年上のお姉さんなのに子供みたいにはしゃぐのが可愛いなと思ったり、でも、普段はセラさんはずっとお姉さんをしていて。軽い言動に見せかけて、鍛錬の時もしっかり全体を見てくれていた。姉さんがいたら、こんな感じなのかも知れない。そんな風にも思ってました」

 

 ある意味お兄ちゃんの前には正直な一面を見せ続けていた彼女に警戒心が解けたことで、お兄ちゃんにとってセラフォルーさんは一人の女性として映ったんだね。

 

「ソーナに言われました。悪魔らしく欲深さを肯定するなら、姉が他の男に抱かれることを想像してみて下さい、と」

 

「……私が、他の男に? アハハ、ないない☆ だって魔王で少女趣味のいい大人だよ? まぁ、私はこんな私自身を気に入っているからいいんだけどね☆」

 

「俺にとっては可愛い女の人ですよ、セラさん」

 

「あ、う……ど、どうしたのかな! ひーくん、まるで私を口説いているみたいだよ☆ や、やだなぁ……」

 

「そうですね、否定しませんよ。さて、質問はこの二つです。教えて頂けますか、セラさん」

 

 ここで一旦お兄ちゃんは言葉を止めた。そして、左右に座る私やすずかが思わず伸ばしていた手をそっと握り返してくれた。

 

『すずか、フェイト。こんな場に付き添ってくれて、ありがとう。……二人とも愛しているよ。これまでも、これからも変わらず』

 

 念話の声色は私達への気遣いと思いが込められていた。立会いをすると頷いたのは私達。それでもお兄ちゃんは、想いを言葉として伝えてくれる。

 

『正妻の座は譲らないし、だからこそこうして立ち会ってるの。それにひろくんがこうして女の人を自分のほうから口説くのが見られるなんて、なんか感無量というか』

 

 すずかの念話はセラフォルーさんにだけ聞こえないもので、その内容を聞いた私はすずかもお兄ちゃんに対して複雑な愛情を持っているなと改めて思う。嫉妬もするけど、自分を慕う女性を幸せにする度量は見せて欲しいという一面もあるし、こうしてどこか母親みたいな視点を持つこともある。

 

『すずかも本当、お兄ちゃんじゃないと幸せになれない女だよね』

 

『当たり前だよ、フェイトちゃん。今さら何を言うのかと思えば。ひろくん相手だからこそ、私は幸せになれるんだから』

 

 ややっこしい背景だったり性格を持っているからこそ、お兄ちゃんの存在が心にピタリとはまっちゃう。基本、自分に好意を向ける女の子は全肯定だし、一人ひとりにどこまでも真剣だし。身体の相性も必ず良くなっちゃうとなれば、ねぇ。

 うん、お兄ちゃんが自分から落としに掛かる人じゃなくて本当に良かった。セラフォルーさんに対して落としにかかってるのも、相手からの好意を受けてのことだしね。さてと……私もこの場にいる役割を果たそうかな。

 

「えっと、ひーくんの一つ目の質問はいくらでも答えるよ。ソーナちゃんと一緒でもいいし、椿姫ちゃんも一緒に住んでいた時期があるから、それぞれの視点で聞くのが参考になると思う。ただ、その、あの、先に二つ目の質問についてなんだけど……その」

 

 ここで引いてしまうとセラフォルーさんも私のように何年も悶々とすることになる。ソーナとずっと連れ添うなら、セラフォルーさんが加わっても私達の進む道は結局同じ道に落ち着く。

 

「セラフォルーさん、話に割り込んでごめんなさい。でも、私は貴女に言っておきたいことがあるんです」

 

「……怖いぐらいに真剣な顔をして、どうしたのかな?」

 

「妹でいい。そう思って過ごしてきた数年間は、自分の心を少しずつ削り落として壊していくのと同じことでした。違っているならいいんです。ただ、貴女のお兄ちゃんへの想いが姉としての家族愛だけじゃないというのなら、躊躇わないで下さい。私と同じ思いをするなんて真っ平ですから」

 

「フェイトちゃん……」

 

「お兄ちゃんは貴女が他の男性の隣で微笑むのを見たくないと考えたし、その微笑みも心からのものじゃないとしか思えなかった。貴女自身はどうなんですか? お兄ちゃん以外の男に抱かれて、子供を産んだセラフォルーさんは幸せそうに笑えていますか?」

 

「いやあ、子供を産んでる自分自身が想像できないかな……ソーナちゃんの子供が産まれて、その風景を見ながら酒を煽ってる自分ならあっさり思い浮かぶんだけど……タハハ。それに先の戦争で私は万単位で敵勢力の兵士を殺めたんだよ? そんな私が子供を望むなんてお笑いだよ☆」

 

 ダメ大人と一瞬思いかけた直後の言葉に一気に心が冷えていく。軽い口調とは裏腹に、この人は自分自身をとっくにずっと責め続けていたのだと気づく。それこそ悪魔の生だ、数百年単位で自分を──。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 魔王に就任して外交を担い続けてきたのも、自分の趣味に埋没するようになったのも……セラさん自身の心の自衛反応でもあったんだ。ソーナを過保護なまでに大切にして守ろうとするのも、その延長にある。そうでなければ罪悪感に潰されるから、だ。彼女の元来の性格は今表に出しているものじゃないと確信する。

 

 ……嗚呼、まどろっこしいやり方は、もういいよな。俺はセラさんを守りたい。そう想ったんだから、やることは一つ。

 

「じゃあ、万を超える子を育てましょうか、一緒に。命を殺めたのなら、同じ数の命を拾い上げ育て上げましょうよ。自己満足だって揶揄する連中はいるでしょうけど、それでセラさんの心が安らぐなら黙らせます」

 

 彼女が異種族殺しであろうと、俺にとってセラさんは不器用で真っ直ぐで可愛い女の人だ。手を出すのを、伸ばすことを躊躇しないと決めた。すずか達はもちろん、ソーナも椿姫も、望んでくれるならセラさんも俺に一生連れ添ってもらう代わりに、俺の元で幸せをつかんでもらう。彼女が心から笑えるように、俺自身の手で叶えてみせる。

 

「俺も万までは届きませんが、千を越えるぐらいに心を砕いて廃人にはしてきてます。恨む心すら壊しておかないと、どこから反撃されるか分かりませんから。すずかやアリサに危害を加えようとする奴らはコンクリートと共に暗い海の底へ沈めましたけどね」

 

 命に手を掛けるというところまでいったことは数えるぐらいしか無いけれど、その判断に迷いはないし振り返ることも無い。俺の基準は恋人や家族だ。そこが揺らいでしまえば、全て意味がない。セラさんは、きっと俺よりも優しい。

 

「俺の手だってとっくに血で染まってますよ。セラさん、こんな俺の手は気持ち悪いですか?」

 

「ひーくん、その言い方も本当に卑怯だよ……それにすごく、悪魔らしく傲慢で強引だよ。……参ったなぁ、ねえ本気で、私について回る柵もひっくるめて、私が欲しい?」

 

「ええ、貴女が抱える事情も全部まとめて、貴女を俺のものにしたい」

 

 立ち上がり、テーブルの向こう側のセラさんのすぐ隣で椅子に腰掛けている彼女と同じ高さで目を合わせる。丁寧な口調ももういらない。セラさんを、セラを俺のものにしてから、後は考えるべきことだ。

 

「……セラフォルー、俺の女になれ。姉の役割をしたいのならそれもいい。ただ、俺の女になった上でそう振舞え。お前は俺の元で幸せにする、そう決めた。他の男にくれてなんてやらないし、一人身を貫くことも許さない」

 

「無茶苦茶だよ、ひーくん……」

 

「形振り構わなかったら、貴女は逃げる。だから、逃がしてなんかやらない。本気で嫌なら、突き飛ばせ」

 

 腕を取る。引き寄せる。押し返そうとするセラさんの手の力は、無いに等しかった。

 

「後悔するから、絶対。ソーナちゃんなんか目じゃないぐらい、ややこしくて重たい女なんだから。寄り掛かっちゃうんだから、私。毎日愛してるって言って欲しいぐらい、言うよ?」

 

「付き合うと同時に結婚と出産のことを考えてくれっていう男だよ。逆に釣り合いも取れてる」

 

「馬鹿ぁ……☆ 離れないからっ、ひーくんが私の旦那様だって、ずっと自慢しちゃうんだから。悪い夢を見そうになったら一晩中くっついて離れないんだからねっ。もう取り消し効かないんだか……んっ、あむっ、ん……」

 

 可愛い発言を繰り返すお姉さんの唇を奪う。懸命に答えようとするいじらしさが愛しい。糸が二人の唇を伝うぐらいまで口づけを繰り返した後、彼女は泣きながらも確かに微笑んでいた。

 

「好きだよ……こんな拗らせたお姉さん捕まえて、ひーくんは本当に悪い男だよ……。でも、大好き。もう離れないよ、絶対。魔王辞める協力も、シトリーの家のことも頼っちゃうからね? その代わり、ひーくんの敵は全部私が永遠の氷像にしてあげる。ひーくんに指一本触れさせたりなんかしないんだから……」

 

「ああ、俺も大好きだ、セラさん。貴女の面倒事は俺が全部片付ける」

 

 本当に全てが俺ってわけにはいかないだろうし、すずかやソーナの力を借りる場面も多いだろう。でも、セラさんだけに背負わせたりなんかするものか。

 

「セラって呼んでよ、ひーくん。ひーくんのパートナー以外がいる場所ならさん付けでも我慢するけど、なんかすごくひーくんの女になった感じがするから、セラって呼ばれたい」

 

「分かった、セラ」

 

 もう一度、口付ける俺に、瞳を閉じてまた一生懸命答えようとするセラ。可愛くて脆さもあるのに、懸命に強くて気後れしない女性を続けてきたセラ。まずは、彼女が安心して泣いて甘えられる居場所になろう。

 

『やだ、強引なひろくん、すごくいい……私もやってもらいたい……』

 

『晩にやってもらおうよ、すずか。気持ち良さも格別になれるよ』

 

 二人の要望も後で答えるとしようか。可愛くて愛おしくて仕方がない俺の女達の望みに答えるのが俺の役割だし、何より俺自身が答えてあげたい。愛すれば愛するほど、女の魅力を増していくパートナーばかりなのだから。




セラさんがセラさんじゃない感はどうかご容赦くだされ。
可愛い拗らせ系お姉さん、いいと思いませんか?
絶対溺愛してくれますよ、ああダメ人間になるぅ~。

次回は三人娘の初体験になる予定です。
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