※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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ギャスパーくんとの顔合わせが始まります(すんなり始まるとは言ってない)

※誤字修正のご指摘いつもありがとうございます。


第81話 襲撃

「え!? 一誠君が堕天使相手に深手を?! 分かった、すぐに行く!」

 

 そんな相談事のあった翌日に、悪魔稼業中だった朱乃からの緊急連絡。グレモリーさんから思い立ったら出来るだけ早くと、朱乃達の仕事終わりにヴラディ君と顔合わせする話だったため、転移の準備が整っていた俺やすずか、後は職務が終わってこちらに帰ってきていたセラや、昨日から鍛錬を共にし、深夜帯に近づいたことによる眠気覚ましに一緒にラーメンを食べに行ったヴァーリまでが護衛役で共に転移する。気まぐれだと言ってたものの、彼からすれば食べ歩きの友としても何かあっては困るということらしい。

 

 当然のようにラーメンに行く時もすずかは一緒だった。魔法で念のために髪色を変えて、普段はストレートの下ろし髪にお団子を一つ作るだけで、一気に印象は変わる。そんな変装の一手間をしてまでも、一緒に行動できることに意義があるらしく、麺の硬さ談義をしながら替え玉を楽しむ男二人をすずかはニコニコしながら見守っていた。

 もちろんラーメンも食べたので、明日は普段より少し長い距離を走り込んで調整するねと笑っていたな。男友達同士のやり取りの場に堂々といられる彼女の立場というのが嬉しいとか何とか。アリサはそこまでするほどかと首を捻っていたし、アリシアは愛だねぇとしきりに頷いていた。フェイトも行きたがったが、プレシアさんの制止にあって断念。プレシアさんも含めて、近いうちに昼食や夕食に一緒に行こうと声をかけて今回は我慢してもらうことになった。カリムはそんなフェイトに付き添う形で待機組。21時以降の炭水化物は危険ですからと本気で遠慮していたけど、カリムもあれだけ鍛練をこなしてる以上心配はいらないと思う。本人の意思だから構わないけれど。

 

 帰りはソーナ達も一緒になるだろうからとほんとに過剰戦力もいいとこでしょ、とアリサは笑いながらフェイト達と共に送り出してくれた。オーフィスはお留守番の間、最強の自宅警備隊をすると何故かやる気を見せていたし、憂いなく飛び出していく。

 

「グレモリーさん! 朱乃! 白音! 一誠君は無事か!」

 

「あ、大翔。すっ飛んで来たのにゃ?」

 

 そうだ、黒歌が白音についていっていたから、危機は既に脱していたのか。ふぅっと安堵の息をつき、治療の状況を確認する。グレモリーさんの膝枕でソファーに横になっている一誠君はグレモリーさんが近くにいる時の少しだらしない表情をしていたけど、明らかに不調を抱えた様子が見て取れた。グレモリーさんの眷属から今彼を失うことがあれば、彼女と彼女の眷属は実質崩壊してしまいかねない。グレモリーさんは彼に傾倒している部分があるし、良くも悪くも彼はムードメーカーだ。

 ただ、苦しくても煩悩を止めないというか止められないのが彼らしいというか。まぁ、彼の視界ですずか達は例の認識阻害で筋肉隆々の身体にしか見えないから、その辺りを今更留めたりはしない。俺も自分の女に下心丸出しの目を向けられない限りは彼とうまくやっていきたいと思っているし、身勝手さ加減では彼と俺は大概似た者なんだから。

 祐斗君はなんというか、いい子ちゃん過ぎるところがあって逆に心配になるんだよな。まあ、万が一が起こるようなことがあれば、グレモリーさんの残った眷属を俺が保護すればいいか。朱乃や白音は既に家族だし、祐斗君も側近候補として、海鳴に居を移してもらって一緒に苦難の道を歩んでもらうとしようか。

 もちろん何もないのが一番だけど、一誠君は結構無鉄砲なところがあるから、その辺りの怖さがある。

 

「一誠君、大丈夫か。遅くなってごめん」

 

「だ、大丈夫です、大翔さん。ただ、身体を動かすのが億劫になるような気だるさは残っていて、こればっかりは光力を悪魔の身で受けた以上仕方ないみたいで。気合入れたら十分動けますし、一日大人しくしていれば、このダルさも取れるみたいです」

 

「そうか……良かった。しかし、一誠君がそこまでの深手を負う相手となれば、アザゼルさんの意向を無視した堕天使の中でも悪魔でいう中級以上の実力を持っている者がいる……?」

 

「いや、それは無いだろう。該当する可能性があるのは本当に限られているし、その男はいくら力を抑えても今のグレモリーやシトリー、あるいはその眷属の感知にかかるぐらいの強大な力を持っている」

 

「……イッセーは依頼人や教会のシスターを庇って戦ったのよ。だから、教会と関わるとロクなことにならないって言ったのに……」

 

 俺の言葉にヴァーリは即座に否定をし、さらに俯き加減のグレモリーさんの呟きは語尾が消えそうな弱々しいものだった。バツが悪そうな表情にイッセー君が変わったあたりを見れば、彼から見えるグレモリーさんの表情は察しがつく。普段は温厚な祐斗君の顔も敵を見つけたような怒りを抑えきれない様子になっている。

 

「でもアーシアは悪い奴じゃありません! むしろ俺や依頼人のあの人を庇おうとして、逆に思い切り殴られていたんです!」

 

 彼が深手を負ったのも、非戦闘者を庇いながら戦ったからのようだ。接近戦を主にする一誠君は、盾になりながら戦うとなれば攻撃手段が殆ど無くなってしまうし、そこを突かれてしまったんだろう。

 

「……朱乃。この街に侵入している堕天使達はアザゼルさん達と無関係なのはハッキリしてたな」

 

「ええ、ただそれが悪魔側に正式に伝わっていないため、動くに動けない状態であったのですが……」

 

「ごめん、その辺りは私の責任だよ。外交担当として、もうちょっと強く動けば良かったね……」

 

「冷戦状態なんだろ、勢力同士としては。担当者レベルでハッキリしていても、なかなかスッキリといかないのは人間の政治でも似たようなもんだし。セラだけの責任じゃない」

 

 セラが申し訳なさそうにするものの、現在のセラの立場が簡単には動きづらいのも分かっている。だから、セラを責める者は少なくともこの場にはいなかった。

 

「上層部の意向がどうであれ……駒王町を任されている者としてこれ以上は捨て置けない。空知の元で鍛練を積んだことで使い魔も含めた眷属全員で街全体に目が届くようになってから、私の取りこぼしがいかに多かったのかに気づかされたわ」

 

 グレモリーさんは有無を言わさないとばかりに強い口調で反撃にうつることを宣言していく。

 

「この街に住まう人達の安全を今更叫ぶのも遅きに逸しているのかもしれない。けれど、だからといってこれからの被害を見過ごすつもりもないわ。私、リアス・グレモリーはこの地を任されているのだから……! イッセーの回復を待って、明晩教会へ襲撃をかける!」

 

「こちらから逆に大公様側に正式な命を一刻も早く与えて頂くように要望も上げましたし……私から堕天使側に働きかけましょうかと申し上げましたから、少しは考えて頂けることでしょう」

 

「うわぁ。またきっと胃を痛めてるね、アガレスのおじちゃま。朱乃ちゃんがバラキエルさんの娘さんって知ってるからこそ慌ててるかも。父娘の仲は断絶状態と認識していただろうし、その伝手を使うわけがないと思ってただろうから」

 

「あらあら、セラフォルー様。あちらの意図は分かりかねますが『どういうつもりだ』と問われましたので、私に出来うることを全うしようとするだけですとお答えしておきましたわ、うふふ」

 

 きっとニッコリ微笑んでそう答える朱乃の様子が目に浮かぶ。はぐれ悪魔に認定されてもそれなら仕方ありませんわね、ぐらいの余裕を持っているように見えるから、向こうからすれば何を考えているのか分からず困惑してしまっているだろう。グレモリーさんは程ほどにねと苦笑いだ。

 

「部長、朱乃先輩、待ってください! アーシアは!」

 

「私が一晩待つ意味を考えなさい、イッセー。明日は病欠扱いで届け出は出しておくから、身体を元に戻すことを第一にして。さあ、家まで送るわ。今は身体を休めて、ね? お願いよ」

 

「……分かりました、部長」

 

「いい子ね、イッセー」

 

 グレモリーさんは口にしなくともシスターの救出を黙認するという態度を取っている。一誠君もそんなグレモリーさんの接し方にそれ以上の訴えを飲み込み、付き添われる形で立ち上がる。

 

「祐斗、念のため一緒に護衛をお願い。私はイッセーを送ったらそのまま光力の毒抜きも兼ねて付き添うつもりだから、貴方は戻って空知たちと合流して、明朝の鍛錬に参加してもらって構わないわ」

 

「分かりました、部長。大翔さん、じゃあまた後程」

 

 合流地点は月村邸への転移装置がある姫島神社なので、ソーナ達も含めて合流の上で帰宅することになる。そういう流れにも慣れたもので、祐斗君はこちらへ軽く手を振って、彼を支えるようにグレモリーさんとは反対隣に歩み寄っていった。そこまで弱ってねえよと軽口を叩く一誠君に対して、油断は禁物だと大袈裟にわざと肩を支えようとする祐斗君。そんなじゃれ合いが出来るぐらいに二人の関係性は良好なようだ。いや、一誠君の顔はなんだか引き攣ってるか……?

 

「空知、こんな形になってすまないわね。ギャスパーとの顔合わせはまた改めて日程調整させてもらってもいいかしら」

 

「ええ、教会の件を片付けてからの方が落ち着いて話も出来るでしょうし」

 

「そう言って貰えると助かるわ。さぁ、イッセー。じゃれ合ってないで帰るわよ? 付き添うって言ったでしょ? 私が一晩添い寝してあげるから、早くなさいな」

 

「え!? 付き添うってそういう意味ですか!? 分かりました! ダッシュで帰りましょう! 一秒でも早く!」

 

 騒ぎながらグレモリーさんを引っ張るように部室を出て行く彼を見て、黒歌の呟きや白音のため息が耳に入る。

 

「ほんと、今代の赤龍帝は性龍帝といわれても仕方ないにゃ」

 

「やってることは俺の方がよっぽど下種だよ、黒歌?」

 

「兄さまは求められるから応えてる部分が大きいじゃないですか。というかいつもこちらに合わせてばっかりで、本当に満足してもらえてるか怖い部分が大きいんですよ?」

 

「むしろこれだけ選り取り見取りの女に囲まれて、欲望を完全開放しない大翔が心配になるにゃ。むしろしてくれていいのよ? 黒歌さんはいつでもウェルカ……ふぎゃ!?」

 

 かえってとばっちりが飛んで来てしまったので、苦笑いするしかない。確かに俺も一誠君も問題がある部分を抱えているけど、どうにも性格的なものはすぐに変わるものでもない。ほんと人の振り見て……という奴か。

 なお、黒歌の悲鳴は聞かなかったことにするのが様式美である。白音の一撃は早く、鋭い。

 

「……いい一撃だ。しかし、結構な言われようだな大翔」

 

「言うな、ヴァーリ。偏屈なのは自覚してるんだ」

 

「では黙るとしようか。俺としては、戦いの時の勇ましさを失われなければそれでいいさ」

 

 旧校舎から外に出て、まもなく活動から一度学校へと戻ると連絡があったソーナとソーナ眷属の皆を待つ。予定が結果的に潰れて、駒王町の春から初夏に変わる過ごしやすい気候の中、転移拠点の姫島神社まで夜の散歩と洒落むかなと考えながら俺達はお喋りに興じていた。

 朱乃と白音はすずかが作ってきたクッキーの詰め合わせを今日会う予定だったヴラディ君に渡すためにまだ校舎の中にいる。

 

「ヴァーリ、今回はどれくらい滞在できるんだ?」

 

「アザゼルが溜まりに溜まった仕事を片付けるまでは缶詰状態で護衛の仕事もないからな。バラキエル達が尻を叩いてやらせているが、相当な量が溜まっている。数日はかかるかもしれないな」

 

「アザゼルちゃんの立場だと、自分やシェムハザちゃんしか決裁できない案件も多いしね☆ ちょちょいのちょいとは行かないんじゃないかなぁ?」

 

「そういえば、セラフォルー・レヴィアタン。魔王を辞職するという話は本気なのか?」

 

「うん、ヴァーリちゃん。あ、セラフォルーでいいよ、呼び方は☆ で、完全に役職から離れるのはすぐには無理だろうけどね~☆ いくつかの神話体系も私が窓口を続けないと話し合いすら今後乗らないよって言ってきてるし、外交官みたいな立場に落ち着く予定~☆」

 

 オーディンのおじいちゃんが筆頭かな、と俺の腕を取ってぼそりと呟いたセラの声は聞かなかった振りをしたほうがいいのか? いや、セラが一つため息をついたってことは、あれか。なるほど、勝手にセラに触れたらその部分から腐敗していくような、セラの意思で発動できる男除けのネックレスとかを急いで作ろうか。よし、そうしよう。

 俺の空いた腕に自分の両腕を絡めて組んだ姿勢のすずかは微かな笑みを浮かべて静かに瞳を閉じている。無意識に近いものだけど、こうして寄り添っているだけで俺の間で魔力が……最近ではそこに『気』も加わった状態で自然に循環を始めてしまう。すすかの発情期のキツさを少しでも和らげる方法を色々試してる内に、二人の間で完全に経路が出来上がってしまった感じだ。結局、すずかとくっついてるだけで心地良いわけで、好きな本を読むだとか静かに過ごす時にはたいてい寄り添っている俺達がいる。

 

「なるほど、主な担当業務は続けるということか」

 

「というか、サーゼクスちゃん達に飲み込ませるよ。ひーくんの子供を産んで育てる時期になれば、どの道外交官の仕事もやってられないしやるつもりもないから、それまでには引継も終わらせるよ。十年二十年ぐらい、私一人抜けてガタガタになるようじゃあまりに勢力としても情けない話だしね」

 

 普段の軽い調子ではなく、真面目な声色でセラは後進の成長を強制的にでも促すと告げる。瞳に宿る色はセラの得意とする系統の氷魔法のような冷たさがあった。

 

「あんまりのんびりしてたら、ひーくんや私達に勢力を乗っ取られちゃうかもね☆ 堕天使の幹部が父親、シトリーの次期当主の伴侶、巨大宗教の現人神様……そして無限の龍神、オーフィスちゃんの保護者。ヴァーリちゃんもひーくんの近くにいる方が色々と楽しめるかもよ?」

 

「ちゃん付けは勘弁してくれないか……。しかし、あのオーフィスといつでも立会いが出来るというのは羨ましい環境だな」

 

「セラ、勢力乗っ取りなんて勘弁してくれよ?」

 

 直後、いつもの調子に戻るセラに顔を歪ませて呼び方を変えるように訴えるヴァーリだが、セラが呼び方を直すことは無いんだろう。しかし、冥界に覇でも唱えさせるつもりでもあるのか、セラは……。

 

「ふふ、一勢力を名乗れるぐらいにはなれちゃうよってことだよ☆ ……もちろん、ひーくんが余分な権力を求めないのも知ってるよ? シトリーを背負うというのも、私やソーナちゃんとのお父様やお母様との関係を考えてくれてるからだもんね~えへへ」

 

 年上のお姉さんではあるけれど、時折こんな屈託の無い笑顔を見せたりするから、その落差にドキリとさせられる。

 

「……っ!?」

 

 そんなセラの笑顔に見とれかけた次の瞬間、ザワリとした強い違和感に襲われ、俺は反射的に防御結界を全力で展開する。あどけなさすら感じたセラの表情も即座に引き締まり、俺の一歩前に進み出て臨戦態勢に入ろうとしていた。




不穏な気配がなにやら。

ソーナさんとかをヒロイン化すると判断した時点で突っ走ると決めたことによる、
作者の身勝手な展開ですが、今しばらくお付き合いいただければ。

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