※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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堕天使三人組の後処理です。


第90話 後始末

 「殺しなさい! こんなの殺された方がマシよぉ!」

 

「レイナーレ、潔く諦めるっす。命があるだけめっけもんっすよ」

 

「彼らが私達より圧倒的強者であったというだけのこと。なぁ、ドーナシーク」

 

「……敗者は勝者に従うだけだ」

 

 リアス・グレモリーがやってきたものの、アザゼルのはっちゃけぶりやら、捕まえた堕天使達が種族の力を完全に封じられて異常に長生きなだけの人間状態になっているのを見て、唖然とした顔をしている。

 そろそろ慣れればいいものを。ある意味の変わらなさに安心したり呆れたりといった感じよね。まあ、大翔やすずかに毒されてる私も言えることじゃないか。アリシアほど行き過ぎてはいないはずだから良しとしましょうか。

 

「アザゼル、貴方のその格好は一体……?」

 

「おう、これも人工神器の一種だ。バトルスーツを装着したら、喋らない限り俺とバレない仕様さ。いやぁ、大翔も時間が無い中でもこの細部へのこだわりよ! この『どうだっ!』と言わんばかりの電飾の多さがだなー」

 

 アザゼルの語りは止まらない。そして、話が進むにつれ表情が削ぎ落とされていくグレモリー。すずかが止めないからアタシも止めないんだけどね。とはいえ、話が進まないわけで結局朱乃が動くと。

 

「お、じ、さ、ま?」

 

 雷火の巫女、炎雷の巫女。そんな二つ名で呼ばれ始めた朱乃。何でも姫島の炎とバラキエルさんの雷の力を合わせて使えるようになってるから、朱璃さんの実家も手を出しにくくなってるらしい。これは真羅の力を覚醒させた椿姫も同じことみたいだけど。

 そんな朱乃が燃え盛る炎を纏った雷を指先に浮かべて、ゆっくりと名前を呼ぶだけでアザゼルの動きは止まる。

 

「待て、朱乃。話せば分かる。平和的にやろうぜ。ここでおっ始めるのは結界の崩壊に繋がるからよ、な?」

 

「うふふ……大丈夫ですわ、おじ様以外には影響が一切出ないように致しますから」

 

 神話に出てくるほどの存在で堕天使のトップなのだから、どうにかなったりもしないだろう。娘に近しい存在の朱乃に対して、本気を出すわけにいかないだけ。

 

「……はあ。空知、その捕らえた堕天使達はどういう状態なの?」

 

「封印系統の魔術で堕天使の力を使えないようにした。とても寿命の長い人といったところ……かな?」

 

「マッドな科学者が欲しがりそうな感じね」

 

 グレモリーも後ろで痺れ毒や髪を炙られている存在をスルーして、大翔に状況の説明を受ける。そんなやり取りにあのイケメン王子は苦笑いだけど、視界の端ではスケベの権化と保護したシスターが初々しい会話を続けていた。アリシア、弄るのは程々にしておきなさいよ?

 

「え? 本当にヒョードーくんは私達だって気づいてなかったわけ?」

 

「いやあ、空飛ぶナイスバディな巫女さんが何人もってことで全て持ってかれたというか……声も違ってましたし」

 

「あれがジャパニーズシスターとニンジャなんですね! スゴイです!」

 

「……ほら、ヒョードーくん。私達は穢れ過ぎたんだ。アーシアちゃんの瞳を君は直視できない」

 

「うぐっ……そういうアリシアさんこそ、目を逸らしてるじゃないですか」

 

「だって浄化されてしまいそうな感じがさ……」

 

「ですよね……」

 

 汚れを自覚するのなら、少しは己の業を顧みてはどうなのかしらね。まあ、そのシスターさんも純粋培養という感じだけども。

 

『だが断る!』

 

 そして白音に二人とも拳骨をもらうのでしたっと。アリシアは頭。ヒョードーは腹パン。この差は仕方がないわね。

 

「回復はいらないわよ、アーシアとやら。痛みが罰なのだから」

 

「はっ、はい」

 

 すぐに回復効果のある神器を使おうとした彼女を止めて、と。アザゼルはアフロになるぐらいで済んだみたいね。

 

「至高の堕天使様が……アフロに……」

 

「こうなると哀れなものね。まあ、空知達のような規格外が駒王町を警戒してるだなんて思いもしなかったでしょうし」

 

「……力の気配を完全に消してたっす。ただの人間にしか見えなかったっすもん。その紅髪の管理者さんは分かりやすいっすけど」

 

 比較的小柄な金色の巻き髪少女の発言に、青髪のボディコンスーツの女や紺色のコート姿の男も頷く。

 

「分かりやすくて悪かったわね。まあ、私が統括するこの街では貴女達の好きなようにはさせないということよ。……さて、シスターさん。アーシアといったかしら」

 

「は、はい」

 

「私はこの街の管理者として今から同じ人ならざる者の勝手を裁くわけだけど、危険な目に遭った貴女はこの者達への裁きについて希望はあるかしら?」

 

「わっ、私はレイナーレ様達にとてもよくして頂きました。私の神器が目的だった事情を聞いた今も、感謝の気持ちに変わりはありません……」

 

「だけど、彼女達は既にイッセーを一度殺めている。それがあの総督以外の堕天使からの指示としてもね」

 

「アーシア……」

 

 性欲の塊を見て、堕天使ズを見て、シスターは思い悩む。そして、素っ頓狂なことを口にした。

 

「そっ、それなら私の命で贖いますっ。それではいけませんか! レイナーレ様達にこの街への赴任を手配頂けなければ、既に行き場のなかった私です! この方達がいなければとうに無かった命ですからっ!」

 

「アーシア⁉︎」

 

「何を言ってるのよ! 馬鹿じゃないの、貴女! 貴女は私に殺されるところだったのよ?」

 

 これにはヒョードーもレイナーレって奴も顔色を変える。グレモリーは何か考えついたのか、口元を僅かに釣り上げていた。

 

「そう。それならば彼女達の命の対価に、貴女は私の眷属になってもらいましょうか。悪魔への転生。つまり、人であることを捨てる。それは人間の命を捧げるのと同じことよ」

 

 詭弁よね。回復系の神器を持つ彼女が欲しいがための理由作り。とはいえ、大翔が動かないのならアタシも動くつもりもないけど……。

 ただ、この条件をシスターが飲めば悪魔陣営としては堕天使側に持っていかれかけた稀有な神器使いを確保できる。グレモリーとしては落とし所になると踏んだのかしらね。

 

「部長、待ってください! 俺はもう……」

 

「決めるのは彼女よ、イッセー。それに私も貴方の命を奪ったこの者達を何も無しで済ませるなんて許せないのよ。その対価をこのアーシアが代わりに払うというならば、それは軽いものにはなり得ない」

 

 大翔が力を封じたとはいえ、個人としてはこの堕天使達を消滅させるのが望ましいと判断したことも合わせて、グレモリーはヒョードーに説明をしていく。

 

「たまたま貴方が私の召喚のチラシを持っていたから、こうしてイッセーは私の眷属となり、今も互いの温もりを感じることもできるわ。だけど、それはたまたま幸運だっただけのことなのよ?」

 

「ぶ、部長……」

 

 あーあー、顔がにやけてだらし無い顔になったわ。グレモリーもスキンシップ過多だものね。ただ、あのシスターの顔色が変わった。というか、あれもしかして嫉妬……してる?

 グレモリーも気づいたわね。シスターの耳元に近づいて短く耳打ちをして、ニッコリ微笑んでみせた。

 

「……なります! 命を捧げる代わりに貴女の眷属に……!」

 

「そう、では契約成立ね。その代わり、あの堕天使達の命は確約しましょう」

 

 転生前に朱乃が神への祈りが種族の兼ね合いで捧げられなくなることや、聖水や光力の類が天敵になることを補足説明したものの、シスターの決意は変わらなかった。彼女は悪魔の駒を受け入れ、こうしてグレモリーは新たな僧侶の眷属を加えたのだ。

 ただ、駒を埋め込む時に『新たな生に歓喜せよ!』とか言わないといけないのね。……ちょっと、グレモリーに同情してしまうわ。

 

『魔術の詠唱とは違うので、あれは部長の演出みたいなものです』

 

 そんなことを思っていたら、視線が合った白音からの念話でグレモリーへの同情は即時撤回。演劇のような言い回しを好んで使うわけね。アタシは恥ずかしくて無理。

 

「イッセーさん、これから末長くよろしくお願いします!」

 

「お、おう! こちらこそよろしくな、アーシア!」

 

 末長くというところに引っかかりを感じつつも、ヒョードーも彼女と固く握手を交わして、次いで白音や朱乃、祐斗達の輪へと引き連れていく。

 

「……うまくやったってとこ?」

 

「あら、酷い言い方だわ。でも、あの子に行き場が無いのは確かだった。バニングス達が引き取る意思が無い以上、この形がベストだと思うけれど」

 

「まあ、そうよね。貴女の眷属になることでトレーニングとかは一緒にすることはあるでしょうけど、形としては貴女の下につくのが望ましかったのかも」

 

「イッセーを慕っているようだしね。女としても応援してあげたいと思うじゃない?」

 

 グレモリー自身は明確に恋心を持っているわけではないのだろう。眷属だから自分のモノという意識があるため、ヒョードー達が簡単に離れることはないと考えている。朱乃や白音は別として。

 

「……とはいえ、対外的には『消えた』扱いにしてもらう必要があるのよね。アザゼル、その辺りは任せていいのね?」

 

「おう。力は当面このまま封じたままだ。それが罰の一部だからな。その上で堕天使陣営の小間使いをやるか、名前を変えて『海鳴』で働くかだ」

 

「海鳴って……」

 

「至高の堕天使を目指した連中が人間の小間使いになるのは重たい罰になるだろうさ。反抗的な発言も出来ない処置を取り、忠実に働くことしか出来ないようにする。腹ん中で屈辱に泣き叫びながらな」

 

 グレモリー達の合流前にアザゼルから相談されたのは、アタシかすずかの家のメイドや執事見習いとして働かせられないかというものだった。なお、当の四名には聞こえないような形で。

 アタシとしては鮫島の後進を考えざるを得ない時期に来ていたから、暫く大翔や私達の元で監督して問題なさそうであれば、男の堕天使については引き取ることもあるだろうとは考えていた。なにせ長くなる一生だ。家宰の長も長命に越したことは無い。すずかの家は既にファリンがいることで、その問題点はクリアできていた。

 

 青髪の女……カラワーナもそうだけど、あのコート姿の男、ドーナシークは大翔や私達との力の大きな差を認めてからは大人しいものだった。アザゼルと親しいと分かった後は侮蔑混じりだった態度から険も取れている。この結界内に連れ込まれた後、拘束を解いた隙に大翔へ襲い掛かったのだが、光力の剣や槍をあっさり破壊された挙句片手間で一蹴されたのが余程堪えたらしい。その後、完全に力を封じられて今に至るわけだ。

 

「じゃあ私はお兄さんの元で働きたいっす。今更、グリゴリには戻れるわけもないっすから」

 

「ほほう。で、本音は?」

 

「屋根付き部屋三食付風呂あり制服支給の住み込みメイドをやるだけのことじゃないっすか。あと、許可をもらえば書庫で蔵書から小説から漫画まで読み放題とか最高っす!」

 

「休みはぐうたらするのが最高ってことだね、わかります」

 

「へっへっへ、姉御とお呼びしても?」

 

 このミッテルトという巻髪ゴスロリ少女はこの堕天使達の中では一番洞察力に優れていたようで、捕まった後はずっと大人しくしていた。ただ、どうにもお調子者の一面があるようで、アリシアと馬が合ってしまっている。

 

「ミッテルト、裏切るつもり!」

 

「嗚呼、レイナーレ様申し訳ありません。私はまだ生きたいのです、ホロリ」

 

 ホロリって言葉で言うものじゃないしね。アリシアは笑ってるけど、今までの仲間をあっさり切り捨てている。

 

「すずか、どうする?」

 

「強い者には巻かれる、そういうことみたい。試用期間は設けてもいいのかも。いっそ、強い暗示を叩き込んでから封印の部分解除をして、はやてちゃんに押し付ける手もあるし。人手が足りなくて悲鳴を上げているでしょう?」

 

 すずかはすずかでもっとひどいことを考えていた。大翔と共にミッド嫌いが筋金入りになってしまったすずかだ。そこに属し続けるはやて達に対しても、どうにも辛辣な対応になりがちだ。アタシ? 大差ないけどね。

 

「……まぁ、月村さんやバニングスが統括してくれるなら、私としても任せられるわ」

 

「ただ、グレモリーさん。私の家のメイド長や、アリサちゃん家の筆頭執事の鮫島さんの指導は厳しいですよ? 彼女達が耐えられればいいですが、くすくす……」

 

「は、早まったすかね……」

 

「大丈夫、命は保証されてるよ! ただし過労で倒れないとは誰も言っていない……この意味が分かるかな?」

 

「ひい、姉御。お助けっす!」

 

「魚心あれば水心、という言葉を……ひいっ!?」

 

 すずかがニッコリ微笑み、朱乃が手に炎交じりの雷を宿せばお調子者達は大人しくなるわけで。しばらくは鮫島を講師、実技はファリンの元で見習いという方向性に落ち着いたのだった。

 なお、鮫島は武道の有段者で、一発逆転を狙ったレイナーレが仕掛けてあえなく往なされたり、年齢を感じさせぬ体捌きにカラワーナやドーナシークが体術の重要性を認識して弟子入りを申し入れて、それならかつて指導した大翔に習いなさいという流れになったりもした。

 結局はファリンとの調整の末に朝練や夕練に参加させちゃえという話になって、ドーナシークやカラワーナは望んで、ミッテルトは力が封じられたし護身術ぐらいは身につけようといった感覚で参加をすぐに申し出ていた。レイナーレ? 流れで参加確定して、あのシスターに励まされて逆切れしてたわよ。

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