※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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スマートフォンからの投稿なので、朝以降微修正は入れるかもです。

また、キャラ名の独自設定があります。



第91話 生かされた理由

 夕麻ちゃん達が殺されずに済んだことに、正直ホッとしている俺がいた。でも、夕麻ちゃん……レイナーレと呼ぶべきなんだろうな……に笑顔で死んでくれと言われて光の槍で殺されたあの時がどうにも頭から離れちゃくれない。

 

「はぁ……」

 

 いつもの夕練in封時結界の走り込みを終えて、息も絶え絶えになりながら走らされている彼女達を見ながら、俺は自分の心にどう整理をつけたらいいのか分からなくなっていた。

 

「一誠くん」

 

「大翔さん、月村さん達はいいんすか?」

 

「男同士の大事な話に割り込むのなら、さすがに俺が承知しないよ」

 

 座るよ、と俺の隣に腰を下ろした大翔さん。大一、それとも一大などという不穏な副会長の呟きは聞こえないふりをして。すぐに水球がぶつかるような音もしたから、きっと会長が動いたんだろう。

 

「レイナーレ達の処罰を俺達が引き取り、小間使いとして使うという話になったけどさ。俺はすずか達に一つの条件を飲ませたんだよ」

 

「何を……ですか」

 

「一誠くんがあいつらを直接潰そうとするなら、一切手を出すなと」

 

「なっ……!」

 

 俺だって大翔さんとは結界内も含めて、それなりの時間を共に過ごしてきた。だから、本気で言ってるのはすぐに分かった。

 

「君はアイツらに一度命を奪われた。それならば君は奪い返す資格がある。他の誰がどう言おうと、俺はそう思っている。復讐を、俺は肯定する」

 

 助けるためではなく、俺が俺自身の手で裁きを下せるように。それが大翔さんの一時保護の理由だった。

 

「一誠くんがアーシアさんの手を取る時、躊躇するのを見た。グレモリーさんに抱き締められる時も頰が緩む前に短く硬直するのを何度も見ている。……俺の抱える症状とそっくりだ」

 

 スケべな男の子には変わりないんだろうけど『女の子』自体に恐怖感を持ってしまっていると、大翔さんはそう言うのだ。

 

「なに言ってるんですか。おっぱいは至高ですよ! そんな俺が女の子に触れられるチャンスに怖気付くわけが……」

 

「一誠くん。俺は君に長くこの症状で苦しんで欲しくない。本気でそう思っている」

 

 ……敵わないよな。男にも女にも大事だと思う相手には、大翔さんはどこまでも真っ直ぐなんだ。自分の心をありのままに見せてくる。だから誤魔化しが効かないんだ、この人には。

 

「一誠くんが吹っ切るための手段に、俺はアイツらを確保することを認めた。あとは一誠くんの判断でいつ手を下しても構わない。すずか達は別の考えがあるようだけど、誰にも文句は言わせないよ。……俺もあのレイナーレに相当頭に来てるみたいでさ。自分で手を掛けながら、その相手に媚びようとする醜い振る舞い……虫酸が走る」

 

「ははっ、大翔さんがそこまで嫌悪感を露わにするのって初めてだ。部長にもそこまでキツい言い方したことないのに」

 

「グレモリーさんを嫌っているわけじゃないからね。ただ、苦手な女性のタイプだから……一誠くんには申し訳ないけど」

 

 こうしてバツが悪そうに笑う裏側に女性そのものへの強い不信感を持っていて、だから自分の恋人達と互いに互いを縛りつけるような付き合い方をしてる。匙も言っていたんだ。大翔さんのハーレムはいくら美女揃いでも羨ましく思えない……と。見えない鎖に常に繋がれているみたいだと。

 

「ありがとうございます、大翔さん。ゆっくり考えて、どうしても憎くて仕方無い時は……遠慮なくやらせてもらいます」

 

「ああ。空を飛べない奴等ならたとえ力を封じてなくても、今の一誠くんが圧倒出来る。あのシスターさんを庇いながらというのもあっただろうけど、飛行する相手への対処を見つけないとな。鍛錬ではこれからその辺りを重視してみようか」

 

『地力がついてきた今ならば、ドラゴンショットならばそろそろ撃てるのではないか? 魔力の砲撃にしか過ぎないとはいえ、飛行状態への対策には十分なるだろう。並みの奴ならば簡単に風穴を空けられる威力はある』

 

 マジかドライグ! 魔力行使を苦手とする俺だけど、それなら空を飛ぶ奴に攻撃することも出来る!

 

「ドライグさん。一誠君は禁手化で得られる鎧の一部を腕に纏ったり出来るようになってきているけれど、たとえば擬似的な龍の翼を広げたりは出来るのかな。一誠君は魔力というよりも、龍の力というべきかな……『気』やオーラみたいな力に適正が強いみたいだから、その方向性で龍翼を広げられないかと考えているんだけど」

 

『禁手で纏う鎧の形状に決まった形は無いからな……相棒のイメージで細部は変えられる。また、お前が龍翼を広げた姿を見ているからな。変身後の自分の姿も想像しやすいだろうし、空を飛ぶ目的ならそちらの方がいいだろうな』

 

 おお! 頑張り次第で、さらに部長や朱乃さん達みたいに空中戦も出来るようになるのか! ドラグ・ソボールの悟みたいに空を飛び回りながら戦えると!

 

「やべぇ、おっぱい揉みたいのと同じぐらい憧れている空を飛び回るバトルが遂にっ!」

 

「え? それが同じ次元なのか……?」

 

『相棒ぇ……』

 

 な、なんか呆れられてるけど、俺の中では同じぐらい大事なことなんだっ!

 

「いや、部長さんが触りたそうにしていても結局、手を出さないから一誠君は根は純情なんだって話を聞いたから……」

 

 ぶ、部長ー!? 大翔さんにまで何を言ってくれちゃってるんですかぁ!

 

「直接聞いたわけじゃないよ、伝えておくけど。朱乃やソーナ経由だからね。女の子同士そういうものは全部筒抜けと思っておくぐらいで丁度いいんじゃないかな……」

 

 大翔さんの瞳がフッとどこか遠くを見るものに変わってしまう。……なるほど、ハーレムを作るってことはポロっと漏らしたことがほぼ共有されていると思わなきゃいけないのかっ。やべえ、勉強になるぜ。

 

『相棒よ、お前もブレないな……白龍皇は白龍皇で妙な方向性に向かっているし。今回の宿主は二人とも何というか、意外性に驚かされるぞ』

 

 ……あれだな。夕麻ちゃんに殺されたことを乗り越えるためには、夕麻ちゃんを逆に俺がモノにすればいいんじゃないか? あの堕天使達は俺に始末を任せると大翔さんは言った。つまりそれはあの三人をどう俺が扱ってもいいということ! エロゲの本懐を俺はリアルで体験する事だって可能……っ! あ、おっさんはいらないです。

 

『相棒から不穏というか阿呆な思念が流れてきたぞ……』

 

 ぐふふ……ハーレムというからには、種族問わずモノにしないとな! 俺はやるぜっ!

 

「な、何よこの悪寒は……ぐぅ、は、走らなきゃ……今はこの場所から少しでも遠くへ……!」

 

「あら、意外に根性がありますわね。その調子で頑張って下さいな」

 

「レイナーレは何の……ぜぇ……電波を、受信、げぇ……したんすか、ねぇ……あと500m……っす」

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 処罰の意味を含めて最初から10キロ走を宛がったが、あの堕天使達は時間はまちまちであれど何とか走り切っていた。アリシアや黒歌達がストレッチの補助をしているが、特にあの青髪の女と青年の男は黙々と取り組んでいたようだ。あの小柄な少女も文句は垂れながらもしっかりメニューはこなしているし、一番自分を過信していた節のある、あのレイナーレとやらも途中でスイッチが切り替わったのか、息も絶え絶えながら走り切っていた。

 

「ひろくんの話を聞いて、目の色が変わったね。受け入れの理由を私達から間接的にあの人達も聞かされて、本気だと察したみたい」

 

 すずかやアリサ達に俺の考えを告げたが、俺がそのつもりならと反対されることもなかった。朱乃はアザゼルさんへ俺の考えをうまく伝えてくれたようで、その辺りの配慮に感謝の言葉を掛けたんだけど……。

 

「夫の考えをちゃんと汲み取れなければ、いい妻とは言えませんもの。うふふっ」

 

 こんな感じで気にもしていないといった態度を見せてくれる。有り難い話だ。……さぁ、意識を切り替えよう。これからグレモリーさんとの約束どおり、彼女の眷属である封印状態の僧侶の子に会うのだから。

 

「……嘘でしょ!?」

 

「いえ、先ほど連絡が……」

 

「思ったよりも早い動きですね……やはりお父様達に話を通したのは正解でしたか」

 

 駒王学園に待ち合わせの時間前に着いた俺やすずかは、グレモリーさん・朱乃・ソーナが何やら急いた様子で話し込んでいるところに遭遇することとなった。椿姫達はグレモリーさん達の代行で、街の巡回に回っているため、この場にはいないようだ。

 こちら側の同行者は相手が極度の人見知りと聞いているため、すずか以外にはアリシアのみ。アリシアは相手の懐に入るのがうまいから、そのための人選だ。ただ、通信機を通して海鳴のアリサ達はこっちの話を聞いてもらっている。グレモリーさんの許可つきである。

 

「どったのー、三人とも?」

 

「アリシア! 空知や月村さんも到着したのね。ちょっとまずいことになりそうでね……」

 

「シーグヴァイラが動きました。正規の手続きを通した上で、今回の堕天使処理の顛末を直接聞き取る名目でこちらへ既に向かっています」

 

「書記官役も同行されるそうで……」

 

 俺も参考聴取ということで任意の同席を求めてきたそうだ。ただ、急なことなので間に合わなければ構わないとの話だったらしいが。通信を聞いていたアリサ達はすぐに冥界にいるセラフォルーへ連絡すると念話を飛ばしてきていた。あと、龍神様がすぐに転移して既に近くに身を潜めているとも。確かに彼女の力を受け入れ、繋がりがある俺は存在を近くに感じられていた。

 

「グレモリーさんが構わなければ、同席しますよ。多分、彼女は俺に会うつもりでしょうから」

 

「それはこちらとしても助かるのだけど……っ、この気配は。もう到着のようね……」

 

 大公家の魔法陣が俺達の前に現れ、その中から出てきたのはやはりというか、困惑気味の表情になっているシーラさんとアリヴィアンさんに初見の騎士風の女性。そしてシーラさんによく似た風貌の……あれ?

 

「もしかして、シーマリア……さん?」

 

 四機の記憶が見せてくれた記憶、その中に彼女の姿も頻繁に登場していた。シーラさんの母親、シーマリアさん……。

 

「あら、貴方が作ったシーグヴァイラの使い魔達が記憶を確認したのは本当だったのね? お久しぶりと言っておきましょうか、ヒロ。私が今回の書記官ですよ」

 

「止めたんです、私は止めたのよ、ヒロ……」

 

「お嬢様も私も強くお止めしたのですが……すまない」

 

 フットワーク軽すぎないかな、大公家……。あ、でも、こういう人だった気がする。感覚がそう訴えているというか。

 

「……夢だわ、これは夢なのよ」

 

「リアス、これは現実よ……逃避したい気持ちは良く分かるけれど」

 

 キャパシティを超えてしまったグレモリーさんに宥めるソーナ。苦笑いの朱乃と共に、ひとまず俺達は動くことにした。

 

「聞き取りは後でも大丈夫なんですよね?」

 

「ええ、こっちが急に予定を差し込んだわけだから。リアスの僧侶と会うなら、時間干渉された時に私も一緒に対処できるだろうし……」

 

「確かに時間干渉系の神器ですし、俺としては心強いですけど」

 

「お母様の我侭を通すのだから、これくらいは待って頂かないと」

 

 本当に参ったのよとシーラさん。同行するアリヴィアンさんもどこか疲れた顔だから、相当な押し問答があったと思われる。あと、長いストレートの栗毛髪の騎士さんは、シーラさんの騎士で合っていた。バフィールさんと名乗った彼女は、旧72柱「フールカス家」出身とのこと。槍を得意武器とし乗馬も得意らしく、この辺りは俺やすずかの世界に伝わる悪魔学の特徴と似ているらしい。

 手相や天文学にも詳しいのかなと、俺やすずかがそれぞれの期待感で瞳を輝かせてしまったんだけど、その辺りは専門外と申し訳なさそうにされた。実家にいけば系統の専門家はいると言うことで、機会があれば紹介するとまで言われたから、よっぽど俺達は期待に満ちた顔をしていたのだろうか。

 

「バブィールが罪悪感を持つぐらいにはそういう顔をしていたということよ。ヒロにせよ、すずかさんにせよ、なぜそんなに詳しいのかしら」

 

 俺は前の世界でとある巨人の神が会社名のゲーム会社が作った機械な悪魔の伝説シリーズからズルズルと。すずかは雑読派だからライトノベルから設定集に入ってそこからだったっけ。話が出来る相手がすぐ近くにいるのが互いに熱が入る原因だよな。未だにそういう所があるしなぁ……。

 

「シーマリア様は私どもの部室でお待ち頂いても良かったのですが……」

 

「あら、せっかく人間界に来たのだからじっとしていては勿体無いじゃない?」

 

「お母様、自重なさって下さいな、全く……!」

 

「シーグヴァイラちゃんも大変だねぇ」

 

 シーラさんのため息が積み重なっていく様子に、かき回す側のアリシアが慰めの言葉をかけるんだけど、君が言うのかという感覚がどうにも強すぎる。

 

「アリシア……」

 

「アリシアちゃん……」

 

「え、なに、ひろ兄ちゃんにすずかちゃんまで、その目は何……どういう意味かな」

 

「アリシアさん。まだ短い付き合いですが、私もヒロ達に同意しますわ」

 

「まさかのシーグヴァイラちゃんの追撃⁉︎」

 

 このやり取り自体がツボに入るのか、シーマリアさんは楽しげに笑い続けてしまっていた。グレモリーさんはどこか唖然としてしまっているし。

 

「嘘でしょ、本当に親しげだわ……」

 

「だから言ったじゃない、リアス」

 

「普通、信じられるわけがないでしょ。ねえ、イッセー?」

 

「あ、部長すんません。アーシアと話してたんで、よく聞いてなかったっす」

 

 あれ、グレモリーさんがすごくドスのきいた声で一誠くんに掴みかかる勢いだぞ? アルジェントさんが止めようとして一誠くんに抱きつくような格好になってるから、余計にグレモリーさんが苛々してるというか。

 

「あらあら。リアスさんもこうしていると年頃の普通の女の子よね。ふふ、お澄ましな一面しか知らなかったから新鮮だわ」

 

 そしてシーマリアさんの一言で固まってしまう。立場的に上位者にあたるシーマリアさんがいることでどうにもグレモリーさんは調子を崩されっ放しみたいだ。

 一方、朱乃は困りましたわねと言いつつ、全然困ってないように笑っている。普段通りにグレモリーさんをフォローしつつ、旧校舎の目的の一室へと俺達を先導していた。

 

「副部長、本当に落ち着いてるよね……」

 

「朱乃先輩は兄様が近くにいれば、ある種怖いものなしですから」

 

「なるほどね、シーグヴァイラはかなり出遅れてるみたいね」

 

「お母様、余計な発言は慎んで頂けますか⁉︎」

 

 シーラさんも普段の振る舞いとは違って、慌てたり怒ったりと忙しい。アリヴィアンさんも基本口を開かずに護衛に徹している辺り、シーマリアさんはなかなか癖のある方のようだ。

 

「あら、事実でしょ? こうして見るだけでもヒロのパートナーと思わしきお嬢さんが殆どじゃない。おまけに皆麗しい子ばかり。ヒロが女誑しには見えないだけに、驚かされてしまうわ」

 

「ふふ、その話はまた後ほどに致しましょう。さあ、着きましたわ」

 

 『keep out』のテープが扉に幾重にも張られた木製の扉。今回の目的の相手がこの扉の向こうにいる。




キシリア、シーマ⇒シーマリア(アガレス夫人)

原作で名前が決まれば例のごとく差し替え予定。
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