※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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艦これイベントで無事、新艦の確保まで終わりましたので、更新を再開致します。
お待たせ致しました。


第92話 封印されし僧侶

 人見知りというより対人恐怖症のように思える反応をした、グレモリーさんの僧侶・ギャスパーくん。神器の暴走は想定通りだったんだけど……。

 

「な、なんで大勢動けるんですかぁっ!」

 

 むしろ、停止させられている者の方が少ない。止まっているのはもう一人の僧侶のアーシアさんと、シーマリアさんとバフィールさんだけという状況だった。

 

「強くなれてるのね、私も。こんな形で実感するとは思って無かったけど」

 

「僕も先に剣を創造すれば大丈夫だったし……」

 

「籠手を出しておいたら、なんか変な空気に包まれる感じはあったけど、それだけだったぜ。へへっ、そっか。強くなれてるんだな、俺も」

 

 グレモリーさん、祐斗くんや一誠くんが鍛錬の成果を実感できるいい機会にもなったようだ。滅びの魔力、封呪の効果を強める魔剣、赤龍帝の籠手。それぞれの力を展開することで時間停止の影響を受けていない。

 同じく停止の影響を受けない朱乃と白音はギャスパーくんに声を掛けて、オカルト研究部の中なら神器が発動しても影響が少なくなったことを説明している。

 

「ギャー君の神器の力に負けないぐらい、私も強くなりました。身長もギャー君より大きくなりましたし」

 

「た、確かに小猫ちゃん、なんか女の子っていうより、女の人になった感じがするね……」

 

「ふふ、確かに小猫ちゃんの変化が一番顕著に見えますわね」

 

「ふ、副部長もなんだかとてもキラキラしていますし……なんだかすごく磨かれた綺麗さっていうか……。僕の神器が暴走しても平気で動いてますし、な、なんだかビックリし過ぎちゃって、力が抜けてしまいますぅ」

 

 白音の伸ばした髪も綺麗だと、瞳を輝かせる仕草も聞いてなければ女の子の仕草そのものだ。今来ている制服が女生徒用だし。

 

「それと……副部長や小猫ちゃんから僕によく似た匂いがしますし……」

 

「ギャスパーくん。その話は後でゆっくりと、ね?」

 

 そっと朱乃が彼の唇に指を押し当てる。嗅覚が優れているのか、気配を読み取る力があるのか……。

 

「私もこの子達を展開すれば大丈夫だったみたい。ねえ、ヒロ。私も鍛錬は欠かしてないのよ?」

 

「シーラさん、多忙の中で良くここまで時間に関する力を高められましたね。すごいですよ……」

 

「ヒロに会った時に幻滅されないように。あの子はきっと自分を高め続けているはずだから、と。お嬢様はずっとお前の影を追い続けていたからな」

 

「ア、アリヴィアン!」

 

「光栄ですけど、なんだか申し訳ない気持ちになりますよ。俺はシーラさんが言うような、立派な奴でも何でもないですから」

 

「ひろくん?」

 

「ヒロ?」

 

「大翔くん、ちょっとお話しましょうね」

 

 シーラさんの思うような奴じゃないと口にしたら、シーラさん当人とすずか、ソーナから懇々と諭されたり、白音が三人の言葉にうんうんと頷いたり、朱乃が苦笑いを浮かべたりと、俺以外はいつもの雰囲気みたいな空気になりつつ、ギャスパー君の神器の発動時間が切れたのか効果が薄れていった。

 

「あ、あれ? イッセーさん?」

 

「お、アーシア。大丈夫か、話にあった時間停止の影響を受けていたんだよ。側で見ていた限り、特に問題は無かったと思うんだけどさ」

 

「私達も停止していたのね、なんだか不思議な感じだわ」

 

「私ももっと自分の力を高めなければ……」

 

「ちょうどいい。バフィール、私がしっかり鍛えて差し上げよう」

 

「え゛っ」

 

 死刑宣告を受けたような声を出したバフィールさんはさておき、俺はすずか達と一誠くん、アーシアさんを手招き、彼の前に視線の高さを合わせるべく膝をついた。他の三人もそれに倣う格好になる。

 

「初めまして、ギャスパー・ヴラディくん。俺は空知大翔。グレモリー部長から説明があったかもしれないけど、彼女の戦闘面やレーティングゲームに備えた連携面のトレーニング担当をやっています」

 

「は、はいぃ! 副部長や小猫ちゃんのフィアンセとお伺いしてますぅ!」

 

 ちらりとギャスパーくんの両隣の二人を見れば、いつもの微笑みを浮かべる朱乃に少し照れ臭そうに俯く白音。でも、彼の発言を否定するようなことはない。

 

「うん、君の言う通り、朱乃や白音……こちらでは、小猫だったね。二人の婚約者でもある。俺の隣にいる女性が月村すずか。その隣がアリシア・テスタロッサ。同じく俺の婚約者だ」

 

「え、えええ⁉︎ こ、婚約者が他にもいらっしゃるんですかあ⁉︎」

 

「うん。ここにいない人も含めて、11人の女性と俺はこの先の一生を共に生きる約束を交わしている。もちろん、外から見れば俺が女の子を侍らせているようにしか見えないだろうし、そう見られるのを承知の上でみんな俺と一緒になってくれている。だから、俺は君が良く知る朱乃や白音を含めて、俺の婚約者達を必ず幸せにすると自分に強く誓いを立てているんだ」

 

「もちろん、ひろくんだけじゃなくて、私達もひろくんや一緒に過ごす他の子も含めて、幸せにするんだって気持ちで毎日頑張っているの」

 

 俺に続けたすずかの言葉に、アリシアに続いて朱乃や白音、ソーナも強く頷いていた。その様子にほぅっとギャスパー君が一つ息をつく。

 

「まさか、生徒会長さんまで……」

 

「大丈夫よ、ヴラディくん。副会長もだから、ふふっ」

 

「ええっ、それのどこが大丈夫なんですかあ……」

 

 現生徒会のトップを押さえて、二大お姉様の一人と次代のお姉様候補も同じ状態で、もう一人のお姉様とも知人である他校の高校生。何を企んでるんだって話にもなりかねないよね、はたから見れば。

 

「ぼ、僕、基本的にこの部屋での生活なので、学園の様子もネットの掲示板経由だったりするんですけど、副部長や小猫ちゃんに彼氏が出来たから早く相手を特定して潰せとか、血祭りに上げてやるとかすごく物騒な投稿が多くて……」

 

「学園のアイドルを一人占めするようなものだから、恨みや妬みは当然出るものだと思っているよ。朱乃や白音達に手を出さない限り、俺へ向けられるものは受けて立つだけだ。潰されるつもりはさらさら無いけどね」

 

 結局、他人からどう見られたって朱乃や白音達を誰にも渡すつもりは無いんだから、手を出そうとするなら痛い目を見てもらうしかない。

 

「……ちなみに兄様は私と朱乃先輩を同時に相手して余裕を持って勝てるぐらいには強いです」

 

「えっ……だ、だって小猫ちゃん、仙術を解放できるようになったってデビチャで言ってたよね?」

 

「言いましたよ? 妖術も合わせ技で破壊力も速度も元の三倍じゃきかないって」

 

 きっと赤いヤツより早いんだよ、とかアリシア……いや、紗月か。そのネタを挟みたくなる気持ちは分かるけど、呟いても反応できるのは俺かすずかぐらいのもんだよ?

 

「きっとツノつきの隊長機なのよね?」

 

「そうそう! シーグヴァイラさん、やっぱり分かってる!」

 

 ……あ。そうだった、タンガムの大ファンだよね。紗月は喜んでるけど、シーラさんはこの話題になると本当に人が変わるなぁ。

 

「私も父との和解が進み、光力や姫島の炎も使うようになりましたから。結構強くなったという実感はあるのですけど、大翔さんにはまだまだ及ばないのです、うふふ」

 

 朱乃や白音の力は俺も使えるわけで、そうなると連携して攻撃する必要がある二人の方が大変だ。連携するといっても阿吽の呼吸までは行かないために、少しの隙があるので相殺したり反射したりして凌ぐことが出来る。

 魔術の高速詠唱とか短縮は必須技能だったからな、俺は。プレシアさんの四方から尽きることなく襲いかかってくる雷をかわしたりいなしながら反撃しようと思うと、まともに全部詠唱してたら黒焦げまっしぐらだったし。並行思考の数もユーノ並みになれたのは、ある意味プレシアさんのお陰だ。命に迫られると限界をさらに超えていける。それを実地で習ったんだ……思い出すと今でも震えがくる。

 

「……まあ、朱乃や白音を守れるぐらいには強くないとね。敵わない相手はたくさんいるし、せめて一緒に逃げ出すことが出来るぐらいの力は必要だから」

 

「想定している相手が白龍皇とかオーフィスという時点で色々おかしいのだけどね」

 

「ええ……っ? それって出逢ったら普通お終いだと思うんですけどぉ……」

 

「だからね、ギャスパー。努力の方向性が突き抜けちゃってるのが空知なのよ。その影響を受けてる朱乃や小猫の基準も同じく突き抜け気味でね……」

 

 グレモリーさんが深い溜息をついてしまった。なんか色々ごめんなさい。それにオーフィスも不可視になってるだけで俺やすずかに寄りかかったり割と自由に寛いでいるよ。

 

「そんな大翔さんの指導を受けている、部長の新しい眷属で兵士の兵藤一誠って言うんだ。宜しくな、ギャスパー!」

 

「えっと、今朝部長さんの眷属になりましたアーシア・アルジェントです。クラスは僧侶です。色々教えて下さい、宜しくお願いします」

 

「こ、こちらこそ宜しくですぅ……あう、やっぱり人が多くて緊張してきました……ダンボールに、ダンボールに入らな……あ、あれっ、僕のダンボールが無い?」

 

「あらあら、ダンボールならそこに」

 

 朱乃が差し示した先には既にダンボールにクッションを敷き詰め、身体をくの字の形にして入り込み、寛いだ様子のアリシアの姿があった。アリシアの身体の上にはオーフィスもどうやら乗っているようで、二人して入り込んでしまったみたいだ。

 

「これはダメになるー。わかるよー」

 

「わかるよー、じゃないですぅ! 返してくださいよぉ!」

 

「このクッションも手作りでふわふわだしー、出たくないでござるっ!」

 

 取り敢えず魔法陣発動。風でダンボールごと浮かして、そのまま一回転。落下先にはたまに使う空気椅子。

 

「おふざけも終わりにして、ギャスパーくんに返しなさい」

 

「はぁーい、ひろ兄ちゃん。あ、このクッションの素材、また教えてね?」

 

『真似して作ってみたいからね』

 

「は、はい……あ、ダンボールありがとうございます。あ、あれ、副音声が聞こえたような? それになんかテスタロッサさんが宙に浮いてる……」

 

 風に属する魔術にちょっと重力も操作してる透明な椅子であることを説明しつつ、触ってもらう方が早いのでいくつか作成してみせた。あとは薄っすらと色合いをつければ境目も分かりやすいと。……紗月とアリシアの関係性は本題が終わってから説明しよう。

 

「……すっ、すっごい! ふわふわですっ! それに背もたれの長さも魔法だから変えられるんですねっ……!」

 

 良かった、とても喜んでもらえてる。聞けば、パソコンでの契約取りが主だからどうしても椅子に座ってる時間が長いらしい。そのためにクッションとかも趣味と実益を兼ねて自作するようになったのだとか。

 

「私も固定化の魔法陣を組み込んで執務する部屋に欲しいわねー」

 

 シーマリアさんまでそんなことを仰る。それぐらいなら小さめの魔石で固定化維持できるし、手配しましょうか。ああ、シーラさんも用意しますよ。アリヴィアンさんは……立ち仕事が多いから大丈夫ですか、分かりました。

 

「空知。私も魔石用意するから、お願いできる?」

 

 あとでまとめてやってしまいますよ。さて、話がかなり逸れてしまったので、元に戻しつつ。結論から言って、ギャスパーくんの神器制御に力になれるだろうということを伝える。

 

「体内の魔力の流れとか見させてもらってからになるけど、俺は時空魔導師と呼ばれてるんだ、元々ね。時間操作系統の要点は身に染みてるから、恐らく今より良い方向に向けられると思う」

 

「ほ、本当ですかあ?」

 

「うん、これからちょっと見せるよ。あ、良かった。セラも間に合ったみたいだね」

 

「ひーくん、ただいまっ☆ えへへ、ひーくんの匂いだ、帰ってきたよー」

 

 転移魔法陣から出てきたセラを出迎えて、飛びついてくる彼女を受け止めながら一日の労を労う言葉をかける。

 

「今日もお疲れ様、セラ。アリサからの連絡通り、こちらへ来てくれたんだね」

 

「うん、お父様も冥界への移動列車の手配が出来たからって、私にも連絡があってね。少しでも早くひーくんにも伝えたくて☆ すずかちゃんやアリサちゃん、あとはせっかくだからって朱乃ちゃんのご両親にも連絡を取って、今週末で調整するって言ってたよ? 取り敢えずメールは飛ばしたって☆」

 

「サザトガさん、張り切ってるなあ……ふふ、これは手打ち蕎麦の出来が楽しみだよ」

 

 ……あ、周りの空気が一部固まってる? ああ、それはそうか。セラは悪魔陣営の現魔王だから……。

 

「セラ、シーラさんのお母様がいらっしゃってるから……」

 

「あっ、そうだねっ☆ いっけない、ひーくんに会ったら順番が吹っ飛んでたよー」

 

 シーラさん達への牽制だったな。ただ、彼女が俺を取り込もうとしている感覚は正直無い。だが、俺の女性への印象はあまり当てにならないと自分で思う部分もあって、ソーナやセラ、朱乃や椿姫の警戒心の強さに拠るべきだと思っている。

 

「お久しぶりです、シーマリア様☆」

 

「……レヴィアタン様、お久しぶりですね」

 

「挨拶が遅れてごめんなさい☆ 正式にひーくんの婚約者になれたのがつい最近で、ちょっとハシャいでしまって☆」

 

「なるほど、シトリー家が彼の後ろ盾についたわけですか」

 

 シーマリアさんの目つきが鋭さを増し、どこか柔らかさを感じさせていた口調も険を含んだものに変わっていく。だけど、セラに向けられる敵意は俺への敵意と同じ。俺はセラの前にシーマリアさんの視線を遮るように移動し、オーフィスから蛇を通じて受け取った力をゆっくりと解放していく。

 かつてお世話になった恩人であろうと、既に俺は自分の家族を守る立場なのだから。

 

「シーマリアさん、俺は別にシトリー家を必要としていません。セラやソーナを自分のパートナーにする以上、彼女達のご両親への筋を通しただけ。彼女達を奪ってこちらの次元と二度と干渉しない……そういう方法も取れますから」

 

「……そう、さらに大翔達には我がついている。力というには十分」

 

 不可視の幻術を取り払い、オーフィスが俺の隣に並び立つ。その反対側には自然とすずかが位置取っていた。

 

「オーちゃん、来てたんだね」

 

「そう。セラフォルー、我は潜んでた」

 

「……! 奥様! お嬢様! お逃げくださいっ! バフィール、早く二人をお連れしろっ! 迂闊だった……昨晩は力を完全に抑えていたというのか……っ!」

 

 アガレス家の主人達を庇うように前に立つアリヴィアンさんの緊迫した懇願の声に、シーラさんやシーマリアさんが顔色を変えつつ真意を問おうとするも、姿を現したオーフィスは何故か得意げな顔をしていた。

 

「我、ドラグ・ソボールから学んだ。力を普段は抑えることで相手の油断を誘い、そして一気に恐怖の坩堝へと叩き落とす。お前も龍、我の正体にすぐ行き着いたか」

 

 オーフィス、蔵書室で漫画読み漁ってることも多いからな……。俺たちの世界の龍球の話と、朱乃達の世界の類似作と見比べて楽しんだりもしているらしい。一誠くんが両方を読み比べたいといった話の中で、ドラグ・ソボールを全巻調達してもらったんだ。

 ギャスパーくんがふらりと倒れる気配がしたけど、あの椅子に座ったままなのでどこかを打ったりすることはない。アリシアと紗月もリアスさん達を誘導し、俺とオーフィスがシーマリアさん達へ向けている龍の気の影響範囲から外してくれていた。

 

「ヒロっ、お前の龍の力はオーフィスと同一のものを宿したというのか……っ!」

 

「……その龍の言う通り。我が名はオーフィス。無限を司る龍神、オーフィス」

 

 恐怖と驚愕に彩られ身動きが取れなくなっているシーラさん達へ、オーフィスは構えもせずに近づいていき……。

 

「お前、大翔を守ると誓った言葉は嘘だったのか?」

 

「お嬢様っ!」

 

「動くな。消されたい?」

 

 シーラさんの手を強引に取り、制止しようとしたアリヴィアンさん達を威圧だけで封じてみせた。シーマリアさんを庇う位置で至近距離で気に当てられたバフィールさんはそのまま膝をついてしまっている。

 

「我は静寂を望み、大翔はその静寂を与えられると示した。我は大翔の守護者になることを決め、蛇を与えた。大翔は蛇に飲まれることなく、我の力を少しずつ取り入れ続けている。我はこの大翔の成長を導いていく。……大翔の敵は我の敵。大翔が守るすずか達は我も守る。お前達はこのまま大翔の敵になるか?」

 

「……っ! なるわけがないっ! オーフィス、私の周りがヒロとヒロの大切な人達を害そうというのなら、私が命を賭して止めますっ!」

 

 恐怖からの震えが止まらぬままでも、シーラさんはそう叫んだ。恐怖の原因を目の前にして。

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