※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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なんとか更新は続けていく所存です。


第94話 大当たり

「だからこそ、力を示す必要があります。それは直接的な力もあったり、他を従える統率力であったりするのでしょうが。私がヒロの交遊を密にしていても、アガレスを任せるには私しかいないと他に示せればいいのです」

 

 女当主だからと舐められるわけにもいきませんから。お母様の懸念は十分分かっているのです。ただ、私はソーナみたいに捨てる覚悟をする代わりに、望む全てをつかもうと決意した──それだけのこと。

 

「ねえ、ヒロ。私は本気でもっと強くなりたい。今回のようなことが起こっても、私の力で収められるように。お願い、私を鍛えて欲しい。リアスやソーナ、姫島さん達のように」

 

「出来れば、時間の都合がつく限りバーフィルや私も参加させてもらいたいものだ。普段の生活ではなかなか鍛錬に割く時間が取れないのでな。ヒロ、お願いできないだろうか。お嬢様が覚悟を決めたのならば、私もさらなる高みにこの身を鍛えなければならない」

 

「アリヴィアン、貴方まで……!」

 

「大丈夫です、シーマリア様。私はあくまでアガレス家に仕える執事です。その上で申し上げます。ヒロとは協力関係を結ぶのが最も宜しい。彼の気質は貴女様もよくご承知のはず。自分が信を置くと決めた相手に対してはどこまでも甘い男。それはあの頃と全く変わっていないし、もう一つ申し上げるならば──」

 

 ヒロの存在は可能な限り、悪魔陣営としてはシトリー家とアガレス家で独占するのがよろしいかと。アリヴィアンはそう言ってのけた。

 

「セラフォルー様が政権側に彼の存在を大っぴらにされていない時点で、表舞台に立たせる気はない。まあ、いずれ引きずり出されるのかもしれませんが……それまでにお嬢様やソーナ様達が力を付けられれば宜しい。そのつもりなのでしょう、皆様」

 

 書類処理を結界内で出来るし、内部的な打ち合わせもじっくり出来るとなれば最高ではありませんか。最後に珍しく彼らしくもない軽口で言葉を締めた私の女王はバフィールと一緒に私を見て微笑んでいた。

 

「ヒロ。雑音はお嬢様だけでなく、私も手の届く限り潰していく。私もお嬢様の自然な笑顔を、本当に久し振りに見ているのだ。頼む、その笑みをこれからも見られる手伝いをしてもらえないか」

 

「……卑怯な言い方ですよ、アリヴィアンさん」

 

「分かって言ってる。お前は理屈よりもこうして自分の気持ちを真っ直ぐぶつけた方が効くからな」

 

「ヒロ……」

 

 アリヴィアンにつられるように、ヒロも苦笑いを浮かべる。そして、すずかさんやアリシアさんを。続けて、朱乃さんやソーナ、小猫さん、セラフォルー様を次いで見て、頷き合って──。

 

「分かりました。微力ながら、協力させていただきます。ただし、すずかの口にした内容は重々御承知おき下さい」

 

「無論だ。龍神の家族だと言い切るお前を敵に回す無謀さは私には無いな。まして、お前も馴染んできているのだろう?」

 

「まあ何とか。あまりに強大な力なので本当に少しずつですけど」

 

「私とて龍族の一人だ。オーラを感じれば分かるというものさ。しかし、飲み込まれることなく自分のものに出来る時点で、何とも恐ろしい存在になったものだ」

 

「声が全然怖そうじゃないですよ」

 

「そりゃヒロだからな、威圧感とかそういうのは期待してない」

 

 長年の友人のような会話を繰り広げる二人に周りの張り詰め気味だった空気も緩いものに変わっていって、二人が自然に握手を交わしたことで皆の余分な肩の力は抜けていた。

 

「しかし、ハーレムをお前が築くとはな。私が知る限りでもお嬢様以外にもあれだけ拒否反応を見せていたというのに」

 

「俺も最初はそのつもりは無かったですよ。ただ……俺も独占欲の塊だってことを自覚したんです。信じられると思えた相手は絶対に離したくないんだって」

 

「朱乃ちゃんが頑張ってくれたから、その延長線で私やソーナちゃんもひーくんの広がった懐に転がり込んだ感じだからねー☆」

 

 ヒロの背中にもたれかかってそのまま抱き着きながら、セラフォルー様は楽しそうに彼に微笑み掛ける。ヒロに心を完全に預けているのだと、見る側にも十二分に伝わるぐらいに。

 

「うふふ、自分を受け入れてもらうのに必死でしたから。偶然に出逢ったものの、私の中ではあの出会いは運命としか思えませんでしたもの」

 

 ヒロのカップのお代わりを用意して手渡しながら、姫島さんは懐かしむように口を開く。

 

「朱乃ちゃん様々だよねぇ、うんうん☆」

 

「伝え続けるしかありませんでしたから。大翔さんの隣には既にすずかさんやアリサ達がいましたし……」

 

「朱乃さんが早めに受け入れられたのも、ひろくんだけを見るんじゃなくて、私やアリサちゃんの考え方も良く理解してくれて、今でも常に理解しようと努めてくれているところが大きいと思うんだ。私も朱乃さんを信じられるようになるのに、あまり時間もかからなかったもん」

 

「すずかさんやアリサは大翔さんを支え続けるパートナーとして、最も手本にするべきですし、同時に目標でもありますもの。うふふ、参考にさせて頂いておりま……あら? あらあら、まぁ、時間が結構経っていましたのね」

 

 姫島さんが話す途中で言葉を止め、突然時間を確認するように時計を見始める。彼女だけでなく、ヒロやすずかさん、アリシアさんも。どうしたのかと思っていれば、海鳴のバニングスさんから通信が入ったらしい。

 

「早く戻らないとアリサちゃんがおこだね、これは。ひーちゃん、話はまた明日にしとこうよ」

 

「椿姫達も見回りや契約活動も終わり、学園まで戻ってきているようです」

 

 ソーナはソーナで真羅さんからのメールを確認したようで、やはり戻ることを促していた。

 

「ヒロ。大丈夫なら着替えだけ取りに戻って、すぐに再転移してきてもいいかしら。家に戻ったら結界を張るのでしょう?」

 

「ですね。鍛錬の時間も取らないといけませんから。今日から早速始めますか?」

 

 私は笑顔で頷く。学びたいことも話したいこともまだまだ尽きることは無いのだから。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「私、もう本当に駄目かもしれません。大翔くんを知り、彼の女になり、ここまで満たされる自分を知ってしまって……私、彼に望まれればシトリーの名を捨ててしまいそうで……」

 

 ギャスパーくん達を引き連れての帰宅後、例の周期的な時間になっていたソーナと椿姫、二人に誘われた私の三人は二重結界という現実世界の時間を目一杯引き延ばした小部屋で大翔さんにたっぷり可愛がってもらうことになりました。

 小部屋程度であれば魔道具の補助を組み合わせることで、極端な魔力の消費なく結界内にさらに結界を張ることも出来るようになったと大翔さんは口にしていましたが、お手伝いをして共に結界を張った時に一気に魔力を失う感覚がありました。ソーナや椿姫も同様でしたけれど、保有魔力の差を改めて知ることになったのです。

 

 そこから一人ずつ、最後は感覚共有を使いながら四人で交わり合い、四時間程度が経ち、大翔さんは汗を流し着替えを済ませ、部屋の外……計算すると十分程度待たせてしまったすずかさんやシーグヴァイラ様達のところへ戻られました。

 一方、私達は心地良い気だるさに身を任せたまま、肌に直接薄手の毛布を羽織った状態で身体を横たえて話をしています。

 

「……すいません、お嬢様。私は大翔さんに望まれれば、すぐにでも女王も悪魔も辞めるつもりでいるのですが」

 

「つばっ! 椿姫……!?」

 

 そんな自責の念に駆られるソーナに対して、椿姫は言葉だけ謝っているものの、とっくに自分は大翔さんのものだと言い切る。シレッと躊躇なく言うものだからソーナの声がひっくり返ってしまっていますね。

 

「ただ、大翔さんがそれを望む時は冥界と敵対する覚悟を決めた時とも思っていますので。自分のために私達が交友関係を断つようなことは出来るだけ避けたいと考えておられるようですし」

 

「椿姫……!」

 

 大翔さんなら仕方ありません。欲しかった思いに加えて、毎晩、自分が望む形で愛してもらえて身も心も蕩けさせられていく。そんな日々を重ねてしまえば、女そのものを深く満たしてくれる男性からどうして離れようと考えられるものでしょうか。

 ほら、今だって椿姫は毛布をあえて身体からずらして、ソーナに自分の肌につけられた荒縄の痕をわざと見せ付ける仕草をしているのだから。

 

「お嬢様、考えてみて下さい。普段は紳士的な態度を貫いていて、夜になればこちらの望みに合わせた夜の男へと変貌する。そして、相手が本気で嫌がるかどうかを本当に良く見極めているから、傲慢になることもないし、こちらが不快な思いをすることもない。私達に嫌われることを過度に恐れるあまり臆病に過ぎるところはあっても、彼の過去を知れば無理も無いこと。……こんな大当たりの男性、一生かけて探したって見つかるもんじゃないんです! 漫画の世界じゃないんですよ!」

 

 椿姫の言葉には熱が篭る。緊縛嗜好なんて普通はドン引きする男が多いし、受け入れる相手であっても普段もサドっ気が強過ぎたりと、自分にとって都合のいいバランスなんてあり得ないのだと。

 

「朱乃に対しては言葉責めや屈服させるような体勢を強要しますけど、それだって演技です! 禁止や中止の『ワード』を決めていますが、大翔さんは私達に一度も使わせたことはありません!」

 

 ええ、大翔さんはこちらの身体を痛めつけることを嫌がりますから、責めについても苛烈なものではありません。ただ、貫かれ続けながら冷たい声色で責められて、気持ち良くなりたいのなら屈辱的な言葉を口にして懇願するように促され、抵抗しながらも大翔さんの手練れに堕ちるあの瞬間は心が歓喜に震えて……!

 

「そ、それは分かっているわよ。私だって、スイッチが入ってしまった私を鎮めてくれる体力や精力を持っていて、それでいて普段は紳士的な男性なんて、そんな簡単に見つかるわけが無いって……」

 

 ……こほん。ともかく、ソーナはどうしても理詰めで考えるところがありますから、身体や本能が大翔さんから離れるなと叫んでも、心で認めきれない部分があるようで。

 その結果、今のソーナは自分の身体の疼きに引っ張られて少し不安定になっているように思えます。その不安を大翔さんの存在に依存することで埋めようとしていると自覚している、といったところかしら。うふふっ、既に身体も心も魂も預けている自覚のある私が言うことではありませんが。

 

「ソーナ。大翔さんは自分を愛してくれる女性もそうだけど、家族に異様に拘るのは分かっているでしょう?」

 

「……ええ。家族や仲間、そこに害が及びそうになれば、温和な大翔くんの一面は一気に裏返るわ。苛烈で容赦の無い顔が表に出てくる」

 

 そこがまたいいのですという椿姫はあえてスルーします。すずかさんやフェイトさんと話題の種になることもあるのですが、大翔さんの支配者風の一面が素敵なのは分かりきっていることですので。

 ただ、椿姫の順応が早いのには驚きます。大翔さんによる支配の分かりやすい形だと囁きながら、フェイトさんを緊縛の道へ誘ったりしていますし。

 

「だったら、ソーナのその悩みこそずれていますわ。あの人がもし冥界と敵対すると決めれば、シトリー領ごと転移させてから攻撃を考えるでしょうし」

 

 次元の狭間を利用して空間を安定させる。大量の魔力や魔導具が必要になるけれど、その話を聞いたオーフィスが得意気な顔をしていましたし、大翔さんは既に目処を立てているのでしょう。

 ただ、確認が必要なのは、大翔さんとすずかさんがどこまで家族の輪が広がるのを許容するのか。アリサの意向も強く影響してきます。シーグヴァイラ様という存在を受け入れる方向に進んでいる今、冥界でも一、二を争う巨大な家であるアガレス家との関係は避けて通れないでしょうから。

 

「まず、押さえておくべきは私達の身の安全。その上で、領地ごと転移できる魔力と魔導具を常にストックしておくこと……」

 

 私達が実力をつけることが、そのまま安全や魔力の蓄積量にも跳ね返ります。

 

「思い悩むよりも、まず自分の力を高めること……そうね。ふふ、朱乃の言う通りだわ。大翔くんに溺れるだけの女になりたくないなら、必死に自分を鍛えて磨きあげる。そういうことよね」

 

「強さと美しさ。貪欲に求め続けるしかありませんから」

 

 椿姫もソーナも頷いたところで、私達は身を起こしました。揃って浴室へと向かい、急ぎ情交の匂いを洗い流します。同時にお腹の中では大翔さんの精がまだたくさん漂っていて、子宮と溶け合い、魔力や気脈となって身体へと取り込まれていく。この辺りはソーナの水の魔力の使い方を皆が覚えて、早速活用しているのでした。

 

「ところで、大翔くん自身が一番好きな体勢ってやっぱり抱っこの姿勢よね?」

 

「そうだと思うけれど、どうして?」

 

「大翔くんがイク時って、こちらを抱き締める癖があるというか……達した後に腕の中ですごく安らいだ顔を見せてくれるから」

 

「確かに、最後は腕の拘束は解かれますね。私も抱き締めたくなるので気に留めなかったですけど……」

 

「こちらのペースで動けるので最後はあの姿勢なのが決まり事みたいだったけれど、そうね、誰が相手の時でもその傾向が強いかも……大翔さん、実はおっぱい大好きですし」

 

「う……私は所詮……」

 

「ところが大翔さん、大小の貴賎は無い人なんですよねー。黒歌がうまく聞き出してましたよ。それにお嬢様自身、確実に大きくなってるのに気づいてます?」

 

 ええ。すずかさんやファリンさんがソーナのブラジャーのデザインでサイズ別でせっせと作っていたのも見ましたし。少しお手伝いもしましたけど、すずかさんはそういう仕事でもやっていけそうです。旧家の令嬢の姿からはどんどん離れていますけれど、すずかさんが気にするわけもなく。表向きが取り繕えればそれでいいのだと。

 

「小猫ちゃんがそうでしたわ。黒歌の言葉を借りれば、大翔さんの子供を産むのに適した母体になろうと身体が自主的に変化をしているのだとか」

 

 体内の気を整えられて、女性ホルモンを毎日これだけ刺激されれば、身体も変化するというもの。ありがたいことに私もウェストが引き締められましたし。以前は男性の目が集まる胸やお尻の大きさも内心煩わしく思うところもありましたけど、今ではこの身体に生まれたことを感謝していますし。うふふっ。

 

「焦らなければ、ソーナもあっという間だと思うわ。むしろ、学校での身の回りにもっと気をつけるようにしないと……」

 

「あー、小猫さんや朱乃に集中していた騒ぎがお嬢様にも起こると。私自身への妙な視線も増えてますしね……」

 

「それは無いわよ、二人とも意識過剰というものだわ」

 

 どうにもピンとこない様子のソーナに、私と椿姫はリアスや小猫ちゃん、生徒会メンバーにも相談しておこうと決めたのでした。

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