「すっ、すごいです! 時間が、時間が止まったりしません!」
「伊達なんだけど眼鏡が似合うね、ヴラディ君は」
「私も役に立てて良かったわ。限られたスペースにどれだけ魔術の式を書き込めるか、魔導具の作成者としては拘るところだもの」
「魔術の式がそのまま縁とかの模様になってるけど、ものすごく細かいデザインになってるもんね」
「あとは何とか固定化と強靭化の術式も練り込んだから、そうそう壊れないぞ。うんうん、いいものが出来た!」
モノ作りや改良が大好きだって知っているけど、ほんと、ひーくんが生き生きしてる。帰宅してからソーナちゃん達の相手をした後、目をずっとキラキラさせてすずかちゃんとシーグヴァイラちゃんの三人で、ヴラディ君に渡す神器の暴走を防ぐ眼鏡の改造に勤しんでいた。
その間は興味ある人達は作業を見守ったり、それ以外の人達はヴァーリくんを筆頭に模擬戦に興じたり。学生時代の放課後を何となく思い出してしまう感じだった。
「間違いなく、ヒロはヒロのままみたいね……」
「シーマリア様、アガレス家に保護されていた時のひーくんもあんな感じだったの?」
「プラモデルの組み立てや魔導具の改造となれば、寝る時間も忘れてシーグヴァイラと開発部屋に篭っていたわ。無理やり眠らすために、アリヴィアンに連れ出してもらったことも何回あったことかしら」
「部屋から連れ出す時もプラモデルをつかんだままだとか、そろそろ寝るように促そうと覗いたら、二人とも床で寝ていたりとかな……まあ、昔の話ですよ」
懐かしさを滲ませながら、ひーくんの性質は変わらないと言ったシーマリア様やアリヴィアンちゃんがひーくんの滞在時の逸話を教えてくれる。
「流石にもう床で寝る前に毛布には包まりますよ、アリヴィアンさん」
「くっついて寝れば暖かいもんね、ひろくん」
「……部屋に戻る体力すら無くすまで没頭してどうする、全く。いや、お嬢様まで同意しないでください!」
「床で一晩寝たぐらいで体調を崩すほど柔じゃないわ」
「シーグヴァイラ……」
「大丈夫ですわ、お母様。内々だけの話ですもの」
シーグヴァイラちゃんは逞しく、堂々と微笑んでいた。でも、虚実を使い分けるのはいいけど、ひーくんを巻き込むのは勘弁願いたいと思うわけで。
「皆さん、お茶が入りましたよ。一杯、いかがですか?」
そんなところに、朱乃ちゃんの声がかかる。振り返れば、盆を持ったソーナちゃんや椿姫ちゃんも一緒だ。
「俺も頂こうか」
「ヴァーリくん、そっちも落ち着いたの? はい、貴方は冷たい方がいいでしょう?」
「ああ、助かる。身体がまだ熱を持っているからな。赤龍帝だけじゃなくて元士郎もヴリトラの力を使いこなしつつある。立会いにも熱が入るというものさ」
朱乃ちゃんから麦茶を受け取り、飲み干したヴァーリちゃんによれば、体力を使い果たした兵藤君たちはリアスちゃんやあのシスターちゃん、ソーナちゃんの僧侶達の治療を受けているらしい。
「本気とまでは行かないが、手を抜ける相手でも無くなってきた。ふっ、この成長速度は嬉しい誤算だな。強敵を育てるというのも、相手次第では悪くないものだ。なにより、オーフィスに大翔、現レヴィアタン。心揺るえる強敵たちと日常的に拳を交えられるわけだから、毎日が充実している」
「これからは私も加わらせてもらうぞ、白龍皇」
『アリヴィアンと名乗っているが、奴の正体はズメイ──東欧・中欧を代表するドラゴンだ』
「アルビオン、強いのか」
『実力だけで言えば、我等よりやや下と見る。が、奴はああ見えて老獪なところがあってな。油断すれば地に伏すのは此方になるだろう』
「それは明日からの楽しみが増えた」
これだから戦闘狂はもう! ひーくんを困らせちゃうのなら、私が凍らせちゃうんだからね☆
「それだとヴァーリくんの狙い通りですよ、お姉様……」
ソーナちゃんがため息をついてるみたいだけど、心配いらないよ☆ お姉ちゃんは強いんだから☆
◇◇◇◇
時間停止の魔眼を制御する眼鏡の調整後、ヴラディさんのトレーニング導入ということでグレモリーさん達が宙に投げたボールを任意で止める練習を見守る私やお兄ちゃん達。本格的な練習は寝て起きてからということで、明日からの練習イメージをつかんでもらうような感じみたい。
「シーマリア様も思うところがあったようでな。娘の自然な笑みをこの数年間見ていなかったことに気づいて愕然としたらしい。シーグヴァイラ様がヒロの所で鍛錬することも、自分が認めたと旦那様に報告するようだ」
「シーラさんはそんなに笑うことがなかったの?」
「表情筋が固くなるぐらいには笑わなかったかしらね。血も涙もない冷徹な女とか、陰では言われているみたい」
あ、お兄ちゃん、今イラッとしたね。少しだけ眉間にしわが寄ったもの。うーん、記憶喪失のお兄ちゃんを匿っていたお姉さん的存在……かぁ。
ソーナと同じく悪魔の貴族階級。それも上から数えても五本の指に入るようなお嬢様と聞く。お兄ちゃんの元に集まる女の人の傾向は重たい事情を抱えているか、過去に重たい出来事があるかが多くて、どうもお兄ちゃんはそういう人を引き付けやすいのだと改めて思う。
「そのシーマリアさんは床の間でアザゼルさんやプレシアさんと会合中なんだけど……大丈夫かな?」
「セラフォルー様やバフィールがついているし、あのプレシア女史が完全に堕天使の総督を下に敷いているから大丈夫だろう。酒も入っていたし女房に睨まれる呑んだくれ親父にしか見えなかったぞ。笑いを堪えるのが大変だったが」
「差し入れたおつまみ、口に合えばいいんだけど」
「部屋で味見させてもらったが、あれは辛口の酒に合うぞ」
「アリヴィアン、貴方も自由にやってるじゃない」
「ここはアガレス家ではありませんからね、お嬢様。多少は私も気を抜くというものです」
先程、朱乃やすずかと急いで台所に篭ったのはそういうことだったんだ。私も作れるんだけど手早くとなると、お兄ちゃんやすずか達にはまだ敵わない。というか、すずかの調理スキルは侍女泣かせってファリンも言ってたな。お兄ちゃんが色んなことに手を出すから、すずかも当然のように身につけちゃうんだよね。
それと、お母さんはある意味最強だから。……朱乃のお母さんの朱璃さんと組めば、この家で逆らえる人はそういないもん。すずかや覚悟を決めた時のお兄ちゃんは別として。
「アザゼルはこっちに来ても仕事をさせられるようになったからな。シェムハザから朱璃かプレシアに連絡が来て、つまみと酒で釣られては急ぎの仕事をこなしている。シェムハザも仕事が回りやすくなって随分と喜んでいたぞ」
「それでいいのかしら、堕天使陣営は……?」
「大翔と緊密な関係を築くのも重要な役割だそうだ。アザゼルが来ない時は朱乃に会いがてら、バラキエルと朱璃が来たりするからな」
ヴァーリさんの言うように、家族ぐるみの付き合いと化している……そんな感じだね。プレシア母さんもママ友の朱璃さんが来るのは楽しみにしてるみたいだし、都合がつけばすずかやアリサのお母さん達も合流してのママ会をしてたりする。
「むしろ、大翔を本格的に堕天使陣営の幹部に据えようという思惑すらある。義理とはいえ、バラキエルの息子で堕天使の力も有しているとなればな」
「え。聞いてないぞ、ヴァーリ」
「朱乃と一緒にいる限りそうなっていくさ。シェムハザは少なくとも本気だ」
愉快そうに笑うヴァーリさんだけど、お兄ちゃんは真剣な声色で応えてみせた。
「シェムハザさん、一度だけお会いした時に総督が仕事をするようになったって喜んでいたけど……仮にそうなるとしてもすずかやアリサはもちろん、朱乃やソーナ達の幸せを守るのなら何だってやってやるさ。時間や次元に関わる魔法が得意じゃなかったのなら、流石に身体がもたないだろうけど」
「言うと思ったよ。鍛錬の時間は強引にでも確保するからな、そのつもりでいてくれ」
「その前に身体が第一でしょう、ヒロ。フェイトさんも言ってあげてちょうだい」
「無理し過ぎてると思ったら、意識を飛ばすから大丈夫。すずかもたまにやってるし」
お兄ちゃんは私達からの攻撃に無警戒というか、害意を持たれたとしてもそのまま受け入れる心積もりだから、意識を強引に断ち切るのには苦労しないからね。
「大翔は女達に顔が上がらないな、本当に」
「尊重してくれているだけです。ね、すずか」
「うん。それに、ひろくんの体調管理は『私』の大切な役割と思っているから」
「……『私達』だよ、すずか。みんな、お兄ちゃんをいつも気にかけているんだから」
「本当に思われているわね、ヒロ」
「自慢の彼女達です、みんな」
答えるお兄ちゃんに優しげに微笑むシーグヴァイラさん。お兄ちゃんへの好意を持っているのは間違いないんだけど、それが女性としてのものなのかがあやふやな感じがしてる。シーグヴァイラさんのそんな部分に対しては、すずかやアリサ、あとカリムもそうだったんだけど、共通した結論にたどり着いているみたい。
『数年前に大翔に会っていなければ、多分こうはなってないんだろうけどね。あとは彼女の特殊な環境もあるんだろうけど、だいたい大翔のせいでいいわ』
アリサはそんな不思議な言い回しをしていたけれど、お兄ちゃんが悪いことをしたわけでもないと言う。
「さて、一晩経ったら一旦結界を解除してもらって、お母様と共にアガレス領に戻るとするわ。実際の時間経過が一時間以内で済んでいると分かれば、お父様だけじゃなくて溜まった書類をまとめて持ち込んでくるかもしれないけど、ふふっ」
「此方の世界でいう副大統領とか副首相みたいな役職ですよね、シーラさんのお父様は。断片的に思い出せる記憶でも、いつも忙しそうにしていた印象があるなぁ」
「ヒロも相当忙しい枠の分類に入ると思うのだけど」
「お互い様ですよ、きっと」
ただ、二人の心の距離感はとても近くて、それがお兄ちゃんとシーグヴァイラさんが互いが殆ど寄り添うように立っていても、二人はそれが自然な雰囲気を醸し出している。それがなんだか悔しくなって、私は二人の間に割り込むようにしてお兄ちゃんの腕にしがみ付く。
そんな私にお兄ちゃんは『どうした?』と優しく問いかけてくれながら、私の頭を空いたもう一方の手でそっと撫でてくれる。シーグヴァイラさんも気分を害する様子もなく、微笑みを浮かべたまま愛されているのねと一言口にしただけ。まるで私が幼い子供のように思えてくる。そう思ったんだけど……。
「どうした、すずかまで」
私の反対側からお兄ちゃんを抱き締めた格好のすずかを見て、すずかや私達は似たようなものなんだなと改めて認識するのだった。
◇◇◇◇
「ん、状態も安定してるにゃ。しかし、感じる刺激も相乗効果となって襲ってくるから、長時間はもたないと思っていいにゃ」
体内の気も妖気も乱れはない。妖怪の力を安定して使うために耳や尻尾が出たままになるのは私達にとってはウェルカムなので、何の問題もない。外では使いにくい、というだけで。
「兄様……もう先走りが」
白音が同時に優しく手で刺激を与えるだけで大翔の腰が跳ねる。大翔が私達の感じやすい部分を知るように、私や白音も他の皆も大翔のポイントは押さえている。
普段より強さを抑えた動きであっても、身体が覚えた動作は的確なもの。大翔に気持ち良くなって欲しい一心で身につけた技は全員の熱心さも伴って、大翔に特化したものになっていて……。
「ごっ、ごめ、白音っ! 出るっ!」
『二本』に増えた大翔のペニスから勢い良く迸る精を白音と一本ずつ口でしっかり受け止めながら、初物の男の子を頂くような悪いお姉さんみたいだななんて、そんなことを少し考えてしまった。大翔の精はほんとは苦いはずなのに、私の意識はとても美味しくて身体を熱くさせてくれる濃厚なミルクとして受け取る。意識改変と呼ばれればそれまでだけど、魂までも重なり合いたいと思える男に出逢えた女は種族関係なくこうなるんじゃないかと思う。
管の中に残ったものを吸い出す時の大翔の息の乱れや可愛らしい悲鳴に白音までもが目に妖しい光を灯していたから、ゾクゾクする感覚を覚えたのは私だけじゃ無いらしい。
「ふふっ、兄様ご馳走さまです。二本に増えても濃さも粘り気も量も変わらなくて、同時に二本とも身体に受け入れたらどうなるかこれからがとても楽しみです」
……白音、アナルの経験はまだ無かったよね? お姉ちゃんは今となっては忌まわしい記憶だけど、そっちの経験もあったりするけど……。そう気持ちいいものでもないのよ?
「兄様に躾けてもらう楽しみが増えたということで。もしくは二人同時に愛してもらうことも増えるでしょうし」
そもそもそれが主目的でしょーが! そのために私達が補助しながら、仙術や妖術を使って一時的に二本に増やすのを模索していたんでしょうに……白音が欲望を本当に隠さなくなったにゃあ……。
「白音、無理やりなんてしたら傷が残るから、ゆっくり焦らずにやろうね?」
「はい……兄様に後ろの穴でも楽しんでもらえるように、もっと私を躾けて下さいね……?」
大翔は私達の奔放になった性を丸ごと受け入れると決めている節が強い。傷が残ったりするのは許さないけど、それ以外は自分が応えられるかを真面目に考えて……例えば、椿姫相手みたいに荒縄の縛り方も上手くなって、血液の流れが滞るから、一日何時間までと決まりを作ったりしている。カリムの執務室プレイとか、ソーナの生徒会室でとか……うん、ソーナは口では色々言うけど、大翔とのセックスをものすごく楽しんでるにゃ、間違いなく。
「……とそんなわけで、大翔は頑張ってるにゃ」
「ひろくんが早くイッてしまうなら、合わせれば問題ないよね?」
互いの気の波長を合わせれば一緒にイケるから、とさらっとすずかは言うんだけど、それこそ高度な術者のソレってことはあんまり意識してないだろうにゃあ……。
「うう、私はまだそのレベルで合わせることが出来ないけれど……必ず追いつきますからっ」
「それなら私と一緒に一度やってみようよ。感覚をつかんでしまえば、ソーナさんならすぐだよ」
うわあ、すずかとソーナの同時プレイ……これは大翔がかなり絞られる奴だにゃ。その後は必ず私か白音の番にするように二人にも強く伝えておく。気脈整えないと流石に大翔も翌日に影響が出てしまいそうだし。
「えへへ……兄様に同時に貫いてもらえる……♪」
修正、すずかとソーナを同時に相手した時はそのまま私の所に来ること。あとは、朱乃やカリム、フェイトもいけるかにゃ。三人に早めに気脈の制御を少なくとも白音レベルでマスターしてもらおう、うんそうするにゃ。奉仕大好きさん達だから大翔の体調管理に直結すると知ったら、短期間でモノにするでしょ。
以前の白音は男性の性欲を結構毛嫌いしてると朱乃とかから聞いたけど、実は自分が意外とガッツリタイプだった裏返しだったのね……。気脈整えるのに自分が率先して飲まれたら駄目だから、この件については私が頑張らないとと思う。
「おかしいにゃ……自由と奔放さが私の信条だったはずなのに」
でもね、大翔とずっと一緒に過ごすことを思えば、自分の変化は必要なものなんだってあっさり飲み込めてしまう辺り、私も染められてるなと思うんだにゃ。
「悪くないにゃ、これも。……大翔、これからも宜しくにゃ?」
もちろんだと即座に笑顔で返してくれる大翔を抱き締めながら、私は早速乱れた気の流れを整えにかかるのだった。