※この作品はR-18です。

朱が交われば深紅に染まる   作:ですてに

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投稿できるうちに投稿する姿勢で。

※次話の更新はちょい遅れてます。一応100話という区切りなので、閑話回みたいなものを入れたいなと。そっちを仕上げて投稿したいのでもうちょっと時間を下さいませ。14日ぐらいまでには更新見込みです。


第99話 姫から王への自覚

 親同士の話の流れから、夕食も一緒にどうかという話になった私達。時間の都合については大翔さんがいる限り問題になりませんから。もちろん私達も構築は手伝いますし、楽しい時間が数時間延びるのとちゃんとした睡眠時間を確保するぐらいであれば、アリサのご両親や聖王教会のお二人にも影響は少ないでしょう。

 

「いやぁ、ほんとにこの畳に慣れちまうと本当に駄目になるな! サザトガ殿も分かって……あででで!」

 

「貴方の無作法が私の息子や娘達の悪評に繋がるの。何度教えれば身体で覚えるのかしら……?」

 

「ま、待て、プレシア! お前の雷はバラキエルのアレよりも洒落にならねぇ! というか身体じゃなくて、言葉だ! 対話、対話をしようぜ! 暴力は破壊しか生まね……あばばばばばばばはばばっ」

 

「何を言っているの。折檻なのだから、効き目が強くなければ意味は無いわ」

 

「見事な魔力制御だ……。あの総督にだけ激しい雷が降り注ぎ、他には一切飛び火していない」

 

「ひーくんのお師匠様だもの、1cm単位で正確に狙いを絞っちゃうんだよ☆」

 

「雷を指一本の幅で制御出来るものなのか……いや、それはともかくとしよう。レヴィアタン様、私には堕天使の総督が駄目親父に見えるのだが……」

 

「大公さま、見えるんじゃなくて駄目親父で合ってますよ☆」

 

「ううむ、ヒロは堕天使勢力とも懇意だと聞いているが……大丈夫かね」

 

「ひーくんに変に負担をかけるぐらいなら、バラキエルのおじ様夫妻を堕天使陣営から保護しちゃって縁切りしちゃいますから☆ まあ、シェムハザ副総督が頑張ってますから、そう悪くはならないはず……?」

 

 アガレス家の大広間とも接続の上、両家のお抱え料理人が腕を振るい、大翔さんがまた若様と呼ばれていたり、すずかさんやアリサのご両親が家からお気に入りの日本酒や焼酎を持ち込んだり、サザトガ様や大公様達も秘蔵のワインを持ち出してきたり、気づけば合流していたおじ様が、プレシアさんにいつものお説教を受けていたり──。

 

「全くアザゼルにも、はぐっ、困った、もぐ、ものだな、んぐ」

 

「ヴァーリは口の中のもの飲み込んでから喋れって……飯は逃げねえぞ? まあ、総督さんだからよ、ほっといても復活するだろうが……」

 

 せっかくだからと、お母様や私達で台所を借りてお酒に合うおつまみを作って、皆さんに披露して、料理人さん達がレシピを覚えていたり……。完全に餌付けされている状態のヴァーリくんを元士郎くんが窘めていたり。

 

「若様は既に旦那様に並ぶ麺打ち職人であられた……!」

 

「感動するところがそこなのですか……?」

 

「いえ、ソーナお嬢様やセラフォルーお嬢様が自ら伴侶に選ばれる時点で人格面の疑いなどございませぬ。それに加えて、旦那様と並んで麺打ちする様子が既に親子のように見えて、爺は嬉しゅうございます!」

 

 執事さんやメイドさん達にも、サザトガ様と大翔さんが二人で追加で打ったうどんを振舞って、皆んなが笑顔で過ごせる時間がそこにはあった。ソーナは顔を赤くしながらも嬉しそうです。

 

「ほんと、空知にとっては家族になってしまえば、種族も何も関係ないのね。それでいて、やるべきことはきっちりこなすんだもの」

 

「リアス……」

 

「朱乃の笑顔が本当に晴れやかで、最初は悔しくて仕方なくて何度も突っかかってはやっつけられて、それでいて私にまで丁寧にアドバイスしてきて……かなり反発したけど、言う通りにやってみたら強くなる自分が分かって。朱乃や小猫の王として、本気で私を磨こうとしてるのが分かっちゃったのよね」

 

「ええ、大翔さんは最初から本気だったもの」

 

「ほら、朱乃と一緒に仕事中の様子を見せてもらったことも何度かあるじゃない。私達と年の変わらないはずの空知は自分の判断が何千もの社員に影響する、そんな責任から逃げずにずっと考え続けて……しっかり自分の足で立っていて……だから周りからも後継者として認められて、しかも驕らずに貪欲に知識や情報を求めては自分のものにしていて……」

 

「自分の評価がすずかさんやアリサの評価に直結する。だから、絶対に手は抜けないし、お嬢様達の目はやはり確かだと言わせたいんだって……結局のところ、大切な人達のためだって。ただ、同じようにたくさんの部下を抱える立場になるリアスには、まして、私や小猫ちゃんが仕える貴女だから、どうにか自覚して欲しいと考えていたみたい」

 

「負けず嫌いの私はまんまと空知の思惑に乗って……ふふ、私も随分影響されちゃった。お母様の教えが偏りがあるってことも……気づいてしまったもの」

 

 リアスは生まれや育ちの良さもあり、挫折というものをほぼ味わったことが無かった。味わう必要がこれまで無かったとも言える。それが私が大翔さんと出会い、自分でも自覚はあるのだけど……依存した相手の影響を受けやすい私は、リアスからすれば洗脳でも受けて別人格になったようにすら見えていたのでしょう。

 

「誰かを支えることに大きな喜びを見出し、自分の能力も磨くことも怠らない。月村さんやバニングス、ソーナやシーグヴァイラ……次期当主を義務付けられた女達が強く惹かれるわけだわ」

 

 大翔さんも勿論自分の短所を自覚されているのですが……私達にとっては短所になりにくいといいますか。

 

「独占欲は強くて、出来るだけ傍にいようとなさいますけれど……私達の人数を考えると、それぐらいでバランスが取れますから」

 

 自分のいない場所での露出を控えるとか、出来るだけ他の男性と話す回数を減らして欲しいとか……束縛してくるところはあります。ただ、絶対に話すなというわけでもありませんし、同性であれ異性であれ自分が信を置く相手同士なら、例えばヴァーリくんとか祐斗くん相手がそうですけど、気にされる様子もありません。

 

 私自身、大翔さん以外の男性の視線が本当に苦手になってきていますし……背筋に寒気が走ります。同世代で普通に話せるのは気心を知っている祐斗くんであったり、戦いと美食に重きを置くと知っているヴァーリくんぐらいでしょう。性格が分かってきた元士郎くんが何とか嫌悪感を感じずにいられる、といった感じです。

 

「朱乃は相手に染められるのを喜んじゃうものね。そういう意味では空知で良かったのかも……自分を見るようには求めるけど、これまでの朱乃やソーナの交友関係を崩しに来たりしないし、私とも出来るだけいい関係を保とうとしてくれているものね。ギャスパーのことなんて、ここまで踏み込んで状況を打開してくれるなんて思ってもいなかったわ」

 

 頰にまだ打ち粉が付いた状態でギャスパー君やヴァレリーさんに感想を聞いて何度も頷く大翔さんに、二人が顔を見合わせて自然に微笑んでいる──その様子を嬉しそうに眺めながら、リアスはずずっとうどんを啜りあげていました。……餌付けされているのは、リアスも同じなのよね。

 

「ギャスパーの件も本当にいい方向に向かってる。日本の食文化も堪能させてもらっているし、ふふふ、空知には本当に感謝してるのよ?」

 

 大翔さんがリアスの中では信頼の置ける従兄弟みたいな感覚なのだと、リアスはこっそり教えてくれました。

 

「朱乃にも聞かれたけど、考えたことはあるのよ。ただね、私は独占欲が強くて喧嘩が絶えないと予想出来てしまうし、私が余裕を持てる立場じゃないと駄目なのよ。切磋琢磨して自分の魅力で惹きつけ続けるのが出来なくなりそうで。……ふふ、情けない話よ。臆病だなって自分で笑ってしまうわ」

 

 だから、努力し続ける道を選んだ私が眩しく感じるのだと、リアスは苦笑いを浮かべていました。そんなリアスをぎゅっと抱き締めながら、お互いにこれからも親友でいようと、いられるように頑張ろうねと声を掛け合いました。

 

「さて、すぐ先の話をしましょうか。あの話もさらに負担をかけるようで申し訳ないのだけど……朱乃や小猫も確実に関わってくる話だから」

 

「ええ、概要だけは先に伝えたわ」

 

 ここ数日で、急に実家から婚約者であるライザー・フェニックス様との婚姻準備を早めるようにせっつかれているリアスは内々に先方へと連絡を取り、当人同士の話し合いの場を持とうとしていた。先方から予定を早めたいとの申し出があったとのことだけれど、リアスはその動き自体にキナ臭さを感じている。

 

「月村さんやバニングス、ソーナやシーグヴァイラを見ていて、私もいつまでも逃げていられないとは思っていたの。私はグレモリーの次期当主として、ライザーをもう一度しっかり見極めなければいけない。正直、相変わらずいけ好かないとは思うけれど、大学卒業までは自由にしているといいと殆どこちらを放置していたあの男が急に動いてきたのは、多分そうしなきゃいけない理由が出来たから」

 

 シーグヴァイラ様が裏は取れていないと前置きの上で、フェニックス家に魔王様達と距離のある上層部の一部が接近しているとの情報を齎してくれていた。

 

「絶対に私と結婚したら、その眷属だからって朱乃や小猫、アーシアにも手を出しかねない男だものね……その時点で個人としては正直論外なんだけど……」

 

「その場合は二度と再生出来ないように灰にして構わないわよね?」

 

「いえ、朱乃先輩。トラウマ植え付けるレベルでひたすら去勢しましょう。砕いて再生して砕いて……」

 

「なるほど、あの部位を燃やし尽くし続けるのもいいですわね。想像を絶する痛みであっても、すぐに死ねるわけでもないもの。二度とグレモリー眷属に手を出そうとは考えられないようになるでしょう」

 

「今の二人とも本気で出来そうだから辞めて!? それはむしろ廃人まっしぐらだから!」

 

 あっという間に近くにやってきた小猫ちゃんと対応策を口にすると、リアスがこちらに必死に懇願してきます。嫌ですわ、あくまで向こうが強引な手段に出てきた時の話ですもの。仮の話です、仮の。

 

「仙術で体内の魔力を乱しに乱して、脳に集中的に微力の電流を送り込めばマトモに動けなく出来ますよ。あの部位以外に傷を付けなければ再生能力も働きにくいでしょうから、恐らく」

 

「空知ーっ! お願い、この二人を止めてちょうだいっ!」

 

 あらあら、リアス。そんな血相を変えなくても。大翔さんだけでなく、シーグヴァイラ様やソーナ、セラフォルー様までもが駆けつけてこられたではありませんか。

 

「うーん、フェニックスの一族が生み出す治療薬はレーティングゲームに欠かせないんだろう? だから、心を壊すところまでやるのは行き過ぎになるよ」

 

「兄さまがそう言うのなら……」

 

「二、三回おきに契約なり誓約を迫ったらいいよ。二度と此方に手を出せないようにね」

 

「分かりましたわ、こちらに都合の良い条件を飲ませればいいんですもの」

 

「悪魔の誓約や契約は破れば自分に振りかかるペナルティも大きいですし、不名誉の最たるものです。分かりました、兄さま」

 

 こちらへの不干渉を確約させるのが重要ですものね。目的を履き違えないようにしなければ。小猫ちゃんも納得できたようで、しっかりと頷きました。

 

「……ソーナ、ねえ、私の女王と戦車が過激過ぎるのだけど」

 

「十分に温情だと思うのだけど。それとも、ライザーとの結婚を即認められるの?」

 

「それは嫌よ……」

 

「ライザーの眷属はすべて女性で自分のハーレム。女王が実質的な正妻で、リアスは自分が楽しむためと純血悪魔を産むための婚約相手だと、非公式な場では言い放っているようですから」

 

 少し情報を集めようとすれば、隠すつもりもないのかボロボロ集まるとシーグヴァイラ様も呆れ顔です。女を道具や所有物としてしか見ていない考えをプライベートでは隠しもしないのでしょうか。

 

「……それだけ聞くと最低な男に思えるんだけど、そんな男にたくさんの女の人が集うものなのかな?」

 

「眷属になってしまえば主への叛逆は重罪だから、もしかすれば嫌々ながら従っているという子もいるかもしれないわ」

 

「良くも悪くも典型的な貴族悪魔らしい男の子だからねー。ただぁ、グレモリー家の次期当主でもあるリアスちゃんを公の場じゃないとはいえ、所有物扱いって相当自分に自信があるのか……もしくは、何か狙いでもあるのかな~?」

 

 大翔さんの疑問にシーグヴァイラ様が即答し、ソーナも頷きます。ただ、セラフォルー様は同意しつつも、別の観点からの指摘も付け加えていました。

 

「ありがとう、セラ。実際に接していない相手に対しての過剰な先入観や思い込みは怖いと分かっているよ。グレモリーさん、朱乃が女王として立ち会う以上、俺も給仕係でも何でもいいので同席できるようにお願いしますね」

 

「ええ、そのつもりよ」

 

「その時に『たまたま』用事で私が訪ねていてもおかしくないように、旧校舎の部室での話し合いが望ましいわね」

 

「そうね。私も『たまたま』ヒロ関連の話でソーナを訪ねていて、そのまま同席しても仕方ないものね」

 

「うわあ、ライザーちゃん涙目だこれ☆ そんな私はすずかちゃんとかと一緒に『ディープダイバー』で床や壁に潜っておけばいいしね☆ 潜伏ミッションコンプリートってやつ☆」

 

「……お姉様は仕事してください。自重もしてください」

 

「……なぜかしらね、ライザーが哀れに思えてくるのだけど」

 

 そんなリアスの呟きに答えたのは大翔さんの苦笑いのみでした。

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