「さぁ、脱いでください」
トビヤのAVコーナーで涼風さんと遭遇してしまったのが10分ほど前。引き摺られるように店を後にし、彼女の自宅まで連れてこられた。彼女が住んでいるのは涼風家が保有するマンションの上層エリア。マンションの上に建つ一軒家のような空間である。それで……彼女に連れてかれた先はベッド。簡単に言えば押し倒されてます。
「それとも……着たままの方がいい?」
妖艶な笑みを浮かべる彼女の手は、私の胸の上。性格に言えば、乳首を掌で弄ばれている。
「こ、この体勢じゃ脱げないよ……」
ようやく搾り出した声は、情けないくらいに震えていた。真面目そうな彼女の知ってはいけない一面に触れてしまったらしい。
「それもそうね、ごめんなさい。私も初めてだから気が急いていたの。まずは……シャワーよね。こっちよ」
すべすべとした白磁のような細腕に見合わぬ力で引っ張られていく私。かなり長い廊下を歩き、連れてこられたのは脱衣所。脱衣所なのにかなり広く、洗面台や棚などホテルのそれのような感じがするくらいだ。
「さぁ、脱いでください」
先ほどと同じセリフを言われ、私は再び戸惑ってしまう。……何をされるか分かったものじゃない。可能なことなら逃げ出したい。
「あら、逃げたいのかしら? でももし逃げたら、貴女があそこへ入ったのを見たと、先生方に告げ口してみようかしら」
「ま、待って。涼風さんだってあそこに……」
「成績上位者の私と、問題児の貴女、先生方はどちらを信じるかしら?」
「……うぐ」
「分かってでしょう? なら、脱ぎなさい。それとも、脱がせて欲しいのかしら?」
「わ、分かった。自分で脱ぐから!」
よくよく考えれば体育の時間の前には同じ更衣室で着替えているじゃないか。そりゃ、裸になる訳じゃないけど、下着姿も裸もここまでくれば大差ない。こうなったら自棄だよ自棄。
「うふふ、いい脱ぎっぷりよ。それに、身体もね」
「お褒めに預かり恐悦至極」
漫画で知った私にとって最大の皮肉をこれでもかっていうくらい嫌味な感じで言ってやった。
「ふふ、あのお風呂を一人でというのは寂しかったのよ。貴女と二人、嬉しいわね」
なのに彼女は私の精一杯の皮肉を聞くことなく、口角を上げて優雅に微笑んでいるときた。かちんときたけど、今の私は非常に立場が悪い。……彼女のなすがままにされるのが一番賢い選択なのだろう。そう割り切った筈なんだけど。
「貴女のおっぱい、本当に柔らかいわ。ずっと揉んでいたいくらいね」
無駄に広い浴室に備え付けられた鏡の前で風呂椅子に腰掛けさせられ、背後に立った涼風――さんを付ける気が起きなくなった――に胸を揉まれているのは何故? しかもボディソープの泡が妙にエロい。おかしい、自分の身体なのに。というか、泡で滑って訳の分からない動きをする涼風の手がこぞばゆくてしょうがない。柔らかさを堪能してる涼風はそれでも不満そうな口ぶりで、
「大きいと感度が下がるというのは本当なのかしら? それとも、慣れすぎて感じないのでしょうか……。むぅ」
口をとがらせているあたりは可愛らしくも感じるのだが、いかんせん言っていることが私にとってよろしくない。
「いい加減にしてよ! ていうか、私……人に胸揉まれるとか慣れてないし! 勝手に私をビッチだって決め付けないで!!」
無駄に広い浴室に私の声は悲しく響いた。主にやたら育った胸のせいで人目を引きやすい私は、優等生でなかったこともあって性にふしだらな女だと決め付けられてきた。実際は男子と付き合ったこともないし純然たる処女乙女なのだ。なのに、同性異性を問わず見た目だけで……。
「そうね、人を見た目で判断するのはいけないわね。泡を流すわ。そしたら、浴槽に浸かりましょう」
それでも自分のペースを崩さない涼風に怒りを忘れ軽く呆れてしまう。
「ねぇ、涼風?」
「唯とお呼びください。で、なんでしょう?」
「どうして、あそこにいたの?」
強制連行されたことにも疑問を抱いているのだけれども、そもそもにしてどうして唯があそこにいたのかが分からない。私たちはまだ二年生。誕生日を迎えていようと17歳だ。入っていいわけがない。やたらツルツルしたタイル張りの床を警戒しながら浴槽につかると、ほどよく温かいお湯にいろいろと忘れそうになる。
「私は……友人こそ多いけれど誰かと深い仲になったことがないのよ。だからやっぱり、憧れかしら」
「深い仲って……」
「手を繋ぎ、唇を重ねるような仲です」
広い湯船に対面して座る私と唯。唯の表情はさっきまでのよく分からない笑顔じゃなくて、ちょっと寂しそうな感じだった。
「それって、普通は男女の仲じゃ?」
そんな唯に何て言えばいいのか分からず、結局口から出たのは一般論だった。
「そうかもしれませんね。でも、私は貴女のような、魅惑的な女の子に憧れてしまうのです。恋心かもしれませんね」
……。これって、いわゆる愛の告白!? で、でも!
「ふふ、驚いた顔も可愛いです」
そう言った唯の顔がどんどんと近づいてくる。ま、睫毛長い! って、そうじゃなくて……
――ちゅっ――
キス音が浴室に響き、それを認識してから唇にじんわりと熱と柔らかさを感じ……私はパニックに陥った。
「え、ちょ、そんな……え? 私のは、初めてががが……え?」
「うふふ、初めてのキス。すごく良かったわ。ねぇ、もう一度しましょう?」
そう言った唯の笑顔は、私を訳も分からずドキドキさせるものだった。
基本的に学力の高くない佐山遥奈という少女の一人称で描かれている小説なので、極力難しい表現を排しようとしたら時間がかかりました。でも、けっこう残っちゃってますかね。あはは。
というか、今回あんまりエロがない。なんたる。もっと頑張りますので、次回に期待してくださいね。キスもどんどんエロくなるので!