※この作品はR-18です。

まさかこんな場所で貴女と逢うなんて   作:楠富 つかさ

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唯の秘密

「ん、んぐぅ……」

 

倦怠感を拭いきれない身体を起こす。あれ、今何時だ……。ていうか、ここどこ?

 

「ん、すぅ……ふふ」

「……ぁ」

 

思い出した。しかも思い出したせいで眠気吹っ飛んだ。私、唯と……。いや、落ち着け。私はまだ処女だ。大丈夫だ。

 

「って、何がだよ……」

 

項垂れる私の視界に入る唯の白い肌。全裸で眠る私と唯がいる部屋は、多分だけど最初に私が連れてこられ、押し倒された部屋だろう。唯の寝室として使われているのか、勉強机や本棚が置いてある。扇風機が回っているだけで冷房はかかっていない。まぁ、陽も沈んだし暑くはない。そういえばこのベッド、私が使っているものより大きい。セミダブルってこんなサイズなのかな。部屋をぐるっと見渡してから唯の顔を覗く。

 

「可愛い寝顔してるよなぁ」

 

さっきまでのつんとした雰囲気はなく、同い年、むしろ幼い雰囲気すら感じる。少しだけ開いた愛らしい唇に思わず視線が行ってしまい、

 

「って、待て待て!」

 

私、今何をしようとした? キスだよね。今、自発的に唯にキスしようとしたよね? ……私、どうかしてるでしょ! ありえない。同性だよ、同級生だよ、あの涼風唯だよ。

 

「ん? 遥奈……キス、してくれないの?」

 

ゆっくりと起き上がる唯。かけていたタオルが落ちて、形のいいおっぱいが丸見えだ。美由紀と麻耶の間くらい、Cカップはあるだろうそれは、女の私からすれば手にジャストフィットしそうな……おい、私、落ち着け。

 

「遥奈、キスぅ……」

 

寝惚けた唯は甘えた声を出しながら私に抱きついてくる。あの時の女王様チックな唯はどこに行った? あぁもう! 可愛いなぁ!

 

「「ちゅっ」」

 

どうしよう、唯の唇……クセになりそう。

 

「「ちゅ……ぬちゅ……んちゅ、ちゅぅ」」

 

求められるがまま唇を重ねる。

 

「ん、ふぁあん……おはよう、遥奈」

「おはようって、多分だけど今、夕方だよ?」

「あら、そうなの?」

 

ようやく解放されたかと思えば、欠伸をして唯はいつもの雰囲気に戻った。切り替えが早すぎると思う。

 

「そうね、晩ご飯にしましょう。服は……」

「私、自分の服取ってくる」

 

いくら広い部屋だからって寝室から脱衣所までの距離で迷子になることもあるまいと思って、部屋を出て廊下を右へ。昼間も右へ曲がった記憶がある。

 

「うん、やっぱり」

 

広い脱衣所で服を着直し、ついでに顔も洗う。あとは少し寝癖のついた髪を直す。地毛が茶髪なのも、不良に思われがちな理由の一つなんだろうなぁ。黒染めしたこともあるけど、髪が伸びた時にてっぺんだけが茶色いのが気持ち悪くて二度としないと決心した。まぁ、あの気持ち悪い状態の髪のおかげで、先生たちは私の茶髪は地毛だと納得してくれたのだが。

 

「さてと、戻るか。……そういや私、スマホどこやったっけ?」

 

あ、クラッチの中か。玄関に落っことした記憶があるなぁ。えっと、寝室から脱衣所までの道がこうなら、こっから戻って左かな? マンションの上に建つ一軒家という感覚に間違いはないのだが、規模が大きいからなぁ。玄関も広かったし。

 

「ふぅ、見つけた」

 

バッグからスマホを取り出すと、かなりの数の通知があった。取り敢えず、麻耶にメールするか。

 

『委員長に説教されてた。もう許してもらったので、』

 

ここまで打って悩む。三人とも確実に帰宅しているだろう。今更ながら時刻が午後7時近いことを知った。夏は陽が沈むのが遅いからなぁ。何でか知らないけど。唯とこんな関係になってしまったことを告げられるわけがない以上、適当に濁しておかないと。

 

「まぁ、いいか。適当で」

 

取り敢えず帰るような内容を送って、今度は親に夕飯はいらないとメールする。まぁ、これで大丈夫でしょう。

 

「えっと、今度は左側へ行くのか」

 

玄関から左へ曲がると、リビングダイニングがあって、唯はそこにいた。

 

「遅かったわね、遥奈。適当に選んでおいたわ」

「選んでおいた……? え、カップ麺」

「えぇ、夜はいつもこれよ。まぁ、ある程度のローテーションはあるけれど」

 

ちょっと待った。あの涼風唯の夕食がいつもカップ麺。え?

 

「あんた、朝とお昼はどうしているの?」

「朝はパンかシリアル、お昼は学食を使っているわ。休みの日はお昼もこれだけどね」

「唯……あんた、自炊できないの?」

「えぇ、家では包丁を握ったことすらないわ」

 

……ないわ。一人暮らしの男子大学生並みの生活じゃない。

 

「ちょっと待って、洗濯とかは?」

「週に一度、ハウスキーパーが来てやっていくわ」

「お、お風呂掃除は?」

「それくらいなら私にも出来るわ。ちょっと面倒だけれど」

 

……前言撤回。中学生レベルかもしれない。なにこの干物女?

 

「3分経ったわ。食べましょう?」

 

座るよう促された私に渡されたのは割り箸。食器洗いも出来そうにないようだ。

 

「頂きます」

 

大手メーカーが出しているカップ麺。たしかに美味しいのだが、しょっぱいし脂っこい。こんな食生活をしている唯が……なんで、あんなに、くびれてるんだよ!! 納得できない。いや、問題はそこじゃなくて……。

 

「ねぇ、唯」

「なにかしら、遥奈」

「あんた、現金持ってる?」

「? カツアゲ?」

「違うわよっ!」

 

何でお嬢様がカツアゲなんて言葉知っているかはさておき、

 

「近くにお月見マートってスーパーあるでしょう? 明日、9時の開店と同時に買い物に行って、お昼は私が作る。だからお金出して、いいね?」

「なるほど。遥奈は自炊出来るのね?」

「うち、母より私の方が台所に立つ回数多いから」

 

もともと、母より父の方が料理上手で、拗ねた母は料理をあまりしなくなった。でも父が忙しくなり台所に立つ回数が減ってくると、私が父のレシピを見ながら料理を始めたのだ。片付けは母に丸投げだったが。まぁ、それが六年前くらいで、今ではそれなり以上に習得していると自分では思っている。あれだね、小学校の家庭科が楽しくて仕方なった年頃だったのだろう。

 

「じゃあ、期待しているわね。お金は……家賃収入がえぇと……これね」

 

……なんか分厚い封筒出てきた!

 

「いくらあれば十分かしら? 一万円?」

 

金銭感覚はそれほど狂っていないらしい。カップ麺、自分で買っているのかな? てっきり、ハウスキーパーさんが買ってきているものかと。

 

「ま、まぁ、それくらいあれば大丈夫よ。あと、今日泊まってくから」

 

どうして、こんなこと言っちゃったんだろう。真面目で清楚で頭の良い、そんな私と正反対な雰囲気を持った唯に、私はどこか憧れみたいな感情を持っていたのかもしれない。でも実際は、淫乱だし自活能力ゼロだし……。

 

「あら、泊まっていくのね。いいわ、今晩も可愛がってあげる」

「そういうつもりじゃないっての!」

 

学校では感じたことなかったけど、唯……一人にしておいたら危なっかしいのかもしれない。放っておけない、なんて……私らしくもないか。

 

「ふふ、寂しさを感じない夜が来るなんて、ね……」

 

唯の微笑みに影があるように思えて……やっぱり私、変になっちゃったみたいだ。

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