〈銀子side〉
「っん…………」
寝返りをうち、目が覚めた。
「悪りぃ、起こしたか?」
「ん……大丈夫。」
まだ暗い中、携帯を開けるとまだa.m.3:00だった。
「何?仕事?」
「うん。ちょっと、出るだけだからすぐ帰るよ。」
今日は、5月5日。
トシの誕生日。
近藤の計らいで、1日休みを貰ってた筈なんだけど、起きたらトシは隊服に着替えて出掛ける準備をしていた。
「ご飯作るね。」
まだ眠い目を擦りながら、身体を起こす。
「眠いんなら良いぞ?」
「大丈夫、すぐするね。」
キッチンに向かう、後ろから“簡単なもので、良いから”とトシが言ってくる。
何処かに食べに行こうとしてたから、そんなに食べ物は入ってないんだけど……。
玉子とハムでいっか。玉子焼きとハムを焼いて、後は味噌汁を作って……。
ソファに座るトシの前に並べていく。
「美味そう、いただきます。」
私は、甘いのが良いんだけど、トシは甘いのが苦手だから、トシのにはマヨネーズを入れてる。
本人は気付いてるかわかんないけど……。
「相変わらず、美味いな。」
「そりゃー、どうも。」
「んー、いい匂いアル。」
押し入れが、ゆっくり開く。神楽がお腹を掻きながら、出てきた。
「お前も、食べる?」
「うん。食べたいね。ちょっと、退けよくそ親父。」
「誰が、くそ親父だよ。やらねぇからな。」
神楽に隠しながら、食べ始めるトシ。
「喧嘩すんな。お前のも作ってやるから……」
神楽の髪を撫でながら、キッチンに行く。
バタバタ作り持っていくと、すでにトシは食べ終わっていた。
「ご馳走さま。」
「そこ置いてて良いよ。」
「うん。」
流しに、食器を置き洗面所に行くトシを目で追いながら、“お弁当どうするの?”と訊いてみた。
「要らねぇ。」
「わかった。」
「銀ちゃん、外暗いね。太陽さん死んじゃったアルか?」
「はぁ?」
なんだか、寝ぼけてるみたいです。
「まだ、夜だぞ?」
トシが、歯みがきを終え戻ってきた。
「夜?」
「せっかく、騙そうとしたのに……」
寝ぼけてる神楽が、可愛くて……少しだけからかおうとしたのに……。
「もう、行くわ。」
時計を見ると、半を回っていた。
「いってらっしゃい。」
ソファに座り、言う。
「…………kissは?」
「やんないよ。早く、行けよ。」
何回か押し問答をしてようやく出ていった。
全く、もう新婚みたいには出来ないってぇの。
「神楽、食べたら歯みがきして寝ろよ。まだ、早いから。」
「はいネ。」
私も、また寝よう。布団に行くと気持ち良さそうに
朝。新八がやって来て起きた。時計の針はa.m.10:00を過ぎていた。
トシの予定では、a.m.7:00頃には帰ると言っていたけど、無理だったみたい。そう思い、テレビをつけるとちょうど花野アナがニュースを中継先から読もうとしているとこだった。
「はい。こちら、現場の花野です。先ほど、ありました爆発はターミナルの1階搭乗フロアと10階の展望室のエレベーター付近で2ヵ所同時に起きました。
尚、犯人は天人と思われますが、未だ要求等はされていない見込みです。負傷者もかなりの人数が居られると思われます。こちらに新たに動きがありましたら、お伝えします。では、一旦スタジオにお返しします。」
もくもくと黒い煙がたち少し傾いたターミナルを背に、花野アナが伝える。画面がスタジオに変わるとトシと色違いで買った携帯が鳴る。
嫌な予感しかせず、トシからの電話を取る。
「銀子………悪りぃ……」
「やっぱり、帰ってこれないか……いいよ。」
「悪りぃ。
「うん。」
予想通りの電話。まぁ、テロが起きたんだから仕方ないけど……電話を切る。
「ママ~パパは?」
「パパ、お仕事で帰れないって。」
「うっぅ~」
うっ、ヤバい
「やだ~」
はい、案の定泣き出しました。
「パパの誕生日会はまた今度しよう。」
「銀ちゃん、出掛けるといいね。」
「けど、あの爆破がテロなら他のとこでもあるかもしれないし、むやみに行けないって。」
「…………そうアルな。
「僕、来るときにケーキ買ってきたので、食べますか?」
その声を聞き、泣き止んだ。私に似て甘いものが好きみたい。
「……食べる。」
はぁ~、なんとか機嫌が直りそう。泣き出すとかなりの時間泣くからな。
〈トシside〉
「はぁ~」
あの事件から2週間、やっと纏まった休みが取れた。ちょくちょく帰っていたが、夜遅く
「パパ~♪」
今日は土曜日。朝起きてから、
プレゼントは、似顔絵。総悟に笑われたけどな。
俺にとっては、嬉しかったんだけど……。
「どこか行くか?」
「いい。パパと一緒にいるの。」
銀子は、仕事が入っていて出掛けてる。今、家には俺と
はっきり言って暇です。昼には帰ってくるって言ってたけど、今は1時を過ぎてるんだけど……正直、お腹すいてます。
「ただいま。ごめん、遅れた。すぐ、ご飯にするから。」
やっと帰ってきた。
「ママ~、お帰り。姉ちゃんと兄ちゃんは?」
「先方さんがさぁ、お寿司食べに連れてった。
二人のようすを座ってみていると、お腹が鳴る。
「パン買ってきたから、先に食べてていいよ。」
「うん。」
買い物袋から、マヨネーズパンを出し渡された。
「
「は~い。」
〈
10月になっても、私は悩んでた。ママへのプレゼントが決まってなくて……。内緒にしたいから、始めはジミー君の所に行こうかなぁ?
ばあちゃんやじいちゃんは、すぐにお金くれるけどママにも言っちゃうからダメだし。兄ちゃんや姉ちゃんは、お小遣い貰ってないし、総兄ちゃんは、ママだけじゃなくて街の人みんなに話しちゃうからダメだし。
結局、ジミー君かなぁって……。
何回も、ママと一緒に来たことあるから屯所まで一人で行けるもん。この橋を渡って……ほら着いた。
今日の門番は………あっ、ジミー君だ。
「ジミー君。」
「
「うん。」
「ダメだよ。一人で来ちゃ。危ないでしょ。ママには、言って来たの?」
「言ってないよ。今日はね。ジミー君にお願いがあるの。お金ちょうだい。」
私の身長に合わせて屈んでくれたジミー君の目の前に小さな手を出す。
「お金って、副……パパがくれるでしょ?」
「パパから貰ったら意味ないの。別にタダじゃないもん。私もね、万事屋の一員だから働くもん。何かお仕事ちょうだい。」
「何の為にいるの?」
「今度、ママの誕生日だから。お花買ってあげたいの。」
「う~ん。お仕事か?」
腕を組み、考え出した。そんなにお仕事ないのかなぁ?
「そうだ。冷蔵庫に行ってマヨネーズが何本あるか数えて貰おうかなぁ?」
「わかった。」
パパに見つからないように、給湯室に向かう。ジミー君から、プリンとか貰ったことがあるから場所は、知ってる。
……中には誰もいないみたい。急いで数えて戻ろう。
「何本あった?」
戻ると、ジミー君に訊かれた。
「5本。」
指を広げて、手で表しながら駆け寄る。
「ありがとう。はい、お給料ね。」
黒の財布から千円札を取り出す。
「そんなにいらない。あんなの簡単だもん。これでいいよ。」
3本の指をたてる。
「わかった。はい。」
お札を直し、300円を貰った。
「それとね、この事はパパとママ、兄ちゃんや姉ちゃん、総兄ちゃん、皆に内緒だからね。」
「喜ぶといいね。」
ジミー君に別れを告げ、来た方とは別の方へ歩き出した。
それから、ゴリラとたまちゃんに出逢って合計で千円になった。
今日、10月10日。ママの誕生日。パパの時はお仕事でお祝いできなくて、かなりズレてからプレゼント渡したけど、今回は当日に祝えそうです。パパはあんなことにならないように“ゆーきゅー”(有休)ってのを取ったみたいです。
「ママ、出掛けてきていい?」
「どこに?」
「お花屋さん♪」
「今日、ママも行くから一緒に行こうか。」
一緒か……まぁ、お花屋さんの場所よくわかんないし良いか。
「うん。」
「花屋に来るなんて、久しぶりだな。」
パパに手を繋がれながら歩き、お花屋さんに着く。
「昔は、薔薇とか買って来たけどね。」
ママが懐かしむように言う。
「まぁ、口説いてたからな。」
「そうだったの?」
「お前、花に見向きもせず料理を食べてたしな。何買うんだ?」
パパとママが話しているから、この間にこっそり買おう。花屋の奥へと行く。
〈銀子side〉
「菊。」
「はぁ?なんだ、墓参りするのか?」
「違うよ。実はね、私もね最近知ったんだけど菊の節句って言うのがあるの。旧暦で9月9日でね、今で言うと9月の下旬から11月の上旬なんだって。まぁ、少し過ぎたけど今日しようかなぁって。」
「日にち決まってないんだ。」
「うん。せっかくだし、いろんな色の菊を買おうかなぁ?」
紫に白・黄色もいいよね。どのくらいいるかなぁ?50本ぐらい?
「ママ~♪」
さっきから喋らないと思っていたら、
「お誕生日おめでとう。ママ。」
綺麗な花束、少し知らない花も入っている。
「ありがとう。けど、どうしたの?これ?」
「あのね、ジミー君とかゴリラとかにお仕事貰って稼いだお金で買ったの。」
「稼いだって、お前な。」
「
「お仕事したんだ。偉いね、
「帰ろうか。」
お目当ての菊の花束と、
「食用の菊も買っていい?」
「食べるのか?あんまり得意じゃないんだよな。菊って……」
「苦いの好きなのに?」
「好きじゃねぇし……」
「そうなの?」
「パパ、好き嫌いしちゃダメだよ?」
「子供に注意されてるし。」
笑いながら家路に着く。
「あのさぁ………」
「ん?」
前の夜に縫っていた枕カバーに菊の花びらを詰めていると、トシが真剣な面持ちで話しかけてきた。
「その~、プレゼントっていうか………」
「何?」
よほど、変なことを言うだろうなぁ?トシは、言いにくいことを言おうとするときはこうやってモジモジし始める。
「これ……」
空の写真が綺麗なパンフレットを差し出された。
手を休めて、ぺらぺらと捲ると家の写真や内装の写真が載ってる。
「なんなの?」
「………家、買わねぇか?」
「ほんとですか?」
私が固まっていると、キッチンから顔を覗かせて新八が聞く。
「あぁ、その
家………そりゃ、トシの言ってることもわかるけど……
「銀ちゃん、家買うアルか?私がこの家貰ってもいいアルか?」
私の手伝いをしていた神楽が、抱きつき訊いてくる。
「……」
「銀ちゃん、嫌アルか?」
「嫌って言うか、やっぱお金かかるし…………」
「金のこと心配してるのかよ。通帳にどのくらいあんのか知ってるだろ?お前に預けてるんだから。」
「けど、本当にいいの?家なんて買って。」
「私、お部屋ならベッドがいい。」
粉まみれになってる
「じゃあ、家買うの決定ってことで……」
木造の1階建てがいいな。2階は酔ってる時、階段上がるの大変だし。庭に花とかも植えたいな。楓の木もいいかも。
こうして、菊の匂いを嗅ぎながら菊の節句は終わりを告げた。
To be continued