※この作品はR-18です。

闘技場~囚われの性少女~   作:ルーラー

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第十一話  第三ラウンド―逃げだした代償―

『ミリア選手? ミリア選手? 異存があるか訊いているのですが、聞こえていらっしゃいますか? ミリア選手?』

 

 審判の声が闘技場内に響き渡る。

 しかし、それに応える声はない。

 問いかけられているミリアは現在、四つん這いの姿勢のまま瞳を大きく揺らしていた。

 

「……あ、う……」

 

 熱い吐息と共に声が口から漏れ出ているが、それも意味のある言葉にはなっていない。

 アシモフの指により、陰核に与えられ続けた刺激。

 それから逃れるため、反射的に『前進』してしまったという事実。

 それらが、ミリアの心に激しい葛藤(かっとう)を生じさせているようだった。

 

 『前進』してしまったのは事実。

 けれど、逃げなければどうなるかわからなかった。

 いまのは、あくまでも反射的に行ったこと。

 言葉よりもなによりも、彼女の表情がそう雄弁(ゆうべん)に語っている。

 

 すべては不可抗力だったのだ、と。

 

 だが、審判は――『闘技場』側は、『不可抗力だった』の一言で赦(ゆる)すことなどしないだろう。

 彼女の葛藤も、おそらくは、そうと理解できているからに違いない。

 そして、そうするのが当然とばかりに、審判はミリアに問いかけ続ける。

 

『ミリア選手? 異存ありですか? なしですか? 異存がないのなら、私はいまの行動を『抵抗』と判断し、ペナルティを課させていただきますが?』

 

「そ、れはっ……」

 

『その場合の残り時間は、約三分となります。それでよろしいですか? ミリア選手』

 

「い、嫌ですっ……! もう、時間を増やされるのは、嫌ぁっ……!」

 

『そう仰られましても、ペナルティを課すか否かの基準は、あなたの意思とは関係のないところにありますので……。異存があるのなら、その理由を述べてください』

 

「り……理由、理由……。えっと……えと、それは……」

 

 ミリアの頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。

 不可抗力だと認めさせるためには、『不可抗力』の一言だけではなく、もっと具体的な理由を提示する必要がある。

 要するに、アシモフの責めに自分の身体がどんな反応を示していたのかを説明する必要が。

 だが、それを口にするのは、途轍(とてつ)もなく恥ずかしいに違いない。

 

「その、えと……。怖く、なって……」

 

 結果、彼女が口にしたのは、曖昧(あいまい)な逃げの言葉だった。

 しかし、それでペナルティを取り消すほど、審判も甘くはない。

 

『まあ、戦闘ですからね。追い詰められれば怖くなるのは当然でしょう。そもそもミリア選手は、『抵抗不可』の間に殺されても文句の言えない立場にあるわけですし』

 

「そうではなくて……! もっと、別の怖さがあったんです……!」

 

『別の、ですか? それは一体、どのような?』

 

「それは……その……さ、触られているうちに……あの……」

 

『触られて? どのあたりを、でしょうか? もう少し具体的に仰っていただかないと、『ペナルティを課す必要はない』と判断することはできそうにないのですが……』

 

「あ、うう……。この、下着があるところの――」

 

「もう、そのくらいにしてやってもよいのではないか?」

 

 ミリアが『具体的な場所』を口にしようとしたところで、意外な人物が助け舟を出した。

 言うまでもない。闘技場のサーヴァント、アシモフである。

 

『よいのですか? アシモフ』

 

「うむ、問答の間にその娘の性感が収まってもうてはつまらぬからの。それに、こういう形で情けをかけるのは一度まで、じゃ」

 

『しかし、理由の説明もなしにペナルティの取り消しを行うことは……』

 

「ふむ、ならばワシが代わりに釈明(しゃくめい)してやるとしよう。

 なに、どうということはない。ワシが小娘の『女』の部分――それも、もっとも敏感な『弱点』とでも呼ぶべきところを集中的に責め立て、それに小娘が感じてしもうた。ただ、それだけのことじゃよ」

 

『なるほど。しかし、少し感じた程度で、反射的に逃げたりなんてするものですかね?』

 

「少し、ではなかったとしたらどうじゃ? 逃げださずにはおられんくらいの、もう少しでイきそうになるような刺激を受けておったのだとすれば?

 あれじゃよ。感じすぎて、つい怖くなってしもうたんじゃろう」

 

『ああ、確かにミリア選手も『別の怖さがあった』と言っていましたね。なるほど、そういうことでしたか……』

 

 と、納得の声も白々しい審判に――否、審判とアシモフの双方に、愚かにも否定の言葉が投げられた。

 むろん、自分の身体の状態を勝手に決めつけられた羞恥と怒りから、耳まで真っ赤になっているミリアのものだ。

 

「ま、待ってください! 私は感じてなんかいませんでした! アシモフの指が気持ち悪くて、それに怖さを――」

 

「なんじゃ、違ったか。間違いなくそうじゃろうと思っておったんじゃがなあ。しかし、そうなるとペナルティを取り消してもらうのは難しそうじゃなあ……」

 

「えっ……!?」

 

『そうですね。ただアシモフの指が気持ち悪かっただけだというのなら、刃物を突きつけられるのが怖いと言っているのとほぼ同義。

 理由に性的なものが絡んでいるのなら、不可抗力と判断するのもやぶさかではありませんでしたが、そうでないのなら……』

 

「そっ、そんな……!」

 

『もちろん、感じすぎてしまったと認めるのなら、いまからでもペナルティの取り消しは行いますよ? ええ、それは立派に不可抗力として成立しますからね』

 

「わ、わかりましたっ! 認めます! 認めますからっ!」

 

『認めるとは、なにをですか?』

 

「あ、の……。感じて……つい、逃げてしまった、と……」

 

 途切れ途切れながらも、なんとかミリアは言葉を紡いでいく。

 そんな彼女に、審判はさらに問いを重ねた。

 

『なにをされて、感じてしまったのですか?』

 

「そんなことまで、言わなきゃいけないんですか……!?」

 

『当然です。そもそもミリア選手、私は大体の事情をアシモフからしか聞いていないのですよ? 挑戦者であるあなたの口からも同じ内容を聞けなければ、ペナルティを取り消すという判定は下せません』

 

「……わ、わかりました。アシモフに触られて――」

 

『あ、待ってください。私の言い方が少々、正確ではありませんでした。言い直しましょう。

 ミリア選手は、アシモフになにをされて気持ちよくなってしまったのですか?』

 

「そ、そんな言い方をしなくても……! えっと、その……。指を……アシモフの指を、私の『弱点』に当てられて、震わされて……」

 

 真っ赤な顔はそのままに、拳を強く握り締めながら、少女は言葉を続けていく。

 

「あ、その……。確かに、気持ちよくなってたときもありましたけど……。でも、振動を強くされたら、これ以上は駄目だっていう気持ちになって、怖くなって……そ、それで、つい……」

 

『はい、けっこうです。それを聞いて、つい反射的に逃げだしたというのにも納得がいきました。いま課したペナルティは取り消すことにいたしましょう』

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 安堵からか、間抜けにも彼女はお礼を言ってしまう。

 しかし、それで戦闘再開とはならなかった。

 

『どういたしまして。――ですが、この『反射的に』という行動、今後は『行為の阻害』のひとつに含めさせていただきます』

 

「なっ、なんでですか!?」

 

『もちろん、本来ならば不可抗力として見逃すべきなのでしょう。当闘技場は、可能な限り挑戦者に有利な判定を下すよう努(つと)めていますからね。

 ですが、お忘れですか? この『抵抗不可』のルールは、アシモフの温情(おんじょう)とも呼べるものから始まったのだ、ということを』

 

「温情……!?」

 

『ええ、そうです。第二ラウンドにおいて、アシモフはあなたに情けをかけました。交換条件を提示したとはいえ、彼は敢えて責めの手を緩めてみせたではありませんか』

 

「でも、私はその交換条件を呑みました! 呑んで、極力『抵抗』しないようにしてきました! そうである以上、第二ラウンドのあれは『情け』と呼ぶに値(あたい)しないはずです!」

 

『ミリア選手が本当に『抵抗』しないよう努めていたのかについては、正直、議論の余地があると思いますが……まあ、そこは深く追及しないでおきましょう。

 しかし、第二ラウンドにおけるアシモフの気まぐれがなければ、あなたには交換条件を呑む機会すら与えられなかったはず。それなのに『情けをかけられていない』と主張するのは、いささか恩知らずだとは思いませんか?』

 

「そ、それは……」

 

 詰まるミリアに、審判はなおも続ける。

 

『もちろん、それでも当闘技場は、挑戦者に有利となるよう判定を下してきました。悪く言うのなら、可能な限りミリア選手を贔屓(ひいき)してきたのです。

 ですが、アシモフはこれに不満を漏らすことなく戦い、それどころか、あなたが頼んだわけではないにせよ、ミリア選手の代わりに抗弁(こうべん)し、ペナルティの取り消しに大きく貢献(こうけん)しました。

 この行動を見て、私は『この『抵抗不可』の時間が終わるまでの間だけでも、両者にとって公平な判定をするべきなのでは』と思ったのです』

 

「だから、不可抗力として見逃すことはしないと決めた、と……?」

 

『そういうことです。よって現時点より、『挑戦者に有利なルール』ならば『仕方のないこと』で済ませていた事柄も、『抵抗不可』の時間が終わるまでは『抵抗のひとつ』と判断させていただくことにいたしました。

 よろしいですね? ミリア選手』

 

 むろん、よろしいわけがないだろう。

 四つん這いの体勢のまま握られているミリアの拳には、強い力が込められているのが見てとれる。

 

 一方、アシモフはニヤニヤと表情を歪めていた。

 第二ラウンドで中断させた陰核責めのほうはまだしも、いまの抗弁に関しては、微塵も『情け』をかけるつもりなどなかったのだから。

 彼はただ、ミリアの口から『感じていた』ことを白状させたかっただけ。

 そうやって、彼女を辱めたかっただけだったのだ。

 

 それがまさか、審判がこちら側に歩み寄る結果に結びつこうとは。

 むろん審判――『闘技場』側も、口実さえあれば中立の立場から――もっといえば、アシモフに有利な判定を下したかったことだろう。

 なぜなら、彼は闘技場のサーヴァント。疑いようなく『闘技場』側の存在なのだから。

 

 それは、ミリアとてわかっているはず。

 その彼女は、審判の確認に、果たしてどんな言葉を返すだろうか。

 

「……わかりました。贔屓されていたというのは、正直に言って面白くなかったですし、著(いちじる)しく不利な判定さえされなければ、それでいいです」

 

『もちろん、ミリア選手に不利な判定はいたしません。『抵抗不可』の残り時間がゼロになるまでは中立の立場から判定を下す、というだけのことですよ。

 では、そろそろ戦闘再開といたしましょう。『抵抗不可』の残り時間は約二分となります』

 

 その言葉を最後に、ようやく長い問答が終わる。

 それと同時、一秒たりとも無駄にはしないとばかりに、アシモフが口を開いた。

 

「では、先ほどの続きといこうかの。ほれ、娘」

 

 愛液に塗れた指の腹を上に向け、軽く振動させる老人。

 それは、四つん這いの姿勢はそのままに、その指先へ陰核を触れさせろという催促(さいそく)に他ならない。

 それを察したミリアは、大人しく合成獣(キメラ)の元へと後退していく。むろん、これにペナルティが課されることはない。

 そして二人の体勢は、ミリアがアシモフの責めから逃げだす前のものへと戻った。

 

「さて、責めを再開する前に、ひとつ指示を追加させてもらおうかの。娘よ、顔は常に前へ向けておれ。絶対にこちらを見るでないぞ」

 

「そ、それって……」

 

 彼の意図を察し、少女が全身を震わせる。

 その反応に、正解とばかりに老人は笑みを深めた。

 

「うむ、ワシの責めをより敏感に感じてもらえれば、と思っての」

 

「そ、そんな……。なんで、そこまで……」

 

「そのほうがよく悶えてくれそうだから、じゃよ。それよりも、ほれ、早くせんとまたペナルティを課されてしまうのではないか?」

 

「――っ!」

 

 ペナルティ、の一言を聞き、ミリアが慌てて前を向く。

 しかし、時すでに遅し。

 

『えー、アシモフの指示をミリア選手が実行に移すまで、六秒近くが経過しておりました。よって、『抵抗不可』の時間を残り約三分に延長させていただきます』

 

 『異存はありますか?』の言葉は続かなかった。

 反論があるなら自発的に、ということなのだろう。

 もちろん、ミリアは強い口調で抗議する。

 

「待ってください! そんな数えか――ふあぁっ……!?」

 

 と、そこを狙い、アシモフが秘芯を撫でるように刺激した。

 

「……あっ……や、やめてくださっ……! ……んんっ……いまは……ふっ……審判に……はああっ……こ、抗議を……あふっ……」

 

 背後を振り返り、喘ぎ声を混じえながらも非難の言葉を浴びせるミリア。

 そこに再び、審判からの声が飛んでくる。

 

『ただいま、アシモフから『こちらを見るな』と指示されていたミリア選手が彼のほうを向きました。私はこれを『抵抗』とみなし、指示に背いたミリア選手にペナルティを課させていただこうと思います。

 『抵抗不可』の残り時間は、あと約四分。――それはそれとしてアシモフ、ミリア選手が私に反論しようとしているときは、責めの手を一度止めるように』

 

 さすがにそこまで見過ごしてはくれぬか、と内心でアシモフは舌打ちした。

 そして、責めから一度解放されたミリアが、改めて虚空へと抗議する。

 

「はあ、はあ……。い、言いたいことは二つあります。まず、なんで五秒が経過した段階でペナルティを課さなかったんですか。

 アシモフと言い争っているうちに、十秒以上が経ってしまう可能性もあったというのに」

 

『五秒が経過すると同時にペナルティを言い渡していたのは、一度のペナルティで二分以上の時間延長が起こらないようにという、挑戦者への配慮があったからです。

 いまは挑戦者に有利なルールではありませんからね、アシモフの指示に従うまで十秒が経っていれば二分の延長を、五十秒が経過していれば十分の延長を、というように、指示に従うまでに経過した時間に見合った延長を、しっかりと課させていただきますよ」

 

「そ、そんな……」

 

 それが当然というように、さらりと言い放たれた審判の言葉。

 それにミリアは顔を青ざめさせる。

 だが、それも一瞬。彼女は決然ともうひとつの抗議を口にした。

 

「で、では、私の抗議を邪魔しようとしたアシモフのことはどうなるんですか! アシモフのほうを向いてしまったのは、彼がちょっかいを出してきたからなんですよ!? それも、私が抗議しようと口を開いたときを狙って!」

 

『確かに、それはそのとおりですね。彼には先ほど注意を促しましたが、ミリア選手からすれば、それだけでは納得など到底できないでしょうし……。

 わかりました。ペナルティを取り消します。残り時間はあと約三分。双方、それでよろしいですね?』

 

「……ま、仕方なかろう」

 

 先に返事を返したのはアシモフ。

 ミリアのほうはといえば、しばし、きょとんとしてから、

 

「えっ……? あ、えっと……はい。それで、いいです……」

 

 と、どこか意外そうな表情でうなずいた。

 おそらく、一度課されたペナルティが、こんなにもあっさり取り消されるなどとは夢にも思っていなかったのだろう。

 安堵からか、固さというものがなくなる彼女の身体。

 それを感じとるやいなや、老人は。

 

「――んあっ……! まっ……ふっ、ふぅんっ……!」

 

 今度は言葉をかけることなく、不意打ち気味に指での愛撫を再開させた。

 こちらを向くことができなくなったミリアに、今度はどんな責めを加えてやろうか、と。

 あるいは、どんな責めなら不意にこちらを向かせることができるだろうか、とほくそ笑みながら――。

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