※この作品はR-18です。

闘技場~囚われの性少女~   作:ルーラー

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第十四話  第三ラウンド―少女の枷―

 ――ワシが力いっぱい布を引っ張っているときに、お主が『前進』するんじゃ。そうすれば、あるいは……。あとは、言わんでもわかるじゃろう?

 それを一度――いや、三度ほど試してみたいんじゃが……協力してもらえんじゃろうか?

 

 闘技場のサーヴァントに頼まれ――否、命令され、ミリアは思わず固まった。

 頭ではわかっている。これは『頼み』ではない、『命令』なのだ。

 ゆえに、彼女に拒否権などというものはない。

 

 しかし、股布が股間に食い込んでいるときに、前進する?

 そんなことをしたら、ただでさえ圧迫されている肉芽は一体どうなってしまうのか。

 しかも、それを三度もやれとアシモフは言う。

 

 頑張れば、耐えきれるかもしれない。

 彼が飽きるまで延々とやらされるわけではないのだ。

 だから、『三度だけ』耐えきればいいとも言える。

 難しいことには違いないが、不可能とまでもいかないはずだ。

 

 しかし、もし耐えきれなかったら、そのときはどうなってしまうのだろう。

 老人には『言わんでもわかるじゃろう?』と言われたが、ミリアには全然わからなかった。

 彼は『そうすれば、あるいは……』とも言っていたが、『あるいは……』のあとに続く言葉だってわからない。

 そもそも、自分が必死になって耐えているものの正体すら、彼女には理解できていないのだ。

 

 だが、ひとつだけ思い当たることはあった。

 『堕落に繋がる天国』。

 もし耐えきれなかったら、自分はそこに辿りつかされてしまうのだろうか。

 

 どうであれ、ミリアに拒否権はない。

 アシモフの命令を受け入れ、『抵抗不可』の時間が終わるまで耐えきる。

 それ以外の選択肢など、ありはしない。

 それ以外の道など、初めから存在しないのだ。

 そう自分を納得させ、少女は老人の求めに応じた。

 

「……わ、わかり、ました……。……で、でも……三回だけ、三回だけ……ですよ……?」

 

 声の震えだけは、どうしても抑えられなかったが。

 

「うむ、もちろんじゃ」

 

 うなずく合成獣(キメラ)。

 と、その手に力が入る直前に、審判の声が割り込んできた。

 

『ただいま、ミリア選手がアシモフの求めに応じるまで、十二秒ほどの間がありました。私はこれを『抵抗』とみなし、ペナルティを課させていただこうと思います』

 

「…………」

 

 予想はできていたのだろう。

 ミリアは表情を暗くはしたものの、反論することなくペナルティを受け入れた。

 そして審判から告げられる、『抵抗不可』の残り時間。

 

『ミリア選手が沈黙していたのは十二秒ほどでしたので、延長される時間は二分。よって『抵抗不可』の残り時間は約八分となります。――では両者、戦闘の続行を』

 

 それを聞き、アシモフは『少しばかり遊びすぎたか』と心の中で舌打ちした。

 それから四つん這いになっている少女に語りかける。

 

「あまり時間はないようじゃし、さっそく始めるとしようかの。よいか、ワシが引っ張ったら前進開始じゃ。一度目のゴール地点は……そうじゃな、この円形の闘技場の最北端としようかの。

 それと、これはワシから言いだしたことじゃからな。前へ進んだからといって、それを『抵抗』と判断されることはないじゃろう。安心して前進せい」

 

「は、はい……」

 

 むろん、そう言われても安心など到底できはしないだろう。

 それを正しく認識しながら、老人は布を勢いよく引っ張り上げた。

 

「――んうっ! あっ! はっ! ああっ……!」

 

「ほれほれ、悶えてばかりおらんで前へ進め」

 

 空いている左手でミリアの桃尻をぺちぺちと叩きながら促す合成獣(キメラ)。

 

「ひゃっ!? も、悶えてなんて……! ――くっ……! んっ……!」

 

 反論じみた言葉をひとつこぼし、少女はゆっくりと前進を始める。

 その姿は、まるで這(は)い這(は)いができるようになったばかりの赤ん坊か、はたまた飼い主に散歩させられている犬のよう。

 ミリア自身もそれを連想したのだろう、その表情が激しい屈辱と羞恥に歪んだ。

 

 だが、それも一瞬。

 秘裂に食い込んだ股布がもたらす、その刺激。

 強烈に圧迫されている陰核から伝わってくる、暴力的なまでの快感。

 それらに彼女はたちまち追いつめられ、たまらず歩みを止めて懇願(こんがん)してしまった。

 

「あああっ……! ゆる、緩めてっ……! 少し……緩めて、くださいっ……!」

 

 むろん、それを聞き入れてやるアシモフではない。

 

「緩めてどうするんじゃ。せっかくお主の『弱点』を激しく責めてやる方法が見つかったというに」

 

「そ、そんな……」

 

「ほれ、無駄口叩いておる暇があったら、止まっておらずに前進せい。まだ闘技場の中央からほとんど進んでおらんぞ」

 

「い、言われなくても、わかってますっ……! んっ……!」

 

 止めてしまっていた歩みを再開しながら、ミリアは震える声で小さく呟く。

 

「……くっ……! ふっ……! あ、あと二回……。あと、二回耐えれば、いいんだからっ……」

 

「うん? なにがあと二回なんじゃ?」

 

 背中を反らして必死に前進するミリアに、老人は問いかけた。

 その傍らには、彼女が溢れさせた恥ずかしい蜜によってできた愛液溜まり。

 彼は敢えてそこに踏み入り、びちゃびちゃと音を立ててやる。

 

「――やっ……! なんで、わざわざ……!」

 

 歩みを止め、真っ赤になって訴えるミリア。

 それにアシモフは、当然の行動だとばかりに返す。

 

「これもお主への『攻撃』になるじゃろうと思ったからじゃよ。どうやら、効果は覿面(てきめん)のようじゃな」

 

「あっ……。あうう……。――ひゃんっ! な、なにを――」

 

「また止まっておったからの、尻を叩いて促してやっただけじゃ。むろん、恥じらうのもけっこうなことなのじゃがな、いまのメインはそちらではなかろう?」

 

「ううっ……。で、でも、これで……あと、一回……」

 

 老人はその言葉に怪訝そうな表情を作り、三度(みたび)、歩行を始めたミリアに改めて尋ねかけた。

 

「じゃから、なにがあと一回なんじゃ?」

 

 その言葉に、嫌な予感を覚えたのだろう。

 彼女は顔を青ざめさせながら、確認するように返してくる。

 

「ぜ、『前進』する回数に、決まってるじゃないですか……。ふっ……! も、もう二回止まったから……んっ……! あと……い、一回で……」

 

「お主はなにを言っておる。歩みを止めたのは、お主が勝手にしたことじゃろう? なぜそれをワシが回数に含めてやらねばならんのじゃ?」

 

「――えっ……? あ、ああっ……」

 

「ワシはの、娘。この闘技場の中央から北の観客席に辿りつくまでで一度、そこからお主の休息していた椅子のところ――闘技場の東側までで二度、そして最後にワシが休息時に使っている椅子のところ――闘技場の西側までで三度、という意味合いで『三度』と言ったんじゃよ。

 進んで、止まって、を三度繰り返してもらえば満足というわけでは、断じてない。北、東、西の観客たちに、ワシの飼い犬へと堕ちたお主の姿を、間近で見せてやりたかったんじゃ」

 

 また、一度目、二度目、三度目と回数を重ねるごとに、歩行する距離も増えていく。

 それもアシモフの狙いのひとつだった。

 そのことを察し、ミリアが弱々しい声を漏らす。

 

「……そん、なぁ……」

 

 それに彼は、思案するような表情を作り、

 

「しかし、まあ、すでに二度止まられてしもうたというのも事実か。……ふむ、ならばこういうのはどうじゃ? 娘。

 最北端に辿りついたところで、この責めは仕舞(しま)いにしてやろう。じゃがそこまでは、この姿勢のまま這っていってもらう。たとえ何度歩みを止めようとも、最後まで、の」

 

 それはつまり、ミリアの歩行距離が大幅に減るということ。

 『三度』の本当の意味を教えられ、精神的に追いつめられていた彼女は、老人の提案に一も二もなくうなずいた。

 

「わ、わかりました。では、それで……。……あ、でも、最北端についてから『気が変わった。次は東に向かえ』とかいうのは、やめてくださいよ……?」

 

「むろんじゃ。そのようなことは、絶対に言わんよ」

 

 ミリアからは見えないだろうが、首を大きく縦に振ってみせるアシモフ。

 内心では、上手くいったとほくそ笑みながら。

 

 そう、彼の本当の狙いはこれだった。

 回数など関係なく、ゴールに辿りつくまではこの姿勢のまま進むしかないように仕向けてやろう、と。

 そして、ミリアにはそれを、自分の意思で選択したのだと思わせよう、と。

 特に後者を実現させるために、彼はこんな回りくどい手段をとったのだ。

 

「はっ……! んっ……! ふっ……!」

 

 そうと知らない少女は、一歩、また一歩と進んでいく。

 淡く桃色に色づいている肌を、汗でしっとりと濡らしながら進んでいく。

 地面にぽたぽたと滴(したた)り落ちるのは、その汗と、少女の愛液だ。

 絶えず股布で責められている秘所から垂れる蜜。

 それが地面に落ちては点々と染みを作り、彼女の通った場所を観客たちに教えていく。

 

「……はっ……! はあっ……! くぅっ……!」

 

 背を反らし、何度か止まりながらも前へ前へと必死に進むミリア。

 そんな彼女に、アシモフは意地の悪い問いをぶつけてやった。

 

「どうじゃ? 自分から股布に豆を押しつけるのは。そろそろ癖になり始めてきたのではないか?」

 

「……ううっ……そんな、ことっ……! くっ! ふっ……!」

 

 与えられる快感と、老人からの言葉責め。

 その両方を受けながら、しかし、彼女は歩みを止めない。

 

「んっ! ふっ! んああっ……!」

 

 と、ガクガクと手足が震え、ミリアの身体が崩れ落ちそうになる。

 だが彼女は歩行を一度やめ、腕と膝に力を込めて堪(こら)えてみせた。

 

「これこれ、止まるでない」

 

 そんな言葉と共に、少女の桃尻をぺちぺちと叩くアシモフ。

 早く前へ進め、そうして耐えきれぬほどの快感をその身に受け、激しく身悶えて体勢を崩してしまえ、とばかりに。

 

 むろん、ミリアがずっと止まったままでいようというのなら、それでもよかった。

 それは間違いなく、審判に『抵抗』とみなされるであろうからだ。

 どちらであっても、彼にとってはプラスに働く。

 

「……はあ、はあ……。くっ……! んっ……!」

 

 だが彼女は、止まってから四秒が経過したか否かというところで歩行を再開してしまった。

 これには老人も、思わず苦虫を噛み潰したような表情になってしまう。

 

 先ほどミリアに課されたペナルティは、『二分間の延長』だった。

 そう、ためらっていた時間が十二秒――十秒を超えていたというのに、二分しか延長されなかったのだ。

 それはつまり、十二秒のうちの二秒は切り捨てられたということに他ならない。

 

 そしておそらくは、いまので彼女も『その事実』に気づいたのだろう。

 一歩前進しては四秒近く歩みを止め、また一歩前進しては、少しでも身体の火照りを鎮(しず)めるために四秒近く休む。

 そんなことを、ミリアは露骨すぎるほどに繰り返し始めた。

 

 十二秒のうち、『二秒』という『端数』はカウントされずに切り捨てられた。

 それはすなわち、五秒以内に歩行を再開しさえすれば、何度止まろうともペナルティは課されない、ということを意味する。

 それに気づいてしまえば、彼女でなくとも『端数』の有効活用は考えることだろう。

 

 『おのれ、小賢しい小娘め』と憎々(にくにく)しげに顔を歪めるアシモフ。

 それからミリアの下着を強く引っ張り、休む暇など与えるものかと股間をグイグイ責め立てる。

 

「――んっ! くっ! ふっ……!」

 

 彼女が歩みを止めていようが、おかまいなしだった。

 布地が破れないように細心の注意を払いながら、股布部分でミリアの陰核をひたすら苛め続ける闘技場のサーヴァント。

 

「はっ……! あ、ああっ……! んくぅっ……!」

 

 ときに緩め、ときに引き絞り。

 緩急をつけて、アシモフは少女の秘裂を抉るように擦りあげてゆく。

 

「……あっ! んふぅっ……! く、んんっ……! は、あああっ……!」

 

 だが、どれだけ激しく悶えようとも。

 何度、切ない喘ぎ声を漏らそうとも。

 彼女は老人の責めのことごとくに耐えた。

 耐えぬき、あともう少しで闘技場の最北端に辿りつくというところまで至った。

 それに気づいたアシモフは、ならば、と思考を巡らせ、責め手を変える。

 

「えっ……!? やんっ! ひゃっ……!?」

 

 込める力はそのままに、彼は握る布を左右にも引っ張り始めたのだ。

 

「まっ……そ、そんなの……そんなの、だめぇっ……!」

 

 紐(ひも)のように捩(よじ)れている股布部分が、左右に動く。

 それが、いままでとはまた違う甘い刺激となって彼女を襲っているのだろう。

 右に左にと割れ目を責め嬲(なぶ)られるその度に、ミリアの腰は大きく揺れた。

 

「はっ……! もう、やめっ……! 変にっ……変に、こすれてっ……! は、ふっ……!」

 

 それでも彼女は、休み休みながらも前へと進む。

 少女の恥ずかしくも大切なところである秘裂を、『弱点』を、合成獣(キメラ)などという敵の手によって前後左右に辱(はずかし)められながらも、少しずつ前進していく。

 

「ふはっ……! んふぅっ……! あと、ちょっと……! はぁんっ……!」

 

 そしてミリアは、散々悶えさせられながらも、たっぷりと時間をかけてなんとか闘技場の最北端へと到達した。

 それにひとつ舌打ちをし、それでもアシモフは握っていた布から大人しく手を離す。

 

「反則的とすらいえる亀のごとき歩みに頼ってのこととはいえ、よく耐えきったものじゃのう。まったく、普通に歩行しておれば一度くらいはイけたであろうに」

 

 少女は荒い息のまま、闘技場の壁のほうへと顔をやりながら返してきた。

 

「……はあ、はあ……。なんとでも、言ってください……。『堕落に繋がる天国』とやらに行かされるのに比べれば、その程度の言葉なんて、なんともないです……。

 ……それに、私のやったことは『反則的』ではあっても『反則』ではない。そうでしょう?」

 

 いまに至るまでのミリアの行為は、黒に限りなく近い灰色。

 悔しくはあるが、老人とてそれは認めざるをえない。

 しかし、そんな彼に代わって異を唱える者がいた。

 

『いえ、ミリア選手。残念ですが、私にはいまの行為、とても『正当なもの』とは思えませんでした』

 

「――えっ……?」

 

 どこからともなく聞こえてきた審判の声に、ミリアが天井を見上げながら不安げな声を漏らす。

 

「そ、それは、どういう……」

 

『まずミリア選手は、『行為の阻害』あるいは『アシモフへの非協力的な態度』に相当する行動を行っても、五秒が経過するまではペナルティを課されないだろうと判断した。これに間違いはないですか?』

 

「え、ええ……」

 

『それはつまり、不可抗力的な理由があって従うことができなかったのではなく、意図的にアシモフの指示に背いた。五秒が経過しないうちに動きだせばいいと、計算高く『猶予時間を自身の回復に充(あ)てた』ということですよね?』

 

「そ、それは……その……」

 

『もっと言えば、『四秒休んで一歩進み、また四秒休んで一歩進む』だなんて、『悪意をもって猶予時間を利用していた』とすら思えますよ?』

 

「あ、悪意だなんて……!」

 

『そう思われても仕方がない、という話です。事実、不可抗力的な理由はなかったのでしょう?』

 

「それは……。は、はい。そうです……」

 

『もちろん、あなたが休んでいる間にもアシモフは責めを続けていたわけですが……彼からしてみれば、あそこまで頻繁に止まられているんです、動いているときにのみ責めろというのは、さすがに酷でしょう。

 なのでアシモフの行為に関しては、全面的に不問としたいと思います』

 

「あ、あの……。私の、ほうは……?」

 

『ミリア選手には、当然、ペナルティを課させていただきます。なお、延長される時間は、あなたが止まっていた時間を合計し、それを五で割って算出いたしますので、少々お待ちを』

 

「そ、そんなぁ……」

 

 これでは一体、なんのために四秒前後で再び移動を再開したのかわからない。

 そうとでも言いたげにミリアの表情が悲痛に歪んだ。

 だが、強く反論もできないのだろう。

 自分のやったことが『黒に限りなく近い灰色』であると自覚しているがゆえに。

 

 ややあって、審判の声が再び二人の耳に聞こえてきた。

 

『お待たせいたしました。ミリア選手が止まっていた時間の合計は六十二秒。よってミリア選手には、ペナルティとして十三分の時間延長を課させていただきます。

 それと、もうお気づきでしょうが、今回に限り『端数』は切り上げることにいたしました。そうした理由は、ミリア選手自身が誰よりもよくわかっていらっしゃいますよね?』

 

「……はい」

 

 『闘技場』側の配慮である猶予時間を、自身の回復のために利用した罰。

 おおかた、そんなところだろう。

 

「あの、それで……残り時間のほうは、あとどれくらいになるのでしょうか……?」

 

 そう問うたミリアに、審判は少し気まずそうに答えた。

 

『そのことなのですが……これは、こちらの不手際ですね。ミリア選手の行動が常に一瞬であったため、時間の計測を再開するタイミングというものがなかなか掴めず……。

 その、要するに、約六分の状態から計測できていないのです。なのでこの六分と、ペナルティとして課させていただく十三分、これを合計した約十九分を『抵抗不可』の残り時間とさせていただこうかと――』

 

「ちょ、ちょっと待ってください! そんなの……そんなの、おかしいです! あんまりですよ、いくらなんでも……!」

 

 少女の悲痛な訴えが闘技場内に響き渡る。

 食い下がりたくもなるだろう。いままでに告げられた『抵抗不可』の残り時間は、約十四分が最大だったのだから。

 しかし、先ほどの申し訳なさそうな語調(ごちょう)はどこへやら、審判は断固たる口調で彼女に告げた。

 

『ですがミリア選手。あなたにも少なからず非はあるのですよ? 計測が困難になるようなことを行っていたのは、他ならぬあなたなのですから』

 

「そ、それはそうですけど! そのとおりなんですけど! でも、それにしたって……!」

 

『ミリア選手は自分に非があることを自ら認めていらっしゃいます。そんなあなたの高潔(こうけつ)さは疑いようもありません。さすが聖騎士を目指していらっしゃるだけのことはあります。

 ならば、いかがでしょう。こちらに不手際があったことは事実ですが、それでも、この判定を潔(いさぎよ)く受け入れてはもらえないでしょうか?』

 

「――あ、う……」

 

 審判の言葉は、間違いなく決め手となった。

 『聖騎士を目指している』。

 その事実は、上手くすればミリアの反論を封じる枷(かせ)となる。

 審判はそれを正確に把握し、利用してみせたのだ。

 何度となく中立を謳(うた)っていた彼も、結局は『闘技場』側の人間なのである。

 

 聖騎士を目指して修行を続けてきた少女は、四つん這いの姿勢のまま、しばし沈黙し。

 やがて、力なくうなずいた。

 

「わかり、ました……」

 

『約十四分から約六分にまで減っていた『抵抗不可』の残り時間が、あと約十九分にまで延長。こちらの不手際もあったというのに、それでもなお、高潔なるミリア選手はこの判定を受け入れてくださるというのですね?』

 

「……はい。受け入れ、ます……」

 

『ありがとうございます、ミリア選手。では、『抵抗不可』の残り時間は約十九分とさせていただきます。――両者、戦闘を再開してください』

 

 その言葉を受け、アシモフが蹄(ひづめ)の音を鳴らしながら移動した。

 ミリアの目の前に回り込み、彼女を正面から見下ろすように正対する。

 それに少女も顔を上げた。自然、二人の視線は絡み合う。

 

 ミリアがしているのは、不安げな上目遣い。

 立ち上がってもいいと言われていないため、どうしたってこうなってしまうのだろう。

 そんな彼女に、老人はニヤリと笑って口を開いた。

 

「さて、無事に北の観客席まで辿りつけたの。次は観客たちに、お主のはしたない姿を至近距離で見せてやろうかと思っておるのじゃが……かまわぬか?」

 

「……嫌です、なんて言っても、どうせ聞き入れるつもりなんてないんでしょう?」

 

 声も身体も震えているのに、ミリアの目にはまだ強い意志の輝きがあった。

 それを見て取ったアシモフは、まだまだ楽しめそうだ、と笑みを深める。

 

「呵々(かか)、わかっておるではないか。むろん、お主に拒否権などありはせん。そんなわけで、じゃ。さっそく見せてやろうではないか、さっきからよだれが垂れっぱなしになっておる、お主の下の口を、の」

 

 そして、老人の口から次なる指示が飛んだ。

 

「娘。観客たちによく見えるよう、もう一度仰向けになれ。むろん、ワシのほうに足を向けて、じゃぞ?」

 

 それは、少女の痴態を観客たちによく見せるための指示。

 だが、彼の意図するところはそれだけに留まらない。

 そう、アシモフのその指示は、そろそろ自らの指でミリアを絶頂させてやろうと思って下した命令でもあった――。

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