アシモフに命じられるがまま、おずおずとミリアは仰向けに寝転んだ。
もちろん、足も指示どおりに老人のほうへと向けられる。
地面に広がった長い銀色の髪は、あたかも上質なシーツのよう。
「ううっ……」
羞恥のあまりにか、アシモフと目を合わせたミリアが小さく声を漏らした。
それに
「どうしたんじゃ? まさかとは思うが、まだ恥じらいの感情を捨てきれておらんのか?」
「あ、当たり前でしょう……!」
無理もないことだろう。
他人の目から秘所を隠し、守ってくれるはずだった純白の下着。
それがいまは、
だが老人は、そんなことは
「
「そ、そういうことを言うのはやめてください! そ、それに……慣れたり開きなおったりなんて、できるわけが……!」
それを聞き、アシモフは口の端を満足げに歪めた。
「そうかそうか、それはなにより」
「……? なにを言って――」
「開きなおられては、
女のもっとも
「でもさっき、『普通なら』って――えっ……? あっ……!?」
そこまで口にして、ようやく気づいたらしい。
下着に守られることなく
少女のそこに、闘技場の北側にいる観客たちの欲望にまみれた視線が集まって――否、突き刺さっているということに。
「やっ、嘘っ……。こんなっ……こんなのって……!」
かぶりを振り、現実を認めまいとするミリア。
だがそんなものは、なんの抵抗にもなりはしない。
少女の陰部には無数のギラギラとした瞳が変わらず向けられ、それらから逃れることのできない彼女は、ただただその視線を一身に浴びせられ続ける。
どんどん赤く染まってゆくミリアの頬。
そんな彼女を見下ろしながら、アシモフは呆れたように呟いた。
「なんじゃ、観客たちの視線に気づいておらんかったのか」
「だって、だって……」
軽い混乱を起こしてでもいるのか、ミリアの返事は要領をえない。
だが、それも仕方のないことといえるだろう。
観客たちと少女の距離は、かつてないほどに近く。
その無数の視線は、無遠慮にも彼女のもっとも恥ずかしい場所に
「お願いですから……。もう、見ないでください……」
ゆえに、そう言って強く目をつむった少女の反応は、実に自然なものだといえるだろう。
しかし、当然ながら老人はそれを
「これこれ、閉じるでない。それではここまで連れてきた意味が半減してしまうじゃろうが」
「ううっ……。あううっ……。うくっ……」
恥じらいの声と共に目を開くミリア。
そんな彼女に、アシモフは敢えて自分の狙いを教えてやる。
「よいか、ワシがお主をここまで歩かせたのには二つの意味があるんじゃ。まずひとつは、お主の乱れる姿を観客たちに間近で見せてやるため。
そしてもうひとつは、観客たちの目を、反応を、お主に見せるためじゃ」
「――っ……!」
それはすなわち。
ミリアにも、観客たちの好色な笑みを見せてやろうと。
彼らが、どんな目で少女の痴態を観賞しているのかを見せてやろうと。
嫌でもそれらが彼女の目に入るようにしようと。
そういう企みに他ならなかった。
「じゃから、目を閉じてもらっては困るのじゃよ。
ほれ、どうじゃ? 先ほどから観客たちと――お主が目の前で乱れるのを心待ちにしておる者たちと、幾度となく目が合っておるじゃろう?
この者たちを例外なく満足させてやるのが、ワシに課された役割でな。というわけじゃ、どれだけ拒絶したくとも協力してもらうぞ、娘」
そう声をかけながら、老人は少女の足元に座り込んだ。
馬のものである四本の脚が器用にも折りたたまれ、両の手は下着にかかる。
「――あっ! やっ……!」
たまらず取り乱し、彼の動きを制止しようと手を伸ばしかけるミリア。
だが、いい加減に少しは学んだのか、彼女の両手はアシモフの邪魔をするまいと
行為を受け入れる様子をみせた少女に、老人は
「……っ……ふ……。あっ……」
濡れて重くなっている布地が下腹部を擦るたび、桃尻や腰の曲線を指で
口からも甘やかな吐息と
「……ん……はっ……くぅ……」
「うん? この程度のことで感じておるのか? 娘」
「そんな、わけ――ひぅっ……。い、いまのは――んっ……わざと、やったでしょう……!」
敏感に喘ぎながらも抗議される。
アシモフは当然、軽い口調でとぼけてみせた。
「いやはや、とんでもない言いがかりじゃな。ワシはただ、お主の下着を脱がそうとしておるだけじゃよ。まあ、その過程でいくらか指が当たってしまってはおるが」
「こ、この卑怯者っ……!」
「そういうお主は、少し布が擦れただけでも感じてしまう
「なにを――んっ……ふっ……」
布地と肌が擦れるたびに生じる、甘い電流。
老人の指によって、思いだしたように送り込まれてくる
その二つに抗うように、少女は軽く首を振る。
「……ふっ……はっ……あ……。ま、まだなんですか……? いくらなんでも、もう――あっ! ま、まさか……!」
脱がすだけにしては、込められている力があまりに弱い。
そのことにようやく思い至ったのだろう。
ミリアは慌てて腰を浮かし、地面との間に隙間を作った。
「気づくのが遅いのう、娘。じゃが、これでようやく下ろせるようになったわ」
その言葉に、やっぱり、と彼女は強くアシモフを睨みつける。
だが、そんなものは意にも介さず、アシモフは太もものあたりまで純白の布を下ろしていった。
少女の秘部と下着の間にかかる、一本の透明な糸。
審判の声が飛んできたのは、そんな
『えー、もうお気づきのこととは思いますが、ただいまミリア選手は十四秒間に渡ってアシモフの行為を阻害――いえ、彼の行為の手助けを行わずにいました。
私はこれを『抵抗』とみなし、『抵抗不可』の時間を二分延長させていただきます。なお『抵抗不可』の残り時間は、あと約十八分となります』
それ以上、審判の言葉が続く気配はない。
また、少女にも反論するつもりはないようだった。
それを見て取るやいなや、老人は
「残念じゃったの、娘」
「……こ、こんなの、たいしたことじゃありません。残り時間はさっきよりも減っていますから」
「
「うっ……。それは、そうですけど……」
ミリアを言い負かしたアシモフは、太ももから膝、ふくらはぎへと少女の下着を下ろしていく。
「あ、ああっ……」
ときおり声を漏らしはするものの、その行為自体には、まんじりともせずに耐え続けるミリア。
そんな健気な反応をされては、
もっともっと可愛がってやりたいという感情を、どうしたって抑えられなくなってしまう。
むろんアシモフの『可愛がる』は、『
ともあれ彼は、純白の布を丸めるように足首まで移動させ、それを右、左と抜いていく。
「さあ、これで下のほうは一糸まとわぬ姿となったの。いや、まだブーツが残っておるから、そうとは言えぬか。
しかし、ブーツは金属製じゃからな、布がないという意味でなら――」
「ど、どちらでもいいでしょう、そんなこと……!」
「いやいや、一部の人間には大事なことのようじゃぞ? いまここにいる観客たちに限定したとて、ブーツは残しておいてほしい者と、丸裸に
「だから、そんなことはどうでも――」
「よくはなかろう? 観客たちに延々と
そうそう、いま、大抵の者は股間を凝視しておるじゃろうがの、安心せい、世の中にはヘソのほうに興奮するという男もおるからな」
「――っ!?」
老人の指摘に、ミリアは両手でバッと腹部を隠した。
だが、それに不満の声があがることはない。
理由は単純。
そこをいつまでもガードしていることは不可能だと、すべての観客が理解しているからだ。
それよりもいまは、この少女の恥部をこそ堪能しよう、と誰もが考えたからだ。
そして、恥じらっておへそを隠したことが、彼女にとっては
先ほどまでは、多少なりとも分散していた無数の視線。
それらが、ミリアの秘密の場所という一点に集中し始めたのだ。
大勢の人間がすぐそこにいるとは思えないほどの沈黙が、闘技場内に満ちていく。
その不気味さに、彼女は「や、やあっ……」と小さく身を震わせた。
むろん観客たちは、そんなことなど気にも留めない。
すぐ間近で、ミリアの大事なところを食い入るように見つめ続ける。
それは彼女に、錯覚とはいえ、物理的な圧力を感じさせてしまうほどのものだった。
羞恥に縮こまるミリアを見て、アシモフは満足げな笑みを浮かべる。
それから手にした純白の下着に目をやった。
「さて、次はこれをどうするか、じゃが」
「……ど、どうせ燃やすんでしょう? 第二ラウンドでショートパンツにそうしたときと同じように。
さ、さあどうぞ。穿きなおしても気持ち悪いだけでしょうし、透けちゃってもいますし……。
と、とにかく、もう一度穿くつもりなんて全然ありませんから、あなたの……す、好きにしちゃってかまいませんよ」
「言いよるわ。ワシに散々、身体を好きにされておるくせにの」
「わ、私のことを好きにしていいと言った覚えはありません……!」
「お主の許可など、得る必要もないわ。――まあ、しかし、確かにお主の言うとおりじゃの。透けてしまうほどにお主の蜜を吸ってしもうたわけじゃから、もう一度これを穿こうなどとは思えぬじゃろう」
「わざわざ繰り返さないでください……!」
「
「……どういう意味です?」
「なあに、こういう意味じゃ……よっ!」
その言葉と共に、老人は後ろを振り向くことなく、ミリアの下着を観客席へと放り込んだ。
「ああっ……!」
この展開は予想していなかったのだろう。
彼女は驚愕の声を漏らしつつ、純白の布を探すように観客席へと目を向ける。
そこでは、観客たちによるミリアの下着の奪い合いが始まっていた。
それは、あまりにも貴族としての品性を疑いたくなるような光景。
だが、それも致し方ないことなのだろう。
観客席に投げ込まれた物は、十七歳の美少女が穿いていた、
なによりその純白の布地には、直前まで散々乱れていただけあって、闘技場に入ってきたときの彼女には似つかわしくないほどの
「どうじゃ? つい先ほどまで自分の穿いていた下着に、見知らぬ男どもが群がっておるさまは。
お主の身体を自由にできておるワシなんかの目には、正直、
むろん、彼女がそんな人気を望むことなどありえない。
下着を脱がされた少女は、ただただ涙目になって訴えた。
「やめ、て……。そういうこと、言うのは……やめて、ください……。あの人たちも、やめ、させて……。お願い……です、からぁ……」
「前者はともかく、後者の願いは聞いてやれんのう。ワシや審判が言っても聞かぬじゃろうし。――いや、やめさせる方法は……あるといえばある、か?」
「あ、あるんですか……? だったら、お願いです……! すぐ……! いま、すぐに……!」
ミリアの懇願に、アシモフがニヤリと笑みを浮かべる。
「いますぐに、か。……まあ、やってやらんこともないぞ」
「ほ、本当ですか!? 本当に、あの人たちをいますぐ止めてくれるんですか!?」
どうせ聞き入れてなどもらえないと、半ば諦めていたのだろう。
少女の瞳に驚愕と期待の色が浮かんだ。
「お願いします! 早く! どうか早く!」
「そう慌てるでない。そもそもお主、具体的な方法とて聞いてはおらんではないか」
「あ。す、すみません。つい……。えっと、それで、一体どうやるんですか?」
「なに、単純な方法じゃよ。……といっても、情けないことにワシひとりではできんのじゃがな。どうしたって、お主の協力が必要になる」
「私の、ですか? ……わかりました。あの騒ぎを治めるためだったら、なんでもします」
なんでもする。
アシモフの狙いに気づくことなく、少女は決定的な言葉を口にした。
「そうかそうか、それは助かる。なに、方法は本当に単純なんじゃよ。要は、お主の下着以上に、観客たちの興味を引く『もの』を提供すればいいんじゃ」
「あれ以上に、ですか? ――あっ……。え、えっと……それはつまり、今度は……その、私の胸当てとかを放り込め、とか……?」
「いやいや、そんなものでは駄目じゃろう。お主、観客たちが今宵、一体なにを見に来たと思っておるんじゃ?」
「なにをって、それは――って、ま、まさか……」
「思い当たったかの? 娘」
「で、でも、そんなのは……。その、本末転倒といいますか……」
ようやく観客たちに提供する『もの』の察しがついたらしく、ミリアが拒否の態度を示し始める。
だが、後退することすら禁じられている彼女が、老人から逃げることなどできはしない。
「なにを言っておる。それともなにか? 『なんでもする』というのは偽りか?」
「い、いえ……。偽りだなんて、ことは……」
「ならば、ワシに協力するのじゃな? いや、違うの。あの騒ぎを治めるためなんじゃから、ワシがお主に力を貸してやるというほうが正確か」
「いくらなんでも、それはさすがに違う気が……」
「騒ぎを治めたいのはお主であってワシではない。ならば違うことなどないではないか。事実、ワシはあれを放置しておいても一向にかまわんのじゃから」
「わ、私はかまいます……!」
「ほれ、やはりワシが協力する側ではないか。――さて、そんなわけで、じゃ。乱れる準備はよいか? 娘。
言っておくが、生半可な痴態では観客たちは振り向かぬぞ? もう見飽きられてしまったじゃろうからな。じゃからお主には、ここらでひとつ派手にイってもらわねば」
その言葉に、ミリアの顔が青ざめる。
「『行って』って、まさか……!」
「うむ、せっかく『なんでもする』とまで言ってくれたわけじゃからな。そろそろ一度くらいは、の」
「や、やめてください! 『堕落に繋がる天国』になんて、絶対に行きたくありません!」
「ふむ? 『なんでもする』のではなかったか?」
「そうなんですけど……。で、でも……。それは……だって……」
「いい加減に覚悟を決めい。『なんでもする』と言ったのは、他でもないお主なのじゃぞ?」
「う、ううっ……。でも……でもぉっ……」
「なあに、そう怖がるでない。お主はただ仰向けに寝転がっておればいいんじゃ。あとはワシが、ゆっくりと、可愛がりながら、優しく導いてやろう」
そう、怯えるミリアにささやきかけながら。
アシモフは少女の秘裂へと右手を伸ばしていった。
「……一度目くらいは、の」と、彼女には聞こえないように呟きながら――。