銀髪の少女が闘技場の地面に横たわり、達した
瞳を揺らし、快感の涙を目の端に浮かべ、ときおり熱い吐息を漏らしたりなどもしながら。
それは彼女の人生において、間違いなく初めて経験した絶頂だったのだろう。
夜の闘技場で、観客たちの視線に晒されながらとくれば、なおのこと。
むろん、ミリアとて十七歳の少女である。
普通に考えれば、自らの手で
だが、戦いの最中に幾度となく
『女』の感覚というものを、なにひとつ知らなかった
それらをいち早く見抜き、
むろん、その過程を誰よりも注意を払いながら見てきた審判とて同じである。
すなわち、目の前の少女は、今日、生まれて初めて絶頂を経験したのだ、という。
そして、それゆえに審判は、異例の
『えー、アシモフ。申し訳ないのですが、ひとつ、ルールの追加を。
ミリア選手が絶頂の余韻に浸っている間、アシモフからの攻撃は禁止とさせていただきます。
そして、本当に重要なのはこちらのほうなのですが、ミリア選手がこの状態でいる間も、計測は続けていくこととします。つまり、こうしている間にも『抵抗不可』の残り時間は減り続けている、ということですね』
アシモフも、それに異を唱えることはしなかった。
「まあ、
ミリアの姿が観客たちによく見えるよう立ち位置を変えながら、老人は続ける。
「現に、小娘はまだ
それはそれとして、問題は、どのあたりまでを『攻撃』と捉えられるのか、じゃな。声をかけるのすら禁じられておるのか?」
『いえ、そのくらいはいいでしょう。直接的な手出しさえなければ問題ありません』
「では、もうひとつ。小娘が絶頂に慣れてきたら、イっておる最中の手出しも許可されるのか?」
『それは……現段階では、まだなんとも言えません。そもそも彼女、果たしてこの戦闘中に慣れてくれるのでしょうか?』
とろけきった表情と、よだれを垂れ流している下の口。
それらを観客たちにじっくりと
おそらくは、向けられている視線に気づけてすらいないのだろう。
「……無理かもしれぬの。まあ、先のことは先のことじゃ。いまは声をかけて、責めに耐えられる状態にまで戻ってもらわねば。
『抵抗不可』の残り時間が無駄に減っていくのは、やはり惜しいのでな」
『それはかまいませんが……できますか?』
「なに、羞恥心を刺激してやれば、比較的短時間でどうにかできるじゃろう」
そして、老人は先ほどまでいた場所へと戻っていく。
すなわち、ミリアの対面へと。
それから意地悪げに問いかけた。
「さて、娘。ワシの教えてやった『堕落に繋がる天国』はどんな感じじゃった? ぜひともイったときのことをお聞かせ願いたいのじゃが」
「……えっ、と……。まず奥のほうが、ぎゅって熱くなっ、て……身体が、浮いて……」
気だるそうでありながらも、少女は素直に口を開く。
「……浮いたと思ったら……いきなり、落ちて……。気づいたら、こうなってて……」
「ふむ。では、気持ちよくはあったか?」
「……よく、わかりません……。身体がバラバラになりそうで、怖くもあったし……。なにより……こんなの、初めてだったから……」
「そうかそうか。やはり初めてのことじゃったか」
「……あ、でも……」
「うん? 『でも』、なんじゃ?」
「えっと……でも……」
よほど理性がとろけているのだろうか。
そこで一度言葉を切り、ミリアはふにゃっと幸せそうに笑み崩れた。
「……でも、思い返してみれば……とっても気持ちよくも、ありました……」
それは、とてもとても甘い表情。
まるで、恋人に向けるそれのような。
むろん、その言葉も表情も、まだ彼女の意識が
だが、いまのミリアは本心しか口にできない状態にあるともいえるのだ。
だから、アシモフは続けてやる。
彼女が本来の思考を取り戻したあとに、一体どんな言葉をかけてやろうかと考えながら、続けてやる。
「ほほう。そうか、気持ちよかったか。それはなにより。……お主が正気に戻ったそのときには、またよくしてやるからの?」
「……そ、それは……えと……は、はい……」
恥ずかしそうに、しかし、それでもまだミリアは素直にうなずく。
また気持ちよくしてほしいと、瞳に期待の色を浮かべる。
だが、そろそろ彼女の意識もはっきりとしてくる頃だろう。
そう考え、彼はミリアのいまの状態を口にし、彼女の羞恥心を刺激してやることにした。
「ところで、じゃ。このようなはしたない姿、一体いつまで観客たちに見せておくつもりじゃ? ちとサービスしすぎなのではないか?」
その言葉を受け、少女の瞳にようやく光が戻る。
「――えっ……?」
「じゃから、下の口じゃよ。ほれ、よく見てみい。
「――っ!? や、やだっ!」
勢いよく起きあがり、両の手で股間を覆い隠すミリア。
その仕草に、北の観客席でブーイングが巻き起こった。
それを受け、地面にへたり込んだ彼女の顔が「あっ、ああっ……!」とたちまち赤くなっていく。
だが、それにかまってやる老人ではない。
「ところで、もう一度聞かせてもらいたいんじゃが……どういう心持ちになるものなんじゃ? 大勢の人間に見られながらイくというのは。しかも、生まれて初めてのことじゃったんじゃろう?
正気に戻ったお主がなんと答えるのか……
意地の悪い問いかけに、しかし少女は答えなかった。
「や、やだっ、言わなっ、言わないでぇっ……。やあっ、やああっ……」
ただただ目尻に涙を浮かべながら、いやいやと首を横に振る。
涙はそのたびに輝く雫となり、キラキラと飛び散った。
そうしているうちに、審判からの注意が取り乱している少女に飛ぶ。
『えー、ミリア選手。少々混乱しているところにこういうことを言うのは、少しばかり気が引けるのですが……。
気づいていらっしゃいますか? あなたはいま、アシモフの許可を得ることなく勝手に起きあがり、股間を隠していらっしゃいます。
ミリアは異を唱えない。
見たところ、反論の
しかし、本当にそれだけなのだろうか。
老人には、そこに別の感情もあるように思えて仕方がなかった。
審判は言った。
通常のペナルティでは足りないほどに、と。
おそらく、彼女は恐れているのだろう。
下手なことを口にして、時間延長以外のペナルティを課されてしまうという『最悪の事態』を。
だが、だからといって沈黙という選択肢を選ぶのは間違いだ。
たとえ、ミリアがなにも反論しなくとも。
ここには、悪意ある代弁者がいるのだから。
自身の望む展開になるよう、審判に語りかける『闘技場側の存在』がいるのだから。
それも、表向きは『弁護』という形を装って。
少女を辱めるようなことを、言葉の
「いやいや、こればかりは致し方ないことじゃろうて。なにせ、イった直後で判断力が落ちておったんじゃから。そう、イったときのことをとろけた表情でこと
「……あ、うぅ……」
身をよじって恥ずかしがるミリアを無視し、審判はアシモフとの会話を続ける。
『ですがアシモフ、ミリア選手が『抵抗』をみせたのは、彼女が正気に戻ってからのことだったでしょう?』
「まあ、確かにそれはそうなんじゃが……。よいではないか、ワシが『別によい』と言っておるのじゃから。――のう? お主とてそう思うじゃろう? 娘」
急に話を振られ、ミリアが驚いたような、戸惑ったような表情でこくこくとうなずいた。
「ほれ。戦っておるワシら二人が揃って『ペナルティは無しでよい』と言っておるんじゃ。なら、これでかまわんじゃろう? ……むろん、多少の
『懸念、ですか? それはどのような?』
「うむ。この小娘は、聖騎士を目指しておるじゃろう? 一度イったことで少しばかり
そんな娘が、じゃ。敵がかけてきた情けを、あっさり受け取ってしまってよいものなのかのう?」
『なるほど。アシモフに情けをかけられた状態で勝利したとして、それは本当に勝利したといえるのか。手心を加えられての勝利など、敗北とそれほど変わらないのではないか。……そういうことですね?』
「まあ、そんなところじゃ。とはいえ、これは小娘の誇りの問題じゃからな、ワシらに決められることではない」
『そうですね。――ということなのですが、いかがですか? ミリア選手。あなたが『情けをかけられてでも勝利したい』と望むのであれば、今回のみペナルティは課さないものとしますが』
二人の会話に心を揺さぶられたのだろう。
決断を迫られ、少女は視線を落ちつきなくさまよわせた。
そんなミリアの行き先を定めるように、アシモフはぽつりと呟く。
「誇りなど、さして価値あるものではないじゃろうに」
「……それは、さすがに聞き捨てなりませんよ?」
「そう
「っ……! お金や食べ物と同列に扱わないでください! くだらないという言葉も
「撤回するのはかまわぬが……。もしや、ワシのかける情けと己の誇りとじゃったら、後者を取るというのか? お主は」
「当たり前です!」
力強く放たれた言葉に、老人は肩をすくめる。
むろん、内心では『しめしめ』とほくそ笑みながら。
「とのことじゃ、審判。――ときに、娘。ペナルティの内容はワシが決めてもよいかの?」
「い、いいわけがないでしょう!」
「ほう、誇り高きお主ならば、どんな内容のペナルティでも受け入れると思っておったのじゃが……いやはや、単なるワシの過大評価だったようじゃのう」
「うっ……。その言い方だと、まるで私が臆病者みたいじゃないですか……」
「事実じゃろう? 内容を聞く前から怖じ気づいたんじゃから。まったく、時間を三十分延長してほしい、みたいな無茶なことを言うつもりはなかったというのにのう」
「くっ……。じゃ、じゃあ、ひとつだけ約束してください。『抵抗不可』の残り時間を増やすことだけはしない、と。それ以外のペナルティだったら、ど、どんなものでも……受け入れて、みせます……」
「ほう? 戦闘終了まで無抵抗でいるように、という内容であってもか?」
「そ、それも駄目です!」
「わかっておるよ。ちょっとからかってみただけじゃ。さて……。――審判、『抵抗不可』の残り時間は、あとどのくらいになっておる?」
『残り時間ですか? あと約九分となっていますが』
返ってきた答えに、アシモフは「ふむ、もう残り
「だとすると、時間が足りぬかもしれんのう。
いやな、ワシはいまから、そこの小娘に自分の手で胸当てを外してもらおうと思っておるんじゃが、その下にある
おお、ならば審判。ワシが次なる責めを行っておる最中は、残り時間を計るのをやめるというのはどうじゃ?」
『計測を、止めるのですか?』
「そうじゃ。この小娘の乳は、残り時間を気することなく、ねっとりと責めてやりたいのでの。計測の再開は、乳責めが終わってからじゃ」
『ふむ……。しかし、それは――』
「ちょっと待ってください!」
老人と審判の間に、胸をじっくりと
言うまでもなく、その顔は真っ赤になっている。
「なんじゃ? 娘。そんなに頬を
「最初のだけは違います! それよりもなんなんですか、そのペナルティの内容は! 時間の延長はしないって言ったのに――」
「しておらぬではないか。時間延長の申し出は」
「本質的には同じことでしょう!?」
「じゃが、時間の延長以外ならよいと言っておったじゃろう? それとも、そんな内容は受け入れられぬと、ここで誇りを投げ捨てるか?」
「――うっ……。くっ……」
「ワシはそれでもかまわぬぞ? いや、お主が望むのであれば、追加のペナルティは無しにしてやってもよい」
「そ、そういう情けはけっこうです! わ、わかりました……! そのペナルティ、受け入れま――」
『いえ、計測を停止するのは、やはり少々行きすぎているでしょう。アシモフ、なにか代案をお願いします』
審判に言葉を遮られ、ハッとするミリア。
どうやら、強がりすぎな自分の言動にようやく気づいたらしい。
だが、アシモフは無念そうな表情など微塵も見せなかった。
「予想はしておったが、やはりこれはとおらぬか。では……うむ、ならば残り五分じゃ。残り時間が五分となったところで計測の手を止めてほしい。それまではいままでどおりに計ってくれてかまわぬ」
内容がやや軽いものになったからなのか、老人の提案に「まあ、それなら……」と少女は抵抗なくうなずく。
本質的な部分はまったく変わっていないにもかかわらず。
「計測再開のタイミングは、審判、お主に任せよう。たとえば、これはもう乳責めの
『わかりました。では、まとめさせていただきます。
『抵抗不可』の時間は、現在、残り約九分。これが残り五分になったところで計測を一度停止。そして私が、アシモフの責めがひと段落したと判断したら、計測を再開する。
これでよろしいですか?』
「それで頼む。――さて、では娘よ」
ニヤニヤと、好色な笑みを浮かべながら。
改めてミリアのほうに向いた老人は、さっそくとばかりに次なる指示を口にした。
「お主の乳を可愛がるには邪魔に過ぎるその胸当て、お主自身の手で外してみせてくれるかのう?
むろん座り込んだ姿勢のままで、こちらに身体を向けながら、じゃぞ?」
羞恥とためらいに指先を震わせる少女が身につけている、銀色の胸当て。
取り払ってしまえば乙女の