フィールドの中央に進み出て。
ミリアとアシモフは、改めて正面から対峙する。
彼は背中の両腕を仕舞っていた。
このほうが次の行動を読まれにくいだろうと思ったからだ。
ミリアのほうはといえば、頬を赤くしながらかまえをとっていた。
手の位置からして、腹部を隠すという選択肢は捨てたらしい。
片手がふさがっていては全力などだせるはずもないのだから、それは当然の判断といえるだろう。
しかし、彼女の内心は果たしてどうだろうか。
それほどムキになって隠すほどのものではないと、早々に割り切ったのだろうか。
それとも、隠しながらでは勝負にならないからと、無理やりに自分を納得させたのだろうか。
アシモフの目には、後者に映った。
でなければ、頬を染めている道理がない。
そのあたりのことを指摘して、少しばかり羞恥心を刺激してやろうかとも彼は思ったが――やめた。
その代わりに、別の問いを口にする。
「ときに、娘」
「……なんですか?」
警戒心、あるいは敵意全開の視線と共に声が返ってきたが、アシモフは意にも介さない。
「先ほど『なにかくる』とか言っておったが、『なにか』とは一体なんのことじゃったんじゃ?」
「なっ!? ……な、なにかは、なにかです。それと、やめてください。先ほどのことを持ち出すのは……」
蚊の鳴くような小さな声で、律儀にも答えるミリア。
見える限りの肌という肌を赤くして、身を小さくする。
その立ち姿を見て、アシモフは思考を巡らせた。
先ほどの感覚がどういうものなのかを、彼女は理解できていないのではないか、と。
だとすれば、第一ラウンドでミリアの言っていた『なにかくる』が絶頂のそれだとは言い切れない。
おそらくは、生まれて初めて味わわされた快感を、その波を、正体がわからないがゆえに『なにか』と称するしかなかったのではなかろうか。
もしそうならば、とアシモフは口許を邪悪に歪めた。
絶頂だけではなく、そこに至るまでの過程を。
女性の身体が、どんなときにどういう反応を示し、どのような液体を垂らすのかを。
そのすべてを、微に入り細を
◆ ◆ ◆
第二ラウンドが始まっても、ミリアは積極的に攻めてこようとはしなかった。
身体中に回っている媚薬のせいで動きが鈍くなっているのか、とりあえずは守りに徹する気でいるようだ。
ならば、と今回はアシモフから攻めていく。
脚に力を込めての――肩口からのタックル!
「――くっ!?」
「ぬっ……!?」
しかし、それは彼の肩が痛みを訴えるだけの結果に終わった。
ミリアが身に着けているのは、最高級品の胸当て。
それはアシモフの攻撃を防御するだけに留まらず、一息に突っ込んだ彼自身にもダメージを負わせていた。
おまけに、いくら媚薬に侵されていようとも、敏捷性においてはまだミリアが勝っている。
観客の視線に自らのおへそを晒すことをためらわず、両手にはめている
だが自ら後方に跳んだ以上、後退は
戦闘開始時と比べれば、アシモフとの間合いだって近くなっている。
なにより、身体がわずかな
だから、次の攻撃への対処が遅れたのは必然だった。
続けて先手をとった、アシモフのベアハッグ。
それに捕まり、ミリアの両足は宙に浮く。
彼は少女の
といっても、アシモフの胸板に柔らかなものが当たることはない。
ミリアの装備している銀色の胸当てが、断固としてそれを拒んでいる。
「うっ……! くぅ……っ!」
苦しげに声を漏らし、浮いた両足を必死にバタつかせる銀髪の少女。
それに闘技場のサーヴァントは
「無駄じゃ無駄じゃ。この肉体は
それは油断からとった行動なのか、はたまた自分の余裕を見せつけるためのものだったのか。
口にしたとおりに力を緩め、アシモフはミリアの腰へと両の手を滑らせた。
そして、二人の間に隙間ができる。
「この……っ! また、こんないやらしいことをして……!」
アシモフの仕掛けた技は、少女からしてみれば不意に抱きしめられたのと代わらなかったのだろう。
おそらくは、媚薬の効果とは無関係に頬を染め、ミリアは拳を、蹴りを次々と繰り出す。
わずかに顔を歪めるだけで、それらを難なく受ける
そう、難なく、だ。
少女を取り落とすような、大ダメージを受けることはない。
ミリアの身体は、現在、空中に浮いているのだ。
踏みしめるべき大地から離れ、腕だけの力で、脚だけの勢いで、アシモフに打撃を加えているのだ。
それも、媚薬によって身体能力が鈍っている状態で。
それでは、さしたるダメージになどなりはしない。
アシモフの拘束から逃れるなど、できるはずがない。
次々に繰り出されるミリアの攻撃は、その実、無駄な抵抗にしかなってはいなかった。
それをそろそろ終えさせてやろうと――正確には、『気』の波動による攻撃を思いつく前に彼女の攻撃を封じようと、彼は改めて少女の背へと両腕を伸ばし、再びがっちりと抱え込む。
「くっ……!」
密着する二人の身体。
ミリアは身をよじって逃れようとするが、むろん、それを許すアシモフではない。
それどころか、ふと
「ひああっ……!?」
ぞくっと身体を震わせるミリア。
それに気をよくしたアシモフは、彼女の首筋を舐め続けながら問いを発した。
「うん? もしや感じておるのか?」
「な、なんですか――ひぅっ!? か、感じてるって……」
「ワシに舐められて気持ちよくなっておるのか? と訊いておるのじゃ」
「き、気持ちよく……!? そんなわけ――ひゃんっ!?」
「嘘をつくでない。感じておらぬのなら、そんな声は出んじゃろう?」
「こ、これは気持ち悪いだけで――ひゃうぅっ!?」
「別におかしなことではないのじゃがなあ。女であるなら、自然な反応じゃて。他にも……こことか、の」
背から再び人間の両腕を生やし、アシモフはミリアのお尻を撫でにかかる。
「や、やめてくださいっ! そんな、汚いところ……!」
だが、そこに触れられるのは嫌悪感が勝るようだった。
そんなことを考えながら、アシモフは青いショートパンツに包まれた少女の桃尻を撫で回し続けた。
その掌が這う度、黒いタイツを穿いているミリアの両脚が激しく振られる。
「……まあ、そこは後回しでもよいか。いまは、もう少しわかりやすいところを――」
「はあ、はあ……。わかり、やすい……?」
そろそろショートパンツを脱がそうと、背中の両腕を少女の前のほうへと向かわせる。
少しばかり形は違うものの、第一ラウンド終盤の再現だ。
しかし、ことはそう容易には運ばなかった。
「む、これは思ったよりも難しいの……」
二人の身体は密着している。
それゆえにミリアはまともな攻撃を繰り出せずにいるのだが、それはアシモフにとていえること。
仕方なく彼は力を緩め、再度、二人の間に隙間を作った。
「あ……、あっ……!?」
ミリアとアシモフ、二人の視線は必然的に、少女の穿いているショートパンツへと向く。
いや、二人のものだけではない。観客席にいる貴族すべての視線が、その一点に集中していた。
先ほどと同じようにボタンが外され、チャックが下ろされる。
そしてアシモフの両手により、ゆっくりとショートパンツが腰から離れ、太ももをとおり――
「やっ! もうやめてくださ――ふやぁんっ!?」
放心状態に近かったミリアが唐突に脚をバタつかせ、脱がされるのに抵抗しようとしたところで、アシモフは予想の範囲内とばかりに、彼女の首筋をべろんと舐めあげた。
そうして、少女の足元に落ちるショートパンツ。
それを真っ赤な顔で見下ろしてから、ミリアはキッとアシモフをにらみつける。
「よ、よくも、こんな……!」
だが、一大事のように思っているのは彼女だけだった。
無理もない。ミリアの穿いている黒タイツは相当に厚手のものであり、観客の目にはおろか、間近で見ているアシモフにさえ、透けて見えると思っていた下着の存在は認められなかったのだから。
端的に言って、これでは黒のズボン姿になったのと代わらない。
自然と、観客席のあちこちから大きなブーイングが飛んでくる。
それを受けたアシモフは、やれやれ、と次に胸当ての中へと下から手を入れた。
「なっ!? ま、またそんなところばかり……!」
「このままじゃ観客も興ざめじゃろうからな。それに、お主のこともよくしてやろうというのじゃ。おとなしくしておれ」
「だからいりません! もっと正々堂々と――んっ!」
持ち上げられるように揉まれる、ミリアの膨らみ。
服の生地越しではあるものの、その形が整っているのはよく感じとれた。
「そういう、ことは……ふぅっ……やめて、くださ……ぁ……」
少女の口から漏れる吐息に、少しずつ甘く熱っぽいものが混じってくる。
それを認めたアシモフは、愛撫の矛先を少しずつ胸の先端へと向かわせながら、彼のされるがままになっているミリアにささやいてやった。
「ほほう、これはなかなか。先ほどは見ておらんなんだが、ちゃんと『女』の表情もできるんじゃな。これなら、少しは観客どものアレも持ち直すじゃろうて」
「かん、きゃく……? ――あっ! やっ……!」
彼の言葉に、ようやく観客の存在を思い出したのだろう。
身をよじり、彼女はアシモフの手から懸命に逃れようとした。
しかし、しょせんは無駄な抵抗。彼の手は、なんの苦もなく先端にある突起へと辿りついた。
「んん……っ! そこ、ビリビリして……っ! ――ふぁっ!」
ピンと弾く。
それからアシモフはミリアの唇に自らのそれを押し当てて。
「むぅっ!? むーっ! むーっ! ……ぷはっ!」
彼女が首を左右に振って逃れるまで、その
「おやおや、せっかく親切でやってやったというのに。……そうかそうか、喘ぎ声はひとつ残らず観客に聞いてもらいたいか。お主がそう望むというのなら、
「そっ、そんなこと! 望んでなんか――ふあぁっ!」
再開される乳首責め。
服越しに、根元から先端へと何度も擦り、その突起をこねくり回す。
必然、徐々にではあるが、少女の乳首が身を起こし始めた。
「おお、
「せい、じょう……? ――んくっ!」
「そうじゃとも。愛する男に触れられれば、ここが勃つのが自然な反応というものじゃ。まあ、もっとも……愛してもいない
「いん、らんっ……!? そ、そんなことは……っ!」
「ならば、すぐにでも反撃に転じてみい。いま、お主の両手はふさがっておらんぞ?
「っ……!」
言われてようやく思い当たったのか、ミリアは右の掌をアシモフに向けて『気』を練り始める。
波動とは、拳を握り、振り抜かなければ放てないというものではない。
精神を集中し、『気』を練り溜め、ただ掌から放出すれば、それでいい。
アシモフは胸への愛撫をやめていた。
無理やりに送り込まれていた快感は、いま、ミリアを蝕んではいない。
媚薬のせいで、やや集中力が落ちてはいるが、それも許容範囲内だ。
だから、彼女は逆転を確信して、その掌から蒼白い波動を――
「――ふあぁぁぁぁっ!?」
撃ち出そうとした、直前。
いままでに漏れ出た中で、もっとも大きなミリアの
「やめっ……やめてくださいっ……! そんなところに、食いつかないでえぇっ……!!」
第二ラウンドに突入してから、一度たりとも動きを見せていなかった蛇。
ただの尾のようにゆらゆらと力なく揺れているだけだった蛇が、ここにきてミリアの股間に噛みついていた。
もっとも、ミリアに痛みはないだろう。
食いつかせる前に――否、このラウンドが始まる前から、アシモフは蛇の
ゆえに、これはただの甘噛み。
わずかな圧力を加え、厚手のタイツ越しに吸引するだけの、ちょっとした愛撫に過ぎない。
だが、それがいかにちょっとしたものであろうとも、不意を突くならミリアの集中を解くなど、容易なこと。
「離してっ……! 離れてぇっ……!」
事実、ミリアは予想もしていなかった股間への衝撃に、練りあげた『気』を一瞬にして霧散させていた。
精神的なダメージの大きさから、必死に足をバタつかせて取り乱しきっている。
アシモフは口許を歪め、想像以上の効果を発揮した蛇を見やった。そして、容赦なく次の責めへと移行する。
蛇の胴体を少し太くし、ウロコを出現させたのだ。
それからミリアの内ももを擦るように移動させ、少女の股間へと納まらせる。
そうして、アシモフの意思に従って。
その蛇は、無情な前後運動を開始した――。