※この作品はR-18です。

闘技場~囚われの性少女~   作:ルーラー

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第七話   第二ラウンド―二匹目の蛇―

 蛇の舌が、ミリアの桃色の乳輪を舐めている。

 ちろちろと、円を描いて、執拗に。

 少女にできる抵抗は、人差し指を強く噛んで耐えることだけだ。

 焦らされるように与えられる快楽に、必死に耐えることだけだ。

 

「……んっ……くっ……んん……くふぅっ……」

 

 だが、その姿は男の情欲をそそるものにしかなっていない。

 徐々に追い詰められていく、少女の切なげな表情こそがアシモフの――観客たちの望んでいるものなのだ。

 

 しかし、少女はそれに気づいていなかった。

 気づける余裕がないから、だけではない。

 どれだけ冷静な思考を保てていようとも、不可能なのだ。

 男の欲望を理解しきれていない彼女がそれに気づくことは、絶対に。

 

 蛇の舌は、胸の先端部分に円を描く。

 ちろちろと、執拗に。

 可愛がってほしいと健気に自己主張をしている敏感な頂点には、微塵も触れないように細心の注意を払いながら。

 そんな舌の動きに同調するように、アシモフがミリアに問いかける。

 

「そろそろ、辛抱たまらなくなってきておるのではないか?」

 

 ふるふると、少女の首が弱々しく左右に振られる。

 目は閉じられ、ときおり身体をぴくんっ、と跳ねさせ、指はといえば、喘ぎ声を抑えるべく口に加えられ。

 それでもミリアは、首を横に振ってアシモフの問いに否定を返した。

 

 もちろん、彼が勝手にそう解釈しただけである。

 この場においては、無理やりに与えられる快感から逃れようと首を振っているだけ、という可能性のほうが遥かに高いだろう。

 しかし、『ミリアが首を横に振った』という事実は変わらない。

 それを老人は『自分の問いへの否定』と受け取り、もう一段階上の責めを実行に移すための口実とする。

 

「そうかそうか、片方だけなら耐えられるか。いや、それとも物足りないのかの?」

 

 今度は、ぶんぶんと力強く首が横に振られた。

 だがそちらは無視し、アシモフはすぐさま責めの手数を増やす。

 アシモフの尾は蛇であり、ミリアの乳首を責めているのはその蛇だ。

 しかし、背から腕やら翼やらを出すことのできる合成獣(キメラ)をして、『尾は一本しか存在しない』などと決めつけるのは愚かというもの。

 

 そう、アシモフの『尾』――『蛇』は、複数存在する。

 最高で、九本まで同時に出現させることが可能なのだ。

 しかも彼は、それらすべてを意のままに操ることができるときている。

 

 だが、最初から九匹すべてを出しておくことは、まずしない。

 真綿(まわた)で首を絞めるような戦い方を好むアシモフは、必要に応じて蛇の数を増やしていくのだ。

 すべては、相手に『まだ逆転の可能性はある』と思わせ、最後の最後まで足掻いてもらうために。

 

「……ふっ……は……んっ……んくっ……」

 

 右の乳首を蛇に嬲(なぶ)られながらも、必死に声を抑えて耐えるミリア。

 そんな彼女にさらなる快楽を送り込むべく、アシモフは新たに出現させた二匹目の蛇を少女の左の胸へと向かわせる。

 ほどなく目的地へと辿りつき、ぷっくりと膨らんだ乳輪に舌が触れた。

 

「……ふやあっ……! ……はあっ……なんで……ああ……りょう、ほうっ……!?」

 

 両の乳首を責められた衝撃からか、ミリアは口から指を離してしまう。

 そして目をトロンとさせて、とうとう素直な甘い声を漏らし始めた。

 

「……ああ……そこぉ……あぁ……あっ……やあ……そんなふうに、されたら……ぁっ……」

 

「良い、良い。共に心地よさを覚え、存分に愉しもうではないか」

 

「……ふあっ……? ……あ、ああ……んああっ……」

 

 アシモフの言葉に、ミリアが身体を大きく震わせる。

 このぶんなら、乳首の頂きを一度軽くつついてやるだけで、彼女はあっさりと絶頂を迎えるだろう。

 だが、アシモフにそこを責めるつもりはない。

 強烈なものではなく、弱い刺激を与え続ける。

 そうしたほうが、快楽――『色』を知って乱れていくさまは、より艶(なまめ)かしくなるものなのだ。

 

「……はあぁ……ああ……だめ……これ、だめ……あ、ん……ちろって……なめ、て……ふああっ……も、だめぇ……」

 

 しかしこのままでは、責めを乳輪のみに限定していても、やがては遥かな高みにいってしまうだろう。

 だが、それは阻止しなければならない。

 ギリギリのギリギリまで追い込みたくはあるものの、その果てにある絶頂だけは、絶対に味わわせてはいけない。

 

 ミリアがその感覚を知るのは、まだ早いのだ。

 いま絶頂を迎えてしまえば、彼女の心は間違いなく折れてしまう。

 彼女の中にある『抵抗しよう』という気を、確実に削(そ)いでしまう。

 それだけは、絶対にしてはならないのだ。

 

 この銀髪の少女には、まだまだ抵抗してもらわなければならない。

 観客たちのためにも、アシモフ自身のためにも。

 ゆえに彼は、少女の両の乳首を嬲りながら、いささか早いかと思いながらも次のカードを切った。

 つい先ほど手に入れたばかりの、切り札とも称せる決定的な一言を。

 

「……だめぇ……もう、へんになっちゃ……もう……もう……あっ……ああっ……だめ、だめ……もう……ふあっ……やっ……おねが……おねがいですからぁ……」

 

「――イかせてほしいのか?」

 

 蛇の動きを止め、そう尋ねる。

 

「……ふあ……ああ……え……? い、かせ……?」

 

「快楽の果てにある、堕落へと繋がる天国。そこに向かわせてほしいのか、このワシの手などで辿りつかされてよいのか、と訊いておるのじゃよ」

 

「……はあ……はあ……。堕落に、繋がる……」

 

 ミリアに理性を取り戻させるため、拒否されることを承知の上で老人は先を続けた。

 

「ああ。お主が望むのならば、そこへとイかせてやろう。――気持ちよいぞ? なにもかもが、どうでもよくなるくらいにはの。

 なに、別に命を落とすわけではない。少しばかり、その清らかな身体が穢(けが)れるだけじゃ」

 

「け、がれ……。――い、嫌ですっ! わ、私はパラディンを目指していて――」

 

「なら、このくらいはイかずに耐えてみせい」

 

 ちろり、と。

 左胸のところで待機していた蛇が舌を伸ばした。

 

「――ひうぅぅぅんっ……! ……や、それ、だめっ……!」

 

「ほれ、もう片方も舐めさせるぞ? 口ではどう言おうが、本当はイきたいんじゃろう? なに、我慢する必要などない。快楽に流されて堕落してしまえ」

 

「……あああっ……や、やあ……ながされる……やあぁ……だらく、やだ……ふあぁ……イくの、やだぁっ……」

 

 快楽に溺(おぼ)れることに、絶頂を迎えることに、ようやくミリアが拒絶の色を示し始める。

 それにアシモフは、こうではなくては、と言いたげな笑みを浮かべた。

 そして表情はそのままに、ミリアの乳輪を嬲り続ける。

 

「……ふああ……もう、もう……だ、だめ……でも、だらく……いや……わたし、は……ぱら、でぃんに……あぁ……あああ……あん……あ……ぁん……。

 ――あっ……!? ……やっ……だめ、だめ……や、これ、これ……もう、これっ……! や、もう、これ、きちゃっ……!」

 

 そして、ようやくその瞬間が訪れた。

 闘技場内に響き渡る、第二ラウンド終了を告げる鐘の音と、審判の声。

 

『えー、もう少しでイけそうなくらいには気持ちよさそうに喘(あえ)いでいらっしゃるミリア選手には少々申し訳ないのですが……一定時間が経過いたしました。両者は闘技場の端に戻り、休息に入ってください』

 

「ふぁ……? ふぁ、あ……?」

 

 トロンとした目。

 半開きになった口。

 明らかに『感じている表情』になっているミリアを地面に下ろし、アシモフはニヤリと笑う。

 

「その身体、美味じゃったぞ、娘。じゃがまだ食い足りぬし、それ以上に飲み足りぬ。次のラウンドからは加減せずに責めるからの。そのつもりでいることじゃな。

 呵々(かか)、お主がイったあとに溢れ出てくる蜜、飲めるときを心待ちにしておるぞ」

 

「はあ、はあ……。そ、そんなの……絶対、飲ませません……!」

 

 なんとか息を整えたミリアは、背を向けた老人を睨みつけた。

 しかし次の瞬間、胸元と股間に集まる視線に気づき。

 

「……っ!?」

 

 自分の恥ずかしいところを観客の目から守ろうと、右手は胸元へ、左手は恥部へと、顔を真っ赤にしながらも慌ててその二ヶ所を隠しにかかる。

 銀色の篭手(こて)を装着した、そのままで。

 無骨な造りをしているそれで、少女の見られたくない場所を隠すという行為そのものが、観客たちをさらに興奮させるのだと気づかずに。

 

 ともあれ、しっかりとガードしたまま立ちあがり、闘技場の端へと足を向け――ようとした、そのとき。

 

『おっと、ミリア選手。地面に落ちたままになっている胸当て、改めて装備し直したほうがいいと思われますよ? 大事な防具ですし、なにより、ほら、胸元を隠せますし』

 

「…………」

 

 その審判の言葉は、挑戦者への純粋な親切心からくるもの。

 そう言われて素直に信じられる者など、果たしてどれだけいるだろうか。

 少なくとも、ミリアはそこに審判の――あるいは『闘技場』側の意地の悪さを感じとっていた。

 

 地面に落ちている彼女の胸当て。

 それを拾ったり着けたりするということは、つまり、胸元か秘所、そのどちらか――あるいは両方のガードを解かなければならない、ということを意味している。

 である以上、ミリアに対する審判の気遣いは、その実、少女の恥ずかしいところを観客にもっと見せるためのものとしか考えられない。

 

 当然、彼女は羞恥に頬を染める。

 審判に拾うよう強制されたのならば、ミリアはすぐさまそうしていただろう。

 そうであれば、仕方のないことなのだからと割り切って、大人しく従っていたことだろう。

 

 しかし、いまはそうではない。

 拾うか、拾わないか。

 右手を使うか、左手を使うか。

 それらすべてが――いや、いつ実行に移すかまでが、彼女の意思に委ねられているのだ。

 

 それが、ミリアの羞恥心を強烈に刺激する。

 自分の意思で、自分の望むときに、自分が見られてもいいと思った場所を審判やアシモフ、大勢の観客の目に晒(さら)せばいい。

 彼女からしてみれば、そう言われているも同然なのだ。

 

 胸当てを拾わずに休息に入ってもいい。

 その選択もできるという事実が、『仕方がないから手をどけた』という言い訳を少女から奪いとっていた。

 むろん、それはただの錯覚にすぎない。

 だが、そうと思い込んでしまった彼女は、恥ずかしさに身体を震わせ、立ちすくんでしまった。

 

 しかし、胸当てがないと防御力は確かに落ちるし、肌や乳首が覗いてしまっている胸元を隠すためには胸当てが必須、というのも事実。

 そう自分を納得させたミリアは、胸元のガードを解いて胸当てを拾いあげた。

 そうして、観客に見せつけるようにして着ける義理はないとばかりに、彼女は闘技場の端へと向かって歩を進める。当然、胸元は胸当てを拾いあげた右手で隠しながら。

 

 端のところまで辿りつき、ミリアは扉のほうを向くようにして、簡素な椅子へと腰かける。

 どの方向を向いても見られはするだろうが、それでも可能な限り、多くの観客の目には触れないように、と。

 

 ある意味において、彼女のこの選択は大正解だった。ミリアの正面のあたりに席をとれた一部の幸運な観客のことさえ無視すれば、それ以外の者からは横から乳房を見られる程度で済むのだから。

 アシモフが待機しているあたりにいる観客に至っては、彼同様、彼女の背中しか見えはしない。

 

 だが、しょせんは『ある意味において』である。

 闘技場の端に置かれている椅子は、簡素ながらも床から動かせない造りになっていた。

 ゆえに、扉のほうを向いて座ろうというのなら、脚を大きく開いて背もたれを太ももで挟むようにしなければならなかったのだ。

 もっとも、肝心の秘部は背もたれに隠れるため、正面を向いて座るのに比べれば、ずっとマシともいえるのだが……。

 

 ところが彼女が気づいていないだけで、視覚的には大いに問題があった。

 なにしろこの座り方、背もたれに秘部を押しつけているようにも見えるのだから。

 幸か不幸か、いまはまだ、それを指摘する者はいなかったが。

 

 ともあれ、すっかり冷え切ってしまった銀色の胸当てを、ミリアは改めて装備する。

 

「ふうぅ……」

 

 胸に当てた瞬間に伝わってきたのは、金属特有のひんやりとした感覚。

 しかし、その冷たさにびくんと身体を震わせることはせず、むしろ彼女は、胸の火照りが冷めていく感覚に恍惚(こうこつ)とした吐息を漏らしてしまった。

 

 それに伴って顔が上を向き、両の瞳も自然と閉じられる。

 その表情は、ともすればイったあとの余韻を味わっているときのそれのよう。

 むろんその表情は、ミリアの正面のあたりに席をとれた一部の幸運な観客たちを、大いに喜ばせることとなった。

 

 しかし、無垢(むく)な少女にそんな知識はない。

 ゆえに、幸か不幸か、ミリアは観客たちの情欲に気づけなかった。

 

 火照りがある程度治まってきたところで、彼女は目を開けて胸当ての留め金を順につけていく。

 よほど丁寧に外されたのか、留め金に壊れている箇所はない。しかし、それに安堵できるかというと、正直、微妙なところだ。

 なぜなら、傷ひとつないほどまで丁寧に外されているということは。

 その間、自分がアシモフに微塵も抵抗できなくされていた、ということに他ならないのだから。

 

 この胸当てを外されたのは確か、アシモフの尾である蛇がタイツ越しに自分の股間を擦っていたときのことだったはずだ。

 

 

 ――……ああ……ああ……ふあぁ……やうあぁ……。

 

 

 そのときの自分が漏らしていた声が脳裏によみがえり、顔から火が出そうな心持ちになるミリア。

 それを頭の中から追い出そうと、彼女はぶんぶんと首を大きく横に振る。

 と、そこに審判から突然声がかけられた。

 

『あー、ひとつよろしいでしょうか? ミリア選手』

 

「……なんでしょう?」

 

 この座り方に文句でもあるのか、と彼女は表情を険しくする。

 しかし審判の声には、どこかミリアの身を気遣うような響きがあった。

 

『その座り方なのですが、少々、観客席におられる皆さま方の興奮材料になってしまっておられるようなのですよ。なにせその姿勢、自分から股を開いてアソコを背もたれに擦りつけているようにも見えますので。

 あなたが観客の方々に、そういった妄想を積極的にしていただきたいと思っておられるのでしたら問題はないのですが、もしそういう趣味がないのでしたら、普通に座るようにしたほうがよろしいのではないか、と……』

 

 ここまで露骨に言われては、その姿勢を維持し続けることなんてできるはずがなかった。

 いまの審判の言葉は、『その姿勢でいるのは、自分を性的な目で見てほしいと思っているからなんですね?』と問われたも同然なのだから。

 

「なんでこう、意地の悪い……!」

 

 そう漏らしながら、ミリアは椅子に腰かけなおす。

 自然、正面と左右にいる観客たちの姿が彼女の目に飛び込んできた。いや、それだけではなく、ニヤニヤと笑うアシモフの姿も、だ。

 しかし、胸元は銀の胸当てでガードできている。そのおかげで、彼女は少しずつ本来の冷静さを取り戻せてきていた。

 

 いまさらに感じられ、腹部を隠すという選択は捨てる。

 その代わり、両の手を重ね合わせるようにし、しっかりと秘部を守った。

 むろん、恥ずかしくないわけではない。

 うつむいて目線を地面に落としてもなお、手元には観客の視線が集中している。

 そしてミリアは、それを嫌でも感じとれてしまっていた。

 

 だが、これで少女の秘密の場所は完全に隠されている。

 この状態でいる限り、アシモフや観客に自分の恥ずかしいところを晒さずに済む。

 たとえ、わずかな休息の時間の間だけであっても。

 しかし『闘技場』側は、そんな気休めの時間すらも彼女から奪いとるつもりでいた。

 

『ところでミリア選手、第一ラウンドの終了時には申し上げなかったのですが、休息の時間には、汗などを拭くためにタオルを貸し出させていただいてるんですよ。

 お使いになりたいようでしたら、『闘技場』の者に言って手渡させますが、どうなさいますか?』

 

「――て、手渡しですかっ……!?」

 

 汗はかいているし、舐められたときについた蛇の唾液も拭い去りたい。それに、乳輪を愛撫されたときに自分の意思とは関係なく濡れてしまった股間だって……。

 そうは思うものの、『手渡し』という言葉にミリアはためらってしまった。

 

 当然である。彼女はいま、上半身はともかく、下半身には破れたタイツしか身につけていないのだから。

 いくらタオルを持ってきてもらうためとはいえ、こんな状態で他人の接近を許すだなんて、そんなことは――

 

『あ、それと。こちらは一回限りのサービスとなりますが、お望みなら替えの下着も一緒に持っていかせますよ?』

 

 沈黙する少女。

 戦闘時に秘部を手でガードするのは、ほぼ不可能といっていい。

 その点、下着があれば手で隠す必要はなくなり、安心して戦闘のみに集中できることだろう。

 それなら――

 

 そこまで考えて、自分の感覚が麻痺し始めていることにミリアは気づく。

 この戦いが始まったときに彼女が身につけていたものは、下着とタイツ、それと青いショートパンツだった。

 おまけに、腹部を――おへそを見られただけでも強い羞恥を感じていた。

 

 だというのに、いまはどうか。

 『いまさら』と腹部を隠すのをやめ、陰部が他者の目に触れなければ問題ないなどと思っている。

 どうかしていたとしか言いようがない。

 たとえ替えの下着が手に入ろうとも、下半身は下着のみで戦うことになるのだというのに。

 

 だが、審判の申し出を断っても、彼女が得をするようなことには絶対にならない。

 『闘技場』側は、そこまで見越した上でこのような提案を持ちかけてきている。

 ゆえに、どれだけためらおうともミリアの結論は変わらない。変えられない。

 

 そもそも、このまま休息の時間が終わってしまえば、少女は秘所を隠すものを得られぬままに戦闘を再開しなければならないのだ。

 その事実に、当然ながら彼女は激しい焦りを――恥じらいとも受けとれる煩悶(はんもん)を見せ始める。

 そして、ミリアにとっては長い――しかし、時間にすれば短い逡巡(しゅんじゅん)の末、

 

「……お願いします」

 

 なるべく平坦な声で、つぶやくように彼女はそう口にした。

 

『承知いたしました。では、まもなく『闘技場』の者を向かわせますので』

 

 その言葉を最後に、審判の声は途切れる。

 ミリアは顔をうつむかせ、無毛の秘部を両手で隠したまま、どうか来るのが同性でありますように、と願った。

 

 そして、おそらくはミリアが闘技場に入ってくるときにくぐった扉の向こう側――試合前に彼女へと用意されていた控え室に待機していたのだろう。

『間(ま)も無(な)く』という言葉のとおりに、『闘技場』の者と思われる人間が扉を開けて姿を現した。

 

 ミリアの、せめてもの願いを嘲笑(あざわら)うかのように、『闘技場』の者と思われる、若い男が――。

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