前から欲しかったキャラなので嬉しいです。ありがとうアイギス様。
でも、どうせならシャルロットを下限にする前に出して下さい。
日記を書き終えた後。ロウソクで照らされた薄暗い執務室のソファーで一人、沈んだ気分でくそ不味いワインを飲んでいたら、ドアがノックされた。
(クレイブか?)
そう思い、グラスを傾けながらドアに目をやる。しかし、予想もしなかった来客の登場に、俺はワインを喉に詰まらせた。
「王子、今はお暇かしら?」
「グボォホッ、ケホッ、カハッ」
「王子?」
「にゃ、にゃんでもない」
姿は見えないが、間違えない。あの特徴的な言葉遣いは、確かにテミスさんのものだった。
(何でテミスさんがここに!)
おかしい。これまでさんざん誘惑はされていたが、俺の分析だとテミスさんは誘い受けのタイプのはずだ。
その証拠に、自室の鍵は渡すが、最後の決定権などは俺の一存に委ねられている。
だから鍵さえ使わなければ夜は安心していられると思っていたのだが、ここに来てまさかの攻勢に、俺の動揺がやばかった。
(と、とにかく穏便に切り抜けなくては)
本来ならば居留守を使うのが最良の手であるが、今さらそんなことが出来るはずもない。
俺はよだれと鼻水とワインがミックスブレンドされた、汚水とも言うべき液体を拭い、落としかけたグラスをテーブルに戻す。そして居ずまいを正してから、テミスさんを招き入れた。
「……どうぞ」
「おじゃましますわね」
入室したテミスさんは見慣れたドレス姿ではなく、ガウンを羽織っていた。就寝前と言うこともあり、髪も下ろしている。
(あっ、ちょっと新鮮)
やはり女は、髪型が変わると印象が違う。普段のツインテールは活発な感じがするが、髪留めを外した今はパッと見、物静かなお嬢様の雰囲気があった。
もっともそんな雰囲気など、すぐに粉砕されてしまったが。
「先ほど咳が聞こえてきましたが、大丈夫ですの?」
「ワインで少し、むせただけです」
「でしたらいいのですわ」
話をしながらガウンを脱いだテミスさんは、そのままネグリジェの姿を俺にさらす。しかし、これがまたとんでもない格好であった。
(なんぞ、これ?)
所為、ピンク色のワンピースみたいな物なのだが、胸元と腰回り以外はスケスケで、大胆なスリットも入っているから、テミスさんが動く度に下着の紐がちらちらと視界をかすめる。
そんな俺の目線に知ってから知らずか。テミスさんはガウンを掛け、俺の隣に腰かけると小さく笑った。
「ふふ、私もワインはよく飲みますの。よかったら、少しいただけないかしら?」
(あっ、はい)
テミスさんのかもし出す怪しい空気にあてられた俺は、彼女の言われるがままに動いた。
テーブルに逆さ向けで置いてあった、未使用のグラスをひっくり返し、ワインを注ぐ。
「あら、最初から二人分のグラスは用意されてましたのね。王子には、私が来ることが、わかっていたのかしら?」
「……かも、しれません」
もちろん、嘘だった。
もともとこのグラスは、クレイブが戻って来たら一緒に飲もうと思って、準備した物である。
(いちおう俺も、悪いことをした自覚はあるからな)
クレイブは命令を遂行すると、すぐさま俺に報告へ来る。その時にねぎらおうと思っていたのだが、テミスさんが現れるとか予想外もいいところだ。
(だが、希望はまだある)
俺がテミスさんに正直に話さなかったのは、ここにクレイブが乱入すると知られたくなかったからだ。
(クレイブの事だ。きっとあいつなら、この空気を台なしにしてくれるに違いない)
これまでの実績があるので、その点に俺はかなりの信頼をよせていた。
だから、早くきて~、早くきて~。とクレイブに脳内でヘルプを送りつつ、ワインが注がれたグラスを、スーッとテミスさんの手前に滑らせる。
「どうぞ」
「ありがとうございますわ」
グラスの細い脚を持ち、色合いや香りを確認してから、テミスさんはワインを口に含んだ。
テイスティングと呼ばれる行為だが、形だけを真似している俺と違い、テミスさんの方は、どこか洗礼されている気がした。
(さすがお姫様)
俺がこっそり感心しいると、テミスさんは桃色の息を吐いて、グラスをテーブルに置く。
「素晴らしいワインですわね。私も、ここまでの物は、あまり飲んだ事がありませんわ」
「ですか」
俺にとってはいまいちなのだが、テミスさんにはおいしいらしい。
もっとも、俺の舌は日本にいた頃から変化が見られないので、たぶんこの世界で生きる住人としては、テミスさんが正しいのだとは思う。
(アホみたいに高いしな、このワイン)
王子ともなると、その辺の店にふらっと立ち寄って買い物とか、まず許されない。
見栄やら格式やらのしがらみで、どうしても何かを買うとなると、高級な専門店に行くしかないのだ。
店側もその手の客が来るのは十分に心得て、商品を販売している訳である。なのに不味い物を出すとか、まずありえないだろう。
(料理長、元気かな?)
こうした味覚の差を意識する度に、俺のせいで退職した元料理長の事を思いだす。
クレイブの報告では、実家の農業を継いだらしいが、生活は以前よりも厳しいそうだ。こっそり裏から支援しているので貧困に喘ぐことはまずないはずだが、彼には幸せに生きていて欲しいとは思っている。
「王子?」
「……ああ、いえ。何でもありません」
ちょっとしんみりしてしまった。
俺は誤魔化すようにワインを飲み、テミスさんに話しかけた。
「そう言えば、今夜はどのような件でおいでになったのですか?」
予想はつくが、いちおう聞いておいた方がいいだろう。
(俺の思い違いの可能性もあるしな)
「お礼にきましたの」
「……?」
何だそれは。
不満ならばわかるけど、俺はテミスさんに礼を言われる心当たりがない。
しかしそれも当然であった。何せ俺の意図が全く介入せず、勝手にテミスさんの中で決着がついたイベントだからだ。
「お花、嬉しかったですわ」
(ファッ!)
「先ほど、クレイブさんがお持ちになられましたの。王子が、私の為に集めるよう、指示されたそうですわね」
(お、おい、待ってくれ! まさか!)
「あんなにたくさんの花束……私も生まれて初めて見ましたわ。意外と王子も、情熱的なのですわね」
(いやあぁぁぁぁぁあああああ! くれいぶぅぅぅぅぅぅうううう!)
待望のヒーローに、後ろからぶん殴られた気分だ。
クレイブがなぜそんな行動を取ったのか。これは話を聞いた今だからこそ、おおよそ推測がつく。
あいつの事だ。俺の花束作りをテミスさんのプレゼントだと勝手に想像して、渡しに行ったのだろう。全力で花を集めて。
(違う、そうじゃない!)
俺は普段動じないクレイブが、少しでも恥ずかしがるのではないかと思って、あんな命令をしたのだ。花束だって、今日やらかしたソーマとアリサに渡して、ついでのあの件も謝るつもりで密かにいた。
だと言うのに、現実はクレイブが妙なバイタリティで花を集め、その花束はテミスさんの物となってしまった。
しかも手柄は全部、俺の独り占めとか。
(お前のその忠誠心はありがたいが、時々すっげえ重いわ!)
内心で頭を抱え、俺は嘆いた。
そのせいだろう。俺はテミスさんの不意打ちに、まともな反応をする事ができなかった。
「私のお礼、受け取ってくださいな」
(へっ?)
いきなり手を重ねられ、驚いた俺は横を向く。
そこで待ち受けていたのは、唇に伝う柔らかい感触だった。
「ん……」
見開いた目の前には、まぶたを閉じたテミスさんの顔が、アップで映っていた。
(あ……ヤバイ! この流れはどうにかしないと!)
数秒して、キスされたと自覚した俺は、慌てて唇を離した。
「ぷはっ。ちょ、ちょっとたいーっ」
そして一度、タイムを宣言しようとしたのだが、再びテミスさんの顔が迫ってきたので中断。体を後ろに倒して逃げようとするが、すぐに行き止まりにぶち当たってしまった。
(んげっ)
横目で確認すると、ソファーが壁になって俺の逃走経路を塞いでいた。
(やっべ、マウントを取られてるよ。どうする、どうするよ?)
どうにもならなかった。
テミスさんは俺を押し倒した姿勢のまま、また俺の唇を奪う。
今度はただのキスではなく、大人の方のキスだった。
ぴちゃりぴちゃりと互いの唾液が混じり、俺の舌が絡め取られる。
戸惑い、リモコンでストップボタンを押されたように固まった俺は、一方的にそのままテミスさんに蹂躙された。
右へ、左へ。いいように舌をもてあそばれる。そして俺が溜まった口内の唾を飲むと、テミスさんは悪戯を思いついたかのように目を細め、自身の唾液を送り込んできた。
「んふ……あん、うん」
それが快楽へと繋がったのか。テミスさんは小さな喘ぎ声を上げ、よりいっそうキスに熱を入れた。彼女の激しい息づかいに、俺も火傷しそうだった。
そしてずっと続きそうな口の愛撫も、唐突な終わりを迎える。
「くぁ」
肉棒に痺れるような快感が走り、俺は首を反らした。
くらくらする思考を定め、何事かと下半身に目を向けると、勃起して押し上げられたズボンの中に、テミスさんの右手が潜り込んでいた。
(い、いつの間に……)
それだけ熱中していたのだろう。
「ねえ、王子」
俺に気づかせる事なく侵入を果たしたテミスさんは、先ほどのキスを反芻するように、左手で唇をなで回しながら、俺に問いかけた。
「リードされるのはお好き?」
(大好きです!)
何て暴露をする勇気がない俺は、恥ずかしさもあってテミスさんから顔を背けた。
テミスは寝室を開放してないので、wikiの台詞を膨らませて書きました。
結果おねショタみたいに……需要はあるのかな?
変な部分がありましたら、ご指摘などいただけると嬉しいです。