セントビナーでご休憩を済ませた俺達は、南の国境の町カイツールへ向かっていた。もちろん徒歩移動でだ。馬鹿みたいに日数がかかりやがる。クソ、それもこれもジェイドのせいだ。この野郎は和平が密命だからといって、普段の半数の人数でタルタロスを航行させるという愚考に出やがったのだ。アホかっつーの! それによりオラクルの襲撃でタルタロスの兵士は全滅した。人数が二倍だったら殲滅されたのはオラクルの方だったろうに。
タルタロスの位置をオラクルにばらしたのはスパイのアニスだ。あいつもいつかその報いを受けさせてやるぜ。具体的には俺のチンポでな! その後マルクト軍に引き渡して裁きを下してもらおう。俺はそんな陰鬱なことを考えながら道を歩いていた。
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さて、本来なら南のカイツールまでは河の上に橋がかかっているのだが、増水した河の水に流されて壊れてしまっている。なのでフーブラス河を歩いて渡らなければならない。これもタルタロスがありゃあなぁ。クソ。ジェイドの野郎! 何だかこの世界に転生してから人を憎んでばかりいるような気がする。ストレス解消であるセックスは当分できないしなー。魔物や盗賊が歩いているこの世界では、夜は見張りを立てるのが普通だ。その見張りを眠らせるとか、自分が見張りの時にセックスするとかはさすがに危険だ。
河を渡っている時気づいたけど、原作ならここでアリエッタに襲撃されるんだっけ? でもまあ、この世界では来ないだろう。原因となるチーグルの森に行ってないし。原作だと森にいるライガ・クィーンという魔物を殺してしまって、それがアリエッタの育ての親だから襲われるのだ(アリエッタは魔物に育てられた特殊な生い立ちだ)。それがないフーブラス河は普通の魔物だけだった。
膝下がずぶ濡れになりながら河を渡り終えると遠くにカイツールの国境が見えた。やれやれまーた徒歩移動かよ。更に気づいたけどこんなに時間かけていいのか? 確かこのバチカルへの和平の後はマルクトの「アクゼリュス」という被災地に救援活動に行くはずだよな。んでこの役立たずの和平の使者はもう数週間前、ひょっとしたら月単位で前の時に、被災地からの救援要請を聞いて出発してるはずだよな? 大丈夫なのかよアクゼリュス。被災地なんだろ? 被災した住人が山ほどいるんだろ? 人口は確か一万人ほど。それなのに徒歩移動って……ホントに大丈夫なのかよ。いや、このルートは原作通りだよな? ってことは「原作通りだから大丈夫」ってより「原作からしてやばかった」ってことなんじゃないか? ……やっぱダメだわこの世界。なんかもう色々とダメダメだよ。
§
カイツールの国境についた。言い忘れたが、魔物はたいていジェイドの下級譜術で一撃必殺されている。護衛剣士のガイも俺の背後を守ってくれているしな。
さーてこの町でアニスを探すのか……。と。探すまでもなく見つかった。国境の門の前にいるピンク色の軍服を着たちんまい子供……アニスだ。
「証明書も旅券も無くしちゃったんですぅ。通してくださ~い♥」
……はぁ? なにいってだこいつ。それで通してくれる奴(兵士)なんているわけねーだろ!
「お通しできません」
「……なあイオン、ジェイド。お前らアニスとは国境の『向こう側で』合流しようって決めてたのか?」
「いえ……『こちら側で』合流するつもりで話していました」
だよなぁ。なら
「なーんで
「…………」
イオンもこれには苦笑いも出ない様子だ。
「ん。! きゃわ~ん♥ アニスの王子様♥」
あ、バカがこっちに気づいた。
「……それはそうとして、旅券はどうしますか、私はダアトからキムラスカへ入国したので持っていますが、ルークには旅券がありません」
「ここで死ぬ奴に、そんなものは必要ねぇよ!!」
門の上からアッシュが降ってきた。バーカ、他のことは忘れても憎々しいてめーの登場タイミングは覚えてるっつーの!
俺は素早く背中に吊るした剣を左手で抜くと、アッシュの剣を受け止めた。
「…………!!」
「!?」
「え?」
「…………」
仲間のメンバーがみな目を剥く。何故ならオラクル六神将 鮮血のアッシュは、俺と全く同じ顔をしていたからだ。あ、いや一人だけ冷静な奴がいる。ジェイドだ。こいつだけはタルタロスの艦上でアッシュと顔を合わせているからな。
「てやぁっ!」
鍔迫り合いになった剣を強引に押すことでアッシュを離した。こんな的確な対応をされるとは思ってもみなかったってか? ナメんな! ここで切り殺してやってもいいが、こいつは生かしておいてもっと後で最低最悪の地獄を見せてやらないとな。今捕まえてもマルクト帝国の軍部で裁きを受けることになっちまう。俺の計画ではキムラスカの牢屋に入れて地獄を見せてやるつもりなのだ、なのでここは見逃す。
「引け! アッシュ! どういうことだ。私はお前にこんなことは命じていないぞ」
いいところでヴァンが登場した。奴はアッシュの顔を隠すかのようにアッシュのすぐ前に立ちはだかる。遅えっつーの。もう皆アッシュの顔見たっつーの。もちろん俺もな。
アッシュは地面を蹴って跳ぶと、空飛ぶ魔物に掴まって空の彼方へと消えていった。やっぱアリエッタの魔物は便利だなぁ。
「無事だったかルーク。今の対応は見事だったな」
おい、おい! 他に何か言うことあんだろ! 俺はお前の妹のせいで旅券もなしに敵国に放り出されたんだっつーの。その上タルタロスではお前の部下に襲われて、ここでも襲ってきたのはお前の部下のアッシュだろっつーの! まずは謝れよこの髭野郎!
「そうっすね。まあこれくらい軽いモンっすよ」
俺は自分の本心を語ることなく無難に対応した。その後、ティアがヴァンに刃を向けたり、ヴァンが六神将と繋がっていないと釈明したりと色々あった。言い忘れていたが、ヴァン・グランツは
その話し合いの後にヴァンから旅券を受け取って俺達は国境を超えたのだった。やっとキムラスカに帰ってきたぜ。
「ちなみにヴァン
「……あ、ああ。それはだな……」
下手な言い訳乙!
§
ヴァンによる言い訳が終わった。奴はファブレ公爵――俺の父親だな――に命じられてマルクトへ飛ばされた俺を探しに来たのだ。ガイと同じく、だが反対方向から。それはそれとして、
「いやぁ。しかしヴァン師匠が予備の旅券を持っていて良かったっすねぇ。ジェイドさん。イオンさん。アニスちゃんよ」
「……」
「……」
「……」
なんで和平の使者でバチカルを訪れる予定のジェイドが旅券を持ってねーんだよ! なんでダアト自治区からマルクト帝国に入国してるイオンとアニスが旅券を持ってねーんだよ!
「いやぁ。さすがローレライ教団の最高指導者イオンとその護衛役のアニスちゃんですな。まさか旅券も持ってないのにダアト自治区からマルクト帝国に入国してたとは。アレ? それって……不正入国って言うんじゃなかったでしたっけ? 和平の使者のジェイド大佐さん?」
「ルーク……すみません」
イオンと、次いでアニスとジェイドも謝ってくる。人を不正入国の疑いで連行しておいて自分達が不正入国してたなんてこいつらはバカなの? 死ぬの?
ヴァンの奴はここからさらに南に行った所にあるカイツール軍港へ先に出立した。先に軍港に着いて船の手配をしているから、俺達はゆっくり来るようにだと。せっかくそう言われたのでカイツールで一泊した。当然その日の夜もティアの体を美味しくいただいた(カット)。俺達は国境を越えてようやくキムラスカ王国に入国、戻ったのだった。
そして、俺達は俺の提案で馬車に乗ってカイツール軍港に移動していた。ヴァンの奴も馬車を使っているのだ。文句は言わせない。金? マルクトからの和平の使者であるジェイドさんが出してくれたに決まってるじゃないですか。もっと早くにこうしとけっつーの!
§
カイツール軍港についた。しかし様子が変だ。いやに騒がしい。港の方に進むと、軍港の兵士と魔物が倒れていた。停留してある船からも黒煙が上がっている。どうやらアリエッタが魔物を指揮して軍港を襲わせたらしい。これでアリエッタは軍港や船の破壊と、キムラスカの軍人達を殺した重罪犯になったのだ。文民が指示する「軍事行動」なら、戦争や闘争の責任を取るのはその文民だ。しかし軍事行動ではない、軍人が作戦行動中でない時に犯した犯罪は、当人の責任となり裁判で裁かれるのだ。
と、ヴァンがアリエッタに剣を突きつけていた。
「アリエッタ! 誰の許しを得てこんなことを!」
「ごめんなさい総長。アッシュに頼まれて……」
よし! 言質はとった! これでアッシュはマルクト帝国のタルタロス襲撃犯及びキムラスカの王族殺害未遂犯並びに軍港事件の教唆犯になった。これでもう言い逃れはできねーぞあの野郎。くっさいブタ箱にぶち込んでやるからな!
「船を整備できる整備士さんはアリエッタが連れていきます。返して欲しければイオン様とルークがコーラル城まで来い……です」
コーラル城ね。はいはい。わかりました行きますよ。お前(の
「てなわけでイオンは留守番ね。ついでに護衛役のアニスと部下のティアも」
「え、ルーク。アリエッタは僕にも来るように言っていたのです。行かなければ整備士の方が……」
「いや、ルークよ。アリエッタは私が討伐する。お前は……」
ああ、うるさい。
「静かに! キムラスカ王族である私の『決定』を伝えます! アリエッタと同じオラクルのヴァンさん、アニス、ティアは温情をかける疑いがあるので軍港に残って下さい。次に、マルクトからの和平の使者であるジェイド大佐も同様です。これはキムラスカ国内で起きたキムラスカの軍港破壊事件及びキムラスカ兵士の殺害事件並びに整備士誘拐事件です。解決は無事なカイツール軍港のキムラスカ兵士が行います。私は責任あるキムラスカ貴族としてこれを率い、コーラル城のアリエッタ討伐及び整備士の救助に向かいます。以上!!」
俺はその場を仕切る発言をするとイオンとジェイドを軍港の休憩所に連れて行った。イオンはそれでもまだ自分が行かなければ整備士が危険だと訴えたが、
「どこの世界にテロリストの要求に全面的に従って、世界最大の宗教組織の最高指導者をテロリストの前に連れて行く馬鹿がいるか! お前は万が一かすり傷程度でも負えば国際問題になる立場の人間なんだぞ! 自覚しろって!!」
俺がそう行って封殺した。そして俺はカイツール軍港の総責任者であるアルマンダイン伯爵にキムラスカ兵士を借りること、イオンとジェイドの身を保護するよう指示し、コーラル城に向けて出発した。
§
そんな訳でコーラル城に着いた訳だが、ここはファブレ公爵、俺の父親の別荘なのだが何故か譜業の機械人形(魔物)がいたりロックされた扉があったりした。六神将とヴァンのクソ野郎共め。人の家の別荘にこんな仕掛けするんじゃねーっつーの! いくらもう使っていなくて放置されているからってなぁ。
「なんだぁ? なんでこんなものが俺んちの別荘にあるんだぁ!?」
城の内部を進んだ先で使途不明の音機関を発見した(風を装う。原作知識があるから知っているけど、兵士の手前驚く演技が要求されるのだ)。ジェイドの奴がいたら「これは!?」とか言って驚いたりしたんだろうな。原作と違っていないけど。
「おいお前ら。これはダアトの六神将が持ちこんだものだろう。全員でこれを破壊しろ」
俺はキムラスカ兵士達に言って音機関を壊させた。レプリカ(クローン人間)の作成機械なんて破壊してしまった方がいいよな。俺を生み出したものだから、俺の生みの親ってことなるのかな。なんだか感慨深いぜ。
さらに進むとライガ(魔物)に乗った少女、アリエッタを見つけた。追いかける! 逃げるアリエッタを追うと屋上に出た。フレスベルグ(空を飛ぶ魔物)が俺を攫おうと急接近する!!
止まれ!
俺はフレスベルグの目を覗き込むと絶対催眠をかけ、動きを止めさせると同時に剣を振るった。羽を斬られて俺の横を通過し地面にべたっと落ちる。
「ぼーっとするなキムラスカ兵! アリエッタは魔物を扱うと知っているだろう!」
ぼやぼやすんなっつーの。俺これでも貴族よ? 王族なのよ? 慌てたキムラスカ兵が残りの魔物を倒さんと走る。残りの敵はライガとアリエッタそれぞれ一匹(一人)ずつか。楽勝だな。配下の兵士は十人いるんだ。勝てない訳がない。戦争は数だよ! 兄貴!
「アリエッタは殺すなよ!? 重要な犯罪者だから生きて捕らえろ。整備士は最優先で助けろ!」
俺は光の譜術を撃ってくるアリエッタに近づき絶対催眠をかけようとした。実際にはその前に兵士達がアリエッタを取り囲んで捕縛したが。よしよし。貴重なマンコなんだ。殺すなんてもったいない。
アリエッタを捕縛して整備士を保護した俺達は意気揚揚と城を引き上げた。原作だとここにはシンクとディストもいるはずなんだけど襲いかかってこなかったな。アリエッタがやられたのを見て引いたのか? それとも兵士の数でか……まあどっちでもいいか。
そうして、捕縛したアリエッタと一緒にカイツール軍港へと戻ったのであった。
後書き
気づいている方もいるでしょうが(ていうか全員気づくか)、個人的な私怨によってタルタロスやカイツールの国境でアッシュを見逃したから、カイツール軍港は襲撃されました。彼が本当に軍港で殺された(殺される)人間を思うなら例え手間だろうと、自分の恨みで最悪の地獄を見せてやることにこだわらなければ、軍港の人間は死なずにすんだのです。つまり彼も遠因ではありますが軍港の人間が死んだ原因なのです。見捨てたのです。ゲスですねぇ、無意識だけに厄介ですよ。