※この作品はR-18です。

星刻のアッシュレイ   作:咲良餅

10 / 19
 私。
 試験期間中。
 なにやってるんだろう。
 ふぇぇぇぇえ。


※シルヴィアやエーコに着いている耳の装飾物。
 イヤリングではなく、ピアスが正しいです。たぶん、イヤリングと表記している所が過去にあると思います。ご注意くださいませ。


 今回は割と進みましたね。
 はい。
 校庭で幼竜が暴れるくだりは、先取してもう済ませましたから。
 あと心残りがあるとすれば、アーニャでしょうか。
 ダイジョブです。
 ちゃかかり出てきますから、のちに。

 原作一巻は、あとは子安さん……じゃなくてミルガウスが市街地に屍灰竜(ネクロマンシア)をポーンするくだりだけです。

 あーでも、そこが一番濃いかも。
 ふぇぇぇえええ。


10.囚われの

 商店街を巡り、必要な日用品を買い終えたころ、アッシュレイはエーコが尿意を訴えたので、仕方なく公衆トイレに足を向けた。

 途中のこと。

 

 

『あんた、もしかして……あの牝(めす)に特別な感情を抱いているんじゃないでしょうね? あたしに飼われてる身分だってこと、ちゃんと自覚しているの?』

 

 

 抓られた頬の痛みが引いてきて、で再び生意気になったエーコが、生意気を拗(こじ)らせ、非常に生意気だったがため、盛大に道に迷ってやろうとしたが、自分にも被害が出るため断念した。

 

(懲りないヤツだな……)

 

 なお。

 下手に反論しようものなら、もれなくこのまま無駄な論争にインすることを確信して、アッシュレイは何も言わなかった。

 

 そんなわけで。

 アッシュレイは今、公衆トイレの前いる。

 

「ここね!」

「おい」

 

 ぐいっ

 

「うゅッ!? なにすんのよ!」

「そっちは男だ」

「なっ、……わわわ分かってたわよ!!」

「そうか」

 

 分かってやったのか? 変態だな。

 ついつち滑りそうになる口を、意識してつぐむ。

 しばらくして、アッシュレイは妙な事態を感知した。

 誕生して直後に、エーコに付けたピアスの反応だ。トイレの裏手――おそらく窓だろう――から出て、どんどん遠ざかってゆく。

 更にピアスに働きかけてみると……、どうやら誘拐の線が強そうだ。

 

「イエス・ロリータ・ノータッチじゃねぇのかよ……」

 

 この世界に変態紳士の概念は存在しない。変態は変態。紳士は紳士である。

 

「おい」

「なんだシルヴィア」

 

 アッシュレイは後ろを振り帰る。

 そこには、驚きの表情を浮かべたシルヴィアがいた。控えているコゼットはもはやデフォルトのオプションだ。

 

「き、気付いていたのか。

 ……そんなことより、そんなに女子トイレが気になるのか?」

「正確にはエーコだ。戻りが遅い」

 

「あらあら、それはいけませんわね。よろしければ、わたくしが見てきましょうか?」

 

 コゼットも申し出に、アッシュレイは無駄な事だと分かりながらも、頷いた。

 

「それでは姫様、参りましょうか」

「なんだ、私も行くのか?」

「まあ。アッシュレイ様を変質者と勘違いなさったからといって、おへそを曲げてはいけませんわ」

「な、何を言う! 別にへそを曲げてなどいない!」

「なら、困っている国民に手を差し伸べるのは、王族たる者の義務ですわ。栄えあるロートレアモン騎士王家の家訓です」

「そ、そんなことはわかっている!」

 

 お株を奪われる形となったシルヴィアは、頬に朱を散らすと、ずんずんと女子トイレに向かった。

 

「……お前は長生きしそうだな」

「あら、アッシュレイ様もお人が悪いですわ」

 

 自らを棚に上げて、アッシュレイはシルヴィアに続こうとしたコゼットに投げかけた。

 返答に、オレは元から悪人さ、と笑うのである。

 

 

 

 

 

            ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 しばらくして、シルヴィアとコゼットはアッシュレイの元に戻ってきた。

 

「エーコの姿はなかった。からりに、これが洗面所の床に落ちていたのだが……」

 

 シルヴィアが差し出したのは、学院指定のベレー帽だった。

 

「エーコが被っていたものだな」

 

 エーコがトイレに駆け込んだあと、アッシュレイはずっと入口の見える場所で多々住んでいたのだ。

 エーコがトイレから出てきたのであれば、見逃すはずがない。

 それに、なによりピアスで分かっていた。

 

「それと、こんなものを採取しました」

 

 シルヴィアの脇から、コゼットがハンカチを差し出した。

 

「……へぇ、魔力結sy――――竜綺華晶か」

 

 コゼットがハンカチの折り目を開くと、そこにはキラキラと光る粉末があった。

 

「直接見ないでお分かりになられるとは思いませんでしたわ。はい、おそらく竜綺華晶の粉末かと思われます。ただ、アッシュレイ様がそうおっしゃるなら確実にそうなのでしょう」

 

 竜綺華晶とは、ドラゴンの魔力が結晶化したものであり、竜媒魔法(オラクル)の触媒として使用される。

 逆に、竜綺華晶がなければ、人類が魔法を使うことはできない。元来、大陸に魔法をもたらしたのは竜族なのである。

 しかし、アッシュレイが言い間違えそうになった通り、竜綺華晶とは、単に魔力を結晶化したものである。魔力・魔法が込められたなども含め、簡略して魔法石といった。その魔力が、この世界では竜族が持つものとして存在しているから、竜(・)綺華晶。

 時に、疑問が一つ。

 アッシュレイは竜綺華晶(魔力結晶)を生成することができるのか。

 果たして。

 それは、『出来る』。

 何のためらいもなく傭兵ギルドに売り捌いた理由のひとつが、実はここにあった。《アイテム・ストレージ》の中にあるモノは時間で回復するが、それ以前に、いくらでも造り出せるのである。

 あとは、市場が荒れない程度に売りさばくだけ。

 

「(……成金成金)」

 

「なにかおっしゃいましたか?」

「いや、何も。

 それにしても眠らせて拉致か。ふん……それなりに計画していた線が強いな」

 

 何故なら、竜綺華晶を準備せねばならないからだ。

 あとは、犯人の特定だが、まだ移動中である。市街区の東端に向かっている。

 

「不特定の女子を狙ったのではなく、最初からエーコを狙ったのか」

「犯人は、……まぁ学院教職員の誰かだろうな。ここに来る前、レベッカにエーコの扱いを決めるように、職員会議に上げてもらうよう頼んだんだが、まさかこうなるとは……」

「そうだったのか。分かった、分かったが、そんな暢気に構えている場合か! さっさと星精路(アストラル・フロウ)でエーコを見つけだすんだ」

「ああ、あったな、んなもん」

「『んなもん』!? お前、今がどう――――」

 

「姫様、アッシュレイ様のなさる事です。きっと策は打ってあるのでしょう」

 

「んなっ。なんでお前はこいつの肩を持つのだ! というか、口調も私に対するより丁寧な気がするぞ!」

「気のせいですわ」

「気のせいではない!」

「ですが姫様、姫様も注意深く見ていれば、アッシュレイ様が慌てない理由が分かりますわ」

「どういうことだ?」

 

「お前に耳についているものは何だ」

 

「? お前がくれたのだろう」

 

 寄越した、と表現しないあたり、シルヴィアの中でそのピアスがどういう位置づけなのかが見えてくる。

 

「効果は?」

 

 一つ、主が従者に強制的な命令をできる。

 一つ、思念を送ることができる。

 一つ、現在地を確認することができる。

 一つ、主の腕次第では従者を召喚できる。

 

「……そうか!」

「姫様、わたくしに聞かせてくれたではありませんか」

「わ、忘れていたのだ!

 ――――ならば、どうしてお前はエーコを召喚しないのだ?」

 

 別段、ピアスがなくとも竜飼い人(ブリーダー)であるアッシュレはパルであるエーコを召喚することができる。ただ、エーコの竜族らしからぬ姿が、シルヴィアにそのことを失念させていた。

 エーコのピアスが止まったところは、やはり街の東端であった。

 周囲に、人間に相当する星精(アストラル)の反応はない。どうやら、さびれた墓所であるらしい。

 

「どうしたアッシュレイ、出来ないのか?」

「いや、助けるべくか考えている」

「は?! な、何を言っているのだお前は! 竜飼い人(ブリーダー)とパルは一心同体、片方が危機に陥った時に助けるのは当然だろう!」

「少し黙ってろ」

「お前というやつは今がどういう――――」

 

「【黙れ】と言った」

 

 アッシュレイが言った途端、シルヴィアの左耳についているピアスが、一瞬、妖しく煌めく。

 

「――、……っ! ――――――ッ!??」

 

 まぁ、そのようにして命令するのですか。

 横で依然として微笑んでいるコゼットは、アッシュレイが何に悩んでいるか、わかっているらしかった。

 口をパクパクさせ、声を失ったシルヴィアは、奴隷のピアスであるという認識を改め、酷く不愛想な表情で不服を表している。

 

「立場を理解させるいい機会だ、ですわ姫様」

「……? ――――!」

 

 どうやら合点が行き落ち着いた模様。アッシュレイの胸の内にあった打算を代弁したコゼットは、合っておりますか? と口元に手を当てて見せた。

 

「正解だ。まぁ、少し考えれば分かるよな」

「うふふふ……」

 

 他に、犯人の目的を知る必要があるが、それは二の次である。

 パチン。指を鳴らす。

 シルヴィアはきょとんとして、はっ、気付いた。関を切ったかのようにしゃべりだ……そうとして、口をつぐんだ。

 

「ああ、学習したじゃないかお姫様」

「…………、……(魔神ダグザの化身め……)」

「姫様、アッシュレイ様に聞こえておりますよ」

「な……っ。う、うるさい!

 とにかく、大事があってからでは遅いだろう。今は早急に助けた方が良い!」

 

 冷ややかな眼光に照らされて、シルヴィアは胸まだ掲げた拳を、へそのあたりまで力無く下げた。

 

「……と私は思う」

「はぁ……。助けに行きゃーいいんだろ」

「ほ、本当か! なら善は急がなくては! どこだ? エーコはどこに囚われている?」

「あっちだ」

 

 アッシュレイは東を指さしだ。

 すると、シルヴィアは「わかった!」と言って、たったったと駆けていってしまった。

 

「アッシュレイ様?」

「いや、なに。事情が変わったんでな」

「何か問題でも」

「ああ。ピアス、あるだろ? はじめは、エーコの採血でもしようとしたのか、肉体に興味を示していたんだが、それを阻むピアスに関心を移しやがった。プロテクトはかなりあるが、今さっき薄皮一枚剥がされたんでね。

竜媒魔法(オラクル)も侮れないな」

「まぁ、姫様ではありませんが急がなくては」

「いや、ピアスにはこれ以上干渉できないだろう。第一、一枚目を剥がすのに時間がかかり過ぎだ」

「では、犯人に?」

「ああ。興味がわいた」

 

 アッシュレイはコゼットの手をとった。

 そして、魔法で浮かび上がると、飛行魔法をつかう。

 

「コゼット」

「はい?」

「あまり驚かないんだな」

「いえ、アッシュレイ様が空を飛んでいるのを拝見いたしましたのは、二度目になりますので」

「そういえばそうだったな。

 ら――――よっと」

 

「きゃあ!!?」

 

「よぉ紐」

「姫様、スカートがめくれていますわ」

「え、な!? アッシュレイ!? コゼット!? え、な、……飛んでいる!!? は!??」

「加速するぞ」

「はい」

 

「え、ぅわあわああぁぁぁああああああああああああああ――――――――!!」

 

 

 

 

 

 

            ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 ほんのりと温かく、どこか懐かしい感じのする光に照らされて、エーコはうっすらと目を開けた。

 商店街の公衆トイレで用をすませ、洗面所へ向かったところまでは覚えているのだが、それ以降の記憶がない。

 窮屈な感覚に、違和感を覚える。

 自分が置かれた状況を理解するなり、エーコが愕然となった。

 

「なっ……なによこれ!」

 

 エーコは仰向けの状態で、寝台に縛りつけられている。ニーソックス以外はすべて脱がされており、全裸も同然の状態だった。

 拘束具は頑丈に造られていて、すばらくジタバタとあがいてみたが、エーコの怪力をもってしてもびくともしない。

 

「どうなってるの……?」

 

 エーコは改めて、周囲を見渡した。

 窓は存在せず、光源は部屋の四方に設置された竜華灯(りゅうがとう)のみ。竜華灯(りゅうがとう)は、竜綺華晶を搭載した照明器具であった。エーコは懐かしさを覚えたが、それはおそらくエーコが竜族である証なのかもしれない。

 寝台の周囲には、医療器具と思わしき物体の数々が無造作に置かれている。壁際は棚で埋め尽くされており、文献資料がぎっしりと詰まっている。

 机の上には、ドラゴンの模型が展示されていた。しかしただの模型ではない。それは標本というべき、不気味な模型だった。

 

「ここは……どこ?」

 

 その時、扉がゆっくりと開いた。

 

「気分はどう?」

 

 戸口に現れたのは、眼鏡をかけた女だった。

 

「あんた誰? あたしにこんなことして、ただですむと思っているの?」

「威勢のいい子ね。嫌いじゃないわ」

 

 エーコの威嚇に動じることなく、女は冷たく微笑んだ。

 かつん、かつんとヒールを鳴らし、寝台に近づいてくる。

 

「竜族が人の姿で生まれてくるなんて、予想以外もいいところね」

「なんですって?」

 

 女の告げた言葉が、エーコは気になった。どうやら、エーコが竜族だと知ったうえで誘拐したらしい。

 

「竜族は何を考えて、あなたたのような幼竜を送り込んできたのかしら?」

「そ、そんなこと……あたしにだってわからないわよ!」

 

 女はいぶかしげに眉根を寄せた。

 

「本当に? 竜族というのは、先祖代々記憶を共有しているものじゃないの? 古代の文献には、そう記されていたわよ」

「竜種の記憶(ドラグワース)のことを言っているのんなら、残念だったわね。あたし自身のことについては、まだアクセスできないのよ!」

「……そう。だったら、あなたの身体に直接、訊くしかないわね」

 

 ――――ひゅっ!

 

 刹那、女の手が動いた。

 エーコの鼻先をかすめるように、銀色の光条がほとばしる。

 すとん、と壁に突き刺さったのは、メスだった。

 

「あ、あんた……まさか……?」

 

 女は二本目のメスを懐から取り出すと、こともなげに応じた。

 

「解剖は生物学の基本よ」

「や、やめ…………」

 

 女は無慈悲な銀光でもって、被検体の柔肌を切り裂こうとした。

 さく――――、とは、いかなかった。

 

「…………」

「う、うぅ~~」

「……、…………シールド……?」

「うー、……ん?」

 

 予想していた痛みが来ず、代わりに起こったのは、疑念をはらんだ女のつぶやき。

 エーコは、恐る恐る目を開けた。

 女の振り下ろしたメスは、自分の腹に添えられていた。

 いや、腹とメスの間に、魔法障壁のようなものがある。ただし、障壁に三角形の防護陣をこしらえた三点障壁(トライ・シールド)や、正六角形を組み重ねる六角障壁(ヘキサゴン・シールド)の類ではない。それは薄く、限りなく薄く、広がり、メスにあたる箇所を護っていた。

 

「……へえ。でも、私は竜媒魔法(オラクル)の第一人者でもある。

 あなたのご主人さまは、あなたを大切に思っているようだけど、邪魔だから解かせてもらうわ」

「あ、あっしゅれ……」

 

どうして障壁が展開さたのか、エーコには分からなかった。エーコは、自らの左耳に穴を穿ち、輝いている装飾品の存在を認識していなかったのだ。

まだある。

女は言ったが……、あのスカした男が自分を大切に思っているなんて、もっと信じられなかった。

 しかし、女の言うことを鵜呑みにするならば、この障壁はアッシュレイが施したものだろう。

 

「そのピアスね……?」

「はぁ? ピアス? あんたなにいってるの?」

「……あなた気付いてないの?」

「だから、なにっ?」

 

 女は考えた。

 どうやら、この幼竜は本当にこちらが何を言っているのか分かっていないようだった。

 ピアスは幼竜の瞳と同じ、緋色の竜綺華晶がこしらえられていた。

 注意深く視(・)てみると、その竜綺華晶の表面から深くに至るまで、複雑怪奇な魔法陣や刻印で埋め尽くされていることが分かる。

 女は震えていた。

 

(この世に、こんなモノがあるなんて――――)

 

 例えるならば……1の容量の入れ物に、50や100の物を、圧縮して、収納したかのよう。

 例えるならば……弓、いや青銅の剣が発明されたところに、銃を持ち込まれたようなもの。

 例えるならば……常に120点で頂点にいたところに、1000や10000の点数を目の当たりにさせられたかのよう。

 

 普通の竜綺華晶では、こんな芸当はできない。

 そもそも、竜綺華晶に魔法陣を書き込むという技は、今女が研究している題のひとつであった。質の良い竜綺華晶でなければ、竜媒魔法(オラクル)の魔法陣を書き込むことはできないのだ。

 竜綺華晶には、ランクがある。

 竜綺華晶。千年綺華晶(ミレニアム)。そして、伝承にある聖星石(ウラノス)や冥星石(プルートゥ)。前者は、アヴァロン聖竜皇家のドラゴン、後者はネハレンニア冥竜王家のドラゴンにのみ生み出される。

 研究の段階で、女はいくつもの千年綺華晶(ミレニアム)を扱ってきた。

 その経験と勘が告げる。

 この宝石は、千年綺華晶(ミレニアム)よりも上の存在だと。

 

「(……欲しい)」

「は? なにいってるの?」

 

 エーコの問いかけすら耳に入らず、女は自分を魅了するモノに手を伸ばした。

 緋色の、ひし形の、華美たる、象徴。

 しかし。

 

 

 ――――バチィ!!

 

 

「きゃぁ!」

 

(!!? くっ……)

 

 女の手がピアスに触れる前に、まるで敵を弾き飛ばすように、紫電を伴った障壁が展開された。装着者である幼竜は、ほとばしった閃光に驚愕したようだが、障壁に阻まれた紫電が彼女を傷付ける道理はなかった。

 同じく。なんの対策もせず、意表を突かれる形となった女の手に浅い裂傷が入ること、避けられる道理はなかった。

 

(…………これだけの芸術、まぁ、当然よね……。だったら、)

 

 女は棚から人の子の頭ほどもある竜綺華晶を取り出す。ポケットにあるのは使えない。これは純粋な竜綺華晶だから。

 棚にあったのは、研究で出た廃棄品。処分に困っていたものだ。

 魔法陣を書き込む過程で失敗し、ただ方陣を吸収してしまう代物になってしまった竜綺華晶。

 女はこれで、ピアスの防護魔法陣を剥がす魂胆だった。

 

 ――――バチィ!

 

 二度(にたび)、紫電が奔った。

 竜綺華晶が打たれる。

強引にピアスに触れさせると耐えかねたのか、割れる。

 女が手をかざしたままでいても、次の紫電が奔ることはなかった。ピアスは障壁しか展開していない。

 

「ふふふ……」

「あ、あんたなにを……」

「もうすこし……っ」

 

 成功だ。

 完全に吸収したわけではなかったが方陣を崩せたのだ。むしろ、ごみを残したともいえるのだから、余計に性質(たち)が悪いかもしれなかった。

 あとは、障壁を剥がすのみ。

 女は裏庭の倉庫にある廃棄置き場に走った。

 

 

 

 

 




 ヴェロニカが好き。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。