作中に、一人称視点があります。
そこで、伏字が出てきます。原作やアニメを見ている方は
「あーはいはい。やっとね」
でしょうけれど、存じない方は、
「……」
だと思います。
いや、知らない方はこれを読まないですかね。
いや、だって、ねえ?
星刻の竜騎士って、作品数と人気がハーメルンにおいてショボイですもんね。検索で打たないとですから。くすんくすん……。
はい、では。
三週間ほどお待たせしてしまいましたが、〈星刻〉のアッシュレイ更新です!
日は巡り、朝。
アッシュレイは今現在、教室にいた。
諸君らは、彼にサボタージュ常習犯のイメージを持っているかもしれないが、彼は別段不良というわけではないし、出席せねば単位が取るに取れないのが現実である。
面識はないが、知識にある母親と妹の期待を裏切るのは気が引ける。と、思うくらいにはアッシュレイは人間である。
あの後。
屋敷を後にしたアッシュレイは、玄関先で待っていたシルヴィアとコゼットを伴って学院に戻って来た。
シルヴィアが街に出た目的は果たせたのかは謎であるが、共に戻ってきた以上、果たしたのだろう。エーコはというと。
以下のようなやり取りがあった。
『うっ。く、くの~~~~っ』
『……お前、オレに所有されているという認識を持つか』
『ふざけないで! そんなことより早くこれをほどきなさいよ!』
『認めるのであればほどいてやらんでもない。そう、言ってるんだ』
『は、はぁ!?』
『「はぁ」じゃねよ。このまま餓死するか従順になるか早く選べ』
自力で脱出できない以上、結局首を縦に振るしかなかったエーコ。
へそと口と眉を盛大に背けながらも、竜族の誇りうんぬんを盾にされ、アッシュレイに対する反抗は少々軽くなった。
まぁ、それもまだ、たったの半日間程度ではあるが。
未だにほんのりと朱が射しているシルヴィアの頬と違い、教室の騒めきが収まった。
今までと違うアッシュレイの凛とした(ともいえる)雰囲気に興味を示し、ちらちらと視線をやりながら第134回乙女会議を開いていた女子のグループも慌てて席に着く。
担任教授が入っていたのだ。
アッシュレイを除く生徒の全員が微動したのち硬直した。
静まっていた空気が、さらに静まったその刹那。
「あーっ!」
叫んだのは、シルヴィアだった。たちまち、周囲の生徒達が訳知り
入室してきた白衣の女性は教壇に立つと、冷たい笑みをこぼした。
「アンジェラ・コーンウェルよ。前任のシルバーストン先生が定年退職されたので、その代理を務めることになったの」
「そんなばかな……」
シルヴィアが漏らす。
ファザー・ドラゴン産の“原作知識”によればシルバーストン先生が定年退職するまで、あと一年は残させているハズだった。アンジェラが裏で工作したのだろう。彼女ほどの人物が申し出れば、学院が断るわけがないし、願ってもないことだろうから、一応正規手続きだとみた。
「私のことは〝アンジェラ先生〟とでも呼んでくれればいいわ」
シルヴィアは、あんぐりと口を開けて、アンジェラを眺めやった。
「(全く懲りていないではないか……)」
担任教師がよぼよぼのおじいさんから妖艶な美人に変わったことで、レイモンを初めとする男子たちは大歓声を上げた。しかし、シルヴィアは戦々恐々とせざるを得ない。
けれど、実のところ。
アンジェラの目的は、アッシュレイ(とピアスとエーコ)に決まっていた。
「よろしくね」
案の定、アンジェラはアッシュレイを見やって片方の目を閉じて見せた。
明らかに全体ではなく特定の個人へのアクションに、教室中の視線が集まる。
アンジェラの視線は、一瞬、愕然とアッシュレイと見るシルヴィア、アッシュレイの横で突っ伏して眠るエーコの左耳に移り、最後にまたアッシュレイにロックオンした。
目は口程に物を言う、とはこのことだろう。
「……ほらよ」
アッシュレイはポケットから飴色の宝石が輝くピアスを取り出すと、アンジェラに放る。
手の中に納まったピアスを左耳に付けたアンジェラは、
「うふふ。ありがとうね」
妖艶な笑みを残して、鼻歌を歌いつつ教室から出ていった。
肝の座った女だと、アッシュレイは小さく笑む。
そして、思い出したように両の手で己が耳を覆った。
「「「「「え、えええええええええええええええ――――――――!!!??」」」」」
直後、クラス中で怒号にも似た驚愕の声が上がる。
目を閉じ、怒鳴り声での追及を物理的にやり過ごす。
間もなく一時限目の教師がきて、騒ぎは鳴りを潜めざるを得なくなる。アッシュレイは勝利を確信した。……凄く、下らない。
まぁ結局。
「……、ほぇ?」
喧騒は、エーコの快眠を妨げるのみに過ぎなかった。
◇ ◇ ◇
エーコをどこに住まわせるかという問題は、アンジェラが電撃的に教員として就任した余波もあり、有耶無耶のまま現在に至っている。
そんなわけで。
エーコは、アッシュレイの部屋で暮らしている。
問題なのは、アッシュレイが住むアポロン寮が男子寮であるということだ。黙ってさえいれば、エーコの容姿は大変に可憐であるからして。そんなエーコが、アッシュレイと起居を共にしている。
アポロン寮の生徒らが、悶々として、あらぬ想像を思い浮かべるのは、やむを得ないと言えた。ホント男って下らない。
放課後を迎えた途端、レイモンがアッシュレイの席にやって来た。
「よお、アッシュレイ。暇なら遊びに――――」
どんッ
「あ、アッシュレイ君!」
「この後なんだけど、良かったら、」
「私たちと市街にいかない!??」
憐れなことに、レイモンはクラスメイトの女子らに弾き飛ばされた。
そしてアッシュレイ。こういった誘いには、気が向いたときにのみだが、付き合っていた。
しかし今日は予定があるので、気分云々の問題ではなく、良い返事はしようがなかった。
「ちょっと、あんた」
くいくい
彼の制服の裾を健気に引いているのは、言わずと知れた幼竜のエーコ。マスコットのエーコ。未だに反抗的なエーコ。
そして、クレープ狂いのエーコ。
アッシュレイは「ああ」っと首肯する。今日はエーコを市街地へ連れていく約束をしているのだ。
よって、彼女らを優先することはできないのであった。
「分かってる。少し待て」
言って、思い至る。
アッシュレイは再びクラスメイトの女子らに向き直った。
「お前ら、クレープの美味い店を知ってるか」
「クレープ?」
「うーん、〈カフェ・エサロワ〉?」
「〈竜牙亭〉? 高いけど」
「そうだね。〈竜牙亭〉じゃないかな」
「いつまでだらだらと喋っているの! さっさと行くわよ!」
生意気な口を片手で塞ぎつつ、強めに揉む。
「だから今行くといっているだろうが」
「ひゃ、ひゃめなひゃいよ~!!」
「……という顛末だが、それでもいいか」
女子らから了承を受け、一行は市街地へと向う。
教室を出たとことで、偶然にもレベッカと鉢合わせ人数が増えるが、それはご愛敬であった。
◇ ◇ ◇
最近、◆◆◆◆◆様には何か御執心なるものがあるらしい。
いや、出会った当時からとある一つの目的のみを目指しているようだったけれど、最近はあたしにもなんとなくわかる程度には明確化してきた気がする。
『★★★★、街の様子を見て来い』
『了解しました』
命に従って、あたしはアンサリヴァンの市街にいる。
しかしこの街はどこもかしこものんきなものだ。
今は戦争中である。
けれども、それを誰も意識していない雰囲気が見て取れた。
大陸の二大列強たるシェブロン王国とゼファロス帝国はおよそ50年前から敵対している。
一方、ロートレアモン騎士国はシェブロン王国の臣下であり、王国と帝国の狭間に位置していた。……位置してしまっていた、と表現するのが妥当かもしれない。
当然、ロートレアモン騎士国もゼファロス帝国と冷戦中という訳だ。
「
道端に、クレープを片手に談笑している若い集団があった。身につけて言える服から特定するに、アンサリヴァン竜騎士学園の生徒たちのようだ。男がひとり、女が五人。女のうち、赤い髪の毛の奴以外は、たいそう浮かれていて、全く周囲が見れていない。男は男で、すまし顔で良く目を閉じている。落ち着き払っている自分を演出して格好つけるのは結構だけど、彼は現実を見る前に足元を見ることが必要そう。
……やっぱり所詮は学生。
求めるに値しないということかしら。
花売りに扮したあたしは、学生たちに落胆の目を向けた。
その時。
ぞくり――――っ
「っ!?」
学生の集団の中から強烈な威圧を感じた。濃厚な威圧。殺気の混じらない、純粋な強者にのみ許された死地の闘気。喉が上ずって、背筋に冷や汗が浮かぶ。
思わずその方向を見てしまった。
(しまった!)
こういった場合、気付かないふりをするのが唯一の延命措置であることを、部族の長にもなったあたしには分かっていたハズなのに。
なのに、……え?
「……、……(どういうことなの……?)」
あたしは波打つ心ノ臓に手を置いて呆然とつぶやいた。
露道では、あの学生の集団が変わらずに仲良くクレープを食べていて、少年が少女のクレープを齧って、少女が恥ずかしそうに身をよじっている所だった。友人であろう二人の少女が凍てついた眼をもってその少女を糾弾している。
(気のせい――――?)
集団の奥手からの可能性は――――ない。だって壁だ。
少しできた余裕から嫌な考えが浮かび、あたしは大急ぎでその場から離れた。
もしあの威圧が気のせいではなくて、◆◆◆◆◆様は常にあんな化け物と敵対しているとしたら……、一緒にいるあたしは……!
あたし……いったいどうすればいいの?
てもとの花かごに視線を落とした。
頭が混乱している。あの威圧は異常だった。◆◆◆◆◆様もかなりの武人だと思うけれど、あの威圧の奴には劣ると思う。だ、だから、あの威圧の奴は◆◆◆◆◆様の手によって亡者になっていない……。
ダメだ◆◆◆◆◆様に仕えて日が浅いからあまり分からない……。
「いっそのこと、このまま花売りの娘として生きていけたら……あたし、幸せになれるのかな?」
あたしはカッとなって、、花かごを地面に叩きつけた。
ほんの一瞬でも、愚かなことを考えた自分が許せなかった。
散乱した花々を無造作に踏みつける。
「あたしのバカ! あたしは◆◆◆◆◆様についていくって決めたのよ! ◆◆◆◆◆様のそばにいることが、あたしの幸せなんだから!」
自分に言い聞かせるように叫んだその時、街に鐘の音が響き渡った。そろそろ、◆◆◆◆◆様の許に戻らねばならなかった。
◇ ◇ ◇
アッシュレイとエーコ、女子の三人とレベッカは聖ダラーム像の広場に足を踏む入れた。
女子勢の手には、それぞれ屋台で買ったクレープが握られている。
「むっ……バニラもいけるわ!」
「おい、零れかけてんぞ。……あ?」
「アッシュレイ君食べる? ラズベリーだけど」
「ああ、もらおう」
「え? ミレナ!?」
エーコのバニラクレープを頬張るエーコの食べ方は正に色気より食い気であり、齧りついた反対側からクリークが落ちそうになっている。
肩を小突かれて振り返れば、こちらでもクラスメイトがクレープを頬張っている。女子のカーストの中ではそれなりに上位にいるようで、連れ添っている三人のレベルはそれなりである。誘うように揺れる髪や胸が、なんとも言えない。
――――ともかく。どうやら分けてくれるようだ。
あむ
「ひゅえ!?」
「……、……もう若干酸味がほしいな」
「そ、そそ、そうなんだ……う、うん。私もソウオモッテタヨヨ……」
アッシュレイが齧ったところを凝視して、上位カーストの彼女は固まった。
もともと、「はい、あーん」が理想であったが、そこは、アンサリヴァン生徒(※生徒の九割五分が貴族です)。初心な貴族令嬢(とはいっても下級)。現実にはハードルが高過ぎた。
齧ろうか迷い、見るのも恥ずかしくなって、隣の友人を見る。
しかし、裏切ったなこの女郎、なんて笑顔で対話を拒否されてしまった。
アッシュレイの右横にいるレベッカから、なんとも言えない負の雰囲気が漏れてくるが、彼は努めて気付かないふりをする。
アッシュレイ曰く、この程度で嫉妬されては自分の恋愛スタンスに合わないのだとか。彼の哲学は王侯貴族向けであった。
ふとアッシュレイは眉を潜めた。
左手の方から、良くない感情をはらんだ視線を感じたのだ。
今さっき、反射的に
魔法で視界の制限を取っ払っうことで犯人を見る。
そうやら、花売りの少女のようだった。
(ほー……。稀だな……)
褐色の肌……、…………。
…………、……………………。
いや、面倒ごとにならなきゃいいんだがな。
アッシュレイの呟きは、喧騒のなかに消えた。
余談だが、あの少女の肌が化粧によるものでなければ、タンタロスという辺境部族らしい。運動能力に秀でた部族のようだ。
ともかく、彼女の目的が花売りでないことは明白。
これが一人での出先ならば、興味関心で突き止めてもいいのだが……、
「あっ、アッシュレイ君。あれが〈竜牙亭〉!」
そういうわけにもいかないのが現状であった。
アッシュレイはクラスメイトに、ああ、と応えた。
ほどなくして、目的の店に到着する。
「ここのアンサルティーは美味だぞ、アッシュレイ」
「レベッカは常連なのか」
「休日に来る程度だがな。ここは生徒会メンバーなら半額なんだ」
木造の立派な建物が、アッシュレイの視界一杯に広がる。
派手すぎず、奥ゆかしさを主出した、壮観な内装である。
しかし、お上りさんのような様に、スゲぇー、ヤんベェー、としないアッシュレイは流れるように入店した。
レベッカは、足を止める。
「――――君たち、案内ご苦労だったな」
「えっ」「うっ」「なっ」
大丈夫だ。名前こそ忘れていたが、ここにはわたしもよく来ている。
駄目押しの二の句は追い打ちもいいところである。
燃える様なエメラルドの瞳の奥で、確かに燃えている不動の炎。
レベッカの微笑は、物言わせぬ迫力でもって、子羊を押さえつける。
でなくとも、女子グループは身を引くしかなかった。勝負したところで、
「?? ……???」
去ってゆく
レベッカは、
「む、まぁ、色々あるんだよ。その……そう、女の駆け引きだな」
訥々とエーコに説明した。
レベッカは、エーコの口の端に付いたクリームを拭ってやると、小さな手を引いてアッシュレイを追う。
「あんた、下僕のメスなわけ?」
「メスっ!? ……あー、うむ、エーコにも時期に分かる時が来るさ」
色々と衝撃的な質問に苦笑いをしつつ、レベッカは歩みを進める。
が、その足はすぐに止まることとなった。
「――――なんだアッシュレイ。お前ひとりなのか?」
「いや? 連れがいるが、おそらく三人ばかし減ってるだろうな」
「む? どういうことだ? 変なことして嫌われたのか」
「お前と一緒にするなよお姫様」
「なっ、私は別に……!」
ようやく水入らず――この際エーコはノーカウントだ――のひと時を堪能できるかと思っていたところで、第四王女とその侍女のペアのお出ましである。嫌が応にも、多少唇が尖る。
視線を感じ、顔を上げると、侍女……コゼットと目が合った。大変なニコニコ顔での会釈は、傍観するに不足なしと語っていた。
どうやらあの底が見えない侍女は、こちらの色恋模様を既に知っているのだろう。
はぁ……。
レベッカは小さく深呼吸をすると、歩みを再開する。
「こらこらアッシュレイ。あまり王女殿下をいじめてやるな」
「おいおぃよせよ人聞きの悪りぃ」
レベッカを認めたシルヴィアは、相当に驚いているようで、目をぱちぱちとさせていた。
「つ、連れって、レイモンやエーコだけじゃなかったのか!」
「レイモンは分かるがエーコを連れと表現する気はないな」
「失礼いたします。アンサルティーでございます」
ウエイトレスがシルヴィアに注文を持ってきたタイミングで、レベッカは流れるようにアッシュレイの隣への席に腰を落とした。
所在なさげなエーコを手繰り寄せて、抱く。
するとどうだろう。
学生服姿にもかかわらず、エーコがアッシュレイとレベッカの子のような錯覚を受けるではないか。仏頂面の子供の頭を幸せそうな笑み微笑みを浮かべる母が撫でれば、子は嫌そうにしながらも、ものの十数秒でふやけた表情になる。父親は店のメニューを開いて、嫁と相談。
もともと、有名人の王女と
店内はたちまちに微笑ましい空気に染まった。
鴨肉のソテー、牛フィレのワイン煮、スペアリブ、春野菜とキノコのスープ、くるみパン……次から次へと運ばれてくる料理にアッシュレイは感心した目を向けた。
肉汁と香辛料の匂いが、嫌でも食欲をそそる。
「これはいい値段するわけだ」
「香辛料は貴重だからな。我が国でも大量に生産しているが、需要に対してぎりぎりといったところだ」
突然、エーコがぴくりと反応した。
「ふわあ……!」
現金なもので、料理の匂いでレベッカの母性あふれる撫での呪縛から覚めたらしい。 普段はクレープにのみしか目のないえーこだが、そこは基本肉食の竜族だけあって、肉料理の数々に釘付けとなっていた。
「懐事情は明るいからな、いくらでも食っていいぞ」
「本当でしょうね!?」
「ああ」
アッシュレイが促した途端、エーコは無我夢中で鴨肉を頬張り始めた。皮がこんがりと焼き揚げられていて、肉汁がしたたり落ちている。
「むっ……こんなおいしいにお肉、初めてだわ!」
感激のあまり瞳をキラキラとさせながら、今度は牛フィレに手を伸ばす。無造作にフォークで刺して、ぱくりと頬張った。
「ふにゅう……」
どうやら鴨肉に勝るおいしさだったらしい。エーコは全身を弛緩させ、幸せそうな笑みを浮かべていた。
反対側では、ケーキを口に運ぶシルヴィアがエーコと同じように相好を崩している。が、アッシュレイと視線が合うと、たちまちに軽く睨んでくる――――がそこへサッとコゼットがケーキのかけらを押し込むと、再び緩む。
必然的に表情がころころ変わって、実に愉快な光景な事、この上なかった。
「うふふふふ……」
……第三者。
口に手を添えるモリガンの化身は今日も今日とて長生きしそうである。
と、その時、アッシュレイがエーコのフォークをパッと取り上げた。
「!? なにす……」
エーコが眉を吊り上げ声を上げた直後、大地を揺るがすような轟音が鳴り響いた。
「きゃ!」
意外にも、突然の雷鳴に一番反応したのはシルヴィアであった。両手で耳をふさいで、がたがたと震えている。
「……人為的だな」
ソテーを突きつつ、アッシュレイは言う。
窓から見える空は、あれだけ晴れ渡っていたというのに、今は暗雲に覆われていた。
「わかるのか?」
レベッカの問いかけに、アッシュは続けた。
「(あれは闇属性の魔力反応がある)」
小声なのは、周囲の客たちにパニックを起こさせないためだった。
しかし。
もはや昼間とは思えないほどに、外は闇に閉ざされている。
「むっ……あれは良くないものだわ」
それまでは食べることに夢中だったエーコが急に立ち上がった。
いつになく険しい顔つきで、空を凝視している。
「エーコ」
アッシュレイの呼び声は届かず、エーコは外に飛び出していった。
今回はちょっち長かったですね。
具体的には二千文字くらい。
◆コラム◆
【タンタロス族】
褐色の肌が特徴で出身部族を表す独特の模様をしたマフラーを着用している。諜報や暗殺、戦闘。肉体系に強い。