まだ、読見返してないですけれど。
あれでしたっけ、ヴェロニカでしたけ?(←押しキャラその一)
仮面の男を、花売の格好をした少女が見ている。
不安そうに揺れる瞳が、現実の不確かさを憂いているように伺えた
「ミルガウス様……」
崩れ逝く
ミルガウスは小さく、しかし、確かに不敵に笑んだ。
「思わぬ伏兵がいたものだな」
微かに、仮面が笑んだ気がした。
変わって、花売りの変装をした少女――――アーニャの表情は硬い。
「
「はい」
今さっきのことだ。覚えている。
無謀な突撃をした児女のことだろう。
「少年に
「え……?」
「あの少女は、竜族の末裔だろう」
「ま、まさか……」
そのまさかがあったのだ。
そう言うと、ミルガウスは
どうやら、これ以上この会話を続けるつもりはないようだ。
「撤収するぞ」
「っ、はい」
切り口が雑な花が入った
◇ ◇ ◇
日が沈み、月が上っていた。
学院の屋上テラスでカプチーノが注がれたコップを傾ける少年。
儚げで美しい月光。
BGMは市街から聞こえる復興の物音だが、いまは気にならなかった。
普段なら必ず気に触るであろう、背後に来た人影にも反応を示さない。
「…………」
「…………」
人影も、なにも語らない。
しばらく時が流れて、あるとき少し強めの風が吹いた。
人影が帽子を押さえ、んっ、っと声を漏らす。
少年は軽くなったカップをコースターにコトリと置いた。
「失って、初めて気が付くものがる。
それに嘆き、失意し、傷心する」
「…そ、それは――――」
「――しかしそれは、正鵠を射ていない。
失ったことに気が付いた時に、知るんだ」
「…………」
「生けとし生けるものは基本的に急激な変化を嫌う。
人間も同じく保守的だ。
環境が大きく変動すると、現在ではない幻影を求め、縋り、愚かに狂う」
「…………」
「失ったモノに対し、嘆いているのでなく、そのモノを失ってしまった己を哀れみ、自己満足に浸っているだけだ」
「……違う。違うぞ……」
「故に、芯から在りたいをするならば切り捨てる覚悟、精神力が必要だ」
「っ!」
「過去を憂うこのないスタンスが、強者の条件だと言える」
「このっ」
――――――――ぱァん!!
正面に回り込んだシルヴィアが腕をしならせて、力の限り振り抜いた。
乾いた音が鳴り響き、一瞬後には、屋上はより一層沈み込む。
掲げられた少年の手。
その先でシルヴィアの手が空中に止まっていた。
先の音は、アッシュレイがシルヴィアの張り手を叩き払った音だ。シルヴィアの手は、赤く痛々しく腫れていた。
「お前の哲学を聞く気にはならんな。
オレの構え方を説いてやっただけでも、ありがたく思えよ。意見する気なら半人前以上にになってから出直すことだ」
「ぁ、ぁ…………ぁ」
二の句を告げずにいるシルヴィアを置いて、アッシュレイは屋上から立ち去った。
冷風が、ひとりになったシルヴィアを撫でる。
薙がれる金糸を抑える手も、落ちる雫を拭う指さえもなかった…………。
どうしてだ……。
なにがあったというのだ…………。
アッシュレ……ぇ…………。
シルヴィアが漏らした言葉に、反応があった。
「姫様、ここは冷え込みますわ。お部屋に戻りましょう」
「……コゼットか」
「アッシュレイ様はアッシュレイ様なりの覚悟有ってのことかと思いますわ」
「わかっている。わかっている、んだ……」
カツカツ……
『…………』
(なんだ。言いたいことがあるなら言えばいいだろう)
『気がいついていおったか』
(――除き魔がよく言う)
『ふむ……』
(要件はなんだ)
『そうもカリカリするでない。氣はまだしも、魔も漏れておるぞ。
(本題)
『お主と第四王女に関することだが、少々過去に手を加えた』
(いじくったのか)
『筋は変わっておらんがな。お主、アッシュのなよなよしい側面に難色でいるようだったからの』
(まぁ、アンタに見せてもらった
何でもかんでも手を差し伸べようとする偽善者野郎にしては、些細なことで理性を失う幼稚性。得たる才能も無く、目下数メートルしか映さない視野。加え――)
『あいわかった。わかった』
(遠慮することはない。まだまだ序の口だ。付き合わせてやろうじゃないか)
『遠慮願いたいものだの。
して、だな』
(おう)
『変えたのは、<オーファンの義>でのことだ』
(――竜の元を授かる儀式のことだ)
『ふむ、一瞬だの。
知識を引き出すのにも大分慣れたようだ。まだ一週間と立っておらぬだろうに』
(才能ってやつだな)
『肯定しよう』
(むず痒いな)
『自覚が薄いものだな、アッシュレイ。
さて。
あまり長々と赤髪の少女を待ちぼうけさえせるのはよくないからの。そら、詳細は思念で済ませるぞ』
(…………)
『……』
「あぁ……、粋な計らいだな」
◇ ◇ ◇
聖誕暦1356年。
白羊宮の月。
少女がその少年と出会ったのは、深い森の中であった。
7歳の誕生日を迎えて間もなく、シルヴィアは首都フォンティーンから
アルビオンの森――――マザー・ドラゴンが
幼いシルヴィアは、この地にオーファンを授かりにやって来た。
それは、騎士王家の定めた法令だからという事もあるが、なによりも自らの夢を成すためでもあった。なにがなんでも
誓いには
騎士王家の嫡子であり、若くして
しかしジュリアスは
あろうことか、彼は自らのパルを殺害したのである。
あの優しかた兄が、どうしてそんな大罪を犯すことになったのか。シルヴィアには、理解が出来なかった。同時に諦めるきとも又出来なかった。
少しでも兄に近づくこと。それが真相へ導いてくれる。
〈オーファンの儀〉に挑み、
それが、誓。
鋼の誓だった。
が。
たった7歳の少女、いや幼女である。
悲愴なまでの決意とは裏腹に、アルビオンの森は過酷を極めた場所だった。
自身の何倍とある高さの樹木が
結果。ネズミや蛇、蜘蛛といった住民たちに出くわす度に、
「いやぁあああああっ!」
泣きながら遁走していた。
こんな体で騎士に憧れているなどと胸を張れるのか。いや、張れない。
臆病な一面は、女子たる性質。
しかしながら、騎士精神に則るならば女傑でなければならかなかった。弱さは不要、重荷以外になりえない。
――――分かってはいたが、だからと言ってどうこうなるものでもなかった。
シルヴィアは、とうとう足を取られ、派手に転倒した挙句に足を挫いてしまう。
そのまま、痛みのあまりに動けなくなってしまった。
「うぅ…………」
土にまみれた顔を上げると、目の前にのぬいぐるみがあった。それは、世間一般的に評すと、ひどく不格好なぬいぐるみである。
不格好だけれども、それはシルヴィアとって唯一の心の支えであった。
ぬいぐるみには名前がある。ランスロット。シルヴィアが付けた、勇敢で凛々しい名前だ。数年前にシュエブロン王国の首都アーカムに旅行した時、市場で目に留まったのが出会いだ。
侍女らに、ランスロットを紹介すると、ドラゴンであるということに目を丸くする。それほどまでに、ランスロットは不格こ――――個性的なデザインをしてた。
馳せる想い出を醒ますように、涙が溢れてきた。
このまま儀礼の終了を迎えてしまったら、自分は手ぶらで王都に帰還する羽目になってしまう。
「うっ……ぐすっ……えっぐ…………」
自らの無力さを痛感した。意思に従わない体は、移動はおろか、立ち上がることさえしないのだから。
もはや恥も外聞もなく、めそめそをなきじゃぐる。
そんな中、茂みから少年が出てきた。
「――――ぅん?」
少年は、驚きのあまり涙が止まっているシルヴィアに近づく。
ランスロットを拾い上げると、腰を落として顔を近づけた。
「怪我か、王女殿下?」
呆れを孕んだ言いように、シルヴィアはカッとなる。王族のプライドに火がついたのだ。
「けっ、怪我などしては――――っ?!」
反論は続かなかった。
少年が手をかざしてきた手のひらから、淡い光が放出されたからだ。
スゥっと痛みが消えさり、見えない手がシルヴィアを立たせ、服の汚れさえも無くした。
「ドラゴンのぬいぐるみか。悪くはないな」
唖然とした顔につきだされたランスロットをシルヴィアは受け取れなかった。
驚きが続きすぎたのだ。
民衆の前に出る時と違って、軽装の自分を王女だと見破ったこと。
方陣の無かった、見たこともない
誰も彼もが一回でドラゴンであるとわからなかった、ランスロットのこと。
怒りはどこかに消え失せて、別の感情が芽生えた。
「そうだ、ドラゴンだ!」
「おう」
「どうしてわかったのだ?」
「そいつは秘密だ」
「そうか」
ふふ、っと笑いランスロットを受け取る。いや、受け取ろうとした。
シルヴィアは、受け取ろうとしていた手を下げて、少年を見やった。
「くれてやる」
「……こいつを? いらん」
「いいから、くれてやる。王族からの贈り物だぞ、もらうだろ、ふつう」
ふーん? 変わらずに、要らなさそうだったが、少年はランスロットを脇に抱えてくれた。
ようするに、もらってくれたのだ。
「じゃ、オレは引き続きマザー・ドラゴンを探しに行くわ」
「わかった。それではな」
「へぇ?」
「な、なんだというのだ?」
「いやぁ? 一緒に行こうとか言うもんだと思ってたもんでな」
「それでは儀礼の筋から外れる気がしてな。私は騎士を目指しているからな。そういうのには、ちょっとうるさいぞ」
「ははっ、頬に涙腺をつけた騎士かっ」
「だ、だまれ! こ、こここれは汗だ!」
シルヴィアが投げた石ころをさっと避けた少年は、懲りずに笑い続づけ、そのまま姿を消した。
少年が走り去った方をしばらく見つけていたシルヴィア。
名前を聞いていなかったことを思い出し、眉をゆがめるが、それも一瞬。
頬を叩いて、また歩き出した。
きっとまた会える。
名前こそ知らないが、
シルヴィアは確信していた。
あの少年がマザー・ドラゴンを見つけ出すことを。
そして、
自分も絶対に
◇ ◇ ◇
――――――――――――ッ!!!!!!!!!
がちゃんッ
「姫様っ?」
部屋に戻ったシルヴィア。
コゼットが入れた紅茶で暖を取り始めて間もなく、彼女は荒々しくカップを置いた。
「どうかなさいましたか?」
「思い出した…………思い出したぞ!!」
傾げているコゼットの肩をつかんで、シルヴィアは叫んだ。
「アッシュレイだ! オーファンの儀で、私が出会ったのは、アッシュレイだったんだ!!」
◇ ◇ ◇
『――――――と、今頃はなっていよう』
「面白くなってきたなァ……」
感慨耽ってそう呟く。
かと思えば、次の瞬間大きく飛び退った。
バンっ!
大音を立てて開いた扉の向こうには、幼女がいた。
桃色の髪から丸い角を覗かせた幼女だ。
「む……。今アイツの声がした気が……」
「エーコっ、いきなりどうしたんだ?」
「今、奴隷の声がしたわ゛! い、いひゃいいひゃいぃ〜!」
「んん? わたしの夫を奴隷呼ばわりとはいい度胸だな、エーコ? お母さんは悲しいよ。これはお仕置きが必要なようだ」
「おひ……!? い、いや! はなひて! はなひぇ〜!」
……パタン
(聞いたか? 夫だってよ)
『いいものだの』
(あ、そういう返しか)
『不満かの』
「いや、いいんだぜ。別に」
――い、今またアイツの声が……!
――アイツじゃないだろう。自分の主にむかって!
ペシンっ
――いぅ!! わ、われちゃうっ……。
――問題ない。元よりふたつに割れている。
――よ、4つに裂けるわ!
――なら良い子になることだ。
アッシュレイは、もう少し夜風に当たることにした。
コラムの追加は未定です