お久しぶりではない方は、この間ぶりです
ロートレアモン騎士国。
通称を、竜を飼う国。
大陸の二大列強の間にあるこの小国の人口は、500万足らず。しかし、竜飼い国とだけあって、ちなんだ特殊な学院が存在する。
名称を、アンサリヴァン騎竜学院。
ドラゴンと契約を交わした少年少女たち――――
◇ ◇ ◇
アンサリヴァン学院の講堂には生徒たちが集まっていた。
これから定例集会があるのだ。
すでに生徒会長であるレベッカ・ランドールが演説舞台の中央に上がっており、喧騒はなりを潜めていた。それもそのはず。〈
「うん……それでは始めるとするか。
まず初めに諸君に紹介しなければならない者たちが三人いる」
「風紀担当、シルヴィア・ロートレアモン」
「はい」
シルヴィアは凛とした返事を響かせ、舞台袖から一歩踏み出した。
〈
「この度、生徒会役員の風紀席を承ることになった、シルヴィア・ロートレアモンだ。若輩者ゆえ、至らぬところもあると思うが、あのアンサリヴァン騎竜学院を守るべく全力を尽くす所存だ」
神妙な挨拶である。
平たく言えば、堅物。
しかし、常に孕んでいたトゲトゲしい雰囲気が霧散していた。
これには多くの学院生がざわめく。
静まるのをまってから、シルヴィアはもう一言加えた。
「すこし、斜に……柔軟に生きてみることにした。
そのなんだ……以後、よろしく頼む」
ぎこちない笑顔。
一礼をして、舞台袖裏に戻る
するると、万雷の拍手が沸き起こった。とても多くな拍手で、発言した本人が驚いたほどであった。
喝采に驚いたのは、彼女だけではなかった。
袖裏に戻ると、ピンクシルバーの髪をゆらゆらとさせて、耳に手でふたをしている少女がいた。
「驚いた。あんた、人気者なのね」
「違うんだ、エーコ。わたしの変わり身様に、逆にみんなが驚いているだけだろう」
「ふーん。ま、確かに偉そうじゃなくなったかも」
「そ、そんなに偉そうに見えたか……?」
「うん」
「そうか………。
話は戻るが、私でこれなのだから、エーコはもっと沸くと思うぞ?」
「当然よ! なんて言ったって、わたしは誇り高き竜族なんだからね!」
「いや、そうじではなくだな。そのドレスのことだ」
そう、エーコは現在、その小柄な身体を黒基調の豪華ドレスで身を包んでいた。
胸元には大粒の紅い宝石
「伯爵位クラス以上が着るような一級品じゃないか」
「そうなの? でもこのわたしが着るんだから、そのくらいはないとね」
シルヴィアがドレスの入手源を思考していると、エーコが声を上げた。
エーコの声につられて、視線の先を振り返ると、レベッカがこちらに手招きをしていた。
「呼ばれているみたいだぞ」
「わかってるわよ!」
「それでは、次の役員を紹介しよう」
招いたエーコの両肩に手を置いて、レベッカは仕切りなおす。
「とはいっても、異形……
さぁ改めて紹介しよう。
彼女の名はエーコ。勉強熱心な諸君らの思い至る通り、かの聖女ロサ・マリアの
そんな竜族の代表として生徒会はエーコに生徒会のイメージキャラクターの地位を授ける」
「エーコよ! 愚鈍で愚昧な人間たち! このあたしにひれ伏しなさい!」
侮辱とも取れる血気盛んな文句に、生徒たちは静まり返った。
が、講堂の横扉が重々しく開けられ、一人の青年が入ってきた。
突然の乱入者に、視線が集まる。
タジログでもなく、その乱入者は悪い笑みを浮かべつつ、口を開いた。
「とまぁ」
付近の
「訳してやると、
『ガキンチョで生意気盛りな小娘だけど、適度に可愛がってね』
ってなところだな。――ああ、ぅん」
「っ! ぁ……」
青年は女生徒の頭をついでのように一撫でし、壇上へと上がる。
騒がしいようで確かに静まり返った群衆をたっぷりと見渡す。誰も彼もが浮足立っていた。
レベッカがやれやれといったふうに紹介を挟んだ。
「あー生徒会新任、実技監督席、アッシュレイ・ブレイクだ」
「――以後、宜しく」
我に還ったエーコの怒号を掻き消す黄色味の強い歓声が、学院中に響いた。
◇ ◇ ◇
ここにエーコが来てから、およそ一か月が過ぎた。
竜族な上、まだ幼げとはいえ、彼女は紛れもなき美少女である。舎で寝食とする男子らは相当に浮かれていたが、先に記したように一ケ月がたっており、落ち着きを見せ始めた。
「心外だわ! 誇り高き竜族を笑いものにするなんて……許しがたい大罪よ! これだから愚鈍で愚劣で愚昧な人類はっ!」
「まぁ、お前がその愚鈍以下二品の
「ん!!! このぉ!」
「おお、あぶねーあぶねー」
アッシュレイがくつくつと笑いながら指摘してやると、すさまじい重量を伴った正拳突き擬きが飛んでくる。
それもそのはずで、エーコを笑いものに導いた犯人はアッシュレイだ。しかし、彼が茶化していなければ、エーコは悪い印象しか持たれなかったかもしれない。彼女はそこの辺りが解っていなかった。
エーコが放った、鬱憤100%の濃縮還元パンチはアッシュレイからしてみればただのテレフォンアタックである。余裕をもって避けられるので当たりはしない。
「当たりなさいよ! けちょんけちょんにしてやるんだから!」
「ほほう。じゃ、当ててみ? おら」
さも、朝飯前ですといった体で、アッシュレイは片の手のひらをエーコに向ける。
顔を真っ赤にして激昂したエーコの跳び蹴りはパシっと軽々受けられてしまった。常人なら部屋の隅まで跳ね飛ぶ威力だったが、あいにくとアッシュレイ常人の枠外である。
エーコはそのまま足首をつかまれて逆さ吊りとなり弄ばれた。
重力に従って、スカートが大変スカートして、スカートなことになっているが、それを認識する余裕などないエーコはジタバタとももがいて抵抗する。
「は、はなしなさい! このっ、はんっなっせっって――――の!」
「ほぉいいのか? このまま離せば、お前は頭から落ちるわけで、従いそのなんちゃって竜角を床に打ち据えるが故に耐えがたい苦痛を味わう嵌めになるだろう。
それでもいいか? うん?」
「ゆ、ゆゆ、ゆゆゆゆっくり降ろしなさいよ! 可及的速やか丁寧に! ゆっくりと!」
普通に手で受ければ良いだろうに、なんて心中で馬鹿にする彼は、単純な思考回路のエーコをこの時ばかりは玩具としか認識していないよう。
やがて、戯れに早々飽きたアッシュレイがエーコをベットにほっ
その時、ポストドアが押し開かれ一枚の紙ヒラリヒラリと入ってくる。
――広報部でっーす
遅れて聞こえて来るは宣伝の声。
「最近は
「――きゃッ」
こともなげに幼女を
タイトルには『SKFC結束宣言』とあった。
◇ ◇ ◇
君は知っているか?
先日、公式に『
英雄の活躍が無ければ、被害は尋常ならざるものとなり、町の復興は厳しいものとなっていたことだろう。最悪。市街区全域が、いいや、アンサリヴァンの市自体が地図上から消えてしまっていたかもしれない。
そんな救世の英雄の正体を、誰もが捜索している。
そうなのだ、あれだけの活躍をしたにもかかわらず、その正体が未だに特定されていないのである。
自らの栄光を誇るわけでもなく、恩に着せるでもない。その、まさに騎士の中の騎士たる奥ゆかしい貴公子の実影を、誰もが追っている事だろう。
数少ない目撃者によれば、英雄は我らが学院の男子生徒の服をその身にまとっていたらしい。
さらに、(これについてはわたしも直に見た)決着の間際
彼の傍でともに応戦していた我らがレベッカ様をはじめとする生徒会の面々も、なぜか口を割ってくれない。非常に無念である。
さて。
さてさてさて。
そんな彼だが、実は、私はあの人が怪しいのではないかと思っている。
あくまで予想なので、イニシャルとさせてもらうが、A・B氏である。そう、先日、非常に稀有なパルを授かった彼だ。
理由を述べよう。
一つ。アンサリヴァン騎竜学院の男子生徒であること。
二つ。事件直前に、彼を現場近くで見たとの情報が多数寄せられていること。
そして、三つ目。このタイミングでの生徒会への起用。
――――とまぁ、色々と語ったが、結局人物の特定は叶っていないわけで。故に我々は一つの組織を設立することに決めた。
アンサリヴァンの救世主、『
SKFC(Silver knight Fan club)
前記組織の樹立の結成を、公すると共に、会員の募集を行う。
SKFC会長
〈
ほんとうは、ヴェロニカまでいきたかった。。。。
うーん、文字数。
6/20迄そこそこ時間が取れそうな予感。