バイパスでアクアに追突されました。
いや、ほんとにお久しぶりです。
事故にあって時間が取れたおかげで溜まっていた書類をゼロにできました。
筆が取れるのが本当にうれしいです。
今、全年齢版の方での投稿も検討しております。
(カットが基本なので時間はそこまで要しません)
よろしくお願いいたします。
翌る日の午前。
アッシュレイは生態学の講義を受けていた。
そこには女生徒服を纏ったエーコもいたが、内容が難しかったようで、腕を枕にして眠ってしまっている。
「ーーつまり、
乾いた、黒板を突く音が教室に響く。
教鞭を振るうのは、なんとあのアンジェラ・コールウェンだった。
人の形をしている竜族のエーコになみなみならぬ関心を寄せている彼女。その執着心が、彼女をここまで追ってこさせたようだ。
例の件を学園の中枢部が知らないわけない。
ないのだが、まぁ、それだけアンジェラ博士に権威があるだろう。
「では、前述の三種が進化した個体、
えーと、じゃあ王女殿下、どうかしら」
「…………」
「? シルヴィア王女殿下、どうかしましたか?」
再度と投げかけるも反応が無いシルヴィア。普段の勤勉さとの違和感が相まって視線が集まる。
そこには屍があった。真一文字かへの字の口は晒し無く開口されており、体は白化して硬質化している。口から魂が出ている幻覚さえも伺えた。
だが、いったい何があったのか、それを知っている者はいない。
「仕方ないわねぇ。
では、ジェシカ・バレンタインさん」
「
自信満々なジェシカだが、アンジェラが返したのは冷たい笑みだった。
メガネの奥で光る瞳でちらりと、視線で指名を受けたのはアッシュレイ。
「
「満点のフォローね。
はい皆さん、今彼が答えてくれたように
「おいアッシュ。姫様いったいどうしまったんだ?」
アンジェラの解説なぞそっちのけで、レイモンがアッシュレイに話しかけてきた。
嘆息気味に、アッシュレイは答える。
「レイをつけろ、レイを。
知らん。お前こそいつも追っかけ回してる若い尻から何か聞いてないのか」
「そ、その返しはひでぇや。聞いてないさ。と言うか、聞」
「ちょっとあんた大丈夫?」
いったいいつ起きたのか。
エーコが肩を揺らすと、
「は、ハはハハ歯は葉ハは破ハハ刃は…………」
確実に壊れた乾いている笑いを漏らす。
それは口から、というよりも口から出てしまっている魂から、な感じがして、一同は訳も知らないが憐憫の情を禁じ得ない。
そのあまりの死に体に、エーコはうぁと引いたその時、ハラリと胸元から何かが零れ落ちた。
「……んょ? 何これ」
封筒のようだ。
エーコは手に取って中身を中身を取り出す。
出てきたのは綺麗にしたためられた一枚の手紙。
エーコから見て、そこに書かれていた文字は幼児がいたずらで汚したようなもので、まったく理解が得られなかった。同じく、身を乗り出して覗き込む生徒面々も揃って顔を顰めている。
一方で、隣の男から感じる雰囲気は自分たちとは違って愉快そうな表情をしていた。正面至近距離からよく見てもわからないのに、少し覗き込んだ程度で理解したらしい。
「荒れるなぁ」
興味を示したアンジェラが近づいてきたため、アッシュレイはエーコの手から手紙を取り彼女に渡した。
「……暗号文ねぇ。ロートレアモン王家固有のものだわ」
「流石、博識だな」
「なら貴方も博識ね」
「浅学ではないつもりだ」
後ろ手を掲げ、ひらひらと振る。アッシュレイはその場を後にした。
講義中であり、不良行為だがアンジェラは特段注意したりしない。
エーコもそれに倣いついていき、白化したモノ以外の主役が不在となった講義室が騒めき立つ。
じきに講義は再開されたが、シルヴィアが正気を取り戻したのは随分と時間要してからだった。
そして、そう日は経たたないうちに学園に衝撃が走る。
『第一王女ヴェロニカ・ロートレアモン 来訪す』、と。
◇ ◇ ◇
第一王女の出迎えで、生徒も教職員も慌ただしい日々を送ること数日、ついに当日がやってきた。
アンサリヴァン第一校舎全校生徒職員が整列し、生徒会長のレベッカ・ランドールが最前で王女の訪問を待っていた。
ヴェロニカ王女がなぜアンサリヴァンを訪問するのかだが、公的には『襲撃を受けたアンサリヴァン市の慰問』という事になっている。学院の生徒が巻き込まれ、事件の解決に一役買っているため訪問する理由としては申し分ないだろう。
ヴェロニカ第一王女は騎士王室において最も好戦的な人物として有名だ。故に、慰問は建前であり、ネクロマンシアの脅威度を確認するのが本命であろうと、レベッカは推測している。
事実、ヴェロニカは各地の民族紛争に介入し、国土の拡張と発展に貢献してきた。
なんと初陣は若干13歳の頃であったというのだから驚きだ。
真っ先に敵陣に突入しては、躊躇いなく切り捨てる。
ひと薙ぎで首が3つ宙に舞ったと、そこかしこで吟遊詩人たちは謡っている。
英名にして剛毅。
百戦百勝、敗北知らず。
剣の腕は天下無双。
中でも有名なのが、剣の一本でバジリスクを討伐したいう逸話だろう。獰猛かつ巨躯の、
そうしてヴェロニカについた渾名は――〈
ヴェロニカは国土周辺各地で奮戦しているわけだが、今となっては彼女自身が火種のような存在になっている。
凄まじい経歴には、凄まじい逆恨みを伴うのだ。
反乱分子の残党からは常に命を狙われていおり、いつどこで襲撃に合うかわからない程だという。
自衛力の乏しい学院の生徒たちが人質に取られても、第一王女であれば切って捨てる様が浮かぶであろう。
都市の首脳陣や教職員側の人間からは、ネクロマンシアの災禍が去ったばかりだというのにまたしても事件が起こるのではないかと危惧が上がっていた。
「あのヴェロニカ王女がお越しになるなんて、何年ぶりかしらね」
出迎えの珍しく白衣を脱いで、フォーマルな衣装を着用したアンジェラ・コーンウェル博士の姿も含まれていた。
つい先日から講師となったアンジェラだが、国宝級の研究者である。アンサリヴァンを代表する者といえるだろう。
一国の王女を出迎えるにしては、一般生徒の整列は距離があるので、実際に出迎えていると表現できるのはレベッカや市長、アンジェラがいるこの最前集団なのでが一国の第一王女の出迎えというわりには少人数だ。
本来ならば市民をも総動員し、華やかな歓迎式典を行うべきところ。だが、ヴェロニカが質実剛健を好まないだろうこともあるが、そういった式典は一切無用だと、事前に通告があった様。
代わりにではないが、護衛力にもある聖竜クー・フリンと、聖竜アリアンロッドの凛々しい姿もあった。
レベッカの相棒であるクー・フリンは、名実ともに、学院最強の聖竜である。
白銀の毛並みは燦然と輝き、もはや竜具を装着できないほど成長した巨軀には、誰もが目をみはるばかり。
一方、アリアンロッドはマックスのパルでありれっきとした聖竜ではあるが、年齢的にはまだ幼竜に属する。猛々しいクー・フリンとは対照的でどこか可憐な雰囲気を湛えたドラゴンだ。
「エーコ。本当に……お前もヴェロニカ王女を迎えるつもりか?」
「なによ、文句ある?」
エーコは生徒会のマスコット役ということで歓迎団に加わっていた。就任式で着たときと同じくドレスを着用している。どうやら、かなり気に入っているらしい。
レベッカとしては、アッシュレイのパルであるエーコに何か危害が加わらないか心配で仕方がなかった。恐らくエーコのことはヴェロニカ王女も既知であろうし、話しかけることもあろう。そこで生意気気質のエーコが無礼を働き、例えば切られても、一介の貴族であるレベッカには王族に対してカードが少ない。
「文句ではないが……アッシュレイが居ればなんだがな……」
そう、アッシュレイはこの場を不在としていた。
“一応「見ている」と連絡があった”ので、どこかしらには居るのだろうが、それも定かではない。
それよりも気がかりなのは、やはりシルヴィアのことである。
「た、たたたしっかにアッシュレレ、イイイがい、いれば、もっとっ――」
「落ち着け、シルヴィア」
いっそ面白い程に歯をがちがちと震わせ、膝を脅させているシルヴィア第四王女だが、あまりの様に一周回って嘆息しかないレベッカである。
「そんなに嫌なら、生理とか理由付けて欠せkぶヴぇッ」
レイモンは死んだ。
「ば、馬鹿者、欠席など! そんなことをしたらいよいよ殺されるぞ!」
「あ、ああ。だがそんなに恐れているなら、本当に欠席しても構わないが。
第一王女殿下に余程のトラウマを抱えているのではないか?」
見かねての提案だったが、自身の体を掻き抱いて縮こまり、耳に入っていない。
「う、うぅうう……」
「シルヴィア落ち着くんだ」
「あ、アッシュレイが、来ないって……」
それはいつの情報かと思うレベッカ。確か、自分にはもしかしたら途中から行くかもな、と今朝言った(もはやそれは冗談でちゃんと参列するものと思っていたが)。
今しがたの間を考え、シルヴィアの耳――ブロンドヘアーに隠れて見えないが――を見やってする。おそらく……持っているのだろう、自分と同じものを。
レベッカは自らの片耳にあるピアス撫でた。
風に揺られてシルヴィアの髪中に宝石が見えた。
ああ、やはり。
決して芯の脆弱でないシルヴィアが頼るほどに、かのネクロマンシアを臥せたアッシュレイは勇猛だったのだろう。
英雄の誕生を直接見れなかったのが口惜しく嫉妬を覚え、また最近まで目の敵にしていたのに関わらず頼り縋ってしまう程に圧巻だったのだろう、やはり居合わせたかった、と嫉妬に嫉妬を渦巻かせた。
「か、会長……? 眉間に皺が……」
「あ。ああ、すまないな。
パルがそばに居ないのも心象的に大きいだろうと思ってな」
「姉上はランスロットを好いてはおられぬので……」
シルヴィアの頼れる
専属のメイドであるコゼットも、なぜかこの場には居なかった。
「ヴェロニカ王女が
「まあ……そんなところです」
歯切れの悪いシルヴィアを一瞥し、レベッカは憐れむような笑みを浮かべた。
「ならば、そういうことにしておこう」
「そういうことに……?」
レベッカの真意は、その場にいる者たちにはさっぱり理解できなかった。
「見えたわ! あれじゃないかしら!」
その時。
エーコがレベッカの裾を引いて声を上げた。
「どれだ?」
空を指さすエーコだが、特に不自然なものはない。
「あれよ!」
だからどれだよ、と周囲の人間が困惑する。
それなりの人数でエーコの小さな指が差し示す方に目を凝らすが、あるのは雲くらいだ。
エーコは竜族だから「人族の自分たちとは視力が違うのだろう」とか、「ほら、子供だから」とか憶測が飛び交う。
虚言を吐いたとも取れる物言いに、エーコが怒鳴ろうとし、
「あぁ、あれか。
やめた。
顔を綻ばせ、再びレベッカの裾を引く。
「人間のわりにやるじゃない!」
いや、何もないんだけど。周囲が更に困惑する。
しかし生徒会長で絶大の信頼を持つレベッカも言うし、その上情報が細かい。
疑惑の声は鳴りを潜め、背伸びしたり手を望遠鏡の形にしたり、誰が一番早く見つけるか、競い合いが始まった。
そうして5分程が経ち、飽きる者が出始めた頃。
ようやく他の者達からも次々と歓声があがった。
「あれじゃないか!?」
「おお、あれがヴェロニカ様の……!」
「あのような乗物を完成させてしまうとは!」
「帝国製の航空艦を見ているようだ……!」
「レベッカさん目良すぎないか?!」
群青に映える空の果て、威風堂々とソレは確かに浮かでいた。
刻一刻と時間がたつにつれ、異物は黒い点から、少しずつその輪郭を確かなものにしてく。
周囲を七騎の
護衛を務めるドラゴンでさえ、あの巨大な飛行物体と比べ豆粒に等しく、着陸の際の振動が数百メートルと離れた校庭にも届くほど。水鳥が泉におりたつかのような、緩やかな長躯陸に見えたのにも関わらずの揺れ。一体どれほどの重量なのだろうか。
レベッカが厳粛な面持ちで告げる。
「あれがヴェロニカ王女の専用機、魔導艦シルヴァヌスだ。
――むっ?」
「会長? どうかしました?」
レイモンがレベッカに声をかける。
レベッカはなんでもない、とは答えるが魔導艦から視線を外さない。
自国民に向かって……気のせいか、いや、と呟きが漏れていた。
第二王女は縮こまり、生徒会長はまとう空気を針のようにとがられせる。
我関せずと騒ぐ大人と生徒たち、目視しづらいのか跳ねるエーコ。
前者後者の嚙み合わなさが、一部の者には異様な
一波乱きそうだな、とマックスはレイモンの方を叩いた。
「いかがですか?」
資料室の窓から第一王女一行の艦を見定めるアッシュレイに、メイドが声をかける。
「お前の主の初めての通信が『一緒にいてほしい』とかいう腑抜けたものになるとは思わなかった」
「可愛いではありませか」
「言ってろ」
「ヴェロニカ様はお眼鏡にかないましたか?」
「いや、特段」
「あらあら……「ただ、」
ただ?と、メイドはオウム返しをする。
護衛に愉快なやつがいるようだ、とアッシュレイは口角を上げた。
ちなみに、皆さんはヴェロニカ王女をどうしてほしいですか?
アンケートの設定がわからない作者より
【追記】
少しいじったらわかりました。
教えてくれた方、申し訳ない、でもありがとうございます!!
ヴェロニカが現れた。アッシュレイとどうなる?
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フルボッコにされる、ラブラブになる
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フルボッコ、犬になる
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そもそもスルー、屈辱からストーカーになる
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戦うが遊ばれる、都度斬りかかる様になる
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シルヴィアが間に入りVS姉妹対戦