※この作品はR-18です。

星刻のアッシュレイ   作:咲良餅

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 お疲れ様です。
 社畜です。

 勤務中です。

 はっはっはっは。
 
 ※軽く見ましたが、誤字あると思います。ご了承願います。


19.第一王女、来校

 ──魔導艦シルヴァヌス。

 

 第一王女ヴェロニカが、ゼファロス帝国から亡命してきた科学者の一団を召し抱えて開発させた試作艦である。

 第一校舎の霊峰側、その広大な敷地を埋め尽くすように、魔導艦シルヴァヌスの鎮座している巨躯。数百メートル離れた草原に降り立ったにもかかわらず、その振動が校舎まで届いており、あれほどの重量を飛行させる技術力の高さを持つ王女の力に、手に汗を握る者もしばしば。

 翼を広げた聖竜(マエストロ)を連想させる、曲線を主用とした流麗なフォルム。白地に真紅のラインを織り交ぜた外装は正に畏怖。各所に装備された。

 

「噂では聞いていたが、実際に眺めるのは初めてだ。壮大だなー」

「あれ……どうやって飛んでるのよ?」

 

 エーコたちが呆けたようにたたずんでいると、シルヴィアが解説してくれた。

 

「燃料は竜綺華晶(りゅうかきしょう)だ。 竜飼い人(ブリーダー)になれなかった姉上は、竜族がもたらした魔法と、帝国由来の機械工学を導入して、あのシルヴァヌスを完成させたのだ」

「じゃあ、竜媒魔法(オラクル)で飛ばしてるってわけか……!」

「ふん、まぁ貧弱な人間に力を貸してあげるのも、やぶさかでないわね!」

 

 ふんぞり返る幼竜エーコだが見た目(と中身も)が子供の為、威厳は乏しい。

 茶々を入れられたシルヴィアだが、今は精神的に委縮しており、エーコに対する反応はない。

 

「そういうわけだ。ただし、千年綺華晶(ミレニアム)と呼ばれる特別な結晶体しか使えないから、量産は不可能だ」

「ミレニアム?」

「ドラゴンの化石が地中で千年のときを経ると、 莫大な魔力を秘めた結晶体が生まれることがあるんだ」 「知らなかった……」

「もっとも、シルヴァヌスは帝国製の飛行艦と比べると、小型だし防御力も低い。装甲が薄い部分は、見ての通り 竜騎士 を配置することで補っている」

 

 シルヴィアの言葉通り、護衛を務める七騎の竜騎士(ドラグナー)たちが随伴していた。七騎のうち、先頭の竜騎士(ドラグナー)のみが一目で聖騎甲(アーク)だと分かる。甲冑を装備している彼が、おそらく親衛隊長なのだろう。

 

「皆(みな)、そろそろ私語を謹(つつし)め」

 

 レベッカが小声で叱咤を飛ばし、レイモンたちは口を閉ざした。

 一同が見守る中、シルヴァヌスのハッチがゆっくりと開き、タラップが下降する。

 

 艦内から、ヴェロニカ王女と一人の竜騎士(ドラグナー)が現れる。

 その騎士は、随伴飛行していた6人の竜騎士(ドラグナー)たちのような無骨な鎧ではなかった。一目で聖天竜騎士(アーク・ドラグナー)だと分かる。 

 

 そして、第一王女一行が地上に降り立った。

 

 

 

 

 

 ヴェロニカ一行がレベッカ達の方へやってくる。

 

 会話の出来る距離になろうとするが、誰も口を開かない。

 いや、王女の傍付きの者が促してから挨拶するのが礼儀なわけだから、それでいいのだ。しかしそうではなく、単純にヴェロニカが発する圧力がモノを許さなかったのだ。

 

 

 花よ蝶よの籠の鳥の王女ではなく。

 荒々しい戦乙女。

 

 

 〈鉄血の戦乙女(アイアンブラッド・ヴァルキリー)〉の名の体現であった。

 

 

 シルヴィアとの姉妹だけあり、顔立ちはシルヴィアと似ているも。輝かしい金髪に白の肌、瞳の色やプロポーションの美しささえも。だが、その女性にしては高い長身からと、瞳から放たれるプレッシャーは、シルヴィアとは比較にならない。

 上から下々に令を下す、支配者の瞳である。

 冷さを帯びた眼光からは、心臓を貫かれたような錯覚を覚えた。 

 桃色の唇が動く。

 

 

「出迎え、 大儀である!!」

 

 

 腕が凪がれた動作で深紅のマントが翻り、合間から腰に佩(は)いている獲物が見えた。

 その鈍く輝く分厚い鉄の種別は、両手用大剣クレイモア。通常、大柄で筋骨隆々とした男が扱うものであり、間違っても少し身長が高めなだけの細身の女性が振り回すものではない。恐らく体重の半分ほどの重量はあるだろう。

 ここまで悠々と歩いてきたヴェロニカに、重心の偏りは感じられず、あの鉄の塊は虚勢でも何でもないことが一目瞭然であった。

 あのクレイモアでどれくらいの敵を伏してきたのだろうか。

 ヴェロニカの逸話で吟遊詩人たちが謡うものの中にとりわけ有名なものがある。

 それはバジリスクの単独討伐だ。バジリスクは土竜(アーシア)の眷属と称されるほど巨大かつ獰猛な大蛇であり、弓なりに撓(しな)られた鎌首から放たれる顎部の牙から滴る毒は竜をも殺し、強靭な鱗は竜媒魔法(オラクル)さえも耐え凌ぐのだ。

 ヴェロニカはそれを、一刀にして討ったという。

 

 市長をはじめ、一同は慌てて膝をつこうとしたが、ヴェロニカはさも面倒臭そうに片手を振った。

 

 

「堅苦しいのは苦手だ。後ろの者共も下がらせよ」

 

「承知致しました」

 

 

 レベッカの号令で一般の生徒たちが校舎へと戻った。

 静寂の一層とました校庭を、鋭い鷹の目がぐるりと一同の顔を見した。

 

 

「シルヴィアはいるか?」  

 

 

 呼びかけに応じで動いたのは生徒会長レベッカ。

 半歩右にずれると、かわいそうなほどに縮こまったシルヴィアが現れる。

 

 

「ご、ご無沙汰 しております、あ、ぁ姉上」

 

 

 恐々と前に進み出るが、その膝は震えており、視線は泳いでいる。

 

 

「四年二ヵ月と十三日ぶりだな、我が妹よ」

 

「は、はい」

 

「どうした、膝が笑っているぞ」

 

「そ、そんなことは……ありません。このシルヴィア・ロートレアモン、姉上を心より……か、歓迎、いたしております」

 

「その割には目が合わぬが?」

 

「そ、それは……」

 

「ちっ。どうやら、成長したのは胸と尻ばかりのようだな。

 ……先の襲撃事件の報告は聞いたぞ。勇猛果敢に街を守ったそこのレベッカ・ランドールと、妙な技を使って屍灰竜(ネクロマンシア)を駆逐した人物の行動は称賛に値する。

 だがお前は、民(たみ)の避難誘導とかこつけて屍灰竜(ネクロマンシア)から逃げ回っていただけのようだな」

 

 

 語るごとに眉間に皺より、睨みが深くなっていく。

 次の瞬間、〈鉄血の戦乙女(アイアンブラッド・ヴァルキリー)〉の二つ名が本性を現した。

 いよいよ我慢ならぬというように、平手が振り上げられた。

 

 

 

「貴様には失望したぞ、シルヴィア!」

 

 

 

「ひっ!?」 

 

 

 大剣を振るう腕力、フルプレートの甲冑の重量。華奢なシルヴィアが食らえば下手をすれば頸椎(けいつい)や顎関節(がくかんせつ)をも負傷させる程だろう。 

 振り下ろされる一撃に、誰もがシルヴィアが張り倒される未来を危惧した。

 

 が、ヴェロニカの平手がシルヴィアに届くことはなかった。

 

 

「何ッ……?!」

 

 

 手のひらは、宙に現れた薄い青の魔法障壁に阻まれていた。

 受け止めるにとどまらず、大きく弾き返していた。

 

 

「えっ……?」「止まってるぞ」

「何が起こった」「姫様はっ?」

「あれは六角障壁(ヘキサゴン・シールド)か?」

「何を馬鹿な、今の一瞬で展開的できうるものか」「そもそも詠唱がなかったぞ」

 

 

 騒めき立つ周囲。

 

 

「シルヴィア、貴様何をし……た!?」

 

 

 ヴェロニカが言葉に詰まる。

 それもその筈で、当のシルヴィアは来るであろう衝撃に怯えて固く目を瞑(つむ)っていた。

 とてもじゃないが、なにかを出来た状態に見えない。

 この障壁は、目の前で体たらくを晒す妹が施行したものでは、断じてない。

 

 

「シルヴィア」

 

「うぅ……」

 

「シルヴィア」

 

「……? は、はいっ」

 

 

 張り倒されるのは無くなったかと、恐る恐るを瞼(まぶた)を開けたシルヴィアの鼻先に、クレイモアが突き付けられた。

 

 

「貴様何だ? これは」

 

 

 もう3寸も行けばで肉に触れるかというところまで剣先を突くと、まるで最初(はな)からそこに顕現していたかのように半透明の障壁が展開される。

 騒がしかった歓迎団も一瞬で静まり返り、行く末を見守るばかり。

 

「あ、こ、これはその……」

 

 アッシュレイから貰ったピアス。障壁を生んでいるのは間違いなく今自分が左耳に着けているこれだ。それを思い出して、幾分か落ち着く。

 しかし、アッシュレイの事をどう説明したものか、分からない。

 結局しどろもどろになってしまう。

 その動作が、ヴェロニカには虚言を吐こうとしてるように映った。

 

 

「誤魔化すくらいならば良い。

 わが身可愛さに、保身の術(すべ)だけは研鑽(けんさん)しているようだが……、」

 

 

 右手の一本でクレイモアが空に掲げられ、日の光りに照り輝く。

 柄から刃の中心にかけてかかる装飾が輝く、しかし叩っ斬る動作に置いてなんの支障もないそれが、決して観賞用の玩具でないことを意味していた。

 刃渡り1メートル程の長剣。折れることのない、厚みある剣身。

巧みに取り廻せれば、たしかに大蛇の首も飛ぶのだろう。

 その、無数の血を啜ってきた刃が、シルヴィアに構えられていた。

 

 

「ではこうしよう。貴様のその臆病さの現れが我が一撃を受け止ることがかなったならば、今回の不祥事は不問としようではないか」

 

 

 では、受け止められなかった場合はどうなるのか。

 単純だ。

 命が代償だろう。

 

 だがどうだろうか。実際にそうなるものか。

 あの障壁は、張り手ではあるもの、びくともせずに阻んでいたのだ。それどころかはね返していたではないか。

 であれば、あのクレイモアでもなんともせずに受け止めるのではないだろうか。

 あれが本当に六角障壁(ヘキサゴン・シールド)であると仮定するとして、強力な攻撃魔法等ではないと突破できないものなのだから。

 

 一同が眉をひそめる中、ヴェロニカが柄に力を籠める。

 すると、鍔(つば)の中心に拵(こさ)えられた紅い宝玉からオーラが立ち上り始めた。

 

 

 

「あ、姉上……!?」

 

 

 ヴェロニカはまるで話すことはないと言わんばかりで、何も応えない。

 震える肉身を、冷酷に見据えるばかり。

 

 

 オーラの濃度が増し、空気が震え始めた。

 剣全体が発光し、周囲を紅く照らす。

 

 

 あれはヤバい。

 

 全員が息を呑んだ。

 

 

「な、ななんなな……」「なんということだっ」

「ヴェロニカ様!」「シルヴィア様!」

「ヴェロニカ様がご乱心だ!」「医者だ、医者を呼べ!」

「近衛はなぜ止めぬのだ!」

 

 

 歓迎団の間からも、次々と悲鳴があがる。

 シルヴィアは瞳孔を開いており、開いた口からは空気が漏れるばかりで言葉など紡(つむ)げていない。

 ヴェロニカが両手で剣を握る。

 

 

「怯えて何も出来ずに生き恥をさらすくらいならば、」

 

 

 一瞬。

 

 空気の震えがとまり、空間が張り詰めた。 

 

 

 

「今ここで屍となるがいい」

 

 

 

 そして、凶刃が振るわれた。

 

 

 

 

 キンッ――。

 

 

 

 

 高鳴り一つ。

 

 何の抵抗もなく振りぬかれた、無慈悲の一閃。

 

 

 誰もが障壁が破られ、シルヴィア第四王女の柔肌が断たれたのだと息を止めた。

 数拍後には、血を噴き出して事切れるのだと。 

 

 

 

 後に沸いた一縷(いちる)の後悔だろうか。

 ヴェロニカ第一王女は、口を歪ませクレイモアの切っ先を見つめていた。

 

 

 切っ先だった箇所(・・・・・・・)を瞼を見開き見ていた。

 

 

 

 

「――――中々に良(い)い剣(つるぎ)じゃないか」

 

 

 

 ヴェロニカの斜め後ろに、青年は立っていた。

 半ばより折ったクレイモアの剣身を、素手で掴んで可笑しそうに観察している。

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 振り向いたヴェロニカが、激しい剣幕でアッシュレイに圧をかけた。

 握れられている大剣がわなわなと震えており、その様相たるや、シルヴィアを連想できよう。

 が、その根源は恐怖ではなく羞恥と憤怒。

 ゆらゆらと豪華なブロンドヘアーが重力にさからう幻覚がみえる程。

 

 

 

「獲物は上々。だが、使用者の腕が伴っていな――

 

 

 

 

「無礼者めがっ!!」

 

 

 

 

 咆哮と供に、親衛騎士の隊長であろう男がアッシュレイに斬りかかった。

 無手の学生に対し、本職の騎士。それも指揮官クラスの聖天竜騎士(アーク・ドラグナー)による横からの奇襲。

 しかし、青年は無傷であった。

 

 いったい何が起こったのか不明だが、甲高い音が鳴り親衛騎士隊長は十数メートルと水平に吹き飛んだ。

 

 立ち上がろうとするが、叶わず、嘔吐(えず)きを繰り返すばかり。

 

 

 

「「「隊長!?」」」

「こ、こいつ……グレン隊長まで!」

「反逆罪だぞっ」

「ヴェロニカ様お下がりください!」

 

 

 遅れて他の騎士たちが抜剣(ばっけん)して構える。

 だが、その表情はいずれも動揺がうかがえた。

 当たり前だ。自らの上司が何もできずに瞬きの間に伸されたのである。

 にじり寄るが、斬りかかるタイミングを逃していた。

 

 

「良(よ)い、下がれ」

 

 

 制したのはヴェロニカだった。

 冷静な表情で青年見定めている。

 

 

「ヴ、ヴェロニカ様! こやつを許すと仰るのですか!」

 

 

 しかし女性騎士の一人が食い下がった。

 副隊長なのだろうか、それなりに地位があるらしい彼女の発言で周りも顔を見合わせて剣を下げられずにいた。

 女性騎士は剣を構え直し青年に踏み込こむ。

 

 

「くどい。下がれと言ったのだ」

 

 

 怒気を孕んだ再度の制止に、足を止めた騎士。

 それでも尚食い下がろうと意見しようとしたその時、その鼻先を空から降ってきた何かが掠めた。

 ハラリ。

 前髪が数本散る。

 

 校庭に刺さったそれは、己が隊長の剣であった。

 

 数拍置きいてスゥと、剣身が半ばでズレていく。

 

 ポトリ……なんて、呆けた音を叩て地に落ちていった。

 

 その断面は、それはそれは綺麗なものであった。

 

 無手の青年によって、斬られたのだと分かる。

 

 鏡のような断面が、騎士の揺れ動く瞳を鏡のように映していた。

 

 

 騎士は張り詰めた糸が切れたかのように崩れ落ちた。

 騎士のプライドか、荒く吐かれる息と呼応して震えてはいるものの、構えられた剣は青年に向けられたままだった。

 青年が腕を凪ぐ。。

 何もない虚空を払ったが、次の瞬間には手の先にあった剣が半ばからズレ落ちた。驚愕から震えが止まっている騎士の目は限界まで見開かれていた。

 斬られた剣先は地(じ)ベタに投げられている足に当たり、金属同士がぶつかった時特有の高い音を鳴らして地に刺さる。

 静寂が、場を支配していた。

 沈黙を破ったのはヴェロニカだった。

 

 

 

「見事だ、少年。

 名はなんと言う」

 

 

 

「アッシュレイ・ブレイク」

 

 

 

 ほう、貴様があの。

 

 ヴェロニカの口元が半月を描いた。

 

 

 




 物語の進行度合いとしてはドラゴンボールクオリティだと自覚有るので、次あたりはもっと動かしたいものです。


【コラム】
◆最初(はな)から
 当て字。本来は『端(はな)から』と書く。意味合いは「端(はし)から」「最初(さいしょ)から」となる。本書では作者が読者が呑み易いだろうと、に勝手に作った。

◆クレイモア
 両手用大剣。15~17世紀にかけてスコットランドの高地人(ハイランダー)が氏族(クラン)抗争やイングランド人との戦争で多用された。柄が長めで、取り回しが良いのが特徴。
 また、18世紀から出回ったサーベルもクレイモアと称され、ブロードソードの一種でありサーベルに似通った形状をしている。スコットランド人が好んで使い、第二次世界大戦時にも使われた。

◆柄(つか・え)
 西洋剣は「ポンメル(柄頭(つかがしら・えがしら))」「グリップ(握(にぎ)り)「ガード(鍔(つば))」の三部位からなる大類名「ヒルト(柄(つか・え))」と「ブレイド(剣身(けんしん))の2部から構成されている。

ヴェロニカが現れた。アッシュレイとどうなる?

  • フルボッコにされる、ラブラブになる
  • フルボッコ、犬になる
  • そもそもスルー、屈辱からストーカーになる
  • 戦うが遊ばれる、都度斬りかかる様になる
  • シルヴィアが間に入りVS姉妹対戦
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