お酒飲みたい。
「レベッカ」
午後の三時半。
二人は学院に向けて歩みを進めていた。
「どうしたアッシュレイ」
「解散にしよう」
「え……?」
「オレは確かに“レベッカ・ランドールと一日デート”をしたしな」
優勝賞品はもう受け取ったと言うアッシュレイ。
「物足りなさそうに見えるのは、わたしの気のせいか?」
半日行動を共にした男が“つまらない”……なんて感想。それは男だろうが、女だろうが(多少の個人差はあれど)屈辱以外の何物でもない。
そして、レベッカの瞳に映るアッシュレイの顔に満足感は窺えなかった。
一体、今日という日は何なのだ。
アッシュレイ・ブレイクという男は何なのだ。
貴族。学院最強。容姿端麗。文武両道。性格良好。……控えめに判断しても、自他ともに認める。高嶺の花。
悩むのは自意識過剰などではない。そしてレベッカは聖人君子ではない。血の通った人間で、彫像めいた美貌の中に人間らしい、負けず嫌い(コレはシルヴィアにも該当する)な面を持つ。
「気のせいじゃないな」
納得いかなかった。
レベッカは不満の中身を問おうとしたが、肩に手を置かれ制される。
「最後までいけないのであれば、中途半端より早いとこ手打ちにした方がいいんだよ」
溜まり溜まった鬱憤はアッシュレイの策略に嵌ってしまっていることを気付かせない。
もっとも。今アッシュレイが言った意味だって、少し考えれば思い至るレベルである。建前であるということも。
「アッシュレイ。君は散々生娘だ何だとわたしをなじってくれたが――――」
「別になじってなどいな――――」
「――――君こそ経験皆無の童貞ではないのか?」
シン……っ。
白昼に響く辛辣な言葉に、すれ違った通行人が視界の端で足を止めた。小鳥のさえずりさえも、耳に入ってこない。
外面若干、内面盛大、レベッカは憤っていた。
愛なしの、仮のデートであっても、最後を喧嘩に似た形で終了させたくはなかったが……それでも訊かずにはいられなかった。
初めてだ。こんなにも他人に感情をぶつけるのは。
怒りに近い、しかし明らかに怒りではない感情がレベッカの中をぐるぐると渦巻いていた。
細く淑やかな眉を吊り上げ、唇を結ぶ。
切れ目の
「なら、試してみるか?」
呑まれた。動けなかった。
指先で額に触れられたのを、レベッカは遅れながらに認識する。
その時すでに。
周囲の景色は一転していた。
◇ ◇ ◇
レベッカは困惑していた。
自らの周りにあるのは、慣れ親しんだアルテミス寮(女子寮)の自室。今朝、昨晩から片付けていた生徒会関係の書類が机の上に置いたままにしてある。
――――どういうことだっ? さっきまでストリートにいたハズじゃないのか??
一ミリも動かさずに見据えていた瞳が、慌てふためき忙しく動いてしまう。
その様子を、自分を逃がさないように上から押さえつけている、アッシュレイ・ブレイクは静かな眼で映していた。
誰も入れたことのないこの部屋にはレベッカの密やかな秘密があった。顔の横、ベットの上に無造作に置いてある
堅実、凛とした空気が周囲の自分に対する認識であると、こんな少女のようなアイテムは似合わないと。分かっている。そんなことは、分かっているのである。けれども、なぜか……この人形にだけは、なぜか強く惹かれたのだ。
レベッカは、思いもしなかった露呈に羞恥を覚えて更に
追い込むように、アッシュレイが動いた。
「んんっ!?」
まだ誰にも許したことのない唇は、いとも
間もなくアッシュレイの舌がこちらの唇を割って
レベッカは、恐怖を覚えた。
下腹部から生じてじんわりと全身に広がる、未知の感覚に。力が抜け、思考がふやける究極的なまでの快楽。
何かが来るっ。いや、来てしまうっ。
そう既視感を覚えた。
その時、
「っ、ぷはぁっ」
唐突にキスは中断された。
見上げると、彼と自分の舌と舌の間ではいやらしく唾液が伸びている。
アッシュレイは静かなままだ。
息が乱れ、心身がほだされているのは自分だけ。
「これでも、童貞だと?」
確かに、その……凄まじい
なんて、言えるわけがない。
「い、いや……、わたしの失言だったようだ、だからだな、その」
実のところ、アッシュレイは少々のズルをしている。
その身に宿る能力、少し魔法を使った。“対象者の感度上昇”
開発されてもいない処女がキスだけで、ここまでになるわけ。っという話である。七つの大罪『色欲』にあやかった魔法の効果絶大だった。
転生してまもなく、淫行に魔法を行使するとは思わなかったが、モノは使ってこそ。躊躇いの余地もない。
なお。アッシュレイのポリシーで、精神には干渉していない。
オーガズムの予兆を感じ、その未体験の引き込まれるような感覚に恐怖に似た感情を持ったのは、彼女の――――レベッカ自身だけの本物だ。
靴を脱がされた。アッシュレイも、いつ脱いだのかは不明だが既に脱いでいた。
そういえば、瞬間移動のようにここに移動したんだったと思い至る。
再び唇が塞がれた。
「んんっ、んっ……ぅん」
自分でも分からない。
更なる快楽を求めたのかもしれないし、ほとんど意味を成していない抵抗を潔く諦めただけなのかもしれない。
ただ。
客観的事実を述べるなら、今度はレベッカからも舌を絡ませていた。……ということだけだった。
薄目から見えるアッシュレイは、積極的になったレベッカに少し驚いたように眉を動かしたが、次の瞬間には激しさを増させることで応えてみせた。
「はぁ……んんっ、ぁふ……はぁ、ンんんっ!」
またあの予兆が現れた、と分かった時……アッシュレイが唇を離す。
完全に弄ばれていることを、レベッカは理解した。
覗き込む瞳は、威圧するようにレベッカを問うていた。
アッシュレイは折りに来ている。こちらのプライドや地位に伴う威厳を、その一切合切を折りに来ている。
ただの女になれと、成り下がれと、彼の瞳はそう言っている。
結果、レベッカは口と瞼を固く結んで横を向いた。
ハードルが高過ぎた。
「強情だな」
首筋にキスをされる。痕がついてしまうのではないか。そう思うほどに強く吸われた。
けれども体は融通が利かなくて、鋭い電撃のような快楽が駆け抜ける。
一瞬の出来事でも、悩ましい吐息が零れた。
「はぁ……っ」
アッシュレイの手が布団と背中の間に滑り込んで、ワンピースのファスナーを下される。
「そんな硬直していないで、楽にしたらどうだ」
「ずいぶん……簡単に言ってくれる……」
「まァ、凌辱は好きだからそのままでもいいがな」
「き、君は変態だな」
「言ってろ。
ああ、そうだ。このワンピース、体のラインがそんなに出ないゆったりとした作りだよな」
ここで、アッシュレイは一息
ただの間かと思ったが、顎を掴まれ、やや強引に正面を向かされた。
驚いて目を開けた瞬間、
「だというのに、こんなにも生地を突き上げてる」
きゅう……!
痛いくらいに勃起していた乳首を、摘み上げられた。
「んぁああっ!!?」
「変態はどっちだ?」
何? 何だ? 何だ今のは。分からない、知らない。ああ、いや、知識としては、ある。
休む間もなく、再度ワンピースの上から胸を揉まれた。
湧き上がる快楽で自然に口が開き、声が漏れてしまいそうになる。
レベッカは枕を掴んで自らの顔に押し当て、声を抑えようとした。
「~~っ、~~~~っ!」
「別に恥ずかしがらなくていい。それは女として極普通の反応だ」
違う。
確かにそれもあるが、顔に押し付けた枕からした、アッシュレイの匂いに幸福感に似たものを覚えてしまった自分に怒りと羞恥、やるせなさを感じたのだ。
ただ、アッシュレイの勘違いには救われた。今の内情がバレたら、自分の最後の防壁は完全に崩れ去ってしまうこと間違いなしだ。
勝手な言い草に、思わず枕を取り払って反論する。
「は、恥ずかしいものは恥ずかしいんだ!」
「恥じらいの無い女は、かのアマゾネス族にもそうはそうはいないさ」
「そういうことを、」
言っているんじゃないんだ。
ここでレベッカは気付く。
一瞬前まで自分の乳房を弄んでいたアッシュレイの右手が、そこを離れ、下腹部のそのさらに下へ向かっていたことに。
つまり、このままでは――――。
脳内でけたたましい
とっさに上体を起こして、
魔の手を掴もうとした。
それが、いけなかった。
「――――ダメだっ」
上体を跳ね起こしたレベッカは、自身の下半身へと伸びるアッシュレイの腕を両手で掴んだ。
「…………」
「っ……!」
必然に、二人は吐息の熱が感じられる至近距離で見つめ合う形となる。
すっかりただの少女にまで墜ちていたレベッカは、酷くしどろもどろとする羽目になり、それがアッシュレイの嗜虐心を悪戯にくすぐった。
「どうした」
「あ、その、わたしは、……経験が、無くてだな――――うわぁ!?」
ちっ。
アッシュレイは舌打ちをした。
レベッカが跳ね起きた際、ファスナーを開けられていた彼女のワンピースがずり落ちていたのだ。
右の胸にはつっかえたが、左の胸は完全に露出していて、絶景だった。
それを、気付いたレベッカが手で隠したのである。
「色気に欠ける声だな」
「だ、黙らないかっ。――――んっ」
三度目だ。またもや唐突に唇を塞がれる。
擬音で表現することが
時間にして、一分弱。
良いように口を犯され、くたくたに出来上がったレベッカは弛緩して後ろに倒れる。
しかし、アッシュレイの腕が腰に回って火照る肢体を支えた。
申し訳なさ程度に覆っていた腕は、脱力と共にだらりとそこを隠すことが叶わない。アッシュレイはこれを狙って自分にキスをしたのだろう。呆ける頭で辛くもそう思考した。
ついにアッシュレイは、レベッカの胸の中央に舌を絡め強く吸いついた。
「んあぁぁぁあああっ!!?」
廊下にまで響いてしまうのではないか。そう心配になるほどの大声がレベッカから
発せられる。もっとも、今のレベッカにそんなことを気にする余裕はない。
甘く、強烈な刺激に身体が跳ねる。
舌に這われ、きつく吸い上げられる。それだけで、下腹部の奥から形容し難い快楽の波が全身をほだした。
その感覚から逃れるように身をよじると、ほんの少しだけ楽になる。
予想に反してアッシュレイは追い立ててこなかった。
「もっと欲しいか?」
この男は遊んでいるのだ。
笑うアッシュレイの手が、今度こそ下に届いたのが分かった。
ワンピースを捲くられる。若干に背伸びをして穿いていた、赤の下着の紐を解かれた。アッシュレイの瞳は自分の瞳と合っていて、……だから直接見ているわけでもないハズなのに、分かるものなのだろうか。
揺るぎ無き事実として、アッシュレイの手捌きに迷いはなかった。
まもなく、何度目か分からない悪い笑みが視界に入った。
「洪水だな」
何を言っているのか。……意味が分からなかったのは、数秒間だけ。
顔の高さにソレを掲げられて、理解させられる。
レベッカの下着は、まるで子供がお漏らしをしたのかと誤解できるほどに、濡れていた。
その液体がどういうものなのか分からない程、レベッカは
たちまちに頬に熱が奔った。
「ホントは布越しに愛撫するのも良いんだが……、なぁ?」
「だ、黙――――ひゃぁっ!」
クツクツと笑うアッシュレイの指が、誰も触れたことのない場所を……股の間をなぞった。
「ゃ、ぁ……ッ」
ひくんっひくんっ、と大げさなくらいに身体は跳ねる。逃げようと身をよじると、指はより激しく攻め立てた。
「ひゃ、ぁ、……んんッ」
「綺麗じゃないか――――」
耳元で囁かれた甘言に、心が躍ったのは、気のせいであると思いたかった。
単に誉めそやされただけで、なびいてしまうなんて、自分はそんな軽い女でない。
秘所を縦に撫でられた。
「ぁ……や――――ッ!」
甘えているかの様にも取れる甲高い声。それが自身のものだと分かっていても、どうしようもない。レベッカは下半身からの刺激に耐えるので精一杯だった。
だというのに、アッシュレイは胸にまで手を伸ばして同時に愛撫する。このまま果ててしまうのか。……かと思ったら、秘所だけになりさらに手を緩められる。
どう考えても、体力を管理されているとしか思えない。
「ぁ、あっ……だめ、だ……ぁッ!」
「これはアレだな。もう愛撫する必要皆無だな。
――――そう、思わないか?」
離れた手は、顔の前にかざされる。その指の間には、たらりと透明の液体がたくさん纏わり付いていた。
今さっきの、下着以上の羞恥心を覚えた。
バサっ
衣服が豪快に宙を舞った。レベッカのではない。というか、ワンピースはもはや腹部のみしか隠しておらず、全く機能していない有様だ。アッシュレイも脱がす必要性を感じないだろう。
アッシュレイが脱いだのだ。
「? どうした、脱ぐのは当然だろう」
「……君は、見かけによらずかなり筋肉質だな…………」
息を調えながら言ったレベッカの言葉は、もっともだった。そして、ある意味で核心を突いていた。
そもそも、アッシュレイのオリジナルは魂と
身長は平均より少し下で、筋力はそこそこあるが、気を使って鍛えていたわけではないらしく、左右でアンバランスな面が見られた。
よって、アッシュレイは自身の新たな肉体に魔法で手を加えた。
見かけの筋肉量――――実際の筋力は、もはや人外――――を若干増やし、バランスを調えた。身長にも手を加えた。毎日地道に伸びるようにしてあり、一ヶ月弱後には175センチほどになる予定だ。
「そんなこと言ってる余裕があるのも今の内だ」
服を脱ぐので生じた束の間の休息は、一瞬で終わる。
「ま、待てっ」
覆いかぶさるアッシュレイの胸板を、レベッカは押し返した。
レベッカは若干に涙目で、アッシュレイに必死に訴えた。
それを、アッシュレイはさも可笑しそうに笑うのだ。
「なんだ、やっぱり怖くなったか?」
「わ、わたしはっ、貴族だ! で、でも君は平民だ……っ」
アッシュレイはレベッカが言わんとしていることを察した。
『身分問題』だ。
より正確には、身分差から生じる世間体や、ランドール家の権力の問題。また、アッシュレイに及ぶであろう私怨の被害である。
しかしアッシュレイは知っていた。ファザー・ドラゴンが情報として送り付けてきたのだ。
何を?
この自身の体に通う、赤く尊き血を……だ。
――――聖誕歴元年。
人類史上、初めて
その名はロサ・マリア。
死後、聖女として崇められたロサ・マリアは、いわゆる
広くは知られていないが、彼女にはとある
そう、『アッシュ・ブレイク』はロサ・マリアの子孫だった。つまるところ、その肉体に憑依転生したアッシュレイはロサ・マリアの子孫なのだ。
しかし、ロサ・マリアは生涯処女であったとされていて、真実を知るのは教会でもほんの一握りの者しかいない。おろか、自分はロサ・マリアの子孫であると言えば、反教徒として検挙されてしまうことだろう。
アッシュレイはこのカードを切ることにした。
転生直後から気になって隠蔽魔法を施していた箇所。
現れたのは、右腕の腕から手首にかけて刻まれた――――あまりにも大きな〈聖刻〉。
「何だか分かるか」
「……〈聖刻〉、なのか?」
「そうだ。それも、」
「……それも?」
「アヴァロン聖竜皇家の姫が宿っている〈聖刻〉だ」
「は?」
「オレはアヴァロンの騎士だと言っている。
確かに、たかが貴族のお前とは釣り合わないかもしれないな」
「……、……本当なのか? 君があの、アヴァロンの騎士?」
「その綺麗な
当惑して半空きしていた口に舌を差し込まれる。
「んんっ……」
想定外すぎる真剣な(スケールの大きな)話題に、意図せずして平常を取り戻しかけたレベッカの体が情熱的なキスで再び興奮状態にった。
いつ舌が離れたかは分からない。
それでも、気が付けば与えられる快楽に素直に喘いでいる自分がいる。
なまじ身分という理由でちっぽけな抵抗をしてきただけに、失ってしまえばつっかえる物が何一つとして無くなってしまった。至極単純な結果だ。
アッシュレイの逸物がレベッカの秘所に宛てがわれた。
「あ……、」
「初めてなんだろう? 固くなるな。個人差はあるが、痛さが増すぞ」
忠告も早々に、アッシュレイはゆっくりと腰を進める。
「ま、待っ――――ぁ、ぁあ、入って……ッ? ぁ、……っ……ッ」
指とは次元の違う質量に秘所を押し広げられて、鈍い痛みに息が詰まった。
人に聞いていたよりは、自分は痛くない方だ。そう思うも、痛いものは痛い。何かに
無意識のうち、レベッカは自分に覆いかぶさっているアッシュレイを抱きしめていた。
少し目を張ったアッシュレイを見て、自身がした行為に激しい羞恥を覚えたけれど、結局はそんな羞恥よりも安堵が勝ってしまった。
この後の描写を書こうか、書くまいか迷っている。
そして、
つまり、
上記のようなことを言うということは、
ストックが切れちゃった☆
(;´・ω・)ふぇぇぇぇぇぇえ…………
なんで私の目はエメラルドじゃないんだぁぁぁぁ