もだえながらかいた。
「ま、待っ――――ぁ、ぁあ、入って……ッ? ぁ、……っ……ッ」
自分の中に入ってくる異物に、レベッカは今まで体験したことのない感覚を覚える。
先程までの、指での愛撫とは次元が違う。
太く、熱く、硬い逸物は、きっと自分の純潔の証を力でもって突き壊すのだろう。
けれど、実のところレベッカはそれでもいいと思っていた。
『アヴァロンの騎士』など、優良物件そのものだし、今日一日で、レベッカはアッシュレイの儚げで優しい面をしっかりと見抜いた。理想かと問われれば、やはり長年共にいるわけではないので少し悩むところだが、近い、っと答えるのは容易である。
「あ、あっしゅれ、い……」
無意識に、彼を抱きしめて縋っている自分に、レベッカは自覚がない。
ただ、なんだか良く分からない涙が出てきたのがわかって、所詮自分もただの女なのだと自覚できた。
「レベッカ。深呼吸だ」
「あ、ああ……。すー……はぁー……すー……はぁー……」
「落ち着けとは言わないが、せめて腹の力は抜いておいた方が良い。それとも、痛覚を麻痺させてやろうか?」
「はぁー……すー……。
それ、は侮辱か?」
確かに、破瓜の痛みというのは神聖視というべくか、特別なものと捉える風潮がある。
「ほう」
それに、この痛みだけは幸せの痛みだと思えるんだ。
そう続けようとしたが、すでにアッシュレイの瞳は猟奇的なまでの光を宿し爛々としていた。
結果、頬が引きつり言葉か詰まっってしまう。
「あ、いや、」
レベッカは情けなくも泣きそうになった(既に泣いているが、それとは別口だ)。
少し生意気を言ったので、処女膜のところで止めてくれている豪槍で、膣奥まで勢いよく突かれるのではと思ったからだ。
アッシュレイはそれを察した。
「そこまで鬼じゃないさ」
アッシュレイがレベッカの濡れる唇をついばみ、ゆっくりと丁寧にキスをする。
何度と繰り返された淫猥な水音が、背徳の情を催させ、レベッカを興奮させる。
まるで壊れ物を扱うかのように優しく髪、耳、頬、顎、首筋、鎖骨……となぞられ、最後には胸をこする様に撫でる。それは段々と激しさを伴い、レベッカを追い詰めた。
呼吸がままならず、若干に苦しいなか、レベッカは初めて自らの意志でアッシュレイの背に腕を回した。
そうして女は男への慕情を自覚する。
そう考えると、恋は急転直下と言っている恋多き女子たちの言葉は正しいのかもしれない。前から気にはしていたとはいえ、会って一日。急転直下そのものだ。
「アッシュレイ…………君はわたしを、わたしを身体だけじゃなく、心も愛してくれるか?」
「不安か、レベッカ」
「……ああ、言われて気が付いたよ」
「可愛らしいじゃないか。大丈夫だ、安心していい」
「…………ありがとう、アッシュレイ。そんなことを言ってくれたのは、君が初めて――――ぁくぅ!?」
クスリ、と笑うアッシュレイ。
レベッカは気付いた。
「は、
「狭くて大変だ、流石処女」
「こっちはいつ裂けるのかと心配だっ」
「その余裕を見ると、やはり問題なさそうだな」
「何を言っている。いっぱいいっぱいだっ、――――ひゃうッ!!?」
肉と肉がぶつかる音を消すレベッカの嬌声は、アッシュレイを無自覚に焚き付けた。
「勝手に飛ぶなよ」
「ふっ、は、無茶を、言う、なぁア……!?」
「無茶は言っていない」
浅いところで何度も執拗に出し入れされて、レベッカはあっという間に思考をシャットアウトさせられた。
「ん、ン……ぁ、ゃ……ひぅン! ぁあっ!?」
「ふっ」
「ぅあ――――ぁ、あ、あ…………ッ!!」
アッシュレイはレベッカを抱き起し、自らの腿に乗せて突き上げた。
ずん、と、深く逸物が沈めば、たちまちにレベッカの頭は真っ白になる。
ぷしゃぁ――――――――
純潔を捨てて間もない恥部から吹き出た小水とは別の液は、アッシュレイを汚した。
余韻に浸るレベッカの耳元で、アッシュレイは囁く。
「あーぁ、ガキみてぇに漏らしちまいやがって」
「ふ……ぇ? ――――ッ、ち、違うっ。こ、これは、その、」
「悪い子には折檻が必要だな」
レベッカが二の句を紡ごうとするが、アッシュレイは待たない。
たわわな胸の淫らに尖った頂を唇で挟み、強く噛んだ。
「ッッッ!??」
まるで、陸に打ち上げられた魚のよう。
火照った女体は面白いように跳ね、またも潮を噴く。
「ぁ、ぅ……や……ん、ぅあ……あ、あっしゅれえ」
朦朧とするレベッカは、もうこれ以上の快楽に耐えられそうになかった。
そろそろ楽にさせてやろうかと、アッシュレイはラストスパートをかける。
深い位置で激しく腰をピストン運動させた。
「ふぁうッ、あッあっあッ……ンぁアッ!!」
「出すぞっ」
「っ!?」
ドクっ どくどくどくどくどくどくどくどく――――
「ァ、ぁ……。あっしゅれぇ……」
……ぃ。っと最後。
レベッカはアッシュレイにもたれて気絶すると、小さく寝息を立てていた。
アッシュレイはというと、
「まぁ、オレを満足させられるようになるまで頑張ってくれよ、レベッカ」
事後処理をし、シャワールームへと向かう。
しようと思えば匂いをも完全に片づけられるものを、あえてしなかった。
(にしても結構出たな……)
新しい肉体はこっちの方も強いようだと、アッシュレイは目を細めて顎を撫でるのであった。
◇ ◇ ◇
トントントントン――――
軽快な包丁さばきの音がするのは、アルテミス寮の最上階、もっとも奥にあるレベッカ・ランドールの一室から。
普段さして使わないキッチンを喜ばせているのは、意外にも部屋主ではなく、主婦でもなく、一学生の男だった。
男は働き、女は家庭を守る。
亭主関白が基本のこの世界では、包丁を持つ男というのは非常にまれだった。もちろん、仕事がコックだというのならば、別だが。
やがて、男の手が止まり、鍋とフライパンにかけられていた火もその明るさを消した。
「レベッカ」
卓上に並べる男を、枕から顔半分だけを出して見ているのは一人の女。
このアンサリヴァン騎竜学院の生徒会長である
晩の出来事が影響したのか、いつもより、紅の髪が艶やかに思えた。
「……もしも孕んでいたら、君は責任を取ってくれるんだろうな」
「当たり前だろ」
「っ、そ、そうか……」
カウンターに対して簡単に赤面し、途端忙しそうに天井やらアッシュレイやら、アッシュレイやら、壁やら、アッシュレイやらをチラチラと見やる真紅の髪の学園最強(ここではアッシュレイは加味しない)は、とても可愛らしくて、なんだか意地悪をしたくなってしまう。
「安心しろ。お前をあの男女にはやらん」
だから少し、キメてみた。
ほぼ何でも知っている自分にも似できるセリフであった。ファザー・ドラゴンから送られてきた膨大な情報に答えはある(とはいっても、穴が有るには有るようだが)。
今言ったように、レベッカにはある種のストーカー紛いがおり、レベッカは手を焼いている。
役人に訴えればいいだけなのだが、そのストーカーはシュブロン王国の貴族なので、レベッカも貴族である以上、訴えればほぼ確実にロートレアモン騎士国とシェブロン王国との国家間問題でなってしまうのだ。
「……。アッシュレイ」
「どうした」
「どうしてオスカーの事を知っているんだ?」
「秘密は男の宝だぜ?」
ちゃんと食っとけよ。
そういうと、アッシュレイはその場から光の粒子が四散するように姿を消した。
まともに瞬間移動の魔法を見たレベッカは、驚いたが、思い出したように頬を朱に染めて足をバタバタさせ身悶える。
レベッカの手は自らの下腹部に添えられていた。
「絶対に、まだ、入っている……」
ナニがだ? と、アッシュレイがこの場にいたら意地悪していただろう。
そんな妄想をして、再びバタバタが激しくなった。
かと思ったが、足はすぐに止まった。
よく注意すると、すぅー、っと息を吸う音が聞こえる。
レベッカは枕にアッシュレイの匂いが残っていることに気が付いたのだ。
枕を顔に押し付け、ゴロゴロとしているところ見ると、人生で幸福な出来事が連続的に起こって喜んでいるのだろう。
初めての恋。
初めてのキス。
初めての朝。
初めて、本当の自分を認め、受け入れてくれた男。
ロサ・マリアの血。
ぬいぐるみを見ても何も言わなかかったし、何より、『カッコいい』『凛々しい』……と、そう言われ続けてきたレベッカにとって、自分を指して「かわいらしい」と言ってくれたアッシュレイは、レベッカにとって全てになりつつあった。
騎竜学院は彼を問題児としているが、そんなことは真実を知らない者たちが騒いでいるだけで、関係ない。
……愛の営み。
なんてすばらしい響きだろうか。
レベッカは跳ね起きて、食卓に着いた。
彼氏が作ってくれた料理は、自分が作るものよりクオリティが高くて、むかついたが、箸は止まるどころか加速した。
ぱくぱく。
もぐもぐ。
すぅ…………こくん。
これは、うかうかしていられない。
アッシュレイの胃袋を掴めないではないか! ぱくぱく。
けれども、なお。
一時限目開始を知らせる鐘がなるまで、レベッカの笑みは何時にも増してすれ違う人々を魅了し続けた。
◇ ◇ ◇
『
アンサリヴァン騎竜学院。
勤勉に取り組む生徒たち。
その中でも普段は流している美しい金髪を訓練のために結い上げた、一人の女生徒を見て呟く。
「粗いな……」
アッシュレイ・ブレイク。
彼は本来、あの場で皆に混ざって授業を受けなければならない一生徒である訳だが、生徒会長レベッカに呼び出された、っと欠席していた。
レベッカの用事というのは生徒会への勧誘で、アッシュレイは二つ返事で承諾していたのだった。書類関連も済んでおり、言うなればサボりである。
そんな彼は今現在、生徒会室でコーヒーの入ったマグカップを口に付け傾け、高みの見物をしている。
生徒会入りの書類手続きはとっくに終わっているのに。
つまりサボりである。
そんな彼に声がかけられた。
「ほぅ。パルも持ってないのに
レベッカだ。
生徒会長たる彼女は、先日の
「分かるさ。
……シルヴィアは努力型だな。才能は平均より若干上ってところだ。そう遠くない将来、限界が訪れるだろうよ」
「それは……辛口評価じゃないのか?」
レベッカは生徒会書類にペンを走らせながら窓枠に寄り掛かるアッシュレイをちらりと見やる。
確かにあの第三王女は決して天才ではない。しかし、努力の天才ではあると思っている。
それに。いつ、突如として才能が開花するかは、誰にもわからない。
才能なしとするには、まだ早計ではなかろうか。
「ちなみにオレからすればレベッカもそこそこといった部類だぞ」
「……実際にわたしとアッシュレイが争うなら、アッシュレイ単体に対して私はクー・フリンも
「クー・フリンは勇敢だ」
「……それが?」
「故に戦うという選択肢を取れないだろうさ」
「ふふ、近いうちにその力の一端を見せてもらうとするか」
「自分で言っといて何だが、信じるのか?」
「自分の男くらい信じられなくてどうする」
微笑をこぼすレベッカ。
アッシュレイはコーヒーを啜った。
「……レベッカが大人びているから、さばさばしたカップルになってるなぁ」
「それは、アッシュレイにも言えるんじゃないのか?」
「否定はしない」
アッシュレイの後ろから腕を回し、レベッカが抱き着く。
「なんだか眠いな……」
カップを窓際に置いて、振り返りざまに鼻先へ軽く息を吹きかけた。
んっ、と
ゆっくりと寝台に卸した。
「少し寝るといい」
「私にだけ、悪事をさせるのかな? 酷い男じゃないか」
レベッカはアッシュレイの腕を引いて自分の横に引き倒した。
背中に腕を回して、足を絡ませる。
人間抱き枕の出来上がりた。
「明るいうちから甘えん
「君が激しくしたから、気怠いんだよ。なにか癒しになるものが必要なんだ」
「魔法で回復させるが?」
「魔法? 面白い男だな、本当に。
でもだめだ、絶対だめだぞ。不思議と心地よい気怠さなんだ……」
「そうか」
そのままアッシュレイの首元に顔を
ものの数分で寝息が小さくなっていくのを確認ししつつ、先ほどから幾度と
白い光に溢れた、空間。
神のいたずら。
『良いか?』
(良いか、じゃないよ。
いい感じでオレも寝ようとしたのに。話しかけんなよ。
だいたいな、神が軽々しく下界の生物に干渉すんなっての)
『む。我は――――』
(あー、ちょっと待て。オレはアンタに確認せにゃならんことがある。
アンタがただの夢の住人じゃないことは何となく察したし、八百万の神的に言うなら、夢的なモノを司る存在であろうことも、仮説した)
『ほう』
(まぁなぜかって、夢にしては感触がリアル過ぎるからだ。
で。ここが本題なんだが、オレは一体いつになったら現実に戻れるんだ?)
『ふむ、まず訂正しておこう。
一つ。これは夢ではない。これは確固たる現実であり、地球とは異なった次元の世界である。
二つ。貴殿は戻ることが叶わない。ここが、この世界こそが、貴殿が骨を
アッシュレイ。貴殿は
――――違いないだろう?』
(……。
ああ、そうだな。違いない。見事見事、まさにご明察だ。
……、…………はぁ……。
それで? 本題はなんだ)
『うむ。貴殿のパルが生まれなくて困っている』
(よく分からんが、生まれないとどう困るんだ)
『貴殿には竜の血を後世に残してほしいと頼んだな』
(ああ)
『早い話が、貴殿は生まれてくる自身のパルと子を成してほしいのだ』
(……は? りゅ、竜とヤれってのか…………?)
『貴殿の
(うー……ん。まぁ……、それなら良いか)
『うむ。納得してもらったところで、貴殿には“
(ほー。さんくす)
『いや、儂はローソン信者である』
(……、…………)
『…………』
(…………、………………)
『儂のポンタカードの現在のポイントは――――』
(違っげぇよ。サンキューってことだよ。あとオレもローソン勢だよ)
『ぬ。奇遇であるな』
(だな)
『ではさらばだ』
(おうよ)
沈んでいた意識が浮いてくる、いや切り替わったという表現の方が正しいか。
肉体に感覚が戻ってきた。
今の会話の中で、ファザー・ドラゴンが放ったカルチャーショックでアッシュレイは精神的にやつれた様だ。
あのファザー・ドラゴンとかいう奴、割かし自由に生きている様。
無意識に抵抗してくるレベッカの腕と足から抜け出し、先刻に放置したコップでも片すかと立ち上がる。
傍らのタオルケットをかけてやると、唇がむにむにと動いているのが伺えた。どんな夢をみているのか知らないが滑稽な表情をしている。
そのまま仮眠室を後にした。
その時であった。
突然、激しい頭痛が彼を襲ったのだ。
「ぐっ……ッ?!」
思わず床に膝をつき、苦悩する。
あれだ。
先にファザー・ドラゴンが言っていたやつだ。
そう、“原作知識”という情報だったか。一度構築された別世界の情報を、脳みそに直接送り込まれている感覚。
とにかく。とても痛い。かなり痛い。
配管の耐圧を明らかに超えた物量。
とんでもない量の情報が、流れ込んでくるのが分かる。
「……くッ…………ッ……!」
「……ん? ――――アッシュレイ!?
どうしたんだっ、アッシュレイ?!」
呻く声と、
天井を知らない激痛はさらに悪化して、アッシュレイは無意識に、内に秘めた魔力やら氣力やらが体外に溢れて荒れ狂う。
濃密度の力場が展開され、激しい音を立てて生徒会室へ続く半開きの扉が押し閉じる。痛みと比例するように、その余波は強力なものとなり、彼の身を按じ駆け寄ったレベッカにたたらを踏ませる。
――――パリンっ!
その直後、逃げ場のない圧力にたえかねた窓ガラスが割れて外に飛び散った。
額から汗をながし、息を切らせる様子は、フラッシュバッグに襲われている様にも見えるだろう。
「大丈夫、大丈夫だアッシュレイ……」
苦しむ恋人を抱きしめて、レベッカは固く目をつぶっていた。