※この作品はR-18です。

星刻のアッシュレイ   作:咲良餅

7 / 19
 なんか、前回の題名がおかしかった。
 やるんだったら、今回のだよお('ω')

 さて、今回は契約完了ということで。
 はい。なんの? なんて、皆様あんがい忘れていらっしゃる。かも。
 ちなみに私も読むまでガッツリ忘れていたのダ。


 読んでいて気付いた。
 原作片手に読んでみると、楽しいさアップ⤴⤴⤴


7.契約完了

 生徒会室に戻り、レベッカの入れたコーヒーを飲んで一息ついたアッシュレイは、学園食堂〈ラ・テーヌ〉に足を運んだ。

 時刻は正午になるかというところ。ちょうどいい時間だった。

 紅茶を二つ頼んで、そのまま屋上に行く。

 小洒落た机をみつけると、腰を下ろした。

そして、どうしてか紅茶をもう一つ、向かいに置く。

 

 しばらくすると、一人のメイドがアッシュレイの背後、ドアの陰から現れた。

 コゼット・シェリー。

 シルヴィア・ロートレアモンの専属侍女である彼女は、学院では割と有名人だ。いつも笑顔でシルヴィアの横に傅く彼女を嫌う者はいない。

 だがしかし。

柔和な笑顔に定評のあるメイドは、冷気を帯びる程の真顔であった。

 外行きのスタンスを自ら捨ててきたということは、それだけコゼットが真剣であるということに他ならない。

 

「お気づきでしたか、アッシュレイ・ブレイク様」

 

 アッシュレイはすまし顔で、目を閉じたままアンサル・ティーを啜りながら、トントンっと、机の向かいを小突く。

 座れというニュアンスだ。

 横柄な態度。だがコゼットは眉一つ動かさず、対席に着いた。

 しばらく沈黙が続き、カップの中身を空けたアッシュレイがため息を吐(つ)いた頃、コゼットが切り出した。

 

「驚きましたわ。このアンサリヴァンに、あのように強力な竜媒魔法(オラクル)を使える方がいたとは」

 

「主従契約の竜媒魔法(オラクル)だそうですが、姫様をどうなさるおつもりですか」

 

 アッシュレイは未だ目を閉じたままで、相槌のひとつも打たない。当然、竜媒魔法(オラクル)ではなく魔法だという訂正もしない。それに、言ったとしても信じるかどうか。魔法とは竜族が使うものだ。この世界の人間は体内に魔力を持たないのだから。

 聞いていることはわかったので、コゼットはとりあえず続けることにした。

 

「先ほどの騒動、途中より拝見させていただきました。読唇術の心得がありますので、会話の内容も把握しております」

「…………」

「場合によっては武力による介入をさせて頂こうと思いましたが…………」

「……」

「姫様は純粋ですわ。純粋故に、アッシュレイ様を強く信じておりますわ。.今回のことでより一層、盲信程に酔われるでしょう」

「…………」

「お答えください。でなければ、わたくしも手段を選んでいられなくなってしまいます」

 

 ここで、アッシュレイの眉が僅かに動いた。

 コゼットはやっとまともに会話を交わせるかと思ったが、どうやら違うようだ。

 

「……ほおぅ?」

「…………、お答え願いますわ」

 

 アッシュレイは荒事を望んでいるようだった。

 ただただ愉快だという雰囲気が伝わってきて、埒が明かぬと見たコゼットは望み通りの強硬手段に出ることにした。

 初動は一瞬。

 次の刹那、蹴りあげられた机を手刀が縦割り、鋭い掌底がアッシュレイの胸板を捉えていた。

 

 激しく横に回転しながら大きく後ろに吹き飛んだアッシュレイだが、数度に分けて地を蹴ることで難なく着地しみせる。

 それを認めたコゼットの表情は、いやがおうにも引き締まった。

 

 第一、手ごたえが固すぎた。おそらく、闘氣かそれに準ずる何かでカバーしているのだろう。

 つまり、自分と同じく境地に達している猛者ということだ。

 第二に、座ったままの彼を攻撃したはずだが、いつの間にかイスは横にずらされている。道理でイスの吹き飛ぶ音が聞こえないはずだ。

 問題は、今の一瞬の中で彼にはそれだけの余裕があったということ。ひいては、自分が気付けなかったという事実。

 

 校庭の一件で腕が立つことはわかっていたが、ここまでとは思っていなかった。

 やり過ぎを気にしている事態ではなくなった。学生に過ぎないという認識は捨てなければならない。

 

 そして第三。

 片手をポケッ(・・・・・・)トに入れたま(・・・・・・)まというハン(・・・・・・)ディキャ(・・・・)ップにもか(・・・・・)かわらず(・・・・)、たやすく受けられてしまった事。

 本気を、出さなければならない。

 

「この屋上は広くて良いな……」

「遊んでいられる余裕がるのも今のうちですわ。

 ――――氣を練れるのがご自分だけだと思わぬことですっ!」

 

 だんっ!

 

 細身のメイドが出したとは思えない地を蹴る音。

 しかし。

 左胸に目掛けて繰り出された抜き手。流れるように続いた肘鉄。通常の突きに見せかけた、闘気での遠当て。……その全てが、当たることなく軽々と避けられ、いなされてしまう。

 下三段(しもさんだん)蹴り払いも、優雅なバック宙を前に空を切った。

近接格闘において大ジャンプなぞ愚の骨頂と、着地に合わせて肉薄するコゼット。

しかしその足が止まる。

空を舞うアシュレイの手にある明るい色の布。

まさかあれは。

 

「紐とかエロ……」

「!?」

 

 掏られた!? 今の刹那で!!

 アッシュレイが手に持ちひらひらとさせているのは、間違いなく今の今まで自分が穿いていた下着……っ。片手は、いまだポケットから出ていない。

 これで間違いなく確定してしまった。

 

 ――――勝てない。

 

 僅かな打ち合い、いや、打ち合いさえもさせてもらえなかった。

 一瞬、妥協案が頭をよぎった。

 死を覚悟で一矢報いるか? ……いいや、不可能だろう。そもそも下着を掏られたことさえ認識できなかったのだ。その手が抜き手であったなら、今頃自分の胸は風が吹き抜けているはず。ハズレしか入っていないくじ箱からアタリを引こうとするようなものだ。

 おそらく、騎士国でアッシュレイ・ブレイクと相対できるのは、かのロートレアモン聖竜騎士団団長、〈沈黙の騎士聖女〉(サイレント・ヴァージニア)の名を冠するウルスラしかいないのだろう。

 これほどの人材がどうして今まで埋もれていたのか。

 ともかく。

 相手が遊んでくれているうちに、手を変えなくてはならなかった。

 

「……その強さ、一体どのようにして手に入れたのですか、アッシュレイ様」

「秘密は男の――――」

「宝、ですか」

「あぁ……聞いていたんだったな」

 

 コゼットは構えを解いた。

 闘気を練るのもやめ、霧散させる。

 アッシュレイは詰まらなそうに眉を潜めたが……興が覚めたのだろう、質問の答えを口にした。

 

「安心しろ、悪いようにはしねぇさ」

「わたくしはそれを、何をもって信用すればよろしいですか」

 

「――――シルヴィアに、竜飼い人(ブリーダー)となる資格はなかった」

 

「は?」

「ランスロットくれてやっただろう?」

 

 校庭での一連の際、アッシュレイがランスロットに話しかけていたのは見ている。その内容もだ。だから、彼が例の少年である……という推測はついていた。

 アッシュレイも、そのことを理解した上でコゼットに確認しているのだろう。

 

「……姫様はここのところ、事あるごとにおっしゃいます。『あの少年に申し訳ない』『早く強くならなければ』と。……そうですか、アッシュレイ様が…………」

「まだ何か必要か? イヤリングはむしろ付けていた方がアイツのためだと思うが」

「……イヤリングには、姫様の瞳の色と同じ宝石があしらわれておりました」

「答える義務はないな」

 

 じゃぁ敗者はカップを食堂に返すということで。

 そう言い、アッシュレイは戦利品を指先でくるくると回しながらその場を後にした。

 後に残されたコゼットは、先ほどまでと違い、笑みを浮かべたいつもの表情に戻っていた。

 コゼットは、最後の問答で、アッシュレイから微小な動揺を感じ取ったのだ。

相手の瞳の色と同じ色の宝石を送ることは、相手に対する愛を示すもの。アッシュレイ・ブレイクは、姫様に対して良い感情を持っていて、それを見抜かれたのではないかと動揺した。……コゼットはそう当たりを付けたのだ。

 思えば、この結論は納得がいく。

 

 この二日、イヤリングでシルヴィアが不自由に感じていることはないようだし、それどころか、転んでしまったときに、身体を護るように障壁が現れたという。失礼して手を叩かせてもらったが、それは普通に当たった。装着者が無意識、または危険だと思わなければ障壁は発動しないらしい。

 イヤリングは、シルヴィアにとって良い効果しかなかった。主従契約の媒体だというのは、方便なのかもしれない。

 それに、今日。

 校庭での一件にて、姫様は精神的に大きく一歩前進したようだった。他ならぬ主であるアッシュレイの手によって。

 

 早とちりが、過ぎたかもしれない。

 怖いコレット・シェリーはいらなかった。普段のコレット・シェリーでよかったのだ。

 一言二言交わして、これからも姫様とランスロットをよろしくお願いします、っと。

それで十分だった。

 

 ん、あら。

 下着……。

 

「…………。……っくしゅ!」

 

 風通しが良過ぎるようだった。

 

 

 

 

 

 

            ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

 その頃。

 

「ああ……ああ……そうだ。頼んだぞ、マックス」

 

 生徒会室では、レベッカが電話機を置いたところだった。

 仮眠室の掃除は既に終わり書類仕事をしているところである。

 

「う…………ん……………………」

 

 

 開け放しにしている仮眠室から、眠っていた少女がうめき声を漏らした。

 先ほどアッシュレイが制服を取りに来たときは起きる気配など皆無だったのだが、見事にすれ違ってしまったらしい。

 レベッカはイスを立ち寝台に歩み寄る。

 

「ほわあ……」

 

 長い睫毛(まつげ)をぴくりと震わせた少女は、神々しいともいえる美貌とは裏腹に大きなあくびをひとつ。

 左右の瞼(まぶた)がゆっくりと開いた。

 

「ふにゅ……?」

「起きたか。しかしどうしたものか。君のご主人様は今、席を外しているんだよ」

「ふへぇ……?」

「あー、うむ。茶を入れよう」

 

 寝ぼけ眼(まなこ)の少女が室内をきょろきょろをしていると、がちゃり。

 生徒会室のドアが開き、狙ったかのようなタイミングでアッシュレイ・ブレイクが現れた。

 

「やあアッシュレイ。ちょうど今君のパルが起きたところだよ」

「みたいだな」

 

 アッシュレイは半開きの瞳で自分を見ている少女に近づき、顔を覗き込んだ。

 紅眼(ルビー・アイ)の煌めきに、『この世界の人間は瞳の色が多彩だな……。いや、こいつは一応ドラゴンか』などと思案しするも束(つか)の間、少女の顔が驚愕に歪んだ。

 

「ふぎゃぁあああああ!」

「おっ?」

 

 横っ面に目掛けて繰り出された張り手を、手の甲でガードする。

おおよそ人類では出し得ない怪力だった一撃だが、竜だという認識を持っていたアッシュレイはちゃんとそれ用に力を込めガードした為、吹き飛ぶようなことは無かった。

しかし寝台が少し動いたのを見たレベッカは、苦笑いを零した。

 

「と、とんでもない怪力だな」

 

 こぽこぽとポットから湯をカップに注ぎつつ、レベッカはそう評した。

 なお、たたらのひとつも踏まなかった恋人の安否は知れたことなので、少女についでだけコメントしたものと思われる。アッシュレイに普通の物差しは合わないと、分かってきたようだ。

 

「ちょっと! 寝起きのレディの顔を覗き込むなんて、無粋にもほどがあるわ! あたしを誰だとおもっているの?」

 

 少女は頬を紅潮させ、猛然と立ち上がった。

 その拍子、レベッカが掛けてやったブランケットが、ばさりと落ちてしまう。

 華奢な裸身があらわとなった。

 それでも少女は隠す素振りを見せない。

 

「風邪ひく」

 

 アッシュレイは床に落ちたブランケットを拾い上げ、少女の頭に無造作に掛けた。

 少女はそれをはがし、アッシュレイに投げ返す。

 アッシュレイはソファーに放った。

 

「ふん、冗談じゃないわ! 服なんてものはねえ、人類が己の醜い本性を隠すために作った、くだらないアイテムよ」

 

 アッシュレイは、その偏見が寄って集(たか)って巨大化したかのような言い分に呆れ、どう反応すべくか悩み、結果考えるのをやめた。

 だがレベッカは別のことを思ったようだ。

 

「なんだか、口が達者だな。生まれたばかりとは思えんよ」

 

 疑問はもっともで、それはアッシュレイも通った道だ。要するに“原作知識”で解決したわけだが。

 

「――――竜種の記憶(ドラグワース)」

「うん?」

「竜族が生きていくのに必要な知識は、世代を超えて自動的に受け継がれていくの。いちいち誰かに教わる必要はないのよ」

「ほう……、それはすごいな。ではなぜ君は竜族であるのに。人の姿をしているんだ?」

「むっ、それは……」

 

 少女はしばらくの間、考えこむような仕草を続けていたが、ついにはがっくりと肩を落としてしまった。

 

「駄目だわ……少なくとも竜種の記憶(ドラグワース)には記されていない……。ううん、違うわね。記されてはいるはずなんだけど、閲覧しようとすると拒まれるっていうか。ああもう、わからないものはわからないのよ! 仕方ないでしょ! 踏みつぶすわよ!」

「まぁまぁ、分からないのは確かに残念だが、そう勇まなくてもいいじゃないか。

 とにかく、君は服を着るのが先決だろう」

「しつこいわね! 誇り高き竜族に、服なんて必要ないのよ!」

 

 歴代の竜族は、決して彼女のような姿ではなかっただろう。

 少女はそこら辺の加味をしていない。

 

「今のお前は、オレら人間とほぼ同じ姿なのは理解してるな?」

「だから、なに?」

「服を着ないと体調崩すぞ」

「ふん。脆弱な輩ね。これだから人間ってやつは――――」

 

 ちょうどその時である。

 アッシュレイが意図せず壊してしまった窓から、一陣の風が入ってきた。

 もう春先とはいえ、ひんやりと冷たい風だった。

 

「へっ……へぷしゅ!」

 

 先ほどまでの剣幕とは対照的に、可愛らしいくしゃみ。

 だがその直後、信じがたい暴風が生徒会室に巻き起こった。

 

「……」

「むっ」

 

 至近にいるアッシュレイは重力操作魔法で自身の身体を床に押し付けることでやり過ごし、レベッカは咄嗟にカップと少女の間に立って中の紅茶を守る。書類の方は、今回は結構な重しが置いてあるので平気だ。

 強風に煽られる直前、レベッカを覆うように半球状の半透明な壁が作り出され、レベッカを風から防護した。視界の下、首元でアッシュレイからもらったネックレスの宝石が発光しているのを見て、原因を悟る。

 しかし風の金切り音が聞こえ、意識がくしゃみに戻された。

 

「ドラゴン並みのくしゃみだな……」

 

 アッシュレイはレベッカが入れた紅茶を手に取ると、窓枠に寄り掛かった。

 レベッカはなんとなく「女同士の方が説得しやすいだろう」という選手交代の意を感じ取り、少女に歩み寄る。

 

「なによ?」

「確かに、服は自分をより良く見せるという効果がある。けれども、肌を様々な障害から守る役割もある」

「むっ」

 

 少女はふてくされたように唸ったが、ようやく観念したらしい。

 

「わかったわよ……」

 

 ブランケットで身体を隠した。

 

「すまないな。今、服を持ってきてもらうよう頼んでいるのだが……、おや。

噂をすれば、来たようだ」

 

 

 ガチャ!

 

「会長っ、持ってきました!!」

 

 

 入ってきたのは、封を切っていない新品の女子生徒用制服を持った青年。

 この青年は、アッシュ(・・・・)が基礎課程(ユニオス)だった頃メルクリウス舎で寝食を共にした元ルームメイトであり、騎士王(パラディン)から竜騎士(ドラグナー)の称号を授かっている優等生であり、現生徒会の会計である。

 

「うむ、ご苦労。それで、いくらだった?」

「いえ、我が校の購買部の値段は良心的ですから、この程度」

「そうもいかんだろう。ほら、いくらだ」

「……10エクルです」

「わかった。後で君の机に入れておくよ」

「はい。では僕も食事をとらなければなりませんので、失礼しま――――…………」

 

 マックスが固まった。

 視線の席にあるのは、ブランケットを纏った小さな女の子と、アッシュレイ。そして、レベッカ。

 

「どうかしたか、マックス」

「か、隠し子……!!」

「ん? ああ。いや違うぞマックス。彼女はアッシュレイのパ――――」

 

 

 

「僕たちの会長が穢されたぁあぁぁあぁぁぁああああ――――――――ッ!!」

 

 

 

「あ、こら待て!」

 

 ――バタンっ

 

 アッシュレイはカップを、少女は首を傾ける。

 

「どういうこと?」

「さぁ? オレは紅茶で忙しくてな」

 

 聞いていなかった、と半分ホラを吹くアッシュレイ。

 レベッカは制服の封を切りながら、ぶつぶつと言っている。

 

「まったく。少し考えれば年齢的にそうでないことくらいわかるだろうに……」

 

 時間差でクるものがあったらしく、頬に薄い朱がさしていた。

 追撃をしてみたくなるのがアッシュレイ・ブレイクであり、実際に追撃に出てしまうのもまた、アッシュレイ・ブレイクである。

 

「レベッカ、名前はどうする」

「ひゃあ!?」

 

 肩を跳ねさせたレベッカは、勢いあまり、制服を取り落とした。

 封をほとんど切り終わっていたのが幸いし、少女は自分の方に飛んできた制服をキャッチし、アッシュレイは着るように顎で指示した。

 さりげなく胸ポケットから紐パンツを取り出し、紐を一番手前で結びなおすと、

 

「下着だ。片方は穿いてから自分で結ぶんだぞ」

 

 それも少女に渡す。

 一方、〈真紅の女帝〉(スカーレット・エンプレス)は頬を染めて大忙しだ。本気の恋という経験がなかった彼女からは、アッシュレイのみが引き出すことのできる新たな乙女らしい一面が見受けられるようになった。

 

「ま、まだデキたと決まったわけでは……っ!」

「レベッカ」

「ああ、待て。大丈夫だ。そうだな、先に決めてはならないという法はないのだからな……」

「……レベッカ」

 

 アッシュレイは制服を広げて「か、かわいい……」などと調子のいいことをつぶやいている少女を示すが、あいにくとレベッカは幸せに意識をとらわれていて、聞いちゃいなかった。

 

「……シャルロット……レオンハルト、ニーナ、レイチェル、ルールカエルィ、ハナッシュ、アッシュ、アーク、アリス、テレス、……ヘイヴィア、クウェンサー、フローレイティア、ミランダ、…………ああ、少し待ってくれ、たくさん出てき過ぎて困るんだ……!」

 

 アッシュレイは、放置の方針で行くことにした。

 名前は、自分が決めればいいだろう。

 

「あぁお前それ、パンツ前後逆だな」

「へっ……? う、うるさいわね! 分かってたわよ!」

 

「“エーコ”でいいか」

 

「は?」

「お前の名前だよ」

 

 ランスロットやクー・フリンと比べたら、今どきの流行とはかけ離れている。だが、非常に由緒正しき名前なのは確かだ。歴史や宗教学の授業でも、真っ先に登場する。

 ――聖誕暦元年。

 人類史上、初めて幼生(オーファン)を誕生に導いた少女がいた。

 その名はロサ・マリア。

 死後、聖女として崇められたロサ・マリアは、いわば竜飼い人(ブリーダー)である。

 ロサ・マリアが自身のパルに授けた名前こそ、エーコだった。

 

 

「エーコ……」

 

 

 少女は一瞬、虚を突かれたような顔をしたが、微かに頬を緩ませた。

 

「ふん、悪くないわね。そっか、エーコ……うん、あんたにしては上出来だわ。さっきの無礼は許してあげる」

「そうか。なによりだ」

「それにしても、あんた知ってたのね」

「宿主がパルに名を授けて、初めて契約が完了することか?」

「そうよ」

 

 たまたまだ。

 アッシュレイはそう言って、軽く肩をすくませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 この世界に電話機はあるのか。
 魔導艦があるんだから、あるんじゃない?


◆コラム◆
【下三段(しもさんだん)】
 膝関節の高さ。
 下一段が、くるぶし。下二段が、ふくらはぎや脛。 

【戦利品】
 コレット・シェリーの紐パンツ。温(ぬく)い。
 何だかんだ言って、引っ張ればすぐに脱げる紐パンは、戦闘職であるメイドや竜飼い人(ブリーダー)や騎士たちに良く愛用されている。結局は機能性なのか。 
 はて、メイドはいつから戦闘職業にカテゴライズされたのか。疑問ちゃん。

【騎士王(パラディン)】
 ロートレアモン騎士国のトップ。王様。つまり、シルヴィアの父。シルヴィア大好きで、甘やかしている。が、第一王女がシルヴィアに厳しいので、差し引いて+1くらいか。
 共通して言えるのは、異性にかかわる知識を与えていないことかも。娘はやらん、妹はやらん状態。

【竜騎士(ドラグナー)】 ※いまさらかも
パルを聖竜(マエストロ)と進化させた竜飼い人(ブリーダー)に騎士王(パラディン)から送られる称号であり、階級。
 ……あれ、合ってる(・ω・)?

【エクル】
 この世界、ロートレアモン騎士国の通貨単位。原作にて、2千エクルが役人の一か月の給金に相当すると記されていることから、1エクル=100円で妥当だろうと作者は考えている。

【ヘイヴィア、クウェンサー、フローレイティア、ミランダ】
 作者口からはちょっと説明できにゃい。(・/×\・)お口ミッフィーなのだ。
 ヒントちゃん。軽い小説・ライトニング・重い物体。
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