「……………………」
シャカシャカとヘッドホンから流れる音楽を聞きながら、一人の男子学生が公園を歩いている。
制服に身を包んでいる事と鞄を持っている事、そして時刻から考えて男子学生は下校途中の様だ。
「誰かァァァァ!! 助けてくれぇェェェェ!?」
「……………………」
人気のない公園には異界化に伴う魔力の残滓が色濃く残り、一般的な感性を持つ人間ならば脚を踏み入れ難い雰囲気を醸し出している。
そして、そんな公園では男性のモノと思しき悲鳴が響き渡り、すぐに途絶えた。
ヘッドホンで大音量の音楽を聴いている男子学生は、勿論そんな悲鳴など聞こえていない。
ふと目に留まった自販機から、男子学生は缶コーヒーを購入した。
よくよく内容物を見れば、どうやら練乳が入って居るようだ。
「…………(甘いの、かな)」
疑問と若干の期待を胸に、男子学生は購入した缶コーヒーを抱えてベンチを目指す。
そして、座る。
パリン、とガラスか何かを割った様な音がした。己の尻近くから。
その音に少し驚き、青年は青年は勢いよく後方へ振り返る。
尻のあたりから青色に発光する結晶の様なモノが宙に舞っていた。そして数秒ほど経つとそれは空気へ溶ける様にその姿を消した。
何かを尻で踏みつぶしたのではと思い己の尻とベンチを調べるが、その様な痕跡はどこにもない。
一体、何だったのだろうか。
そんな疑問符を浮かべながらベンチへ座り直し、そして前を向く。
眼前には、人型の何かが居た。
「……………………」
『……………………』
人型は大きく、どこか己の顔に似ており、そしてハーブを持っている。
その異質な存在感は、マンガ表現ならばゴゴゴゴゴとかついてきそうだ。
そこまで考え、男子学生はハッとし、その可能性に行きつく。
「これが僕の、――――ス○ンド?」
『スタ○ドちゃうわい』
「あ、喋った」
それが、有里 湊とペルソナの出会いだった。
◇
異界化した公園で幼女(の外見をした悪魔)からパンツを奪い取り、その後セクハラをかました少年は己の部屋に備え付けられたベッドに寝転がり、そして奪ったパンツを見つめていた。
少年は常々、女の子のパンツには幻想が編み込まれていると考えていた。
そう考える様になった原因の一端は少年の体質にある。少年は女の子のパンツを見ると異様に興奮し、己の中で生体マグネタイトが発生するのだ。物凄い速度で。
性的興奮に引き摺られ感情が高ぶる事で得られる生体マグネタイトは物凄い力を発揮し、窮地に陥った時などは毎回可愛らしい女の事とそのパンツについて瞑想する事で事なきを得ていた。
そして少年は、念願のパンツを手に入れた。
ただの変態ならば、その場で顔を埋め繊維に織り込まれた残り香を堪能するだろう。
だがこの少年はそうではなく、パンツを眼前に持ってくると手を己の顔へ振る事で匂いを嗅いだ。まるで理科の実験の時にやったアレの様に。
鼻で楽しんだ後は、指先の感覚に集中し、柔い感触を堪能する。
顔を突っ込んでしまいたい欲望が湯水の様に発生するが、それを片っ端から生体マグネタイトへ変換していく。
時間にしておよそ十分程、少年はそうしてパンツを触って興奮していた。
そして少年はパンツを持ったまま立ち上がると、部屋へ備え付けてある机の前へ移動する。
机の上には試験官やフラスコ等の実験用具が有り、少年はパンツを名残惜しそうに机の引き出しの中へ保管すると、その手に空の試験管を持つ。
試験管を持つと机の棚に置いてある、内容物が緑色のビンを手に取る。
そしてビンの蓋を外すと試験管の中へと注ぐ。
試験管の半分ほどを満たすと蓋で塞ぎ、ビンの蓋を閉めて元の場所へ戻す。
そしてパンツを仕舞った引き出しの下の段から魔法陣の描かれた用紙を取り出し、それを机へ敷き、その上に試験管を置いた。
「――――術式起動。悪魔の血肉へ我が力を注ぐ。流入し交われ。その在り方を高みへ昇華させるのだ」
呪文を唱えると、机の上に設置された魔法陣が激しい白色光を放つ。
その光が収まると、魔法陣の上の試験管は青緑色の光を放っていた。
「よし、流体マグネタイトの精製実験に成功。後は、どんな風に使えるかの実験かな」
少年は流体マグネタイトの入った試験管を一番下の引き出しに入れて鍵を閉めた。
少年はデビルチルドレンである。
その特殊な生い立ちを自覚すると、少年は己へ様々な実験を施した。結果として、生体マグネタイトや不活性マグネタイトを生成し変換する能力を持つようになった。
そんな彼の仕事はマグネタイトの研究と、マグネタイトを必要とする組織へ己の生み出したそれを売る事である。
このマグネタイト商売で少年は生計を発てていた。
「さて。次は何をするかな。いつもの結晶体マグネタイトの納入は月末だからまだ余裕あるし……」
何をするかと悩んでいると、部屋にチャイムの音が鳴り響いた。
「はーい?」
少年は玄関の方へ急ぐ。
この部屋に来るモノなど、怪しげな結社の勧誘か胡散臭い宗教の勧誘と相場が決まっているのだ。
丁重にお帰り願おう。
そんな考えの下、少年は玄関の扉を開いた。
「はいはい、どちら、さ……」
「あ、人間!! やっと会えた!!」
そこには公園でパンツを奪ったモー・ショボーが立っていた。
◇
時は少しだけ遡る。
パンツを奪われたモー・ショボーは胸のときめきの赴くがままにCOMPを探そうと決意していた。
だがしかし、モー・ショボーにはCOMPと言うモノが解らない。
故にモー・ショボーはそれを知っていそうな者に会おうと試みる。
自然公園の奥。
日の傾きにより、不気味な影を伸ばすその森にモー・ショボーの尋ねる者がいる。
その者の名はネコマタ。
モー・ショボーよりも二つほど幼い見た目を持ち、白と桃色の体毛を持つ悪魔である。
そのネコマタは種の中で言えば幼生であり、マグネタイトの所持要領や状況によって姿を変えるのだ。
さて、そんなネコマタの幼生が住処とする森の中を探索するモー・ショボーだが、その姿を一向に見受けられないでいた。
引っ越しでもしたのだろうかと首を捻るモー・ショボー。
すると近場でがさりと音が聞こえた。
「モー・ショボー、か。へへっ、今日は運がいいや」
「……何、お前」
モー・ショボーは木々の影から姿を現した人物に冷徹な視線を浴びせ付ける。
その様な態度をとる理由は、出て来た男の向けてくる視線に合った。
モー・ショボーの体躯を舐め回すように駆け巡る視線は、正に性的なソレである。
パンツを取られる前のモー・ショボーだったならば、その情欲から湧き上がる生体マグネタイトに跳び付いただろう。
しかしモー・ショボーは既に味わってしまったのだ。
至高とでも称するべき美酒の如きあの味を。
既にモー・ショボーは、それ以外の味など求めていなかった。
故に、その視線は彼女にとってただただ不快な物だった。
「くへへ。嬢ちゃん、俺の仲魔にならないか? 色々と楽しませてやるぜぇ?」
「はぁ? あんた如きが? 私を? 楽しませるぅ?」
モー・ショボーの胸中で怒りが燃え滾る。
その怒りを魔力に乗せ、モー・ショボーは今にも魔法を放ちそうだ。
「そうさぁ。俺のテクで天国に昇るくらい気持ちよくしてやるぜぇ?」
「そう、解った、死になさい」
「はぁ? テメェ、調子にのってんじゃ」「――――ザンマ」
苛つき交じりな男の声を遮り、モー・ショボーはザンマを放つ。
魔力によって生み出された衝撃波は男のすぐ横にあった木を、文字通り木端微塵にしてしまった。
「なん、だぁ……?」
「こうまでして状況が読めてないとか、アッタマ悪スギ。――――マハザンマ」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃっ!?」
モー・ショボーの放つマハザンマが周囲に有る木々を薙ぎ払っていく。
その暴力的衝撃波の中で、男はただ怯え身体を竦ませていた。
「……やっぱり力の扱いが難しいわね。次はもっと抑えて撃とうかしら」
「ひぃっ!? ね、ネコマタぁ!! 俺を助けろぉ!?」
悲鳴を上げながら、男はアームターミナルを使用し悪魔を召喚する。
閃光と共に召喚された悪魔は、モー・ショボーの探していたネコマタだった。
「あれ、ネコマタだ」
「なっさけない声上げないでよ、気分悪、……モー・ショボー?」
「うん、久しぶりー」
先程までの様子とは一転し、和やかな空気を纏うモー・ショボー。
しかしネコマタはそれどころではない。
モー・ショボーが内に秘める強大な魔力がプレッシャーと成ってネコマタの警戒心をあおっているのだ。
「アンタ、それどうしたの?」
「え? あ。ああ、これね。これはね、ある人間から生体マグネタイトを貰ったの。それで、サマナーに成って欲しいって言ったんだけど、こんぷ? ってのがないからなれないって言われたの。だから今、それを探してるんだ。ねぇ、ネコマタ。こんぷ、知らない?」
「そこで尻餅ついて泣きべそ掻いてる情けない男の腕についてるのがそれよ」
「そっか、ありがと!! ――――ザン」
「がぎぃっ!? あ、あああああっ!? 俺のうでがぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
モー・ショボーはザンを放ち、男の腕を両断した。
そして地に落ちた男の腕からアームターミナルを回収する。回収したアームターミナルは独自の改修が施されているのか従来のモノよりも小型であった。
「ちょっとショボー? 一応私に餌を提供するサマナーなんだからやめてくれない?」
「え? サマナー? こんなのが?」
「こんなのって……。そりゃ、ここら辺に異層空間を作っていた悪魔が倒されてマグネタイトの確保が急務だったから妥協したってのはあるけどさー……」
モー・ショボーの言葉にネコマタはいじけたような口調で返す。
その反応を見て、モー・ショボーは思う。このいつも自分を良く回る頭で助けてくれた親友と、美酒を分かち合うのは素敵な事ではなかろうかと。
「だったら、乗り換えしない? まだ余ってるし、味見もさせて上げようか?」
「え、ホントに? コイツが渡してくるのいつも少量だから困ってたのよ。助かるわぁ」
持つべきモノは友よねー、などと呟きながらモー・ショボーへと近付くネコマタ。
モー・ショボーはその唇に己のモノを重ね、少年から貰った高濃度生体マグネタイトを少量だけ譲渡した。口移しで。
瞬間、ネコマタの前身の毛という毛が逆立ち、瞬く間に萎れて行った。
唇を離すと、ネコマタは身体の力が抜けたのかその身をモー・ショボーへ預ける様にしな垂れかかる。
「御味はどう?」
「……しゃいこー」
「協力する? 乗り換え、する?」
「……しゅるー」
マタタビを嗅いだ猫の如く酔っぱらったネコマタは、モー・ショボーの提案を全面的に受け入れた。
了承の言葉を引き出すと、モー・ショボーはしな垂れかかるネコマタを一端地面へと降ろし、凍て付く視線をサマナーの男へと向けた。
「さて、コイツは邪魔よね。――――消しちゃいましょ」
「ひぃっ!? 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だっ!! 誰かァァァァ!! 助けてくれぇェェェェ!?」
「――――ザンマ。――――ザンマ。――――ザンマッ!!」
モー・ショボーは男が消えてなくなるまでザンマを唱え続けた。
◇
「で、そんな感じで手に入れたの!!」
「えー……」
頬を紅潮させながら語るモー・ショボーの話を聞き、少年は微妙な反応を返す。
モー・ショボーの行為をこのまま放置すれば、モー・ショボーは近い内に打ち滅ぼされてしまうだろう。
そうなってしまうのは忍びない。
その愛らしさ、殺すには惜しい。と、少年は素直にそう思ってしまった。
側頭部を掻き、モー・ショボーに向き直る。
モー・ショボーは、気体に満ちた視線を少年へと向けていた。
まるで、公園で投げられたボールを取って来て褒めて欲しいと言わんばかりの犬の様に。
「……わかった。ちょいと面倒くさいけどサマナーに成ってあげる」
「やったぁ!! じゃあ早速マグネタイト頂戴。公園で魔法使い過ぎてちょっと減り過ぎちゃった。んー」
「まったく、お転婆さんだな」
眼を閉じて唇を差し出すモー・ショボーを見て、少年は屈み顔の高さを合わせる。
そしてその小さな体躯をやんわり抱くと己の唇を重ねた。
「ん」
「んふっ。ん、んぅぅっ」
モー・ショボーは口を経由して己の内側へ流入する生体マグネタイトとそれに伴う充足感と快感に喜悦の吐息を漏らす。
小さな身体は、快楽に打ち震え散発的に大きく跳ねる。
その様子をぼんやり可愛いなと思った少年は、抱く力を少しだけ強めサラサラとした頭髪を持つモー・ショボーの頭を優しく撫ぜる。
モー・ショボーはご満悦だと言いたげに吐息を漏らした。
暫くそうした後、二人はどちらからともなく離れた。
「……えへへ。これ。凄くすき」
「そうか、気に入って頂けて何より」
照れながらも満面の笑みを浮かべるモー・ショボー。
少年は、胸のむず痒さにその表情を歪める。
二人は互いの眼を見つめ合い、自然とその言葉を口にした。
「凶鳥・モー・ショボー。今後とも宜しくね?」
「時之宮 轍。今後とも宜しく」
こうして今日もまた一人、サマナーが誕生する。
「……しかし、そうなると部屋の改造も行わなければいけないかー」
「改造?」
「そう。悪魔は物質界に実体化すると常にマグネタイトを消費するから、部屋の壁に外界と内界を隔てる結界を敷き、内部である部屋を疑似的な異界にするかなーとか考えたんだ。そうすれば狭いCOMPの中で缶詰めになる事も無いしね」
「そんな事も出来るんだー。サマナーは凄いね!」
「大げさだよ、まだCOMPの使い方だって覚束ないんだから」
言いながら、轍はCOMPを弄るもどうやれば良いのか解らず悪戦苦闘している。
改造されたアームターミナルは動力部及び本体の小型化と、格納式の画面を採用した事で片手に収まるのだが、それでも現状時代遅れと言わざるを得ないモノだった。
「……うん、だめだ。アナログすぎて使えない」
「えー? じゃあ、サマナーになってくれないの?」
「いや、サマナーにはなるよ。この後、COMP求めて彷徨われちゃ堪らんしね。仕方ないから新しいのを用意してもらうさ。今夜、一目が少なくなったタイミングで行きつけのお店に行くけど、付いてくる?」
「うん、いく! 私はサマナーの仲魔だもの、当然でしょ?」
「そうだな。それまではゆっくりしてていいよ」
「うん、わかった」
元気よく返事をすると、モー・ショボーは部屋に有るソファに行儀良く座りにこにこと轍を見つめる。
その視線にくすぐったさを感じながらも、轍は必要となるものを準備していった。
◇
「やぁ、いらっしゃい。マグネタイトの搬入はもう少し後だった気がするけどねぇ?」
市内にあるCOMPの販売店。
その裏口にある搬入口に設置されているインターフォンを鳴らすと、鉄製の大きな扉が開き中から白衣を纏い金髪のポニーテールを揺らす目付きの鋭い女が現れる。
彼女こそこの店の主である、犬飼 瑕名である。
「搬入は予定通り。今日は別件でね? ちょいとサマナーをする事になったんだが、COMPがアナログすぎて使えんのよ」
「成程、扱いやすいのを見繕えって訳だな?」
「そう言う事」
「御代はいつものマグネタイトに+20%ってところだな」
「解った。搬入の日に持って来よう」
「よし。では中で適当に待っていてくれ」
そう言うと瑕名は轍と付き添うモー・ショボーを招き入れた。
招かれた部屋には大量のモニターとキーボード等のパソコン機材、壁や床には夥しい量の魔法陣が描かれていた。
轍は部屋の端に置かれているパイプ椅子を二つ広げそこに座り、隣へ座るようにとモー・ショボーにも促した。
暫くすると、瑕名が複数のアタッシュケースが乗った台車を押してやってくる。
「待たせたな。色々もって来たが、まずは君の奴を見せてくれ」
「ほい」
「……既に悪魔が入って居るようだが?」
「あ、ネコマタ出すの忘れてた」
モー・ショボーが瑕名からアームターミナルを受け取ると、テシテシと叩き始める。
するとアームターミナルが発光し、光の中からネコマタが現れた。
「ふぅ、やっと出れた。それでショボー。私の新しいサマナーは?」
「この人」
「ふーん? 初めまして、ネコマタよ。今後とも宜しくね?」
整った笑顔と穏やかな口調でネコマタが言う。
しかし轍は首を傾げた。
「何を宜しくするんだ?」
「……ちょっとショボー? これ、どう言う事かしら?」
「え、えへへ。また忘れてた」
「この鳥頭。――――焼くわよ?」
「ぴぃっ!?」
「あー、落ち着け落ち着け」
暴力的な視線でモー・ショボーを睨み付けるネコマタを後ろから抱え上げながら轍が言う。
「えーと、お前さんも俺の仲魔になりたいと?」
「そうでなくちゃ困るわ。私のサマナー、ショボーに殺されてるし」
「解った、お前さんも仲魔な」
「理解が速くて助かるわ」
先程までの落ち着いた雰囲気はどこへやら、ネコマタは不機嫌そうに尻尾を揺らしている。
「おいおい、これは遺留品という訳か?」
「どうやらそうらしい。余計に使いたくないな」
「確かに。それで、どういったのが良い?」
「そうだな。動く時、あまり邪魔にならないモノが良い。それと、場所を取らないのも。初期型のアームターミナルみたいなのは論外だ」
「ふむ。すると、……これなんかはどうかな?」
複数あるアタッシュケースの内から一つを選び、それを轍の前で開く。
中には腕部装着型のCOMPが入っていた。
「私が作ったコンパクト・アームターミナル。タッチ式の液晶画面による操作と音声入力による悪魔の呼び出しが可能だ。尤も小型のために搭載できる悪魔の数が五体までと通常のモノよりも少なく、耐久性がそこまで高くないのも今後の課題だな。付けて見ろ」
瑕名の言葉に従い、轍はC・アームターミナルを操作する。
慣れ親しんだスマートフォンの感覚で操作できるからか、その挙動は軽快なモノだ。
一頻り操作すると、轍は瑕名に対して言う。
「当分はこれでいい」
「解った。仲魔の召喚と送還は大丈夫か?」
「ああ、ヘルプもあったからな。ただ、ネコマタをそのアームターミナルからこっちにやってくれないか?」
「お安い御用だ。序でにそっちのモー・ショボーもやっておくよ」
「助かる」
瑕名はアームターミナルを受け取るとデータの移行作業を行う。
その後ろではネコマタがモー・ショボーの口を引き延ばしていた。
「そうだ時之宮。ここ最近ガイア教の連中がこの周辺をうろついているらしいぞ」
「ガイア教が? 下っ端連中か?」
「ああ。この前も耐久性の高いCOMPの大量発注があった。近々何かあるんじゃないかとは思うが、どうなんだか。別にどうこうしろとは言わんが、この周辺で面倒は起こしてくれるなよ? っと、できた。ほれ」
「へいへい。ありがとよ」
さあ帰ろう。
轍の言葉を聞き、二体の悪魔はてくてくとその後に続いた。
◇
「それでサマナー、早速マグネタイトの補給が欲しいんだけど、いいかな?」
帰宅早々にネコマタが言う。
轍の腕に抱き着き、その身をくねらせて言う姿はメスがオスを誘うそれに他ならない。
その姿を見てモー・ショボーが何事かを騒いでいるが、轍はそれよりも気になるモノがあった。
(なんだ? このピンクいの。……ハートか?)
先程から轍の眼はモー・ショボーとネコマタの周囲に大量のハートマークが飛び交っているのを捉えていた。
詳細をと、轍はC・アームターミナルを使い調べる。
すると交渉の欄に該当項目を見つけた。
(交渉における感情エフェクト。交渉対象や味方の悪魔が己に抱いている感情をエフェクトとして解り易くする機能か。とすると、俺はこの二体から好かれている訳か。――――ちょっと、嬉しいかな)
その事に思わず笑みが漏れた。
轍は顔に笑みを湛えたまま、腕に抱き着いているネコマタへ言う。
「解った。ネコマタ、行くぞ? ん」
「んみゃ!?」
「あーっ!!?」
唐突に、轍はネコマタの唇を奪い、そして口を経由し濃縮された生体マグネタイトを流し込む。
「むー!? むむー!!(にゃにこれにゃにこれにゃにこれぇぇぇぇぇっ!?)」
ネコマタはモー・ショボーの時とは比較にならない快楽に混乱している。
しかし数秒も経てばその混乱も掻き消え、後には動物的な屈服が残った。
「ん、……むぅ、…………(あ、だめ、かてにゃい……っ)」
屈服した精神は轍を主として認め、己のオスであり主である轍を受け入れんが為にメスの機能を解放する。
ネコマタの秘所周辺は既に洪水と化していた。
「ぷはっ……。さまな、……いえ、ご主人様。ネコマタに、お情けをくだしゃい…………」
口付けから離れると、ネコマタは床に座り開脚し己の秘所を広げて主である轍を歓迎しようと準備する。
轍の眼には先程の四倍近い量のハートが飛び散っている様子が見て取れた。
「な、なに、それぇ……? な、なんで、おまた、開いてるの?」
恋を知らないモー・ショボーは悪魔でありながらその辺の知識に疎く混乱する。
しかし、その身体の奥から湧き上がる性衝動は誤魔化しようもなく、そのどうしようもない己を轍へとぶつけた。
「さ、サマナー……。私、なんか変なの。たす、けて……」
「ご主人さまぁ……、切ないよぅ……」
「…………(視界一面ハートだらけ。機能切れないのかな。……あ、これ手で振り払える。要は生体マグネタイトの可視化と同じか)」
幼い身体の悪魔二体が誘う。
轍はその誘いに乗る事にした。
「宜しい。二人ともベッドに座って」
「うん……」
「はい……」
ベッドに座る二体。
モー・ショボーは服を脱ぎキャミソール一丁になる(パンツは公園で既に取られている)。
ネコマタは轍が人間(正確には半人間)である事を考慮し、秘部以外は人間のそれへと変える。
「さて順番が有るから、まずはショボちゃんからね。ネコマタはその間自分でしてて。くれぐれも、イッちゃだめだからね?」
「かしこ、まりました。ご主人さまぁ」
「(なんか、やけに素直になったなぁ)さ、まずはキスからだ。それと、嫌ならそう言うんだよ?」
「ん、はぃ……」
ネコマタは指示に従い自慰行為を開始する。
秘部の外周を人化させた己の手で摩り、己の興奮を高める行為を行う。
そのすぐ横ではモー・ショボーと轍が唇を啄ばみ合っていた。
ネコマタは自然とそれを横目で見て、オカズにしてしまう。
「ん、んむ……(マグネタイトを流されたわけじゃないのに、気持ちいい……)」
口付けをしながら轍はモー・ショボーの小さな身体を愛撫していく。
労わる様な撫で方に、モー・ショボーはその小さな胸を高鳴らせる。いつしかモー・ショボーは、潤んだ瞳で轍の眼を見つめていた。
褐色の眼は己の感情等お見通しだとでも言う様に感じられ、モー・ショボーは征服されていくような錯覚を感じ、同時に下腹に甘い痺れが発生するのを感じ取った。
口付けを止めると、轍はモー・ショボーの耳を甘噛みしながら秘所の周辺を撫で摩る。
「は、ぁあ、んっ、ぁっ……」
激しくはないが、しかし着実に高みへと押し上げて行く手付きにモー・ショボーはうっとりとした声を漏らし、成すが儘を受け入れる。
その様は非常に可愛らしく、轍はモー・ショボーの感じている表情を見ながら胸を高鳴らせていた。
「……そろそろ、いいかな。ショボちゃん、入れるよ?」
「あ、……うん。きて、サマナー」
息を荒げてベッドに寝そべるモー・ショボー。
その秘所は開閉を繰り返し、主である轍の逸物を今か今かと待ち望んでいる。
期待に応えるべく、轍は己のいきり立つご立派様をモー・ショボーの内部へと突き入れた。
蕩ける柔肉の如き濡れそぼった秘所は、逸物が侵入するなりやんわりと抱擁し慰めながら己の中へと招き入れる。
「ふぁぁぁっ、さまなーのっ、おっきい……」
内側から己の秘所を圧迫する感触と、性的興奮から発生する生体マグネタイトが少量ながら逸物を伝って膣内に広がり、筆舌に尽くしがたい多幸感をモー・ショボーに与える。
一方で轍の方も押し寄せる快感の波に脳みそを蕩けさせていた。
幼い身体特有の小さい膣内はただでさえ狭いと言うのに、モー・ショボーの身体は自動的に轍の逸物を締め上げるのだから堪らない。
「……っ、は、ぁ、ぐっ!? ……っ」
「さま、なー? 感じっ、てるの? ……ちょっと、可愛い」
「……?!」
快感に耐える為に表情を歪ませていた轍は、その様子を己の下に居るモー・ショボーに可愛いと言われ気恥ずかしさが顔に上っていく。
それを紛らわす為、轍は一つ、腰を大きく振る。
勢いの乗った逸物は、膣壁に備えられた襞を力強く擦り、そして亀頭が子宮をノックした。
「ぴぃ!? んぁ、さまなーのが、しきゅうをこんってぇ……っ」
「っは、……へ、ぇ? 子宮、感じるんだ。じゃあ、ここら辺、なんかは?」
「んみぃ!? あ、ぁっ、さ、まなー。そこスリスリする、と、腰が、んっ、跳ねちゃうっ……」
轍はカリの部分でモー・ショボーの入口付近を擦り始める。
反応は劇的であり、モー・ショボーは強い快感の震源地へ手を伸ばし、抑えながらその身を震わせた。
その反応に気を良くしたのか、轍はモー・ショボーの感じるポイントを重点的に擦り上げていく。
「やぁ、んぁぁぁぁぁぁっ! さま、さまなーっ、凄い、それ凄いのぉ!!」
「はっ、はっ、……っぐ、お気に、召したかな?」
「うん、うんうん! 凄いの、気持ちいのが擦れてぇ、どうにかなっちゃうぅぅっ!!」
息を荒げ、ベッドのシーツを後ろ手に鷲掴みするモー・ショボー。
薄く開ける瞼の向こう側には妖しい輝きを灯す潤んだ瞳が有る。
その瞳には己に快楽を叩きこもうと懸命に腰を振る轍の姿が有った。
轍の表情を眺めるモー・ショボー。その小さな胸の高鳴りは、どんどん加速する。
「あ、あああっ、あっ、だめ、もう、くるぅぅぅっ!! ……っ!!」
膣内の最奥を逸物が抉った瞬間、快楽受容の限界を迎えモー・ショボーは絶頂する。
轍はそれを目にする。吐息を漏らしながら喜悦の悲鳴を上げる少女の姿。
しかし轍はそれを気にせず、より一層勢い良く腰を振るう。
「やぁ、やだやだ、さまなー! げんかい、もう無理、むりなのぉ!!」
「まだ俺がイってないんでね。付き合って」
「んいぃぃぃっ!! わかった、がんばる、あたしがんばるぅぅぅっ」
健気にも、モー・ショボーは轍の声に答える。
何をがんばるかは知れないが、轍はその声に満足しその内部を堪能した。
時に力強く突き、時に舐め回すように腰を回し、その度に跳ねるモー・ショボーの幼い身体を眺めて悦に浸っている。
「ふっ、はっ、ショボちゃん、そろそろ、出るよっ……」
「ふあぁぁぁぁぁっ、さまなーっ、出して。わたしの中にぃ、出してぇぇぇっ」
「うっ……!!」
モー・ショボーの精を求める声が最後の燃料と成り、轍は白い欲望を小さな生殖器へと吐き出した。
どろりと粘り気を帯びた白い液体が、モー・ショボーの内部を侵しながら進む。
その精液には練りに練られた生体マグネタイトが多分に含まれ、それを生殖器で味わうモー・ショボーは身体を仰け反らせて絶頂した。
「~~~~~~~~ッ!?」
高みへ至った意識は降りる事を知らず、更に上へとその意識を打ち上げる。
ちかちかと明滅する視界の中、己と言う存在が轍の色で染まる感覚を覚え、その事に例えようのない幸福を感じながら脱力した。
「はぁ、はぁ、はぁ、……っ。お疲れ様、どうだった?」
「……すごく、よかったよ。さまなー」
轍の言葉に、荒い生きながら語尾を弾ませて答えるモー・ショボー。
汗ばんだ額に紫の髪が付着する様は、その幼さも合わさり妖しく背徳的な雰囲気を醸し出す。
そんなモー・ショボーが愛おしく感じた轍は、その頬にキスを落とすと抱擁し頭を撫ぜた。
撫でられる感触に、モー・ショボーは目を瞑り夢見心地な表情を浮かべ、やがて意識を眠りの谷へと落下させた。
「……ふぅ。さて、次はネコマタちゃんだね。準備は良い?」
「……はぁ、はぁ、はぁ。はいぃ、どうぞお使いくださいませぇ」
乱れた息と共に、ネコマタは轍を歓迎する。
モー・ショボーとの行為中、指示通りに弄っていたのか開かれた足は断続的に跳ね上がり、顔には切なげな表情を浮かべていた。
視線にて催促するネコマタに応えるべく、轍は出したばかりでも大きさを保っている逸物をネコマタの中へ突き入れる。
「ふにゃぁぁぁぁっ。はいって、きたぁ……」
切なげな表情に喜悦を交え、ネコマタが嬌声を上げた。
そんなネコマタの身体を、轍は掌で撫で摩る。
鎖骨や腹、脇の辺り等を摩ると、次は胸を重点的に行っていく。
その間も腰はしっかりと動かし、ネコマタを内部から刺激する。
「あ、ぅぅっ。……精液奥に刷り込まれてるっ」
轍はモー・ショボーと致した後、逸物に付着したままになっていた精液をネコマタの内部へ刷り込む様に腰を動かしていた。
それを敏感に感じ取ったネコマタは、己が轍のモノである証を刻み込まれているのだと感じその興奮を更に高めていく。
「ふっ、はっ、……どうネコマタ、気持ちい?」
「はい、凄く、んっ、いいです。身体の奥、から、熱が込み上げて、来るみたいです。あんっ」
己の手で弄っていた時とは比べ物にならない刺激に、ネコマタは己を見失わない様にと両腕で自分を抱き留める。
その様子を見て、轍はネコマタの腕に手を伸ばし、両手とも指と指を絡めて繋ぐ。
「あ、さま、なー……?」
「こうすると、楽になる?」
「……っ、はい。とても、安心できます」
轍が手をつなぐと、ネコマタは切なげな表情に安堵の色を混ぜる。
眼前のオスが己を気遣う様子が嬉しいのか、胸の高鳴りが加速していく。
一方で轍の方も、残った精液を小さな生殖器に擦る付けるという行為に愉悦を感じていた。
その存在を、どんどん己の色に塗り替えていく様な感覚が興奮剤となるのだ。
興奮が高まるにつれて、逸物を出し入れする速度が加速する。
「にゃっ、んっ、あっ、ふっ、んあっ、ああああっ」
「はっ、はぁっ、ぐっ、ふっ……。ネコマタ、そろそろ出るぞ?」
「んっ、はい、何時でも出して、くださいぃっ」
轍は精液を放出する為に腰を振る速度を上げる。
それに合わせてネコマタの幼い身体も激しく揺さぶられ、叩きこまれる快感にネコマタは既に限界だった。
そして、ネコマタの内部で白い欲望が爆ぜる。
「ぐぅ……っ!?」
「んにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
呻き精液を吐き出す轍と、内部で受け止めた事により一段強い絶頂を迎え悲鳴を上げるネコマタ。
二人は身体を震わせながら快感に酔い、やがて脱力する。
荒い息で小さな胸を上下させるネコマタの様子を見て愛しさを感じた轍は逸物を抜き、ネコマタの頬を静かに撫で始めた。
「……あ、さま、なー?」
「疲れたろう? ゆっくりお休み」
「……ん、はい」
頬を撫でられる内に呼吸が落ち着いていくネコマタ。
次第に重くなる瞼に逆らわず、すぐに寝息を発てる。
モー・ショボーとネコマタが眠りに着くと、轍はベッドから立ち上がり手を真っ直ぐ前方へ、掌を天井へ向けて伸ばす。
数秒後、その掌から赤紫色の妖しい光を放つ結晶が生える。
結晶は次々と枝分かれする様に生まれ、最終的には轍の右腕と同程度の大きさになった。
「……搬入用サイズのだいたい六倍か? 凄いな、これ。やはり、少女は素晴らしい」
轍は結晶を分割して机の上に置くとソファに座り、ベッドの上で眠る二人の悪魔を見て微笑んだ。