おかずはロイドでないので、純愛好きにはおすすめしません。
「ふぅ……」
久方振りの実家の自分の部屋で、エリィはらしくなく、だらしなくベッドに倒れこんだ。
このところ、支援課の溜まった事務仕事に取り組んでおり、激務から疲れが溜まっていたところである。
クロスベルに住む唯一の家族である祖父との食事ののち、部屋に帰ったエリィの気が緩んだ瞬間、溜まっていた疲れが一気に襲ってきた。
「ん、皺になっちゃうからちゃんとしないと…」
とはいえ、このまま眠りに落ちるほど無作法な彼女ではない。トレードマークのスーツの胸のあたりのボタンを外す。豊満な乳房がスーツを押し上げており、彼女の女性的な魅力をより際立たせている。手馴れた手つきでスーツを脱げば、清潔な白のYシャツである。体を締め付けていたスーツを脱いで、彼女も少しリラックスした様子である。淡い碧のネクタイを首元から緩めようとした時、住宅街の閑静な夜を吹き飛ばす音が外から届く。眉を顰めたエリィはカーテンをあけて、音のするほうに視線をやる。雑音の主は隣家の主人である。
「また彼らね……」
元の主が手放した隣家に入居しているのは、共和国の大企業ヴェルヌ社の役員のドラ息子と取り巻き達、ハイブラッズである。
彼らの迷惑行為に関しては仕事を通じて重々承知しているが、改めて腹立たしい。実家には頻繁に帰っているわけではないので、こうして隣人であるが故の彼らからの害を受けるのは初めてである。
「反省の色が見られないわね……」
腹立たしさと呆れが半分半分、といったところだ。聞けばメイドのジョアンナは買い物に出かけるときに彼らと出くわすと、ナンパされて迷惑だという話まで出ている。今もこうして夜中だというのに、遠慮なく家の前で騒がしく駄弁っている。流石に注意しようかと思った瞬間、彼らはにやついた笑いを浮かべながら彼らの家に入っていく。
「全く……なんとかならないのかしら」
静けさが戻ったところで、ため息を三度つきながらエリィはブーツの紐を緩める。腰からゆっくりと黒いストッキングを下ろしながら、むかむかした気持のまま彼らの顔を思い浮かべる。思い出したのは隣の家に事情聴取に向かった時、確か猫探しの時の話だった。
「あの時も、本当……」
彼らは支援課が猫探しをしていると知ると、自分たちを暴走行為で捕まえたことの腹いせに、情報提供の条件としてとんでもないものをあげてきたのだった。土下座か、裸踊り。性質の悪い冗談ではあったろうが、あの好色な視線があの三人から、特に自分に対して注がれたのははっきりと自覚できた。自分の体を舐めまわすような、そんな視線――
「ん……」
その時のことを思い出したエリィの体を襲ったのは、嫌悪感だけではなく、今ふと出てしまった声色のような艶かしい感情でもあった。
「ちょっと、こんな……」
戸惑いを覚えたエリィだが、冷静に考えれば、支援課ビルの防音はそれほどすぐれているとは言い難く、下の階には男性陣が住んでおり、同じ階には年少のティオ、キーアもいるといった状況なので普段は自分を慰めることもままならない。実家の自室ということで気の緩んだ彼女が、淫らな感情の揺らぎに反応してしまうのはいたし方のないことかもしれなかった。
すらりとした鍛えられた美脚を包む黒いタイツも脱いで、今、エリィはブラウスと下着だけの姿である。あの時は不快にしか思わなかった裸踊り、という言葉と、三人の好色な視線をつい反芻してしまう。
「ん……」
ブラウスのボタンを一つ一つ、首元から外していくのに、自分だけの部屋にも関わらず、視線を意識してしまう。鏡を見ながら、まるで腰をくねらすようにする様は、連中が見せろといった裸踊りに近いものになってしまっている。愛らしいピンクのブラジャーと深い谷間をあらわにすると、無意識にブラの上から乳房を持ち上げるようにしてしまう。
「はぁ……」
桃色の吐息を吐きながら、ブラジャーを緩めて指先でずらすようにすると、たわわな乳房と、下着の色と同じような上品な色の瑞々しい先端もあらわになる。とんとん、と細い指先でたたくようにしながら、エリィはパールグレーの髪ごとベッドに体をしずめる。好きな男でもない男達に、刺激されるのを妄想する。運転手のレジーの太い指が、自らの臀部を這い、好色そうなサイクスが夢中で敏感な胸の頂を吸い上げ、嗜虐的そうなユーリにペニスをつきつけられるような、そんな――。
「だ、だめぇ…」
いやいや、と首を振りながら、甘い声をあげ、乳房に胸を強く食い込ませる。妄想の中の男達にそうされるのを望むように。ベッドで身をよじりながら、太股をすりよせる。左手は自然にショーツの上のそこに伸び、指先で何度もなぞるようにする。
「あん……ん……ああ……」
押さえているはずの声が、どんどん高くなる。静かな部屋に、喘ぎと左手が生み出すぬちゃ、ぬちゃという水音が響く。喘ぎの感覚が狭くなっていき、ベッドに自らの乳房を押し付けるようにしながら、ショーツをずらして指で直接刺激する。久方ぶりの感覚に、白い肌は赤く火照っていく。あ、あ、ああ…と更に間隔は短くなっていく。「ああ…っ……」
びくん、と体を震わせると、エリィは恍惚の表情を浮かべたまま、ベッドに仰向けになり、荒い息を整えながら余韻に浸る。何をやっているのかしら、私――。そう自己嫌悪に陥りながら、一度達した体はまだ火照りをおさえられそうにない。でも、不健全な妄想につかるのはよくない――。ふらつく体を起こして腰をあげ、開けっ放しにしていたカーテンを閉じようとする。ふと隣家の明かりが目に入る。流石に聞こえはしないが、相変らず3人でこの時間まで馬鹿をやっているのだろう。もし、今、彼らのところに押しかけたら――。
は、と、とんでもないことが頭をよぎったエリィは首を振って妄想を振り払う。刹那、つ――と、濡れたショーツから伝う雫が、内股をゆっくり伝う。唇を濡らし、指を舐めたエリィは、灯りを消した自室のベッドで、再び体を熱くさせた。